ホーム » エッセイ » 核兵器妄想に取りつかれたトランプ《3》悪夢を再び世界に押しつけるアメリカ大統領
核兵器使用への日本国民の憂慮に対し、トランプは作った以上使う事も選択肢の一つだと返答していた
これまでさらけ出してきた無分別・無知蒙昧さの一体どれを指して、トランプは『馬鹿』と言われたのか
レベッカ・ゴードン /ル・モンド・ディプロマティーク 2017年10月31日
いつでも核兵器の発射ボタンに手をかけるぞという脅しは、広く知られているトランプの『交渉術』のひとつの実例かもしれません。
トランプの交渉術なるものはただ単に攻撃的な手法を合理的な話し合いのように外観を取り繕うため、他が『えっ?』と思うような着手点から交渉プロセスを開始するものです。
過去に核兵器の保有への途模索していた可能性のあるイランのような米国の敵性国家であっても、これまでトランプはこうまで破壊的ではありませんでした。
トランプはオバマ大統領が中心になって交渉をまとめ上げたイランとの6カ国協定にずっと反対し続け、度々協定の一方的破棄を口にしてきましたが、実際にはそうはしていません。
イランは協定の内容を順守しているとの国際原子力機関(IAEA)の保証の受け入れを拒否しただけで、判断を議会に委ねるというだけの対応に終りました。
トランプが本音では独裁力を発揮したいと考えていることは明らかです。
本来採らなければならない政策をないがしろにしながらそうした衝動を隠し、政権基盤に対する信頼性を手に入れようとしているやり方には驚くべきものがあります。
こうしたことは先々に多少の希望が持てるという兆候かもしれませんが、現在のアメリカ大統領の発言の中に世界にとって多少なりとも希望が持てる状況を見出せるかどうかは、占いでもしないと解りません。
残念ながら私たちは、トランプが大統領執務室にいる限り、核兵器使用の可能性の方が高まるだろうという事を懸念しなければなりません。
トランプは核兵器に対して個人的に愛着を持っていることを繰り返し表明してきましたが、実際に使用してしまったらその先に何が待っているのかを真剣に考えている様子はありません。
事実2016年3月、ビル・オライリーがホストを務めるアメリカのFOXニュースの報道番組で、ヨーロッパにおける核兵器の使用を検討することになるかもしれないと語りました。
そしてヨーロッパを『広大な場所』と表現し、そこに明確な目標を定めて核兵器を使用することについて、あたかも理に適った事のように語っていたのです。
そしてさらに同じ月、今度はMSNBCのタウンホールで「私は勝負を降りるつもりはない」と語り、イスラム国(ISIL)の『カリフがいる首都』に対する核兵器攻撃を提案したのです。
少人数であちこちに隠れているゲリラ戦闘員に対する核兵器攻撃?
そんなことは無意味なだけでなく、最悪の結果をもたらすことになるでしょう。
NBCニュースのコメンテーターのクリス・マシューズ氏が、トランプが核兵器使用も辞さないという態度を表明していることについて、日本の国民が憂慮しているようだと告げると、彼はこう語りました返答しました。
「じゃなぜ私たちは核兵器を作ってるんだ?我々は使うために核兵器を作ってるんじゃないのか?」
マシューズ氏の質問はドナルド・トランプ以外の別の人間に向けられていたなら、意味のあるものになったかもかもしれません。
レックス・ティラーソン国務長官がトランプを「馬鹿だ」と呼んでいたことが最初に明るみに出た時、トランプがこれまでさらけ出してきた無知蒙昧さの一体どれを指して馬鹿といったのか、私たちは疑問に思っていました。
今はもう誰もが理由を解っています。
2017年7月の国家安全保障ブリーフィングの席上、トランプはアメリカがすでに保有している4,000基の核弾頭を10倍に増やすべきだとの提案を行っていたのです。
トランプが最も敬意を払っている顧問は現役の将官あるいは退役した将軍たちですが、ジョン・ケリー参謀総長、ジェームズ・マティス国防長官、H.R.マックマスター国家安全保最高障顧問を含む、リベラル派とは対極にある人物たちです。
まるで軍人の同窓会のような顔ぶれですが、それでもトランプの大統領執務室にあってはまだしも『成熟した』人間に分類されます。
別に確信している訳ではありませんが、気質上彼らの方がアメリカ合衆国のかじ取りに向いているとしても、事実その傾向が見えていますが、顔ぶれを見れば外交問題の解決手段として軍事力の行使が最初のアプローチになる可能性があります。
実際にマティス国防長官は、米国やその同盟国に対して北朝鮮が脅威を与えれば「大規模な軍事的報復」行う可能性があると、2017年9月に警告しています。
「私たちは、北朝鮮という国家の全滅を目指しているわけではない。ただし、我々には多くの選択肢がある。」
同様にABCのジョージ・ステファノプーロスに取材を受けた際、マックマスター国家安全保最高障顧問はこう答えました。
「はっきりしていることは、脅威だけでアメリカ軍が実際に行動を起こすことは無い、そうだろう?諸君。」
「脅しだけなら、結果は必然的にそうなる。そうだろう?」
そしてマックマスターは特に次の点を強調しました。
「キム・ジョンウンはすでに親族を殺し、北朝鮮国民を冷酷に扱っている。核兵器を使用すれば、『相互確証[確実]破壊 - MAD』という冷戦時代の核兵器戦略がどう機能するのか、そこまで頭が回らないのかもしれない。」
奇妙な話ですが、史上名高いもう一人の共産主義者の独裁者であるヨシフ・スターリンは血で血を洗うような党内の粛清を行い、数百万人ものソビエト市民を死に至らしめましたが、核兵器についてはそれを使えばどういう結果を招くか充分理解していたようです。
当たり前の人間にとってこの二人のアジア人を理解することには困難が伴いますが、その中身はまったく異なっているようです。
CNNによれば退役将官であるケリー氏ですら、記者団に次のようにそっと耳打ちしました。
「核兵器を搭載したミサイルをアメリカ本土の目標に到達させるだけの能力は、北朝鮮にはありません。」
「もし彼らがすでにその能力を手に入れており、アメリカにとっての脅威が増しているとすれば、外交がうまくいくことを祈りましょう。」
《4》に続く
https://mondediplo.com/openpage/trump-s-nuclear-dreams
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