ホーム » エッセイ » 【 日本の公共放送の経営委員、右翼の拳銃自殺を賞賛 】[AFP/ガーディアン]
強硬な国家主義的体制の前に、世界最大規模の公共放送はペンを折るのか?
AFP / ガーディアン 2月5日
日本の安倍晋三首相が指名、就任した公共放送局NHKの経営委員が就任する一か月前、右翼活動家の拳銃自殺を賞賛し、その行為により日本の天皇が現人神に生まれ変わったとする文書を配布していたことが明らかになりました。
この意外な事実は、NHKという公共放送の編集・報道の健全性に疑いを抱かせ、国内外に波紋を広げた一連の騒動の約1週間後に明らかになりました。
NHKの会長が第二次世界大戦中の従軍慰安婦の制度を正当化したことに加え、経営委員のひとりは日本軍が中国で行ったとされる南京大虐殺は中国による『プロパガンダ』だと街頭演説を行いました。
そして今度は新任の経営院のひとりである長谷川三千子氏が、委員に指名される一か月前の昨年10月に配布された追悼文集に、1993年に抗議先の朝日新聞社で所属する極右団体の名誉を傷つけられたとして拳銃自殺した幹部を称賛する文を寄稿していたことが明らかになったのです。
日本では封建(江戸)時代以降、自殺は自身の名誉を守るための手段の一つだと考えられてきました。
有名な例では、右翼思想の文学者である三島由紀夫がクーデターに失敗した後、割腹自殺をとげた例がありました。
「人間は自らの命を佐々蹴ることにより神と対話することが出来る。」
彼女はこのように記し、その内容が日本を代表する新聞のひとつ、毎日新聞のオンライン版と5日付の紙面に掲載されました。
長谷川氏は以下のように記しています。
「20年前、朝日新聞社本社内で拳銃自殺をとげた野村秋介氏は、これ以上のものは無いという最もふさわしいやり方で神に命を捧げた。」
「野村氏は拳銃で自分自身の腹部に向けを3発の銃弾を撃ちこむ直前、天皇陛下の永遠の繁栄を祈る言葉を口にした…」
「野村氏のこの行為により、『人間宣言』が何と言おうと、日本国憲法が何を規定しようと、天皇陛下は現人神になられたのである。」
昭和天皇は戦前は現人神(半ば神であり、半ば人間である存在)として崇拝されていましたが、第二次世界大戦後、日本に駐留した連合軍の政策の一環として、1946年に人間宣言を行いました。
アメリカの監修の下成文化された戦後の日本国憲法は、天皇は政治的権力を持たない、日本国の『象徴』であると規定しています。
長谷川氏(67才の研究者)は公共放送であるNHKの放送番組の制作方針と予算編成について、強い発言権を持つ経営委員のひとりです。
毎日新聞の報道によると、長谷川氏が昨年10月右翼の拳銃自殺を称賛する文章を掲載した事実は、日本政府がNHKの経営委員として、新たに長谷川氏を含む4名を指名する1週間前に明らかになりました。
しかし、4人の経営委員の指名は11月18日、国会において承認されました。
またこれに先立ち、新たに就任したNHK経営委員の作家・百田尚樹氏が1937年に始まった日中戦争において、1938年に発生した日本軍による南京大虐殺は事実として存在しないと主張した後、長谷川氏の問題が明らかにされました。
南京の問題については、その犠牲者数について数万人から30万人まで諸説あるものの、その事実があったという点においては歴史学者の意見はほぼ一致しています。
しかし日本の右翼は、ことあるごとに南京の虐殺などはでっち上げであるとの主張を繰り返しています。
結局長谷川氏も百田氏も、日本政府から釈明を求められることはありませんでした。
日本政府は日中の共同研究の結果を受け、「多くの非戦闘員の殺害や略奪行為などがあったことは否定できない」としつつも、犠牲者数について「諸説あり、政府として正しい数を認定することは困難」との見解を示しています。
日本政府の最高位のスポークスマン菅義偉官房長官は、NHKの経営委員であっても、個人的な意見を明らかにする権利は有しているとの見解を示しました。
また同じく菅官房長官は彼女が日本文化に精通する「わが国を代表する哲学者、評論家」であり、そのために日本政府により指名され、国会において承認を受けたものだと5日の記者会見で述べました。
これら一連の問題は、世界最大規模の放送会社であるNHKのニュース解説者などが、安倍政権の強硬な国家主義姿勢の前に、ペンを折って協力するよう暗に要求される事態が続いた後に発生しました。
http://www.theguardian.com/world/2014/feb/05/japanese-broadcaster-praised-ritual-suicide-rightwinger-nhk-hasegawa
