ホーム » エッセイ » 【 行き場のない放射性核廃棄物の処理計画 – 中間貯蔵、最終処分、その実態 】〈前篇〉[フェアウィンズ]
高レベル放射性核廃棄物、そして高濃縮ウラン、プルトニウム、その世界の動きはどうなっている?
サウス・キャロライナ州サバンナ川最終処分場、世界的規模の核のゴミ捨て場、その実態と危険
ドイツ、イタリア、スウェーデン、ベルギー、カナダ…各国から高レベル放射性核廃棄物が集まる理由とは
フェアウィンズ・エネルギー・エデュケイション 2014年6月11日
米国エネルギー省(DOE)はドイツの使用済み核燃料のうち、高レベル放射性核廃棄物をサウス・キャロライナ州サバンナ川最終処分場(SRS)に受け入れるための交渉が最終段階に入っていることが報道により明らかになりました。
同省はプルトニウムが埋められる深さよりもさらに深い場所に、この事実を隠したままにしています。
アトランタ・プログレッシブ・ニュースがつかんだ事実は、この処分場(SRS)に廃棄物が送り込まれる、あるいはすでに送り込まれるためすでに発送の手続きがとられたのは、ドイツだけではなく、イタリア、スウェーデン、ベルギー、カナダと複数に上り、現段階では国名は明らかではありませんが、その数はさらに増える可能性があります。
アトランタ・プログレッシブ・ニュースは、サウス・キャロライナ州サバンナ川最終処分場周辺地区は年間を通して降雨量が多く、しかもアメリカ国内としては有数の地震発生エリアの中にあり、この場所に高レベル放射性核廃棄物を世界中から集めて大量に埋蔵処分することについては、周辺環境、特に水利面において深刻な懸念があると伝えています。
アメリカの原子力行政においては、長期に放射性核廃棄物を保管し続けるための具体的計画はありません。
ユッカ・マウンテンについては計画は棚上げにされ、ニューメキシコ州にある中間貯蔵施設については、新規の持ち込みが無期限に停止されたままになっています。
サバンナ川最終処分場(SRS)にはこれまで世界各国から密かに持ち込まれたプルトニウムが保管されており、SRSの監視を続ける民間団体が記者会見で明らかにしたところでは、すでに大量の高レベル放射性核廃棄物を貯蔵するタンク群に、今またカナダのシャルクリバー処分場から23,000リットルの液状高レベル放射性核廃棄物を受け入れるための準備が進められています。
2014年3月29日付けのオタワ・シチズンの記事によれば、サウスカロライナ州チャールストンを経由し、今年2月と3月の2階に渡って密かに海外からプルトニウムの積荷が持ち込まれと伝えています。
記事はPNTL(Pacific Nuclear Transport Ltd - 太平洋海上核輸送。アレバ・グループの核物質の海上輸送を専門とする英国籍企業)の太平洋航路の銃砲類輸送船が、高レベルの核物質を積んでイタリアを出港した後、カナダの海域でオンラインの海上追跡システムから消えたと伝えています。
( http://www.ottawacitizen.com/news/Covert+mission+Plutonium+source+might+Canada/9675369/story.html )
イタリアとベルギーは、プルトニウムと高濃縮ウランをサバンナ川最終処分場(SRS)に移送することをすでに公表しています。
オタワ・シチズンの報道が行われるちょうど数日前、イタリアとベルギー政府の声明が米国政府、ホワイトハウスのホームページに掲載されました。
( http://www.whitehouse.gov/the-press-office/2014/03/24/fact-sheet-italy-highly-enriched-uranium-and-plutonium-removals ,
http://www.whitehouse.gov/the-press-office/2014/03/24/fact-sheet-belgium-highly-enriched-uranium-and-plutonium-removals )
一方、ロイター通信他が伝えたところでは、日本が近々高濃縮ウランとプルトニウムを米国へ移送することになっていますが、その目的地は明らかにされていません。
しかしニューメキシコ州の中間貯蔵施設が現在受け入れを停止していることを考えれば、日本から移送される核物質がサバンナ川最終処分場(SRS)に持ち込まれると考えることはごく自然なことです。
( http://www.reuters.com/article/2014/03/24/nuclear-proliferation-idUSL5N0ML2MP20140324 )
2014年3月24日、25日の両日オランダのハーグで開催された国際安全保障会議における最優先課題は、世界に散在する危険な核物質をどのように減らすかというものでした。
その場で出た結論として、各国が所有する高濃縮ウランを本来の所有国に返還しなければならないという声明を発表したのです。
これはテロリストの標的となる可能性のある場所を、一か所でも減らすことが目的でした。
本来の所有国とはこの場合ほとんどがアメリカ合衆国の事であり、サミットの結果こうした核物質がアメリカ国内に『帰ってくる』ことが決定したのです。
ソウルでの2012年の核安全サミットの後、米国とスウェーデンは、スウェーデンから米国へのプルトニウムの移送が問題なく完了した事を発表しました。
ホワイトハウスの資料によればアメリカ政府は地球的規模脅威削減構想(Global Threat Reduction Initiative - GTRI)に基づき、各国に貸与等の形で存在するプルトニウムを引き上げる政策を進めることになっており、これはその最初の取り組みであるとしています。
さらには国内から永久に核物質を無くそうとする取り組みの、モデルケースともなり得るとしています。
そしてイタリアとベルギーがサバンナ川最終処分場(SRS)への高レベル放射性核廃棄物の移送を決定した事もまた、2014年の核安全サミットで話し合われたものと思われます。
米国エネルギー省の中でも強力な権限を持つ国家核安全保障庁(NNSA)は、各国に保管を委ねていた兵器級の核物質を回収し、今後はアメリカ国内での保管を行う必要があると主張しています。
しかしサバンナ川最終処分場(SRS)は、核兵器の不拡散について世界にアピールするため各国の高レベル放射性核廃棄物が集められつつあるという認識は持っていない、こう語るのはSRSの監視を行う民間団体の代表を務めるトム・クレメンツ氏です。
「彼らの主張はサバンナ川最終処分場に核廃棄物を集積することが、世界の核不拡散に貢献するというものです。しかしそれでは原子力発電所から排出された使用済み核燃料の処分について、具体的な計画を持たないドイツから高レベル核廃棄物が持ち込まれる理由を説明できません。」
「ドイツにとって、これは単にカネを支払って核廃棄物の処分を依頼するだけの話であるはずです。そしてサバンナ川最終処分場とっては、いわゆるHキャニオン再処理施設の運営のための資金を得るための手段に過ぎないのです。」
アトランタ・プログレッシブ・ニュースの取材に対し、クレメンツ氏がこう答えました。
〈後篇に続く〉
http://www.fairewinds.org/secretly-dumping-peoples-problems/