ホーム » エッセイ » 日本の脱原発を許さない、隠された5つの本当の理由
【六ヶ所村 – 動かせぬ事実】
その場しのぎを繰り返す政府、将来を見通せない日本
エコノミスト(英国)2012年11月10日
ここ青森県の北東部にある僻遠の地の存在について、北朝鮮やイランの潜入工作員たちはきっとほくそ笑んでいるに違いありません。
眼前に広がる田園風景のせいではありません、ウラン濃縮施設がこの六ヶ所村にあるからです。
この施設では使用済みのウラン、そしてプルトニウムから、再び核燃料を作り出そうという『再処理』が行われています。
ここは分離プルトニウムの上手な隠し場所として使われ、その量は9トンにもなりますが、専門家によればこれだけあれば優に1,000個以上の核弾頭を製造することが可能です。
核兵器の製造・所有は一切行わないことを誓い、目下54基の原子炉の内2基しか稼働していない日本において、この六ヶ所村は唯一の例外のようにも見えます。
日本政府は片方では2040年までの原子力発電の段階的廃止を謳っておきながら、一方では六ヶ所村が核燃料の再処理を行い、原子力発電所に燃料供給を行うことになっています。
再処理によって創り出される核燃料により、日本は2050年代になっても原子力発電を稼働させ続けることが可能になります。
こうした事実は誰の目にも明らかですが、日本の当局者たちは一向に平気な顔をしています。
しかしこの矛盾は、日本政府の『原子力発電の段階的廃止』という目標が、ほとんど無意味なお題目に過ぎないことを証明するものです。
六ヶ所村再処理工場は、完成が15年も遅れている上、資金繰りについては全く行き詰った状況にありますが、政策に対する強い影響力だけは衰えていません。
この再処理工場には、すでに2兆2000億円もの巨額の資金がつぎ込まれていますが、かつては貧寒とした農漁村であった六ヶ所村の古川健次村長は、補助金が無ければこの村はやっていけないと語気を強めます。
六ヶ所村は雇用についても歳入についても、再処理施設への依存割合を高め続けて来ました。
六ヶ所村の問題さえなければ、日本の原子力発電廃止路線への転換は、もっとずっと容易なものになるだろうと、政府関係者が語りました。
六ヶ所村再処理工場は、現在日本全国の原子力発電所内の一時保管庫に積み上がる、核廃棄物の再処理を行うことを期待されています。
この原子力発電所内に保管される核廃棄物の再処理もできず、さらに永久処分場の確保もできないとなれば、原子力発電所の危険性が、ただひたすら高まっていきます。
「六ヶ所村再処理工場の稼働無くして、全国の原子力発電所の再稼働は承認できません、決して」
与党民主党の所属議員がこう語りました。
この国の原子力発電が停止して以来、既得権を抱えていた国会議員を始めとする人間たちは、不足する電力の問題を見た国民が、原子力発電に回帰してくれることを密かに願い続けて来ました。
民主党政権が原子力発電の廃止路線を打ち出すと、アメリカ、イギリス、そしてフランス各国が『深刻な懸念』を表明しました。
この『深刻な懸念』の中には、日本国内で積み上がる一方のプルトニウムの問題があった、と政府関係者が語りました。
公的には核兵器を持たないことを表明している日本は、非核国家の中で最大量の分離プルトニウムを抱え込んでいます。
その日本がもし、原子力発電の廃止にも関わらず使用済み核燃料の再処理を続ければ、世界中の核開発能力のある国々に誤ったメッセージを送ることになると、アメリカは主張しています。
日本政府はこうした不安を払しょくするため、2040年までの原子力発電所の廃止は、義務ではなく目標であるといち早く表明し、米英仏などの国々を安堵させたのです。
そしてさらなる国際的圧力が、技術的には可能な日本の脱原発、そして日本国民の人々が形にした勇気を、押しつぶしてしまいました。
日本がもし原子力発電という手段を放棄してしまえば、日立製作所とゼネラルエレクトリック、そして東芝とウェイティングハウスとの提携により支えられるアメリカの原子力産業が、その技術的な協力者を失ってしまう事を、アメリカ側が恐れたのです。
これはすなわち、中国やロシアの原子力技術=核技術が、いずれ日本やフランスのそれを追い抜くことを意味します。
なぜ日本政府は原子力発電の廃止にこうも及び腰なのか、いくつもあるこのような圧力の存在が、その問題を解き明かすカギになります。
次に日本の政権を握る人間たちは、原子力発電を継続するために、これらの圧力を利用することでしょう。
しかしそれでも、核燃料の再処理だけは、継続すべき理由が見当たりません。
プリンストン大学の核拡散問題の専門家であるフランク・フォン・ヒッペル氏がこう指摘しました。
日本にとってはウラン燃料を輸入する方が、再処理などするよりはるかに安上がりのはずだ。
しかも危険を冒してわざわざ青森まで輸送するより、核廃棄物をコンクリート製のキャスクに閉じ込めて冷却する方が安全性は高いと。
http://www.economist.com/news/asia/21566018-governments-fudge-its-nuclear-future-remains-unconvincing-rokkasho-and-hard-place
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5つの理由、ご確認いただけましたでしょうか?
