ホーム » エッセイ » ずさんな事故収束作業、誠意無き原発難民への賠償、そのツケを払わされる日本の市民
【 財政破たんが目前に迫る東京電力 】
幾重にも危険が増していく福島第一原子力発電所
ドイチェ・べレ(ドイツ国際放送) 8月19日
これまで東京電力が公にしてきた福島第一原発における事故収束作業の状況は、全くの虚偽であったことが判明しました。
汚染水の海洋への流出は続いており、日本政府が乗り出さざるを得なくなりました。
1年と年限を設けた上で東京電力の筆頭株主になりましたが、日本政府はこれまでは極力経営その他に口を出すことを控えていました。
このため福島第一原発の事故収束作業と、同発電所が事故の際に放出した大量の放射性物質によって汚染された地区の、人々の生活や事業の補償問題については、東京電力はこれまで任意に進めることが出来ました。
しかしそのずさんで無責任な対応のつけは、日本政府、ひいては国民全体に回ってくることになりました。
日本政府はまず、東京電力が2年以上に渡り汚染水を太平洋に漏出し続けてきたことを認めなければなりませんでした。
しかもその量は半端なものではなく、最新の試算によれば毎日300トンという量であり、各メディアはこの量が1週間でオリンピック・サイズのプールがあふれてしまう程の量である事を伝えています。
東京大学・工業科学研究所の調査グループは、福島沖の海底の状況に関する研究結果を公表しました。
日本のメディアはこの調査を率いたブレア・ソーントン博士の発言をこう伝えています。
「私たちは福島第一原発周辺の海域で、周辺と比較し、放射線の量が10倍以上高い地点を20か所以上確認しました。その直径は10m程度のものから、大きいものでは直径数百メートルに及ぶものもありました。」
▽ あまりに多い解決すべき課題
チェルノブイリの事故以降、人類史上最悪となった原子力発電所事故が発生した後、日本政府は東京電力に対し2つの矛盾した指示を与えました。
ひとつは津波の襲来に対して適切な防衛策を採っていなかったがために起きた福島第一原発の事故について、発生するすべての費用は東京電力が負担しなければならないとするものです。
もう一つは国から受け取った財政援助金をできるだけ早く返済できるよう、経費節減やリストラによって一日も早く利益を確保できる体制を再構築せよというものです。
しかし実際には、福島第一原発が引き起こしたあらゆる被害について、東京電力一社で弁済することなど、到底できそうにはありません。
今年始め、下河辺和彦(しもこうべ かずひこ)取締役会長は東京電力の債務超過が、切迫した状況にあり、このままでは一時国有化の策も失敗に終わる可能性があると警告しました。
国と東京電力は事故収束作業開始当時、その費用総額は1兆円程度と見積もっていました。
ところが東京電力が支払った費用はすでに3兆円を支払っており、事故収束・廃炉作業の終了までには少なくともその5倍の費用が掛かるものと見られています。
そのためには来年2014年3月までに、東京電力に対しさらに1兆600億円の資金注入が必要になります。
これだけはもう避けることが出来ません。
▽ 不足する現金
はっきり言えることは、東京電力にはこれらすべての費用をまかなうだけの現金は無いという事です。
そしてここにきて福島第一原発では、汚染水問題を始めとする放射性物質の漏出の範囲が拡大しつつあり、政府としても東京電力の資金不足を認めざるを得ないだろうというのが大方の見方です。
安倍晋三首相は経済産業省に対し、福島第一原発の汚染水問題の解決に直接乗り出すよう指示せざるを得なくなりました。
結局国民が支払った税金からまず400億円というお金が、福島第一原発の事故処理の序章とも言うべき部分で使われることになりました。
東京電力はこの資金で原子炉建屋付近の土壌を凍結させて地下水が入り込まないようにし、これ以上汚染水が生み出されないようにする対策を実施する予定です。
しかしこの対策はこれまで一度も試されたことはありません。
しかしこの対策はきわめて高くつきます。
年間を通して地中を凍結させておくためには、莫大な電気を送り続けなければなりません。
維持費用がきわめて高額に上る恐れがあるのです。
▽ 汚染され続ける地下水
今回政府が400億円という多額の追加援助をせざるを得なくなった事で、東京電力に福島第一原発の現場の事故収束能力があるのかどうか、その点が改めて問われることになりました。
ある専門家は、今年の始め、ネズミが配電盤内で感電死したことにより停電が起き、原子炉の冷却装置が作動しなくなったトラブルについて、改めて指摘しました。
また、汚染水の漏出を止めることが出来ない、この点こそ東京電力には福島第一原発の事故を収束させる、その能力が無いことを証拠づけるものだという指摘もあります。
東京電力が地下に築いた防護壁は、地下水の水位の上昇を招く結果に終わりました。
東京電力の尾野昌之原子力・立地本部長代理は汚染水漏出について、現在制御できない状況にある事を認めました。
汚染水の容量の増加は非常に早く、このままでは汚染水を太平洋に流し込む以外、対応のしようが無くなる可能性があります。
「状況はすでに、東京電力の対応能力を超えてしまっているのです。」
かつて原子炉設計に携わった工学博士の後藤政志氏が、こう語りました。
東京電力は一企業としてできることはやって来ましたが、その事と福島第一原発の事故の完全解決とは全く別の次元の問題だったのです。
http://www.dw.de/tepco-unable-to-foot-the-fukushima-bill/a-17017060
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ニューヨークタイムズの記事にありました( http://kobajun.biz/?p=13119 )が、日本の原子力行政は
「福島第一原発の事故収束作業すら、日本の原子力ムラの勝手にさせ、一層自体を悪化させてしまった」
挙句、そのツケを国民に押し付けてきたことになります。
福島第一原発の事故について彼らが『反省』など一切していないことが、この一事によっても解ろうというものです。
結局、巨額に上る福島第一原発の事故収束・廃炉作業の費用が私たち一人一人の肩にのしかかってきますが、それを支払ったからと言って福島第一原発の事故の収束が図られる保証は無いのです。
ガーディアンに掲載された
「現状を見る限り、福島第一原発の事故は永遠に続くように思える( http://kobajun.biz/?p=13292 )」
その言葉が、今、私たち日本人に重くのしかかってきます。
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【『武力による解決』が人々にもたらしたもの 】
アメリカNBCニュース 8月21日
(写真をクリックすれば、大きな画像をご覧いただけます)
ダマスカス近郊に臨時に設けられたモスクの中に横たえられた子供たちの死体。市民活動家によれば、バシャール・アル・アサド率いるシリア政府軍が使用した神経ガスの犠牲になってしまったものです。(写真上)。
8月21日水曜日、シリアの首都ダマスカス近郊のドゥーマー付近、アサド政権の政府軍が使用した神経ガスによって死亡したものとみられる犠牲者の遺体の中から、幼い子供の遺体を抱き上げる男性。(写真下・以下同じ)
8月20日、シリアを逃れ、イラクとの国境をめざす難民たち。
ダマスカス近郊アルタルの破壊された民家の中で銃を構える、反政府軍の兵士。8月19日。
ホムス市内の歴史的にも古い、市場の屋根に開いた無数の銃弾の跡。8月19日。
アレッポ市内ブスタン・アルカスル地区で、政府軍の砲撃により崩壊した建物の中から生存者を探す人々、8月16日。
アレッポ市内ブスタン・アルカスル地区で、政府軍の砲撃により崩壊した建物の中から助けだされた少女、8月16日。