ホーム » エッセイ » 【 福島発 : 新しい反人種差別ムーヴメント 】《2》
言葉による暴力を浴びせ、小中学生にまでいたたまれない思いをさせる虐待行動を繰り返した日本の人種差別主義者
日本国内で散発するヘイトスピーチのような非人道的行為は、絶対に止めさせる必要がある
ビビアン・ショー / アルジャジーラ 2017年3月12日
▽ 韓国朝鮮人と他の少数民族を支援する動き
2013年2月目前に脅威が迫っていることを痛感した野間泰道氏は、ツイッターである訴えを展開し始めました。
国家主義者のグループであり、在日韓国朝鮮人が特権を享受しているとして排撃を企てるグループ『在特会』が東京都内で在日韓国朝鮮人が数多く暮らしていた新大久保でデモ行進を行ったのです。
東京以外でも大阪の鶴橋や多文化的な特徴を持つ川崎地区の桜本など、韓国朝鮮人が数多く居住活動している場所を狙い撃ちし始めたのです。
在特会が攻撃目標としたのは日本国内の外国籍居住者としては最も多い在日韓国人です。
彼らは国籍こそ持ちませんが、第二次世界大戦(太平洋戦争)以前に朝鮮半島から強制移住させられた人々の子孫で数世代に渡って日本で暮らしている人々から、K-ポップや韓国料理を日本市場に供給するため韓国からやってきた『新顔』まで、その背景は様々です。
野間氏が訴えたのは人種差別主義者に対し、立ち上がって行動することでした。
2006年に創立された在特会は以前、2009年に14歳のフィリピンの少女を標的にした攻撃を行ったこともありました。
彼女の両親はビザの滞留期限を過ぎて日本に不法滞在したかどで国外追放となりましたが、その後在特会は少女を国外追放にするよう要求し、彼女の自宅や学校の周囲で示威活動を繰り返しました。
そして京都府内の小学校の周辺で在特会は韓国朝鮮系の子どもたちを「スパイの子供たち」と呼び、キムチの「においがする」などと言葉による暴力を浴びせ、小学生や中学生にまでいたたまれない思いをさせるという虐待行動を繰り返したのです。
▽ 外国人を排斥・迫害する政治へ道を開いた3.11
東日本大震災と福島第一原発の事故の結果、日本では政治的混沌と社会不安が拡大し、外国人の排斥を主張し、混沌や不安の責任を彼らに転嫁する在特会などのグループの勢力の伸長を許すことになりました。
極右の思想を持つインターネットユーザーは2チャンネルなどを使ってパニックを煽りました。
2017年になっても、極右系のウェブサイトは毎日100万件の新しい投稿があることを自慢しています。
そして在日韓国朝鮮人が日本の福祉制度を悪用していると訴え、日本国内で行われている大規模な原子力発電への反対運動が『本当の日本人』が行なっているのではなく、外国人の扇動家たちが煽っているのだという噂をまき散らしました。
彼らは東アジア地区で高まっている外交的な緊張も利用しながら、1923年関東大震災の際に強制的に徴用されていた朝鮮人が暴動を起こすというデマが流され、首都圏で6,000人の朝鮮人が虐殺された過去の事件を彷彿とさせる社会不安を巻き起こすことになったのです。
TwitNoNukesの中心メンバー、何人かのアーティストとデザイナーと一緒に、野間さんは『しばき隊』を結成しました。
この招待者のみのすべて男性メンバーの「隊」結成のヒントとなったのは、過去に実績のあった国境を越えて結成されたパンク・ミュージシャンによるAntifa運動(Anti-fascism : アンチ・ファシズム)でした。
在特会は東京の新大久保地区の韓国系商店やその経営者に対しても威嚇行動や嫌がらせを行っていますが、『しばき隊』は商店主や住民を守るために敢えてその攻撃にさらされる場に自分たちの身を置く、犠牲的精神を発揮しました。
「私たちは、怒りをエネルギーにしています。」
ある日昼下がり、たばこの煙型が漂う喫茶店の中で野間氏がこう語りました。
こうした哲学を導き出したものは、心の奥深く脈打つ抵抗精神と自ら体を動かすことによって生まれて来る行動への衝動、その両方です。
しばき隊の行動原理は男らしいスタイル、そして体面ばかりを気にする日本の政治への抵抗姿勢が見られますが、怒りと義憤を基本に据えた戦術は、一方では保守派と革新派の双方から反発を受ける結果になりました。
既存の政治勢力からの批判にさらされながらもしばき隊の存在は、人種差別を批判してその誤りを正そうとする運動を盛り上げる原動力の一つとなりました。
そして漫画やアニメによって人種差別主義者と対決するグループ、オタク・オブ・アンティファ(反ファシズム)などを掩護する役割も担い、『おとこ組』など人種差別主義に対し直接行動を起こす組織結成の起爆剤の役割も果たすことになったのです。
人種差別主義と戦う活動家のひとり、サバ子さんは抗議行動に初めて参加した時の体験について『唖然とさせられる』ものだったと語りました。
サバ子さんは進歩的な家庭で成長し、差別の問題にも強い関心を寄せてきましたが、自分の目と耳でヘイトスピーチを目撃した時には大きな衝撃受けました。
当時の在特会は現在と比べさらにひどい内容だったと語りました。
サバ子さんは悪名高い在特会のスローガンについてひとつひとつ説明してくれました。
「韓国人を叩きだせ!」
「死ね!」
「殺せ!」
さらには韓国朝鮮人を「ゴキブリ」「ウジ虫」と呼んでいることについて…
「私は、心の底から怒りました。」
サバ子さんがこう語りました。
「私たちの多くが、特に女性は自分たちが感じた衝撃と恐怖について話し合いました。しかし私自身の中では、問題はそこだけにはとどまりませんでした。」
「私は強烈ないらだちを感じました。そしてヘイトスピーチ運動に対する強い破壊衝動を覚えたのです。私たち日本人はこのような非人道的行為を絶対に止めさせなければなりません、私は日々その思いを新たにしています。」
-《3》へ続く -
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アメリカの黒人差別の歴史において、『プア・ホワイト』と呼ばれる白人の最下層が最も激しく黒人たちを攻撃したことが物語っているように、自分たちが社会の最下層かそれに近いという不安が大きければ大きい程、人種差別などという愚劣な行為に惹かれるのだと思います。
自分が置かれている立場を創意工夫と努力によって変えていく、それによって人間としての充実感を得るなどという事は嫌いなのでしょう。
それよりはてっとり早く他人を攻撃し、現実世界には存在しない自分のプライドを満足させたい、自分の下を作りたい、それが人種差別だと私は考えています。
こういう行為を、日本語では『卑怯』というのではないでしょうか?
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