ホーム » エッセイ » 「子供を生まないカップルは『身勝手』」自民党幹事長が放言
自民党の二階幹事長は低出生率が続いている日本で、子供がいない人々を一方的に批判
安倍政権に少子化問題の本質を理解し解決策を考える資質はあるのか?
ジャスティン・マッカリー / ガーディアン 2018年6月27日
枢要な立場にある日本の政治家は、子供を持たないと決めた夫婦を「利己的」と批判し、戦後のベビーブームを引き合いに出し、数多くの子供達を産み育てることの困難さを子供を産まない理由にすべきではないとの持論を展開しました。
人口動態に関する調査の結果、日本の人口は今後数十年間に劇的に減少するとの警告が発せられたことを受け、保守派の政治家である自民党の二階俊博幹事長は、国民に子供を増やすよう促しました。
「戦中戦後の人々は飢えに苦しみながらも、何かと苦労が多いから子供を生まないようにしようと言った人はいませんでした。」
二階氏は東京での会見でこう語りました。
「ところが最近では、子供を産まない方が幸せなんじゃないかなどと勝手なことを考える人々が現れています。」
安倍首相は出生率の引き上げと職場に進出する女性の数を増加させることを公約しましたが、安倍政権は必要なだけの保育所を整備するという公約を守ることができないままです。
最近の調査では日本の親の70%が子供をもっと欲しいとかいとうしていますが、経済的な心配や仕事と家庭生活のバランスをとることが難しいなどの理由から、これ以上家族の数を増やすことを断念せざるを得ない状況にあります。
野村総合研究所の最近の報告によると、未だに34万8,000人近くの子供たちが保育所への入所を拒否されており、今後5年間で25歳から44歳の働く女性の割合を80%にまで引き上げるという安倍首相が打ち出した目標はそう簡単に達成できるものではなさそうです。
二階氏は日本の夫婦にもっと子供を生むよう批判的な態度をとる自民党内の政治家の一人です。
今年5月には、同じ自民党の加藤寛治衆院議員は派閥の会合で日本人女性は複数の子供を産むべきであり、結婚せずに子供を一人も生まない女性の後半生は国家の負担でしかないと攻撃しました。
さらに同じ5月後半には安倍内閣の官房副長官を務めた萩生田光一自民党幹事長代行が子育ては女性の仕事であり、父親によって育てられれば子どもの正常な発達が損なわれる可能性があるとの発言を行いました。
「「男女共同参画」「男も育児」だとか格好いいことを言っても、子どもにとっては迷惑な話。」
萩生田氏はこう述べました。
昨年約94万1,000人の子供が日本で生まれましたが、粉の数字は1899年に記録が始まって以来最も低いものになりました。
日本では夫婦がより多くの子供を生むよう財政面その他の支援策が導入されていますが、出生率は低迷を続けています。
国連の人口統計年鑑によれば日本の人口全体に占める子供の割合は12.3%と、人口4,000万人以上の世界32カ国のうちで最も低くなっています。
https://www.theguardian.com/world/2018/jun/27/childless-couples-are-selfish-says-japanese-political-chief
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二階氏の発言はこの後、
「食べるのに困るような家はないんですよ。実際は。」
と続くようですが、今は
「食うのには困らないだろうから、子供作ろうか!」
と言えるほど単純な世の中か?
と思います。
親は生まれてきた子供にできるだけのことをしてあげたい、とえるのが人間、というよりは生物としての本然です。
そうなれば当然教育、住環境、被服や食生活、そして現代社会では『安全』ということを真剣に考えなければなりません。
何れにしてもコストがかかります。
私は昭和30年代に地方都市で生まれ育ちましたが、当時は地域社会が子育ての担い手のひとつというメカニズムが自然に存在していたように思います。
忘れられない光景があります。
私が小学生低学年の頃、夕暮れ時に店や住宅が密集する地区の生活道路を歩いていたら、見知らぬ男性に声をかけられ道を聞かれました。
私が答えていると、近くで立ち話をしていた白い割烹着をきた主婦が3人バラバラと駆け寄ってきて、厳しい口調で私に道を尋ねた男性の追求を始めたのです。
「あんた、誰?」
「あんたどこの人?」
「この子に何の用なの?」
結局道を尋ねていただけだとわかり、無事散会となりましたが、当時は「おとなであれば身近にいる子供を守るのは当然」という意識を当然のように、基本的に誰もが持っていたのだと思います。
道で転んで怪我した子供がいれば、近くの家の人が治療してあげるのは当たり前の対応でした。
経済的に恵まれない家の子供たちに、何気なく援助の手を差し伸べるのも日常的行為の一つでした。
こういう世の中であれば、若いカップルも子供を産み育てるということに前向きな気持ちを持つことができるかもしれません。
そのメカニズムを壊したのが自民党の産業効率最優先政策というべきものであり、都市部における労働力確保のため、米作農耕民族伝統の三世代同居型の日本の家族構成を解体し、『核家族』といわれる世帯構成に置き換えて来ました。
その結果、母親にかかる子育ての重圧はかつてないほど大きなものなってしまいました。
安倍政権が成立に躍起になっている現在の『働き方改革法案』なども、さらにこうした母親たちを追い詰める条件を増やすだけだと思います。
要は安倍政権の『少子化対策』など看板だけのものであるということです。
だから二階発言のように
「悪いのは俺たちじゃねえよ、おまえらだろ。」
という趣旨の発言が繰り返されているのだと思います。
二階、安倍、麻生などという人間の蒙昧さを批判しても、現代日本社会の母親の負担は減りません。
彼らは問題の本質を理解し解決策を考える資質は持っていません。
ただし、記事中にある保育所の設置や支援態勢の整備は公約通り早急に実現してもらわなければなりません。
それは北朝鮮のミサイルを迎撃するため高額な兵器を購入・配備するよりも、もっと緊急の課題であるはずです。