ホーム » エッセイ » 福島第一原発4号機使用済み核燃料プール、日本人が知らない本当の危険《後篇》[フェアウィンズ]
【 使用済み核燃料プールは、本当に燃え上がるのか?! 】
福島第一原発では、アメリカの原発ではやらない、核燃料の危険な配置が行われてしまった
フェアウィンズ 2012年8月19日
アメリカ原子力規制委員会も、使用済み核燃料の束が空気中で発火するのかどうか、実際に確認しようとして、国立サンディア研究所に実施を依頼しました。
偶然の一致から、この実験は福島第一原発の事故発生の2週間前に行われました。
この映像に映っているのが、核燃料の束です。
さらに詳しくご説明しましょう。
この束には使用済み核燃料は入っていません。
核燃料ペレットの発熱を、電熱線ヒーターを使いシュミレートしています。電熱線はトースターの内部などに使われているものです。
実験では核燃料ペレットは使わず、この電熱線を使って、使用済み核燃料ペレットと同程度の熱を放出させました。
しかしそれ以外の条件は、実物の使用済み核燃料棒と同一のものにしました。
ご覧いただいている映像は、実際には5時間かかったものを1分間に短縮したものです。
この映像を解りやすくするために別に用意したスクリーンショットを、画面の左上に表示させます。
束ねた燃料棒から数本のワイヤーが伸びていますが、これは電線です。
いちばん右が、燃料棒の天辺から下までを横から見たものです。
この5時間の実験により実に多くのことが解りましたが、それらは国立サンディア研究所のサイトで直接確認することが可能です。
最初の映像は熱が加えられる直前の燃料棒の束です。
直後に、この燃料棒の束が過熱されますが、すでに煙が上がり始めています。
しばらくの間、煙を上げ続けているのが確認できます。
そして、煙の中から炎が上がり始めている様子がわかります。
最後のシーンは、燃料棒が燃えた結果、どうなったかを表しています。
これはジルカロイが空気中で燃焼することを、確認した実験です。
燃焼させるためにマッチで火をつけたりはしていません。
一定温度以上になると、空気中で自然に発火する物質特性を確認したものです。
最後に一つ、明らかにしておく必要があります。
ご覧いただいた実験では、使用済み核燃料の代わりに電熱線が使われていましたが、使用済み核燃料の束が、空気中で発火することは明白になりました。
実際の福島第一原発4号機は、これよりはるかに悪い状況にあります。
4号機の使用済み核燃料プールには1,500束の、1束ではありませんよ、1,500束の使用済み核燃料棒が入っています。このうち、300束は原子炉の炉心から取り出したものです。
ですから、きわめて高温の使用済み核燃料の束が300、使用済み核燃料プール内にあるのです。
そしてもっと悪いことがあります。
日本人は原子炉の炉心からすべての核燃料を取り出し、きわめて限られたスペースしかない使用済み核燃料プール内に入れました。
アメリカではこういうやり方はしません。
チェッカーボード方式、つまりチェッカー盤にコマを置くようにして、高温の核燃料と低温の核燃料をそれぞれ空間を開けて組み合わせて配置していくのです。
しかし日本人は、この面倒な方法を行いませんでした。
原子炉の炉心から取り出したばかりの高温の核燃料を、互いにくっついたまま、ひとまとめにして使用済み核燃料プールに入れてしまったのです。
これらの条件から考えて、福島第一原発の使用済み核燃料プール火災発生の可能性はあるでしょうか?
使用済み核燃料が空気中で発火することは、このビデオで確認済みです。
では、実際に使用済み核燃料プール火災を引き起こすものは何でしょうか?
7月上旬、福島第一原発の使用済み核燃料プールの冷却装置が故障しました。
メインのポンプ、予備のポンプ、その両方ともが数日間稼働しなくなり、プール内の水の循環が行われなくなりました。
そしてこの間、プール内の温度が上がり続け、一日当たり華氏で言えば18度ずつ、摂氏で言えば10度ずつ温度が上がり続けました。
使用済み核燃料プールというのは、巨大なプールであり、約1,100トンの水が入っています。
1,100トンの水の温度が毎日10度ずつ上昇し続けるという事について、実感がわくでしょうか?
