ホーム » エッセイ » 【 民意とは逆の安倍政権の選択、承認された日本の原子力産業の復活 】NYT
強力な政治的影響力を持つ原子力産業界との結びつきが強い安倍政権が、原子力発電の安全性について公平な判断ができるのか
原子力規制委員会が安全性を認めた背景にある、安倍政権の強力な政治的圧力
安倍首相は大企業の擁護者、日本経済の立て直しに原子力発電の再開は不可欠との方針
国民の意向を完全に無視し、自分たちがやりたいことだけを押し通す安倍政権
マーティン・ファクラー / ニューヨークタイムズ 9月10日
福島第一原子力発電所の事故が発生してから3年6カ月、日本の新たな原子力監督機関である原子力規制委員会は一か所の原子力発電所の安全性が確認されたとして、9月10日再稼働を承認する旨の発表を行いました。
これは福島の事故後長く停止していた日本の原子力産業界を、再び動かすための第一歩となるものであるとの見方が広がっています。
福島第一原発の事故後初めて再稼働が承認されたのは九州電力・川内原発の2基の原子炉で、承認したのは日本の原子力行政に対する信頼を回復するために2年前に原子力安全・保安院に代わって設立された原子力規制委員会です。
福島第一原発の3機の原子炉がメルトダウンを起こした事故は、地震が多発する日本の国土における原子力発電の安全性に対し、国民が深刻な疑問を持つきっかけになり、以後国内の48基の稼働が可能な商業用原子炉すべてが停止することになったのです。
しかし承認を得ても、実際に川内原発の2基の原子炉が稼働を始めるには少なくとも数か月かかると見られています。
川内原発を運営する九州電力社はこの後さらに詳細な安全性に関する検査を受けた後、周辺地方自治体の同意を得なければなりません。
地方紙各紙の報道によれば、最終的には12月の日本政府の首相の判断により再稼働が行われる見込みとなりました。
今回、新たな監査機関である原子力規制委員会が安全性を認めた背景には、安倍政権による強力な政治的な圧力がありました。
安倍首相は日本国内の大企業の擁護者であり、長く停滞が続いている日本経済の立て直しには原子力発電の再開が不可欠であるとの考えの下、再稼働政策を推進しています。
安倍首相は何よりまず、貿易赤字の拡大に終止符を打ちたいと考えています。
安倍政権は拡大を続ける貿易赤字については、国内の原子力発電の停止により電力用の輸入燃料が増加しているためと考えているからです。
しかし世論調査の結果は、安倍政権の与党である自民党が強力な政治的影響力を持つ原子力産業界との結びつきがもともと強く、その政権が原子力発電の安全性について公平な判断ができるかどうか、国民が極めて懐疑的であることを示しました。
こうした国民の意向は、今年7月に原子力規制委員会が九州電力・川内原発の安全性について基本的に承認した後、約一カ月に渡り一般国民からの意見を公募した際に具体的な形となって現れました。
同委員会は予想を上回る17,800件の意見が寄せられたことを明らかにしました。
多くの意見が活火山地帯に建設された川内原発の安全性について、深刻な懸念を表明するものでした。
しかし原子力規制委員会は7月に公表した審査結果にほとんど修正を加えることなく、7月の報告書をそのまま採択したのです。
原子力規制委員会九州電力自身が行った川内原発に関する詳細な検証結果を受領、18,600ページに上るその報告書を詳細に検討した結果、安全であるとの決定を見たとしています。
原子炉とその他施設の設計、構造、そして非常事態が発生した際の対応プランが、昨年7月に採用された新しい安全基準に適合したものと判断されたのです。
取材に対し、原子力規制委員会の大島賢三委員が次のように答えました。
「一般からの公募意見の件数が膨大な数に昇ったのは、何より国民が原子炉の再稼働と安全性に極めて敏感になっていることを反映したものだと考えています。」
「それに加え、福島第一原発の事故を教訓に原子力発電所の安全性を一層高めてほしいという強い要望をも反映していると考えます。」
原子力行政にたずさわる政府官僚は、新たな安全基準について『世界で最も厳しい』という表現を用いることにより、国民の懸念を払しょくしようと努めてきました。
いわく巨大地震と巨大津波が原子力発電所の重要な設備である原子炉冷却システムを破壊した教訓を、可能な限り生かしたものだと。
再稼働に範たちの立場の人々は、原子力規制委員会が一般国民の間に高まっている懸念を無視していると批判しました。
福島第一原発の事故を受け、政治的思惑などから独立した公平な管理監督を行うようにとの国民の強い要望のもとに生まれた原子力規制委員会のはずでしたが、今や増々めくら判的様相を帯びてきたと嘆いています。
「明らかに原子力規制委員会に対しては、安倍政権の強力な政治的圧力がありました。」
こう語るのは鹿児島大学で国際関係論、平和研究を専門とする木村朗(あきら)教授です。
木村教授も川内原発の再稼働に反対するための運動に取り組んできた一人です。
「現在の政府は国民の意向を完全に無視し、自分たちのはかりごとのみをごり押ししているのです。」
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社会正義に敵する政治的不正義、そういうものがあるとしたら現政権による再稼働はまさにそれにあたるのではないでしょうか?