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[ 原発とは人類にとって何なのか、何だったのか?! 〈第10回〉]
1月26日 米国CNNニュース
福島県の避難区域の真ん中にたつと、不気味な静寂が支配している事に気づきます。
避難区域は事故を起こした福島第一原発の半径20kmの範囲内に設定され、高濃度の放射能に汚染されています。
3月12日、巨大地震と津波が襲った翌日、78,000人の人々がこの地から逃げ出さなければなりませんでした。
でもその時は2、3日模すれば帰れるだろう、という楽観的な気分が支配的でした。
そのつもりがあったため、飼い犬を庭に繋いだまま、飼い猫は家の中に置いたまま、そして家畜は家畜小屋に囲ったまま数千人の人々は避難していきました。
そして、一年近くが過ぎ、この地域には動物の死体が散乱する事になったのです。
牛や豚は囲いの中に入ったまま、骨になっています。
病死した犬の死体が打ち捨てられていました。
その近くの道路の上には、猫の頭蓋骨が落ちていました。
これらの死は、原子炉の事故がもたらした必然的な結果とも言えるかもしれませんが、動物愛護家たちの怒りは募るばかりです。
「恥ずべき事態です。」
ユナイテッド・ケンネルクラブ日本(UKC日本)の細やすのりさんが語りました。
「私たちは災害が起きた時から、動物たちも助けるよう政府に嘆願をしてきました。福島第一原発の事故の後、人々と動物たちの両方を助ける方法はあったはずです。」
日本の環境省がCNNに語った所では、日本政府としては可能な限り家畜・ペットなどを助ける、という方針であるという事です。
一方、飼い主などが避難区域に入って人々が被爆する危険を避けるため、政府としては動物たちの救助には慎重にならざるを得ない、とのことでした。
昨年の12月、政府はUKC日本を始めとする動物保護団体に、避難区域に入って生存する動物たちを救出する事を許可しました。
細さんも仲間とともに、ケージと食べ物を持って避難区域に出向きました。
救出活動は数日にわたり続けられましたが、ある日細さんたちのグループが一軒の家に近づいた時の事でした。
生まれて6週間にしかならない雌の子犬が、居間で血の海の中に倒れていました。子犬は病気で死んでしまったようです。
UKC日本のボランティアが、その家の裏手から弱々しい吠え声がするのに気がつきました。
死んでいた子犬の兄弟が2匹、この家の別の部屋で生き延びていたのです。
2匹の子犬たちはトラウマがあるのか、人間の姿を見てひどく怯えた様子を示し、救助に来た人々を怖がっていました。
幸いな事に、ボランティアはすぐに子犬たちの母親を捜し出し、子犬たちと一緒に助け出す事ができました。
こうして助け出された犬たちは現在、東京近郊のUKC日本が運営する避難所に収容されています。
この避難所では250匹の犬と100匹の猫が、窮屈なケージの中に収容されています。
寄付によって運営されているUKC日本は保護した動物たちの8割について、その飼い主を突き止めた、と語っています。
だからと言って動物たちが、飼い主の元に帰れるわけではありません。
避難所や仮設住宅では、ペットを飼う事は禁止されている、と細さんが語りました。
残念な事に、飼い主たち自身が家を失ってしまったため、動物たちが帰る場所が無くなってしまったのだ、と細さんがつけ加えました。