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【 戦前の亡霊たちの復活 : 物言わぬ羊であるべき日本国民、監視されることを許さない日本政府の官僚 】《前篇》[エコノミスト]

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所要時間 約 7分

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なぜ戦後日本で『戦前の体制』が、少しずつ少しずつ復活を続けているのか?
明治維新、太平洋戦争の終結、その都度日本の支配者はほんとうに変わったのか?
日本の大手メディアの特徴は既存の権威・秩序の維持にきわめて協力的である事、疑問を呈することはしない

エコノミスト 1月10日

Japan
日本における歴史分析は、時代と時代の断絶を強調し過ぎているかもしれません。

19世紀中頃には、鎖国という極端に内向きな体制を守って来た徳川将軍家が権力の座から滑り落ち、代わって、天皇家が『王政復古』により日本の支配者として立つことになりました。
それから4分の3世紀あまりを経た第二次世界大戦後、日本はアメリカ合衆国に降伏し、その占領政策に服することになりました。
やがて日本の戦後経済は「奇跡的」復活を果たし、国民の収入は10年ごとに倍になっていきました。

そして時代と時代との間に明確な一線を引こうとする最新の動きは、1980年代後半にバブルが崩壊した後、あらゆる分野で停滞が続いている社会を改革し、日本を再び成長軌道に乗せると宣伝を繰り返している安倍晋三首相が現在行っている取り組みです。

これとは対照的に、日本の病患とは一体何であるかを解明するのに洞察力に満ちた分析を行っているのが、元投資銀行の役員であり、現在は筑波大学でビジネス学の教鞭をとるタガート・マーフィー教授であり、彼は日本の歴史の連続性に着目しています。

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そのいくつかは、非常に興味深いものです。
日本を訪れた海外からの訪問者は、バーテンダーからビジネスの取引相手に到るすべての日本人から、手厚い心遣いともてなしを楽しむ機会を与えられることになります。
そして、たとえそれが社会的に最も低い類いの職業であっても、日本人が最高品質の職務遂行に励む姿に衝撃を受けることになります。
また社会生活、公共生活における明快な予見性は、日本の各都市を地球上で最も安全な場所にしています。
そしてそれぞれの場におけるコンセンサスの成立を強く求める日本人の特質は、日常生活の中では束縛されることが多く、サラリーマンとして過ごさなければならない時間が長きに渡ったとしても、戦後の驚異的成功を可能にした基盤形成に大いに役立ったことは間違いありません。

今日の社会においてさえ、『日本文化』は人々を組織化していくとき、そして社会をまとめていく上で極めて重要な役割を演じ続けています。

2011年3月11日に日本を襲った巨大地震、巨大津波、そして福島第一原発の3基の原子炉でメルトダウンが起きるという壊滅的な三重災害は言うまでもなく、20年も続いている停滞状況を黙って耐え続けるという不屈の精神を維持し続けることは、他の国々においては容易に成し遂げられる事ではないのです。

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この日本社会で見られる均一的な人々の対応について、マーフィー教授はそのルーツを徳川幕府が日本を支配していた時代に求めました。
この時代、常に刀を持ち歩いていたサムライたちは、些細な落ち度であってもその場で相手に制裁を加える、切捨て御免の権利を与えられていました。

今日の日本社会において、人々はその場その場でいちいちどのようなしきたりを守らなければならないかを説明してもらう必要はありません。
日本の人々はその場の『空気を読む』べきことを、ごく当然のこととして理解しています。

結果、日本は社会が矛盾を抱えていてもそれを問題として表に出さないことができますが、これは他の国ではほぼ不可能です。

日本社会の観察を続けてきた一人、カレル・ウォルファーレンはこれを「理想を求めず現実に順応する」特性と呼びました。

組織内において役に立たない人間が、無能であることを理由にクビになることはありません。
周囲の人々は、彼が行った仕事の中身をもう一度見直せばよいのだという事を知っています。

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ビジネス界の一匹狼が公然と攻撃されることもありませんでした。
彼らは自分たちがブランドとしての名声を確立するまで、新しいテクノロジーに対する融資を取りつけたり、その技術が採用されるまで苦労しなければならないだけです。

日本の大手メディアは自分たちの使命は既存の権威・秩序を維持することだと考えており、疑問を持つことだとは考えていません。
それに代って社会的矛盾を突くのは漫画コミックの役割であり、社会秩序を破壊する程ではなくとも、時に性的にも生き生きとしてほとばしるような魅力にあふれ、中には世界的な大ヒット作になった漫画コミックやアニメ映画が多数存在します。

国が明らかに間違っている進路を変更する必要があるとき、何としても均一性を保たなければならないとする姿勢は逆に障害になります。

戦後日本の成長を支えた経済モデルがもはや通用しないことは、もはや国民の誰もが理解していることです。
企業収益もすべての社員の終身雇用を保証できる程確実なものではなくなりました。
そして若い女性たちは伝統社会に根付いてきた日本的な妻がこなさなければならない骨折り仕事と向き合うよりは、性的なストライキをしてでも自分の立場を大切にするようになり、日本の出生率は史上最低にまで落ち込んでしまいました。

〈 後篇に続く 〉

http://www.economist.com/news/books-and-arts/21638094-despite-shifts-past-century-and-half-japan-still-trapped-its-past?zid=306&ah=1b164dbd43b0cb27ba0d4c3b12a5e227
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この記事、前篇はそれ程ではありませんが、後篇は非常に衝撃的です。
結論から言って前篇を一気に掲載しようかとも思いましたが、やはり長すぎるので前後篇に分けさせていただきました。
私たちが民主国家だと思ってきた日本、そして世界。
特定秘密保護法も、憲法第9条の解釈の変更も、原発再稼働も、何ゆえ国民の意思が無視されて一方的に進められてしまうのか…

この記事の原題は『 In the Air 』というもので、そのまま訳せば何となく漂ってくる雰囲気、空気というもので、戦前の軍国手記的風潮と、その場の空気を読むという場合の空気をかけているのだと思います。
しかしそれではパッと見、意味が伝わらないので題名をどうするか、ずいぶんと迷いました。
この日本を支配しているもの、後篇でその正体をご確認ください。

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