ホーム » エッセイ » 【 原発撤退の遅れ、それは国家的危機に直結する 】
フランス国立研究機関が警告、原子力業界の人材枯渇による危険増は避けられない
アメリカNBCニュース(フランス・トゥルヌミール) 4月23日
「熟練した技術者の引退が相次ぎ、若年の技術者が原子力発電という将来性の無い分野に進みたがらないことを考慮すれば、原子力発電からの撤退に時間をかけ過ぎること、あるいは撤退そのものをためらうことは、国家の将来にとってきわめて危険なものになり得る。」
フランス国立の原子安全研究所がこのように発表しました。
「もしフランスが原子力発電からの撤退を決定するのであれば、そのやり方はドイツを見習い、迅速にそれを決定・実行する必要がある。
仮にももし継続を決定するようなことになれば、将来原子力発電は、それを扱う能力・資格に欠ける人間たちによって運営されることになってしまう。」
フランスの国立研究機関である放射線防護・原子力安全研究所のシャック・レプサール所長がこう表明しました。
「原子力発電の廃止について、半世紀待つことはもう許されません。そんなことをしたら、大変危険なことになってしまいます。」
レプサール所長はこう語り、この技術力の急速な低下という問題があるからこそ、ドイツは迅速な原子力発電の廃止を決定し、それを実行しているのだと付け加えました。
フランス国内で58基の原子力発電所を運営する国営電力会社EDFは、これから大量の定年退職者を予定しており、2017-18年までに原子力発電の担当者の約半数が入れ替わることになります。
フランス社会党のフランソア・オランド大統領は国内の電力供給について、原子力発電の割合を現在の75%から50パーセントにまで低下させると語っていますが、それによってどのような状況が生み出されるのか、そこまでは明らかにしていません。
「もしこれからの10年間で原子力発電に将来性が無いことがはっきりすれば、大学に通っている若者の間では必然的に以下のような傾向がはっきりすることでしょう。
『そんな斜陽産業に就職するなんて、まっぴらだよ。』」
レプサール所長がロイター通信の取材に対し、こう答えました。
放射線防護・原子力安全研究所はフランス南部に拠点を構える、フランスの国立研究機関のひとつです。
原子力発電への依存率が世界で最も高いフランスですが、廃止の第一段階として政府は、東部のフェセンアイム原子力発電所を2016までに廃炉にすることを発表しています。
政府はEDFに対し、北西部のフラマンヴィーユに次世代型の原子力発電所の建設を許可する一方、ノルマンディー地方のパンリーにおける原子炉増設計画は白紙撤回されました。
2011年3月に発生した日本の福島第一原発の事故をきっかけに、ドイツ政府はその原子力政策を大きく転換し、2022年までにすべての原子炉を廃炉にすることを決定したのです。
▽ 想像以上の危険
「ドイツ政府の決定については批判もあり、いったいどうすればそれが成し遂げられるものなのか疑問もありました。
しかし結局は、ドイツ政府は賢明な選択をおこなったのです。
なぜなら稼働中の原子炉が減少していく中、原子炉メーカーにおいても、下請け会社においても熟練した人材の減少が続くことになり、それに反比例して危険が増大していくからです。現在は間違いのない部品を製造していても、将来は問題の多い部品を作る危険性があるのです。」
レプサール所長がこう語りました。
しかしフランス政府が検討しなければならないことは、原子炉に共通した欠陥が見つかった場合は、複数の原子炉を同時に緊急停止させる必要性が出てくることだと、レプサール所長が指摘しました。
この問題については、フランス原子力規制機関のピエール・フランク・シェヴ長官からも発言がありました。
フランスは同時に5基~10基の原子炉が同時に緊急停止した場合、不足する電力をどう供給するのか、予め対策を立てておく必要があるというものです。
「ある日突然、原子炉圧力容器の金属部分にひび割れを発見する日が来るでしょう。私たちは同世代の原子炉について、同様の問題が発生していないかどうか、ただちに調査を行わなければなりません。」
レプサール所長が指摘しました。
GDFスエズのベルギーの子会社であるエレクトラベル社は、この問題で2基の原子炉をそのまま廃炉にせざるを得なくなりました。
「原子力発電に80パーセントも依存しているということは、そうした状況がいつでも発生し得るという事なのです。」
レプサール所長が最後にこう語りました。
http://www.nbcnews.com/id/51633044#.UXdtV0r0cnU
+ – + – + – + – + – + – + – + – + – + – + – + – +
「なるほど、そんな危険もあったのか…」
そう気づかせてくれる記事です。
ただでさえ、東京電力では人材の流出が続いていることが伝えられています。
そして福島第一原発の収束・廃炉作業では、多重下請け構造の中に「反社会勢力」が入り込んでしまっている、そのことが早くから繰り返し指摘されてきましたが、東京電力はどのような対策もとってこなかったようです。
将来、原発のような複雑で危険な施設に、本来そのようなものを扱ってはいけない人材が多数入り込む危険性がある。
この記事はそのことに警鐘を鳴らしています。
原子力発電の廃止、この観点からも急がなければならないようです。