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【 スキャンダルと疑惑にまみれ墜落した国民の支持 】

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『謙虚さ』を懸命に演出する安倍首相、しかし国民はその心底を見透かしている

自分の個人的な取り巻きへの貢献に終始する存在と化した安倍首相

 

ダニエル・ハースト / ガーディアン 2017年7月25日

 

日本の政治評論家たちの表現を借りれば政権支持率が『危険水域』にまで落ち込み、安倍首相の『約束されていたさはず』の未来が脅かされています。
安倍首相は2018年に行われる予定の自民党総裁選挙における勝利だけでなく、その先に予定されていた戦争の放棄を定めた日本国憲法の改定という、これまで長い間宿願としてしてきた課題の実現も先行きがあやしくなってきました。

 

4年半前に再び首相に復帰した安倍氏は長年にわたり安定した政権支持率を確保し、日本の最高権力者としての地位は揺るがないものと見られてきました。
その権力基盤の強さは所属する政権与党自民党が、安倍氏が3期連続で総裁を務めることができるよう任期を定めた規約を変更したほどのものでした。

しかし状況は一変しました。
「安倍氏はもはや無敵ではなくなりました。その理由は安倍氏が党のためではなく、自分の個人的な取り巻きへの貢献に終始する存在と化してしまったからです。」
テンプル大学のマイケル・トーマス・キューゼック准教授がこう語りました。

 

安倍氏の地位が危うくなってきたのは、もともと個人的につながりがあった2人の学校経営者に対する便宜供与が疑われたことがきっかけでした。

最初のスキャンダルは国家主義思想を持ち、それを教育の場で実践してきた森友学園に対し財務省が便宜供与をした疑いに基づくもので、国有地が法外に安く払い下げられた土地取引が疑惑の焦点になりました。

2番目は加計孝太郎理事長が経営する私立大学加計学園が、経済特区内での獣医学部の設置認可を求めていた問題です。

安倍首相は便宜供与のために政治的に介入したという疑いを繰り返し否定しましたが、世論調査の結果が物語るのは国民は以前疑いを抱いているという事実です。
とりわけ「首相官邸のトップレベルの関与」を疑わせる文部科学省内部の文書の内容が明らかになると、国民が抱く疑惑は決定的なものになりました。

 

7月下旬に開催された国会の特別聴聞会で安倍首相は、懸命に謙虚な姿勢を自ら演出しようとしました。
これは安倍首相の親しい友人が関わっている以上、「首相がこの問題に関わっていると一般国民が考えるのは自然なことだ。」と認めざるを得ないからです。

「私にはそうした視点が欠けていました。」

安倍首相はこう語りました。

しかし専門家は安倍首相が本当に反省しているのかどうか、そして8月に予定されている内閣改造によって今置かれている苦境を反転させることができるかどうか、その両方に疑問を持っています。

 

7月の後半に実施された毎日新聞のアンケートでは、安倍内閣の支持率は2ヶ月連続で10ポイント低下して26%となり、2012年に首相の座に返り咲いて以来最低を記録しました。
第一次安倍政権では政権支持率が20%台に転落し、わずか9ヶ月で辞職に追い込まれました。

 

キューゼック准教授は歴史的に見て、支持率が30%を割り込んだ首相の末路は良くないと語りました。

唯一の例外は1990年代後半の小渕恵三首相だけです。

「小渕政権の支持率は一度危険水域と言われる20%台に落ちこみましたが、その後そこから脱して支持率を回復させました。しかしそれは稀なケースです。通常は支持率が一度30%を下回った首相は、そのまま支持率が下がり続けます。」


他社の世論調査の結果は毎日新聞の数字ほど低くはありませんでしたが、いずれも安倍政権の支持率が下がり続けていることを確認しました。
「現在の状況の深刻さは、政権の支持率がかつてない程下がっているという事実だけではなく、支持率低下の動因にあるのです。」

 

政治評論家であり、シンクタンクのテネオ・インテリジェンスの副社長であるトビアス・ハリス氏がこう語りました。
「各世論調査による結果は支持率が下がり始めた当初とは異なり、政策よりも安部首相自身に対する信頼感の低下がそのまま支持率の低下の原因になっていることを示唆しています。疑惑やスキャンダルに関する応酬が何カ月も続いた後に、安部首相が一般国民の信頼を回復することためにできることが可能なのか、それは一切解りません。少なくとも私自身は安倍首相が支持率を回復させることは不可能だと考える、それが主な理由です。」

東京大学の内山融教授は、内部からの批判が強まり続ける状況から、安倍首相の問題を「かなり深刻」なものだと評価しています。

「安倍首相の体制は本の数か月前までは非常に強力で、数ヶ月前までは自民党内に挑戦を試みる政治家はほとんどいませんでした。」

内山教授がこう語りました。

「自民党内は混迷を深めており、党内の有力政治家、特に派閥の領袖が安倍氏に挑戦し始めています。」

 

しかし支持率低下したからと言って、安倍首相がすぐに辞任しなければならない訳ではありません。

安倍氏は2018年秋に予定されている自民党の総裁選挙の際、3期目への出馬はしないという決断を行うことにより、首相官邸を去ることになるだろうとハリス氏は考えています。

2018年の末に行われる予定の衆議院議員選挙の際誰を党首に頂いて戦うのか、混乱の無い交代を行うことにより「少なくともキングメーカーとしての立場を守ることができるでしょう。」

 

後継者の筆頭に挙げられるのが岸田文夫外務大臣ですが、他にも元防衛大臣の石部茂氏など数名の候補者がいます。

また日本政府での閣僚経験があり、7月初めに東京都議会議員総選挙で大きな勝利を上げた都民ファーストの会の小池百合子氏も有力視されていますが、2020年の東京オリンピックの開催準備を監督しており、すぐに国政の場に鞍替えするのは容易ではないと見られています。

 

安部首相が苦境に陥っているにもかかわらず、最大野党の民進党もまた推進力を欠いたままです。

そして都議会議員選挙では自民党ではなく都民ファーストの会と連携した公明党も、安部首相に対する圧力を強めていると見られます。

公明党は自衛隊の存在を日本国憲法に明記するという安部首相の方針を未だ認めてはいません。

 

「問題は安倍がどれだけ早く敗北を認めるかという事のようです。」

ハリス氏はこう締めくくりました。

 

https://www.theguardian.com/world/2017/jul/25/scandals-threaten-japanese-prime-minister-shinzo-abes-grip-on-power

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私たちが忘れてはならないのは、『悪いものの次に良いものが来るという保証は無い。もっと悪いものが来る可能性もある。』という事です。

忘れもしないのは東日本大震災と福島第一原発の事故の後、第3次民主党政権の野田政権の後、安倍政権が誕生したという事実。

福島第一原発の事故の悲惨さを目の当たりにした直後、日本の脱原発は30年後段階的にしか実現できないとした野田政権に大勢の国民が反発し、全国規模で大規模な抗議運動が巻き起こり、野田政権が崩壊しました。

しかしその後に誕生した安倍政権は段階的廃止どころか、原発を『国家の重要なベースロード電源』と位置づけ、国家規模での推進姿勢に変更は無いと言い放ちました。

倒れれば良いというものではありません。

倒れた後に何を出現させるのか、それは私たち日本国民ひとりひとりが見識を問われているのだということを、忘れるべきではないと思います。

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