ホーム » エッセイ » 「ストップ!スタート!」日本の原子力発電《前篇》
安倍政権が目指すのは、福島第一原発の事故以前とほぼ変わらない水準での原子力発電所の稼働
巨大地震が集中する日本において、原子力発電所の安全性への懸念は極めて深刻
エコノミスト 2016年10月15日
柏崎刈羽原子力発電所は世界最大の原子力発電所であり、日本の原子力発電事業の中核となるべきものです。
6,619人の従業員は毎日、決められた時間に規則正しく出社し、そして退社して行きます。
東京電力はここを含め所有する原子力発電所の維持費として、2015年一年間に6,060億円を支出しました。
しかし福島第一原発の事故発生により停止を続けている日本国内のほとんどの原子力発電所同様、柏崎刈羽原子力発電所は2011年以降ただの1キロワットの電気も発電していません。
柏崎刈羽原子力発電所には7基の原子炉がありますが、東京電力はこのうち2基の原子炉を稼働させるべく原子力規制委員会に審査を申請しました。
しかしたとえ原子力規制委員会が再稼働申請を承認するとしても、政治状況がそれを許さない可能性があります。
10月16日柏崎刈羽原発が立地する新潟県の有権者は新任の知事を選びました。
新潟県民の柏崎刈羽原発の再稼働への反対意見は数多く、そして強いものでしたが、これまで2人の主要な候補者は辞任した泉田知事に対し、再稼働に強く反対を表明した事は有りませんでした。
福島第一原子力発電所の事故が発生するまで、日本国内では54基の原子炉が稼働していました。
このうち、福島第一原発の6機の原子炉は廃炉にされることになっています。
残る48基の原子炉のうち26基について、日本の原子力規制委員会は再稼働に必要な審査の申請を受け、これまで8基の原子炉について再稼働の申請を承認しました。
実際に稼働しているのはこのうち2基だけで、3基目の原子炉は現在点検のため、一時的に稼働を停止しています。
原子炉が立地する道府県の知事は原子炉の再稼働について最終的に承認を与える立場にありますが、何人かの知事は裁判所の判断に異議を唱え、また別の問題を抱え込んでいる県もあります。
一方では、稼働中の2基の原子炉の内1基を再び停止させるよう訴訟を起こしている知事もいます。
福島第一原発の事故が発生する以前、日本は全電力の25%を原子力発電によって賄っていました。当時の日本政府はその割合を50%にまで引き上げることを目指していました。
現在の安倍政権は、2030年までに全電力の20%から22%を原子力発電によって賄う事を目指しています。
しかし実際には一時的に稼働を停止している原子力発電所の再稼働がなかなか進まない状況は、この安倍政権の政策に多くの国民が反対する意思を持っていることの現れです。
現在日本の原子力発電所が供給しているのは、全電療需要の1%未満です。
2030年までにその割合が10%を超えると予測する人はほとんどいません。
「原子力発電の復活はゆっくりとしか進まず、しかも短命に終わるでしょう。」
モルガン・スタンレー銀行のロバート・フェルドマン氏がこう予測しました。
地震が発生する確率が世界で最も高い国のひとつである日本において、原子力発電所の安全性に対する懸念は極めて深刻です。
今後放射線被ばくによるガンの発症と死亡例の増加が予測されていますが、福島第一原発の事故による直接の死亡例はゼロでした。
この他、地震と津波によって死亡した人は、確認されているだけで15,000人以上になります。
しかし少なく見積もっても150,000人の人々が住んでいた場所からの避難を強制されることになりました。
そしてそのうちいまだに仮設住宅での生活を余儀なくされている人々が多数に上っています。
2012年の創設以来、原子力規制委員会の権限は大きく強化されました。
そして新たに設定された安全基準はより広範囲な厳しいものとなり、東京電力は柏崎刈羽原子力発電所の改良だけで4,700億円を費やしました。
職員は数多くの安全設備を維持しなければなりません。
福島第一原発の事故の主原因となった津波を防ぎとめる高さ15メートルの防波堤、多種多様な非常用電源、数多くの消防自動車と原子炉用冷却水の莫大な備蓄などです。
ある部屋では、複数のインストラクターが非常時に対応するための職員の訓練状況をじっと注視していました。
原子炉だけでなくタービン部でのトラブルについても、事故を想定した訓練が行なわれています。
しかしそれでも、問題は無くならないのです。
〈後篇に続く〉
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2016年10月の宇宙写真から《2》
アメリカNBCニュース 2016年11月1日
10月30日カザフスタン共和国領内でソユーズMS-01宇宙船のカプセルに乗って降下する
、宇宙航空研究開発機構(JAXA)第49次探検隊のメンバー。
大西卓哉さんを含むメンバーは国際宇宙ステーションで115日間を過ごし、この日地球に帰還しました。(写真上)
10月10日スペインのセブレロスにある超遠距離電波天文用パラボラアンテナを使い、欧州宇宙機関が北極星方向に866秒間メッセージを送り続けました。
メッセージの中身は世界中から公募された、タイム・カプセル的な内容のものであり、434光年先にある北極星に向け送信されました。(写真下・以下同じ)
10月3日、国際宇宙ステーションが撮影した地球の街の灯の写真。国際宇宙ステーションは時速28,000キロで地球を周っています。
10月21日公開された太陽に照らしだされる木星。その地表では大気が渦巻いている様子が見てとれます。
NASAのロボット衛星による木星の観測は今年7月に開始されました。
このロボット衛星が木星にたどり着くまで5年という時間がかかっています。
10月5日に公開されたオリオン座の中のメシエ第78星団の詳細な写真。
チリにあるヨーロッパ宇宙機関パラナル天文台ノビスタ赤外線望遠鏡デ撮影されたものを可視化したものです。
青く写っているのは新星集団から放たれた強烈な光、そして高温のガスと塵を噴出しながら星が形作られている様子が見てとれます。
http://www.nbcnews.com/slideshow/month-space-october-2016-n676341