この状態が続けば約1週間で沸騰が始まり、さらに一週間が経てば、核燃料棒の先端が空気と触れはじめることになります。
次に起きるのは、国立サンディア研究所のビデオでご覧いただいたような状況です。
ですから日本人に与えられた時間は2週間、この時間内に冷却装置の修理・稼働を行わなければなりませんでした。
これは本当に大変な事態でした。
私はよく2週間で、ほとんどの修理を仕上げたものだと感嘆する思いです。
しかし本当に危険なのは、再び大地震が襲ってきたときです。
原子炉建屋はすでに構造上、大きな損傷を受けており、自身が発生して使用済み核燃料プールの水が無くなってしまえば、文字通り一巻の終わりです。
最早使用済み核燃料の冷却手段は失われ、天文学的な数の使用済み核燃料が発熱し始めることでしょう。
そして使用済み核燃料プールから炎が上がり、シルカロイの容器の中に残っていたウラニウムが、大気中に放出されてしまうのです。
1998年のことになりますが、ブルックハヴン国立研究所が、使用済み核燃料プールが火災を起こした場合の被害について検証し、被害想定を行ったことがあります。
18万人がガンを発症し、原発の周囲半径65キロ内は、人が住めない場所になってしまいます。
この時の想定は、現在福島第一原発4号機使用済み核燃料プール内の核燃料よりも、少ないウランの量で計算が行われました。
当然ですが、もし福島第一原発4号機使用済み核燃料プールに何か起きれば、その被害はブルックハヴン国立研究所の想定を上回る結果になってしまうことは明らかです。
原子力産業界がどのように抗弁しようとも、地震によって4号機使用済み核燃料プール内の水が無くなってしまえば、核燃料プールは火を噴くのです。
それが現在、福島第一原発4号機が実際に抱えている問題なのです。
現在アメリカ国内には23基のゼネラルエレクトリック社製マークⅠ型原子炉があり、中には福島第一原発4号機以上に核燃料を抱え込んでいる原子炉もあります。
アメリカ国内には世界で最も多くのマークⅠ型原子炉が存在し、使用済み核燃料プールの問題は福島第一原発だけの問題ではありません。
どうすればいいのでしょうか?
私たちは日本政府と東京電力に対し、一刻も早く福島第一原発4号機使用済み核燃料プールから核燃料を取り出すよう、圧力をかけることはできるはずです。
私たちはこれまで検証してきたことが現実になるかならないか、大地震の発生をただ待っているわけにはいかないのです。
アメリカ合衆国国内においては、原子力規制委員会に対し、福島第一原発と同型機の23基の原子炉の使用済み核燃料プールから燃料を取り出すよう、要求することができます。
現段階では、原子力産業界が経費を節約するために、使用済み核燃料プール内の核燃料保管を認めるよう、原子力規制委員会に圧力をかけています。
フェアウィンズ・エネルギー教育機関は、福島第一原発の事故発生以来、原子力発電に関する重要な技術的課題を明らかにすべく、努力を続けてきました。
福島第一原発4号機使用済み核燃料プールの問題も、そうした取り組みの一つです。
私たちはみなさんに改めて、フェアウィンズ・エネルギー教育機関に関する寄付をお願いしなければなりません。
私も妻のマギーもフェアウィンズからは、全く報酬を得ていません。
しかしご覧いただいているようなビデオを制作したり、調査を行うためにはお金がかかります。
これまでお寄せいただいた寄付に対し、心からお礼を申し上げるとともに、今後の寄付についてご検討いただいている皆さんに、感謝の念を改めさせていただきます。
ご覧いただき、ありがとうございました。
これからも、情報提供を絶やさないよう、努力を重ねてまいります。
〈完〉
http://www.fairewinds.org/ja/content/can-spent-fuel-pools-catch-fire
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【 どこの景色がお気に入りですか?】
アメリカNBCニュース 11月第1週分から