ホーム » エッセイ » 【 米国の東芝ゲンパツ事業の崩壊に続き、英国の展望も瓦解 】《前篇》
莫大な額の予算超過に加え、『人』の問題がどんどん深刻化する原子力発電事業
経験を積んだ技術者の不在、部品のサプライチェーンの欠落がゲンパツ事業の未来を奪う
アダム・ヴォーン/ ガーディアン 2017年4月14日
2017年4月第2週、最早「健全な企業としての経営の継続」が困難に陥りつつあるという状況を東芝が表明させざるを得なくなった原因については、その実際の姿をアメリカ国内の小さな町の近くで目で確認することができます。
ジョージア州ウェイネスボロ郊外の原子力発電所で、そしてサウスカロライナ州ジェンキンズビルの原子力発電所で建設中の4基の原子炉です。
これらはいずれも日本の東芝本体が1兆円という一年間の欠損金額を計上しなければならなくなったアメリカの子会社、ウェスティングハウス社が建造しています。
いずれの原子炉もすでに建造予算を大幅に超過した上、完成時期も大きく遅れてしまい、アメリカ国内で建設が進む原子力発電所の中でも、とりわけ深刻な状況を浮かび上がらせることになりました。
そして東芝の損失額を一定範囲内に留めるため今年3月、ウェスティングハウス社がアリカ連邦法に基づく破産申請を行うに至り、破滅的状況は一気に頂点に登りつめることになったのです。
ジョージア州ウェイネスボロとサウスカロライナ州ジェンキンズビルの原子力発電所においてウェスティングハウス社が演じた致命的な失敗は、原子力発電所建設プログラムに乗り出そうとしている英国にまで深刻な波紋を広げることになりました。
専門家は著しい工期の遅れと、巨額に上る予算超過の問題を作りだしたのは、アメリカ国内において原子力発電所を建設する経験が極端に減少しているという事実だと専門家が指摘しました。
これについてコロンビア大学世界エネルギー政策研究所のリチャード・ネプヒュウ教授がこう語りました。
「私は今回のトラブルの原因を作ったものは、アメリカの原子炉製造技術と言うよりは、むしろ最近の経験不足によるものだと考えています。」
「アメリカ国内ではもう、技術やスキルの水準を維持するために必要なだけの原子炉建造が行なわれていません。こうした問題が原子力産業界全体における熟練技術者の減少に歯止めをかけられなくなった原因であることに、疑いをさしはさむ余地はありません。」
そしてウェスティングハウスの原子力発電所建設プログラムがもはや原子炉製造の分野で主流ではなくなたっことにより、
主流ではなくなったことにより、部品や部材を調達できなくなったことも原因の一つだと付け加えました。
さらには原子力発電の安全管理基準が厳しくなったことも、全体の工期の遅れの問題を一層深刻なものにしたのです。
巨額に上る東芝の損失は原子力事業の子会社のウェスティングハウスが、2015年原子力発電所建設事業を行うCB&Iストーン・ウェブスター社を買収し、2か所の原子力発電所建設事業の建設の遅れを取り戻そうとしたことが引き金になりました。
CB&Iストーン・ウェブスターの買収はまったくの裏目、どころか予想もしなかった損失を生む原因を作りだしました。
そしてウェスティングハウスと親会社である東芝を財務面での崩壊の瀬戸際にまで追い込んだのです。
2か所のプロジェクトのうちのひとつ、ジョージア州ヴォグトゥル原子力発電所建設を管理監督している機関は、ウェスティングハウス社の破産は建設計画がなお一層多くの「時間と資金」を必要とする結果につながると語りました。
これに対しサウスカロライナ州ジェンキンズビル近郊でヴァージルC原子力発電所の建設を行ってきた電力会社は今週、ここに至っては原子力発電所の建設そのものを放棄することも考慮しなければならない選択肢の一つであると表明しました。
先述のコロンビア大学のネフュー教授は次のように語りました。
「今回の経験からアメリカは原子炉建設については、異なる選択肢を用意しなければならなくなったかもとれません。より小型のモジュラー型原子炉、あるいは複雑な設計を避けたものでないと、今後計画の実現は不可能かもしれません。」
米国エネルギー省のリック・ペリー長官は今週G7サミットで「民間の最新の原子力技術開発を支持する」とする声明を公表、トランプ政権が原子力発電を支持することを表明しました。
この声明ではウェスティングハウスが建設を進めている原子炉ではなく、いわゆる次世代原子炉の開発支援を提案しました。
「ウェスティングハウスと東芝に起きた問題が強調しているのは、例えば小型モジュラー原子炉のような新しい、安全な、原子力技術開発にこれまでとは比較にならない規模で取り組まなければならないという事です。米国がもしそれをしないなら、最新の原子力技術のリーダーシップは他の国の手に委ねられることになります。」
『他の国』の筆頭にいて新たな原子力技術開発に野心を燃やしているのが英国です。
英国政府はこれから数十年の間の国内の電力需要を賄うため、新世代の原子力発電所の建設を進めようとしているのです。
〈後篇に続く〉
https://www.theguardian.com/business/2017/apr/14/toshiba-us-nuclear-problems-uk-cautionary-tale
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【 流氷シーズン?…いや、漂流氷山シーズンです 】
AP通信 / アメリカNBCニュース 2017年4月20日
2017年4月16日カナダ、ニューファウンドランド島フェリーランド近く、南海岸の沖合、別名『氷山通路』に今年になって初めての氷山がやって来ました。
フェリーランドのエイドリアン・キャヴァナ市長は、今回流されたきた氷山を見て、
「私が知る限り、これまでにこの付近で目撃された中で最大級の大きさのものです。」
「それにこれ陸地に近づいたのも、初めて見ました。これなら誰でも記念写真を撮影できます。」
今シーズン、これまでにない程多くの氷山が北大西洋航路に流れ込んでいることが確認されています。
カナダ通信社は、2016年は9月下旬までに687個確認されているのに対し、今年は4月時点ですでに616個が確認されています。
ペンシルバニア州立大学の地球システム・サイエンス・センターのマイケル・マン所長は、気候変動が漂流氷山の多発につながっている可能性があると語りましたが、一方では風向きやその強さも関係がある可能性もあります。
http://www.nbcnews.com/news/world/ice-meet-you-newfoundland-sees-first-berg-season-n748616