ホーム » エッセイ » なぜ日本は今、軍事力の増強を急ぐのか?
自衛隊は北東アジアをはるかに超えた世界をその視野に収めるという意図を持つに至った
自衛隊の海外派遣が日本製武器売却を含めた経済連携を強める結果につながれば、日本とってますます好都合
ブラッド・レンドン / アメリカCNNニュース 2018年10月16日
10月16日日曜日、戦車が走り過ぎ兵士たちが整然と行進する様を見て、アナリストたちは次のように分析しました。
日本の政権が自衛隊を名実ともに増強させるためキャンペーンの一環に他ならないと…
最新のF-35ステルス戦闘機を含むジェット戦闘機が上空を飛び、地上を戦闘車両がパレードする中、安倍首相は4,000人の自衛隊員を前に日本は防衛協力関係を欧州まで拡大すべきだと訴えました。
安倍首相は埼玉県朝霞市で毎年開催される自衛隊の観閲式に参列し、次のように演説しました。
「自衛隊は米国、英国、オーストラリア、カナダ、ニュージーランドなどの同盟国と協力し、警戒と監視活動に取り組んでいる。」
今年、日本の自衛隊は日本列島から数千マイル離れた場所にまでその存在を知らしめることになりましたが、専門家によればそれは中国に対する明確なメッセージです。
「アジア太平洋地区において覇権を確立したいという中国の野心は、結果として日本に最も大きな影響を及ぼすことになります。」
ランド・コーポレーションの国防問題担当アナリストであるティモシー・ヒース氏がこのように語りました。
「緊急時に中国の軍事行動を阻止できるだけの軍事能力を確保すること、そして中国のパワーに対抗するため同盟各国の政治的能力、軍事能力的のバランスを取ることに日本政府の関心が向いています。」
過去2ヶ月間、2万7000トンのヘリコプター駆逐艦JS加賀を含む3隻の海上自衛隊の戦闘艦が訓練のため、遠くインド洋まで派遣され、合わせて港湾への訪問も行っています。
その中で、日本の潜水艦が参加しての南シナ海における対潜水艦戦闘訓練も行われました。
紛争が懸念される海域での訓練で日本が潜水艦を使用したことを認めたのは戦後初めてのことです。
その潜水艦はその後、南シナ海において中国と領有権をめぐって争い、米国との友好的な軍事関係を発展させているベトナムの港湾施設を表敬訪問しました。
一方、日本の海上自衛隊の海洋行動にはインド洋での英国フリゲート艦との共同訓練に加え、インド、スリランカ、シンガポール、フィリピンへの表敬訪問が含まれていました。
さらに今月初め、日本の水陸両用強襲車両が第二次世界大戦以降初めて海外でアメリカ軍、フィリピン軍と共同で南シナ海からルソン島への上陸訓練の協同演習に参加しました。
「これで日本の自衛隊が北東アジアをはるかに超えた世界をその視界に収めるという意図を持つに至ったことが、はっきりしました。」
ベルリンのフリーエ大学(Freie University)の安全保障問題の専門家であるコーリー・ウォレス(Corey Wallace)氏がこう語りました。
「日本は中国に対し、アジア全域で何か不測の事態が初生すれば、米軍が直ちに対応できなくとも、日本の自衛隊の存在を無視することはできないぞ、というシグナルを送っているのです。」
▽ 憲法上の制限
米国は第二次世界大戦の終結以降、日本国内に約5万人の米軍兵士を駐留させ、日本の防衛の要としてきました。
日本の戦後憲法は軍隊(現状では自衛隊)の役割について国土の防衛にのみ限定し、「陸、海、空軍、その他の戦力を保持しない」と明示しています。
しかし日本の自衛隊は世界で5番目の軍事力を有し、長年北朝鮮と中国を仮想敵国に設定し、その軍事力の台頭に合わせ増強が図られてきました。
安倍首相はこの点を強調し、日本が正規軍を保有することを憲法上に明記するとして2020年の憲法改定を目指しています。
「過去5年間で、日本の安全保障環境はますます厳しい状況に置かれるようになってきている。」
安倍首相は10月16日日曜日の式典でこう演説しました。
8月に公表された日本の防衛白書は、安全保障環境の変化の中で特に中国の脅威に対する懸念を強調しました。
「中国の人民解放軍の近代化、運営能力の向上、日本近海における活動の一方的拡大は、日本を含めアジア地区や国際社会における安全保障上の懸念を強めている」
と述べています。
また日本の航空自衛隊が2018年上半期、中国軍用機の行動に対しスクランブル(戦闘機の緊急発進)を行った回数は、前年同期と比べ20%増加したとも述べています。
▽ アジア太平洋地区の軍主力を目指す
元オーストラリア軍将校でグリフィス・アジア研究所(Griffith Asia Institute)の研究員を務めるピーター・レイトン(Peter Layton)氏は、日本は英国、オーストラリア、インドなどの国々との協同演習を拡大することにより、「世界各国の心情的同盟関係の形成」に力を注いでいるいると語りました。
「このような関係は中国共産党の指導部に対し、その軍事的台頭に対し世界各国が警戒感を大きくしているという認識を強めさせることが主な目的です。ですから、日英、日豪、日印などの関係が同盟というほど強くなくとも、そして緊急事態に直ちに対応できるものである必要はないのです。」
