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【 『選挙戦勝利』の後、いよいよ決断を迫られる 】《1》[エコノミスト]

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「世界情勢の変化に合わせ、日本は再び生まれ変わらなければならない時に来ている」その発言通りの改革に取り組むのか
第1の金融緩和政策の中身はよく理解できない?そして第3の矢である構造改革など、本音ではまっぴらごめん

エコノミスト 12月6日

安部06
安倍晋三氏が日本が歴史的決断をしなければならないタイミングで首相に再任されることに、もうほとんど疑いがなくなりました。
エコノミスト誌とのインタビューにおいて、安倍首相は自分の出身地が長州藩として1860年に幕藩体制を覆し、日本を近代産業国家として生まれ変わらせたことを引き合いに出しました。
安倍氏は明治維新の時と同様、世界情勢の変化に合わせ日本は再び生まれ変わらなければならない時に来ていると主張しました。
そして当時と同様、改革に反対する国内の勢力も団結を強めています。

「広範囲にわたる変革が日本のために必要でした。当時変革が必要だという認識は多数派ではありませんでしたが、維新の志士たちは文字通り命がけでその目標に向かっていったのです。」
安倍氏はこう語りました。

その支持者は経済政策アベノミクスについて、安倍首相が自分の政治資産を使うことなく遂行しようとした点について、少なからず驚いています。

2012年12月の選挙における地滑り的勝利の後、彼は3本の経済政策の「矢」によって構成されるアベノミクスを前面に、国民を駆り立ててきました。
大規模な金融緩和策、多額の追加の公共事業、そして石灰化している旧来の経済システムの改革がその3本の矢の中身です。
安倍首相は各国を飛び回って外交攻勢をかけ、稀に見る活発さを演じました。

安倍&豪州首相
しかし繰り返し公約として口にしていた市場経済志向の構造改革については、一向に前進の様子は見られませんでした。

たとえ安倍政権が衆参両院において過半数の議席を有しているとしても、首相自身はアベノミクスとして知られる経済政策をさらに前に進めるために、今一度国民の信任が必要だと主張しています。
安倍氏が12月14日投票の衆議院の解散総選挙の実施を宣言したのは、相次ぐ閣僚のスキャンダルによって安倍政権が守勢に追い込まれた直後のことでした。

日本経済は、今年4月に消費税が5%から8%に引き上げられたことにより消費支出が大幅に落ち込んで以来、不振が続いています。
最近発表された第2四半期のGDP(国内総生産)の数値は日本が構造的不況に陥っている事を意味していますが、12月8日に内閣府が発表した修正値は速報値と比べて一層悪い数値となり、日本経済が7月から9月にかけマイナス成長に陥っている事実を明らかにしました。
10月には消費増税の影響を除外したコアインフレーションは0.9%に落ちこみました。
部分的には原油価格の下落が影響し、この値は一層悪化する可能性もあります※。
※国際的にはコアインフレーションは価格変動の激しい食料品や原油価格を除いたものとされていますが、日本は季節的要因の大きな生鮮食料品を除いた価格の増減をコアインフレーションとしているようです。

こうした数値が意味するところは、10月後半に日本銀行は一層の金融緩和を進める方針を明らかにしたものの、安倍首相が目標としている2015~16年にインフレ率の2%にまでの引き上げに対し、安倍首相の放った矢の威力が不足していることを示唆するものです。

GRPH 実質賃金
そして安倍首相が来年予定されていた消費税の8%から10%の引き上げを延期する発表は、12月1日に誰もが思い出したくない現実、すなわち国の借金がGDPの240%にまで膨れ上がっている問題について歓迎されざる反応をもたらしました。
格付け機関のムーディーズがこのところ格下げが続いてきた日本国債をさらに1段階格下げしたのです。

失業率は安全圏とも言える3.5%に減少しました。
しかし大都市以外の一般的日本人の生活水準は改善されるどころか下がる一方であり、その分安倍政権に対する支持率も低下を続けています。
そして平均的労働者の賃金上昇がインフレと足並みをそろえることはありませんでした。
そして急激な円安は輸入品の価格を引き上げ、結果として富は日本国内で大都市から農村部まで均一に分配されることもありませんでした。

しかし安倍政権に対抗すべき野党は、安倍首相率いる自由民主党が現有の294議席をほとんど失うことなく安定政権であり続けることを進んで可能にしているようなひどい状況にあります。
今回の戦況では連立を組む公明党とともに自民党は衆議院の480議席の3分の2という、圧倒的過半数を制すると見られています。
選挙結果が予想通りになれば、安倍政権と対立する野党は数年の間、対立軸として有効な働きが出来なくなるかもしれません。

選挙によって『信任を新た』にした安倍首相は、いよいよ本館的な構造改革に着手するのでしょうか?

実は安倍首相は再三再四、最も困難なこの課題を後回しにしてきました。
じつはこの構造改革は一般市民の抵抗を呼ぶものでも、平均的な労働者に不利な条件を押しつけるものでもありません。
構造改革によって打撃を受けなければならないのは、一部の既得権者と特権を有する政府官僚たちです。

安倍首相が構造改革に中々着手しようとしないのは、祖父であり、第二次世界大戦直後に首相を務めた岸信介氏の熱意を受け継ぎ、アメリカ占領下の1946年に成立した日本国憲法の戦争の放棄に関する解釈を変更し、日本が再び戦争することを可能にすることにこそ本来の目的があるのではないか、と多くの日本人が疑っています。
解釈の変更により、同盟国が攻撃を受けた場合に日本の自衛隊の出動を可能にするための法案作りの環境は整いました。

憲法第9条01
しかし安倍政権のこの問題に関する一連の動きは日本国内で激しい反発を招き、政権は一時その対応に忙殺されることになりました。

アナリストの一部は、日本の中でも突出した世襲政治家である安倍首相には、自民党内の旧来の既得権勢力と戦い抜くためのしたたかさと力が欠如していると考えています。
その安倍首相について、議員のひとりがこう表現しました。

第1の矢である金融緩和については、内容が理解できない。
第2の矢である公共事業への多額の出費は最も得意とするところ
第3の矢である構造改革など、本音ではまっぴらごめんだと考えている。

《2》に続く

http://www.economist.com/news/asia/21635609-shinzo-abes-expected-victory-next-weeks-snap-election-will-leave-him-no-excuse-further?zid=306&ah=1b164dbd43b0cb27ba0d4c3b12a5e227
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エコノミスト誌の記事に
「アベノミクス最大の特徴は、考え得る限りの美辞麗句を使って実情を糊塗する宣伝能力」( http://kobajun.biz/?p=20969 )という指摘がありました。
今回の衆議院の解散総選挙については『アベノミクス選挙』と自ら銘打っている訳ですが、今回のエコノミストでも前回のドイチェ・べレでも、安倍首相は果たして構造改革に本気で取り組むつもりはあるのか、という疑問が呈されています。

もし「言っただけ」に終われば、まさに現在の日本のモラル崩壊のひとつの典型である「やったが勝ち」の風潮を、首相自ら煽っていることにならないでしょうか?

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