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この記事にも登場する人物が都知事選の応援演説で、対立候補を「人間の屑」呼ばわりをし、物議をかもしています。
議論の出来ない人間が、議論を理解できない人間に向かって何かを主張する場合、罵倒を繰り返すという事は過去にもあり、それ自体は憐れむべき事です。
しかし笑ってばかりもいられないのは、日本では戦前この類いの人間が権力にすり寄り、有為の人々が大量に死に追いやられた歴史があるからです。
ある人は戦場で、ある人は米軍の落とす爆弾が作り出した地獄の中で、そしてある人は獄中で。
その歴史だけは繰り返させてはならないと思います。
記事の中身は一見事実だけを淡々と述べたようにも見えますが、全体を読めば現在のNHKの状況が、『ジャーナリズムに関する世界の常識』から見て、どのように見えているかが理解できる内容になっています。
引用されている毎日新聞の記事は下記URLにて、ご参照ください。
http://mainichi.jp/select/news/20140205k0000m040180000c.html
明日11日は掲載をお休みさせていただきます。
新しい記事は12日(水)にご紹介させていただきます。
よろしくお願いいたします。
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【 ほんとうのロシアの冬 】《第2回》
アメリカNBCニュース 2月4日
(写真をクリックして、大きな画像をご覧ください)
製錬工場の労働者は、背負ったボンベからマスクを通して酸素を吸入しながらでないと働けません。
極限の状況での労働は汚染、熱、そして騒音により最悪のものになります。
ここの労働者は90日の長期休暇と、45歳での早期退職により、その身を危険にさらした分の補償を受けています。(写真上)
ノリルスクの住民は非常に裕福で、金には困っていないという神話がロシアにあります。
その噂の元になったのは、ソビエト連邦時代、国家が資源開発のために大規模な開発資金を投入したためでした。
当時ノリルスクの住民の収入は全国平均の4倍という高さでした。
ロシアの公務員の平均収入は4万円~7万円なのに対し、現在のノリルスクの労働者の月収は12万円~20万円程度です。
しかし食糧はすべて他の場所からこの孤立した場所に持ち込むために価格が高く、長期間にわたる暖房費もかかります。(写真下・以下同じ)
ノリルスクの厳しい気候の中で金を稼ぐという魅力は、ペレストロイカとソ連の崩壊の後消えました。
そして1990年代の経済大変動の時代がやってきて、企業が丸ごと捨てられ、インフレが始まったのです。
ノリルスクには、放棄され荒れ果てるばかりの建物が散在しています。
88歳のアンナ・バシリエーヴナ・ビーガスは、ノリルスクの強制収容所で10年間を過ごしました。
ウクライナ西部にあった生まれ故郷で、彼女はドイツ軍の侵攻を生き伸びましたが、生き延びたことで彼女はドイツ軍への協力者の疑いをかけられ、19歳でノリルスクの強制収容所送りとなりました。
彼女はノリルスクのメインストリートであるレーニン通りで建物の建設労働者として働かされました。
結局彼女は故郷に残したものをすべて失ってしまい、29歳で釈放された後、ノリルスクに残る以外の選択肢は残されていませんでした。
「強制収容所での唯一の楽しみは歌う事でした。私たちはわずかな余暇の時間、歌を歌って過ごしました。生き続けるための唯一の希望は、歌う事から湧いてきたのです。」
2012年10月30日、彼女は亡くなりました。
ノリルスクは1年の内、8~9ヵ月の間雪に覆われます。
この期間中ノリルスクに降る雪の量は200万トン以上、住民1人当たり10トンの雪が降ることになります。
あちこちにできる雪だまりの高さは、3メートルに達することがあります。
ノリルスクでは冬の間は仕事に出かけ、帰って食べて寝る、それ以外の活動を行うことは困難です。
過酷な気候条件は屋外におけるどのような活動も許しません。
結局屋内でのスポーツが健康、そして人間らしい暮らしを保つための重要な手段になりました。
ノリルスクからは、体操、フィギュアスケート、スキー、そして水泳において数人のロシア人チャンピオンが生まれました。
http://www.nbcnews.com/news/photo/what-real-russian-winter-looks-n21251