[1]日本全国から集められた核廃棄物を、再処理できずに抱え込んでしまっている六ヶ所村の財政事情
[2]日本原燃の実質的オーナーである、東京電力の財政問題
[3]日本が大量のプルトニウムを抱えたままになることに、懸念を持つアメリカ、イギリス、フランスの圧力
[4]日本が原子力発電を止め、再処理だけを続けた場合、現在核開発疑惑を持たれている国々に、『誤ったメッセージ』が伝わってしまう。
[5]日米原子力連合の戦力低下を恐れるアメリカの圧力
どれも、日本国民大多数の利害と全く相いれない、『国民のため』などとは言えるはずもない理由ばかりでは無いでしょうか?
[1]については、福島第一原発の事故により核廃棄物の問題が明らかになった以上、六ケ所村の振興策は核廃棄物再処理以外の手段を講じるべき。
[2]すでにご紹介したドイツの電力企業E.ONやRWEなどの例を参考にした再生可能エネルギーへの事業転換、そして巨大企業による電力支配を続けるべきかどうかの議論をすべき。
[3][4]プルトニウムの処分
[5]日本の核技術を廃棄物最終処分(再処理ではなく)・廃炉に特化させるなどする、日米の開発分野の分担
いずれも実施するには混乱を伴うでしょうが、10年20年かければ、決して不可能ではないはず。
それよりも100年や200年では片づくはずのない、危険な高放射性廃棄物やプルトニウムをこれ以上『作らないようにする事』の方が、はるかに緊急性の高い問題だと思います。
それに以下の指摘。
『次に日本の政権を握る人間たちは、原子力発電を継続するために、これらの圧力を利用することでしょう。』
最近になってなぜ自民党が「日米関係の修復」を声高に言い始めたのか、その魂胆を解き明かしているかのようです。
さらには六ヶ所村の再処理施設とセットの高速増殖炉もんじゅ。
どちらもまったく「まともに動いたことも無い」( http://kobajun.biz/?p=1932 )のに、合わせると7兆円を超える巨額の資金がつぎこまれているのです。
いったい日本の財政赤字の、何%を占めているのだ?!
そう思われませんか?
しかも、六ヶ所村再処理工場は、動き出せば高濃度の放射性廃棄物を毎日海に捨て続けることになります(小出裕章氏著『原発のウソ』)。
このエコノミストの記事の原題には『The government’s fudge』、日本政府のfudgeという語句が含まれています。
fudgeは『ごまかし[不正,カンニング]をする,ずるをする;(債務・義務・約束などを)果たさない,守らない,すっぽかす,踏み倒す((on ...)) fudge on an exam - ランダムハウス英和大辞典』などの意味ですが、まさにその繰り返しにより、問題がここまで大きく、一見するともう手がつけられない状態になってしまったのではないでしょうか?
ほとんどの原子力発電所が止まった段階で、日本国内には処理不能の高レベル放射性核廃棄物が30,000トン以上あり、これはいくら金を積んでも解決できない問題です( http://kobajun.biz/?p=5062 )。
火力発電所の原料費は高くつくなどと、言ってはいられない程危険な存在なのです。
さらに原子力発電を続ければ、核廃棄物の量が増え続けることになり、これに福島第一原発の事故が生み続けている高濃度汚染水、除染後の土などの低レベル放射性廃棄物まで加えれば、この国の汚染はいったいどれ程のものになってしまうのか、気が遠くなる思いです。
世界中のほとんどの国は、放射能汚染の危険が高くなる一方、そんな環境にはないはず。
なぜ日本「だけが」そうなのか、真剣に考えましょう。
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【 水没するイタリアの古都・ヴェネツィア 】
2010年12月以来、最大の高潮
アメリカNBCニュース 11月11日
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