ホーム » エッセイ » 【 日本政府に問題の解決能力はあるのか?福島第一原発の汚染水 】《前篇》[ドイツ国際放送]
介入規模はあまりに中途半端であり、そのタイミングはあまりに遅すぎた
福島第一原発ではいかなる有効な対策も打てなかった、と同時にあらゆる場所で状況をコントロールできなかった
ジュリアン・ライオール / ドイチェ・べレ(ドイツ国際放送) 9月4日
福島第一原発の事故収束・廃炉作業現場で次々と新たな問題が発生し、汚染水の漏出を止められなくなっている状況を受け、日本政府が直接その対応にあたることになりました。
しかし、その介入規模はあまりに中途半端であり、そのタイミングはあまりに遅すぎた。
早くもそうした批判が巻き起こっています。
日本政府は、3月11日に襲った巨大地震と巨大津波がきっかけとなり、3基の原子炉がメルトダウンを引き起こした福島第一原発で、溶け落ちた核燃料を冷却する過程で出来る汚染水の浄化と、汚染水の漏出を止める対策に4,710億円の国家予算を投入すると発表しました。
それと同時に安倍晋三首相は、東京電力によって今日まで行われてきた取り組みが、大局的見地から見て適切なものでは無かった事を認めました。
「これまで行われてきたその場その場の対応に代わって、私たちは福島第一原発の汚染水問題を根本的に解決するための対策を今日、まとめました。」
安倍首相は9月3日火曜日東京で、原子力災害対策本部のメンバーにこのように話しました。
「汚染水問題を含め、事故収束・廃炉作業を成し遂げることが出来るかどうか、今や福島第一原発の現場に世界の視線が集まっています。」
政府発表によれば、事故発生以来、毎日300トンの放射能汚染水が海洋中に漏出し続けています。
さらには東京電力は8月下旬、高濃度の汚染水を貯蔵している約1,000基のタンクの内の1基から、気づかないうちに300トンが漏れ出していたことを認めました。
▽ 今日まで繰り返された失敗
いちばん最近、問題となっているのは、9月2日月曜日に原子力規制委員会が公表した、福島第一原発内の放射線量が一番高いところで最大20%急激に上昇している、という問題です。
汚染水が漏れ出したタンクの近くでは、放射線量が人間を数時間で死亡させてしまうレベルである2,200ミリシーベルトに達しました。
汚染水漏れに対する日本政府の対策の鍵となるのは、原子炉建屋の周囲にドリルで30メートルの穴を開けて冷却剤を注入し、地面を零下40度に保ちます。
原子炉建屋周辺の土地を凍結させてしまうことにより、地下水の流れ込み汚染されてしまう事を防ぎ、そのまま迂回させて海に流し込むようにするのです。
さらには新しい水の浄化装置を設置し、2011年3月以降、貯まりに貯まった数万トンの汚染水の処理を進めることになっています。
この新たな試みは、これまでこれ程の規模で実施されたことは無く、仮に可能になったとして、期待通りの効果が得られるかどうか、その点にも懸念が残ります。
「この凍土策が現在最もふさわしい対策であるかどうか、私には判断がつきかねますが、これを機会に日本政府が福島第一原発の事故収束・廃炉作業の中心に座る、その取り掛かりを意味するものだと考えられます。」
世界最大の政治リスク専門コンサルティング会社として知られるユーラシアグループの奥村準氏がこう語りました。
「このことは結局、東京電力がこれまで福島第一原発において、いかなる有効な対策も打つことが出来なかった、と同時に施設内のいかなる場所においても、状況をコントロールしていることを日本の人々に対して約束できなかった。その事実が決定づけられた、そうとしか思えません。」
〈後篇に続く〉
http://www.dw.de/can-tokyo-stop-the-fukushima-crisis/a-17066352