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【 戦争がもたらす死、混乱、破壊…そして企業が得ている利益 】《前篇》ECO

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所要時間 約 8分

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戦争がもたらす死、混乱、破壊…それらはあなたが考えるほど、企業にとって悪いものではないのです
企業の戦略決定には、シンクタンクも気鋭のアナリストも不要

エコノミスト 9月20日

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イスラム国は地理的・政治的脅威であるかもしれません。
しかし現時点においては、各国の大企業にとってそれ程の脅威ではありません。

戦場と化したイラク領内のクルド族の居住地区からまる一日車を走らせた場所では、西側の石油会社、ゼネラル・エナジー、DNO、ガルフ・キイストーンの3社が石油生産を続けており、パイプラインまたは陸路を経由してトルコに大量の石油が送り続けられています。 

3社合わせた時価総額は6月にイラクの重要な都市モスルがイスラム国に占領された直後いったん暴落しましたが、しばらくして83億ドルまで回復しました。
これは今年初めの価格と比較すれば29%という大幅な下落ですが、現地における戦況の深刻さを思えば、各社にとってそれ程のダメージではありません。

「我々は安全確保については慎重を期さなければならないとの観点から、全面戦争に陥っている場所からすでに人員の撤退を完了させました。」
3社の幹部の1人がこう語りました。
しかし同時に彼はクルド人地区における自分たちの企業の設備などの資産を、装備に勝る反イスラム国側の軍隊が守ってくれると確信しています。

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これまで世界の規模で投資を行う機関などは、この地域における投資モデルをある程度変更しましたが、一斉に投資を引き上げることはしていません。
ただしアナリストはイスラム国の攻勢が激化する以前と比較し、この地区における投資コストが12.5%から15%の間で上昇したと分析しています。

しかし世界的規模で見れば、ビジネスにこうした不安定要因がついて回るのはいつもの事なのです。
海外戦略の立案についてはもはや大御所の域にいるヘンリー・キッシンジャーの最新の著作は、これから混乱が起きる可能性がある地域について解説していますが、ウクライナと中東で激化する暴力、そして南シナ海における緊張の高まりが、彼の見方が正しいことを証明しています。

彼の理論に基づけば、これから20年間のグローバリズムの拡大により、多国籍業はこれまで見られなかったほど弱体化することになります。

著名な西側各国の多国籍業の販売額の新興国市場における売上高は全体の20-30%を占め、1990年代半ばと比較すると倍の割合を占めています。
世界の地理的政治的リスクに直面しているのは石油会社だけではないのです。
ハンドバッグなどを世界市場で販売している世界的ブランド、ハイテク技術企業などもまた同様のリスクに直面しています。
そこにあるものは通貨の不安定性、報復としての規制強化、本国への手数料・権利料の送金の制限、生産活動の妨害から、果ては国有化まで様々です。

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しかしこれまでのところは地域紛争などが多国籍企業の業績や金融市場に、それ程大きな影響を及ぼすことはありませんでした。
ただし、企業単体では損害を被った企業もあります。
カールスバーグ、アディダス、ソシエ・デ・ジェネラルなどはロシアのせいで、株価の急落、あるいは資産の特別償却損などを計上させられました。
ロシア関連の西側企業の損害額は総額会350億ドルに達しますが、この金額は上記3社を含む10社が公表した特別償却損などによるものです。

しかし、その問題は多国籍企業についてのみ見た場合の話です。
市場分析を専門に行うダン&ブラッドストリートが計算した政治リスクの指標は、主にユーロ圏の危機を原因に、1994年以降最も危険とされるレベルに達しています。
しかし、アメリカの株式市場の予想変動率(インプライド・ボラティリティ)を表すVIXインデックス、別名『臆病指数』はこの20年間高くなってはいません。

1つの理由は明らかです。
対立や抗争が発生している場所は政治的な意味は重要であっても、経済的影響は大きくないのです。

中東、北アフリカ、ロシア、そしてウクライナは、合わせても世界の産業生産額の7%を生産しているに過ぎません。
「軽傷に過ぎない。」
ウォール街のある銀行家がこう語りました。
上記の地域に対するアメリカ、日本、イギリスの会社による対外投資は、全体の2パーセントに過ぎません。
多くの企業経営者はイスラム教のジハードの戦士より、アメリカの弁護士の方を恐れています。

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多国籍業の中枢を実質的にコントロールしているシステムは西側社会、特にシンガポール、あるいは日本に拠点を置いています。

1973、1979と1990年、中東産油国による原油価格の引き上げは、世界経済の先行きを不透明なものにしました。
この時以来、各国のエネルギー政策は石油依存からの脱却を志向するようになりました。
そしてアメリカではシェールガスの豊富な資源があることが確認され、その開発が進んでいます。
各国が行っている金融緩和策も市況の落ち込みを回避するのに一定の効果を発揮してきました。

各企業はこれまで危機に対処する際、期待された以上の結果を残してきました。
その内容を見てみると常識的な対応に終始しており、政治家やいわゆる専門家によるアドバイスとはほとんど無関係です。
ある企業経営者は、各部門の責任者にきっちり仕事をするよう任せるのが一番だと語りました。
「人間には今何が起きているのかを認識し、判断する能力があります。シンクタンクが用意した数々の資料、あるいは30代の気鋭のアナリストの分析に頼るよりも、良い結果が得られる場合がほとんどです。」

〈後篇に続く〉

http://www.economist.com/news/business/21618815-death-chaos-destruction-theyre-not-bad-companies-you-might-think-profits-time?zid=306&ah=1b164dbd43b0cb27ba0d4c3b12a5e227
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申し訳ありませんが、この記事は前篇だけ読むとその趣旨がよくお分かりいただけないと思います。
といって、全編を一度に掲載できる分量でもありません。
総論は後篇で明らかになります。
加えて私たちの最も関心のある問題のひとつ、中国経済はこのまま順調に成長を続けるのか?
その答えを、世界の銀行家がはっきりと語っています。
ぜひ、明日掲載の後篇でご確認ください。

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