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『ジャパンズ・シークレット・シェイム』(隠されてきた日本の恥部)

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所要時間 約 9分

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日本の高位の国家権力の不当介入を疑わせる事件のもみ消し
伊藤詩織さんの勇気ある告発と政界の実力者の隠蔽指示により、この問題は国際的な注目を浴びることになった

 

レベッカ・ニコルソン/ ガーディアン 2018年6月28日

『ジャパンズ・シークレット・シェイム』は日本の社会に広範に存在しながら滅多に表沙汰にされることのない女性に対する性的な暴力について、伊藤詩織さんの訴えに着目した非常に意義深い番組です。

 

『ジャパンズ・シークレット・シェイム』は最後まで見続けることが非常に難しいドキュメンタリーです。
それはおぞましく、イライラさせられ、その上悲惨です。
そして一方では勇敢さに溢れた、必要性の高いそれは、、信じられないほど重要なドギュメンタリーです。
全編を支配するのはプロデューサー兼監督であるエリカ・ジェンキンの細やかな心遣いと静かな怒りです。

 

この番組では一人の女性の事件に焦点を当てることにより、日本社会に隠れて存在する女性への暴力、構造的な不平等と差別という大きな問題について問いかけています。

 

2015年伊藤詩織さんは、著名かつ有力者に知り合いが多くいるジャーナリストである山口敬之(のりゆき)氏に対し強姦の被害を受けたとして告訴したことを公の場で明らかにしました。
山口氏側は関与を否定してします。

 

私たちは約3年以上にわたり伊藤さんの物語が不当な取り扱いを受け、そうなった背景にはいくつかの疑いが濃厚に存在していること見ることになります。
時には、それが確信以上のものになり、ひどくいらだだしい思いをさせられます。
最終的にこの番組は視聴者にいよいよ変革が始まるのだという感覚、そして多分日本固有の風土に重要な変化への胎動が始まっているという楽観的感覚を持たせることになるのです。

日本では被害を受けた女性が性的暴行の申し立てを行うことはほとんどないと言われています。
この番組の撮影が開始された当時、性的暴行に関する日本の法律は1907年以降同じままでした。
この方の下では窃盗の場合よりも強姦の最小刑の方が軽いとされていました。

 

日本がどの程度グローバルスタンダードに則しているかをまとめた統計では、文化的・社会構造的に女性に対する性的暴力が深刻な問題として扱われていないことを示唆しています。
たとえばこのドキュメンタリー中では、英国では100万人の女性のうち510人が性的暴力を受けたと報告されていますが、日本ではその数はわずか10人に減少します。

 

この統計を見て日本が女性にとって安全な国であることを示唆していると主張する人もいます。
しかしこの番組の制作に協力した人々は、日本では性暴力の事実について語ることがタブー視されており、犠牲者が公の場で告発することなどはめったにないことだと信じています。

 

伊藤さんは山口氏に対し告発を行いそのタブーを破ることになりました。
彼女が告発を行ったのは日本でまだ#MeTooムーブメントが起きる前でありその反響は極めて軽微なものでしたが、日本でも性暴力に抗議する#MeTooムーブメントの盛り上がりとともに、彼女の告発と経験に世界的な注目が集まることになりました。

 

このドキュメンタリーの前半部分は特に見ていると辛くなってきます。
そして彼女自身その夜に起きたことを思い返すことがどれだけ辛かったか察するに余りあります。
伊藤さんが山口氏と過ごした夜に起きたことを説明するシーンがあります。

その内容は性暴力が起きる一つのパターンと言えるかもれません。
伊藤さんは山口とより20歳以上年下ですが、メディア界に職を得たいと考えていました。
一方山口氏は有名なジャーナリストであり、日本のキー局のワシントン支局長を務め、安倍首相の伝記を執筆した人物でした。
山口氏は食事と飲酒をしながら、伊藤さんがメディア界で職を得るために果たさなければならない役割について約束をしたと語りました。
さらに伊藤さんは薬を飲まされたのだと思うと語りました。
一方山口氏は彼女が飲み過ぎたと主張しています。

 

しかし当時の様子についてタクシー運転手が重要な証言をしています。
伊藤さんは駅にさえ連れて行って貰えば、あとは自分で帰宅できると伝えていたのです。
しかし山口氏は彼女をホテルの自分の部屋に連れて行きました。

 

ドキュメンタリー制作にあたり伊藤さんは「事実と向き合うため」この建物にやってきました。

伊藤さんが警察署に出向くと、当夜起きたことについて加害者に見立てた等身大の人形を使い、マットレスの上で忠実に再現するように求められました。
伊藤さんは事情聴取が女性警察官によって行われることを望んでいましたが、実際には男性警察官が担当しました。
この事件を担当するための女性警察官がいなかったのです。

 

このドキュメンタリーによれば、日本の警察官のうち女性の割合はわずか8パーセントにとどまっています。
東京には性的暴行事件に関する緊急相談センターが一箇所だけありますが、電話での相談はできないと言われ、直接を面談を行うため2時間をかけて来るよう言われました。
結局伊藤さんはその日、起き上がることができませんでした。

こうした事件のほとんどが闇から闇に葬り去られる風土に抗いたいという伊藤さんの希望に加え、警察が山口氏の逮捕令状を取り下げるように命じられたことについて野党の国会議員などが政治的に高い位置にいる人間からの圧力があったと主張したことが加わり、この問題は高度に政治的色彩を帯びると同時に国際的に注目を浴びることになりました。

 

結局刑事告発は一切行われませんでしたが、伊藤さんは現在山口氏に対し民事訴訟を起こす手続きを進めています。

 

『ジャパンズ・シークレット・シェイム』を見た人は大きな怒りに身を震わせることになります。
私は番組を身始めた時から胃がキリキリと痛みました。

しかしこの忌まわしい事件の中、自分自身の体験から伊藤さんを勇気ある女性として賞賛する高齢の女性の存在からは、微かではありますが希望の光を感じ取ることができます。

 

同じような被害にあった女性たちに前に進むための勇気を与えるために。

番組の最後、強姦された後伊藤さんに出会うまで誰にも何も語らなかった一人の女性が登場します。
「水面に一滴の水が滴り落ちても何も起きません。」
女性は伊藤さんにこう語りました。
「でもその水滴がたくさん集まれば、津波を作り出すかもしれません。」

 

https://www.theguardian.com/tv-and-radio/2018/jun/28/japans-secret-shame-review-breaking-a-nations-taboo-about

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基本的人権を蹂躙された

 

人間としての尊厳を踏みにじられた

 

そのように訴える人に、どう向き合うのか?

それは人間としての『踏み絵』であるに違いありません。

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ほんとうの「今」を知りたくて、ニューヨークタイムズ、アメリカCNN、NBC、ガーディアン、ドイツ国際放送などのニュースを1日一本選んで翻訳・掲載しています。 趣味はゴルフ、絵を描くこと、クラシック音楽、Jazz、Rock&Pops、司馬遼太郎と山本周五郎と歴史書など。 @idonochawanという名前でツィートしてます。
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