ホーム » エッセイ » 崩壊を食い止めつつ、最前線で必死に戦う日本の医療従事者 : 新型コロナウイルス
感染拡大を抑え込む最大のチャンスを安倍政権は自らつぶした
複数の専門家が安倍首相は新型コロナウイルス問題について正しい判断ができていないと非難
感染経路の不明が多い日本、今後の展開にどう影響するか…

定塚恵美子 / 米国CNN 2020年4月18日
梶原綾子さんは日本の医療システムは次に必ず来るであろう事態について準備ができていないことに不安を募らせています。
彼女は埼玉県の病院の主任看護師であり、重症の新型コロナウイルス患者を治療している集中治療室 緊張した場面を直接目撃しています。
「快方に向かっていると思われていた患者の容態が急変し突然悪化するので、私たちの対応は大変です。」
梶原さんがこう語りました。
過去数週間で、日本の新型コロナウイルス感染者が急増し、日本政府の最初のウイルス対策が拡大を制御することに成功したという強い期待を打ち砕きました。
ジョンズホプキンズ大学によると、4月17日金曜日の時点で、日本には190人の死亡者を含め、9,787人の感染が確認されていました。
3月1日時点の日本の感染者は243人でした。
日本国内の感染者数の激増により、安倍晋三首相は非常事態宣言を7都府県から全国に拡大せざるをえなくなりました。
17日金曜日にはサージカルマスク、医療用ガウン、フェイスシールドなどの医療機器を、深刻な医療器具用品不足に陥っている病院に1週間以内に提供するという約束も行いました。
4月第3週の初め、安倍政権の専門家チームは社会的距離などの措置が実現されない場合には、日本国内のコロナウイルス関連死亡者数が40万人以上に達するまし可能性があると警告した。
しかし同時にほとんどの死亡例において、人工呼吸器の不足が本当の原因である可能性があるとも警告しました。

4月第3週、松井一郎大阪市長が医療従事者が防護服代わりにゴミ袋を着用せざるを得なくなったことを認め、個人用防護服の代用品としてレインコートの寄付を呼びかけたことにより、医薬品の不足が明らかになりました。
専門家は医学的資源の不足に加え、他国と比べてかなり低いPCR検査の実施率、さらには日本のテレワークへの移行が進まないことが重なることにより、場合によっては爆発的な感染拡大を引き起こす恐れがあると述べています。
▽ 院内感染
新型コロナウイルスとの戦いが続く中、日本国内の各所の病院で院内感染が発生しています。
東京都は4月12日、東京中野区の病院で新たに医師、看護師、入院患者合わせて87人の新型コロナウイルスへの感染が確認されたことを公表しました。
「クリニックや病院から離れた場所で検査を実施することが非常に重要です。」
王立ロンドン大学の公衆衛生保険研究所所長で、かつて世界保健機関(WHO)の保健政策責任者を務めたことがある渋谷健二氏がこう語りました。
「日本では十分な数のPCR検査が行われなかったことが、地域ごとに広範囲に感染が広がる結果に産みました。
病院の医療従事者は、自分たちが担当する患者が感染しているかいないのかわからないまま治療にあたったため、結果的に準備をすることがてきませんでした。」

横浜市内で救急救命士として働く早川翔さんはこの数週間、自分が勤める病院でコロナウイルス患者が着実に増加する様子を目撃してきました。
早川さんは父親として、自分が妻や幼い子供を新型コロナウイルスに感染させてしまうことを懸念しています。
「私は自分が新型コロナウイルスの感染源になることを非常に心配しています。そのため私は特別な注意を払っています。」
早川さんがこう語りました。
東京と大阪は病院の負担を軽減するために、新型コロナウイルスの感染者のうち軽症の患者をホテルに移送することを始めました。
他の県もすぐに同様の対応をとるものと見られています。
早川氏は、横浜市も同様の対策を実施することを期待しています。
麻酔専門医の新澪氏は、同僚の医師が新型コロナウイルス感染の疑いがある別の病院の医師と一緒に医療行為を行ったために自己隔離をしなければならなくなり、彼女がその業務を肩代わりせざるをえなくなったと語りました。
「多くの医師が別の病院で交代勤務しています。交代勤務の医師が自分が気がつかないうちに新型コロナウイルスのキャリアになってしまい、そのため私は負担がかかりすぎている日本国内すべての病院で、一時的に医療従事者がいなくなってしまったような感覚に襲われました。
新氏は新型コロナウイルス感染患者の治療に専従する医療従事者が増えれば増えるほど、癌や不妊治療や心臓手術、さらには妊産婦のケアに至るまで、すべての医療担当者が減っていくことになると危機感を募らせています。
「医療従事者の不足が新型コロナウイルス治療の治療にとどまらず、不妊治療や癌治療にまで影響を与えることに日本の人々は気づいていなかったと思います。」

