ホーム » エッセイ » 核兵器妄想に取りつかれたトランプ《4》悪夢を再び世界に押しつけるアメリカ大統領
北朝鮮に爆弾を投下することを、トランプ政権はなぜ決まった予定のように話すのでしょうか?
民主主義を理解しようとしない大統領トランプの指を、核兵器発射ボタンから早く引きはがして!
レベッカ・ゴードン /ル・モンド・ディプロマティーク 2017年10月31日
これに対し、トランプが起用した民間人のスタッフは褒められたものではありません。
ニッキー・ヘイリー国連大使は9月、CNNの報道番組の中でトランプ政権が
「可能な限りすべての外交的手段を尽くし、まずは北朝鮮に注意を促したい。」と語りました。
しかし、もし外交手段では事態が好転しない場合には
「北朝鮮はマスティス将軍に面倒を見てもらうことになるだろう。」と語りました。
そして放送を聞いている人たちが『面倒を見る』という言葉の意味を取り違えないよう、次のようにダメ押ししました。
「北朝鮮がこれ以上無謀な行動を続けるつもりなら、米国はいかなる手段を使っても国土や同盟国を守らなければならなくなったら、北朝鮮は完全に破壊されることになるだろう。」
確かにレックス・ティラーソン国務長官は毅然とした態度で、北朝鮮との対話の窓口を常に開けておく必要性を繰り返し主張し、トランプ得意のツイッターで
「リトル・ロケットマンと交渉しようとして、時間を無駄にしている」と嘲られています。
テイラーソン長官は10月15日、最初の一発を投下するまで外交努力が続くだろうとCNNに説明しました。
なぜテイラーソン長官は爆弾を投下することを決まった予定のように話すのでしょうか?
最初の一発を投下するのは誰になるのでしょうか?
彼はアメリカ軍による第一撃について話をしているのでしょうか?
あたかもトランプ政権全体が、外交努力がうまくいかない場合には必然的に戦争もあり得るという選択肢受け入れたように見えます。
それが具体的にどういう事かわかりにくい方は、ブッシュ政権が2003年3月20日にバグダッドに最初の一発と巡航ミサイルが発射される直前まで、イラクの独裁者であるサダム・フセインとの交渉を続けるという口実を掲げていたことを思い出してください。
トランプは一方的に命令してものごとを進めたいと考えています。
しかし合衆国憲法の細かな点、法律の定め、そして三権分立という民主主義のルールは、トランプが思っていた以上の障害になっています。
これまで大統領令を濫発して思い通りに進めようとした試みはほとんど失敗しました。
トランプにとっては『三度目の正直』となる、イスラム教徒の入国を禁止する方針は再再度法廷に持ち込まれました。
さらにはオバマ大統領の下で整備された医療制度であるオバマケアを無効にし、国家からの補助金拠出を中止させようという最近の取組もすぐには実現しそうにありません。
事実、トランプの方針に対しては、すでに18もの州が無効を求めて法的手続きを行っています。
トランプはイライラしています。
なぜ自分は映画スタートレックのジャン・リュック・ピカード指揮官のように、手で合図をするだけで周囲の人間たちにおとなしく言う事を聞かせられないのでしょうか?
なんでも思い通りになるなら、トランプは絶対王政の君主のようなものであり、憲法、法制度、そして議会は何の意味も持たなくなります。
トランプが望む通りの体制とは絶対君主制に他なりません。
そうなればトランプ一人で核攻撃を命じることができるようになります。
そうなってしまったら、他の問題では成文法や慣習法によってトランプの恣意的な判断が妨げられる可能性は残されますが、ボブ・コーカー上院議員が警告した通り、トランプ一人のせいで世界は『第三次世界大戦への道』を進むことになり、アメリカは1945年8月9日の長崎への原爆都投下以来初めて、核兵器使用に踏み切ることになるでしょう。
「核兵器発射ボタンからトランプの指を引きはがして!」
アメリカ議会にもしその気があれば、トランプの狂気を止めるための時間はまだ残されています。
たとえば核兵器の先制攻撃を行うためには、国務長官や国防長官、上下両院の院内総務など指名された人々の全会一致の決議を必要とするとする法案を可決成立させ、大統領の専行を防ぐなど数多くの対策がとれるはずです。
さらに良いことに、アメリカ議会はこれまで長い間放棄されてきた宣戦布告するための憲法上の権利をまだ有しており、カリフォルニアのテッド・リュー下院議員によって1月に提案された簡単な法案を承認すればそのことを再確認することが可能です。
議会調査部によれば、この下院決議案669号法案『2017年核兵器先制使用禁止令』は大統領が核兵器を先制使用することを禁止し、議会の宣戦布告の後、核兵器については議会が承認しなければ使用できないことになっています。
まだ時間があるうちに議会は行動を起こさなければなりません。
一方的に核兵器攻撃を命令する権限をトランプから取り上げれば、北朝鮮政府関係者の不安をひとつ取り除く結果につながるかもしれません。
でもそれ以上に私たちが夜安心して眠りに就くために、是非にも実現しなければならないことのはずなのです。
〈 完 〉
https://mondediplo.com/openpage/trump-s-nuclear-dreams
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最も知性に優れた人間が一国の指導者に就くという事は、別に保証されているわけではない。
それはアメリカでも実際私たちが目にしているし、日本に於いてもそうだと思います。
しかしその事に一番責任を持たなければならないのは自分たち自身であり、現実を変えるために何かをしなければなりません。