「しかしこうした国々は有事の際、本当に日本を援護してくれるでしょうか?ここではっきりしたことは言えませんが、ある程度は中国の懸念を拡大させることができるかもしれません。」
(写真)2018年9月26日東シナ海と日本海上で定期訓練飛行を行うアメリカ空軍B-52Hストラトフォートレス爆撃機と日本の航空自衛隊F-15とF-2戦闘機。
軍事専門家は中国の軍事的台頭を相殺するという概念が最も重要だと語っています。
8月の防衛白書によると、2015年4月から2018年6月まで自衛隊は公式に発表された軍事演習を66回実施しましたが、これはそれ以前の3年間の53回よりも明らかに増えています。
しかしさらなる日本の軍事力の強化が進められる可能性があります。
昨年オーストラリアのABCニュースとのインタビューで、河野太郎外相は日本とオーストラリアが協同で南シナ海の監視活動を行うことは可能だと語っています。
オーストラリアの首脳との会談の後、河野氏は次のように述べました。
「南シナ海は非常に懸念される地域であることは明らかであり、私たちはこれから共同でできることを検討することになります。」
軍事専門家は日本から遠く離れた場所での演習にはもう一つ別の目的があると指摘しています。
日本製の最新鋭の武器のデモンストレーションです。
(写真)共同演習を行うアメリカ海軍ミサイル巡洋艦USSアンティエタムとミサイル駆逐艦USSミリオス、海上自衛隊ヘリコプター空母加賀、駆逐艦いなずまとすずつき。
「派遣された自衛隊の部隊が、武器の売却を視野に入れた経済連携を強める結果につながれば、日本とってはますます好都合なのです。」
レイトン氏がこう語りました。
「経済連携と武器売却事業は、日本がアジア太平洋地区の国々との長期的かつ強固な関係を作り上げるのに役立ちます。」
「自衛隊の海外派遣はアジア太平洋地区の安全保障政策と武器売却事業のどちらか一方だけが目的ではありません。両者は絡み合っており、どちらの側面も軍事力増強による戦争抑止政策を成功させるために欠かせないのです。」
https://edition.cnn.com/2018/10/15/asia/japan-military-visibility-intl/index.html
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この記事を翻訳していて気がついたのは、今日本国内でアベ政治を後押ししている『闇の勢力』の目的とは、日本にも軍産複合体を作り上げることではないか、ということです。
10年以上が経った後、アメリカのイラク戦争は『一方的な正義の行使』たったという評価が大勢を占めるようになりました。
では何のため一方的に力を行使したのでしょうか?
現在のイラクの首都バグダッド市内にはアメリカ企業の看板が林立しているということです。
それから考えれば、石油で潤うイラク経済の利権をアメリカが抑えてしまうことが目的たったのではないでしょうか?
でももう一つあるようです。
私の手元にはイラク戦争のドキュメンタリー映像がありますが、米軍のアパッチヘリを始めとする空爆部隊がイラクのT55、T60などの旧ソビエト製戦車を主力とする地上部隊を殲滅した記録が残されています。
一度書いたことがありますが、それは『屠殺』あるいは『虐殺』に近いものでした。
当然世界の軍事関係者はもっと詳細に検証しているでしょうが、得た結論は米国製アパッチヘリを自軍に配備することは『must』だと思ったでしょう。
意図的かどうかは知りませんが、アメリカはイラクの生きた人間たちを一方的に『屠殺』したことで、アメリカ製兵器の『優秀さ』を衝撃と共に世界に印象付けました。
セールス活動の一環だとしたらこれほど非道なビジネスはありません。
今回翻訳した記事では後半に、日本がそのアメリカの真似をしようとしている姿が浮かび上がってきます。
もちろん日本の軍産複合体はアメリカの軍産複合体と住み分けをするのでしょうが(でなければ非業の死を押し付けられるに違いありません。ケネディ兄弟、キング牧師、ジョン・レノンのように)、どちらにしても『死の商人』です。
そういえば安倍首相の祖父は大日本帝国が太平洋戦争を遂行していた時の農商務大臣であり、軍需物資の調達を一手に引き受けていたと言います。(http://kobajun.chips.jp/?p=8287)
当時の日本の軍産複合体と切っても切れない間柄であったことは容易に想像できます。
その時にできた関係は太平洋戦争の終了と共に、全て消滅したのでしょうか?
自衛隊を憲法に明記するのは、現在の軍事予算の上限を取り払うことも目的の一つでしょう。
それによって今以上に国家予算を軍備に振り向けることが可能になります。
次はその装備のオペレーターの調達です。
大量の武器には操作する人間が大量に必要になります。
そして敵地を最終的に『制圧』するためには、多数の歩兵が必要になります。
今ですら1年中隊員を募集しているのが自衛隊です。
『自衛隊の憲法明記』は徴兵制に大義名分を与えることになるでしょう。
『日本兵』が赤道近くのジャングルの中や砂漠を彷徨う日々が、再び現実になるかもしれません。