▽ クラスターに特化した監視体制
2月に最初のコロナウイルス感染患者を確認して以来、日本は隣接する韓国などが実施した広範囲にわたるPCR検査より集団感染発生の封じ込めに焦点を合わせてきました。
人口5,100万人の韓国でがすでに513,000件のPCR検査を行ったのに対し、人口1億2,600万人の日本の件数はわずか90,000件です。
専門家は感染者の実数は日本が公式に発表している数値をすでに完全に上回っていると見ています。
日本のPCR検査は集中治療室での治療が必要な重篤な患者以外の感染者も病院に押し寄せることにより収容能力がオーバーフローすることを防ぐ、その一点に照準を合わせています。
厚生労働省の広報担当者によれば、現在の検査件数は1日6,000件から7,000件ですが、日本の検査能力は1日あたり12,000件です。
4月15日東京都医師会は新たに20か所の検査所を設置すると公表しました。
感染症専門の久住英二医師はすでにこうした検査所数カ所の監督運営に携わっていると語りました。
「私たちが軽症患者の検査にも対応できるようになれば、感染が確認される患者の数はもっと増えることになるでしょう。」
安倍政権は日本の検査体制整備の信頼性の高さについて繰り返し強調しています。

「新型コロナウイルスについてオーバーシュート(爆発的患者急増)は確認されていないので、我々はクラスター(小規模な集団感染)を抑え込むことに焦点を合わせ続けています。」
厚生労働省のスポークスマンはこのように語っています。
しかし、日本では感染経路を突き止めることができないケースが多発しています。
東京は11日土曜、1日の感染者数としては記録の上で2番目に多い197件の感染増加を確認しましたが、当局は症例の77%の感染経路を特定することができませんでした。
「大都市ではさまざまな感染経路があるため、(感染)クラスターを封じ込めた上で経路を追跡することは非常に難しいのです。」
元WHO職員である渋谷氏がこのように語りました。
クラスターを封じ込めるために医療従事者は陽性反応を示した人々に聞き取り調査を行い、感染理由を推測する必要があります。
しかし今回の新型コロナウイルスはドアノブや電源スイッチなどの表面でも生き残ることができるため、人々がウイルスに感染した方法を特定することは萩愛によっては困難な場合があると渋谷氏が語りました。
クラスターの封じ込めに焦点を合わせるというやり方は、感染率がまだ低く場所も限られていた初期の段階でこそ効果を発揮しましたが、医療崩壊の危機が眼前に迫っている現段階においては、こうした戦略を再評価することが急務だと渋谷氏が指摘しました。

▽ 国民にありのままの事実を公開せよ
京都大学のウイルス学者である宮沢孝之氏はウイルスを封じ込めるためには、近未来において新型コロナウイルスが常在する私たちの生活がどう変化するかについて、日本政府は国民に対しありのままの情報提供を行う必要があると語りました。
「政治家たちは人々にあまりにも楽観的な見通ししか示さず、5月6日まで継続する緊急事態宣言が解除されるまで外出の自粛に耐えるようにだけ言っています。」
「必然的に人々は5月6日までにはすべてが片付くような感覚を抱いていますが、それでは現実を理解しているとは言えません。私たちはこれからは新型コロナウイルスに対し常に警戒を怠らない生活を続ける必要があります。」
前出の梶原主任看護師は、彼女が勤務する病院が4月上旬に新型コロナウイルス患者専用の集中治療室を設立したもののベッド数は6床しかなく、すでにその半分が占有されている現状を見て、すぐにでも収容能力を上回る患者に圧倒されるのではないかと懸念しています。
日本集中治療学会によると、集中治療室ベッド数は米国の10万人あたり35床に対し日本には10万人あたり7床しかありません。
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設備不足も懸念されます。
国の呼吸器学会によって提供された情報によると、1億2,600万人以上の人口に対して22,000の人工呼吸装置しかありません。
2月末時点では、すでにその4割が埋まっていました。
梶原さんは彼女のチームが患者の治療のため最善を尽くしていますが、一方では治療の失敗例もあり、また医療従事者自身が感染の危機にさらされていることも認識しています。
「希望にしがみつきたいのです。」
梶原さんがこう語りました。
「これまでのすべての経験から、私は日本でとても快適に暮らし、たくさんの恩恵を受けてきたと考えています。日本の人々は生きていく上で本当に必要なもの、そして本当に大切なものを今思い知らされているのだと思います。」