ホーム » エッセイ » 【 原子力発電所は国家の『不良債権』!原子力発電所の危険負担はあまりに長期間、あまりに巨額 】〈2〉
反原発運等が行った数々の主張が結局は正しいものであった事を、電力会社の計画が証明することになった
原子力が安全で、完全に制御可能なテクノロジーであると主張することは、もはや不可能
原子力発電を始めて半世紀、核廃棄物を安全完璧に永久保存する方法も、無害なものへと変えてしまう技術も、現実には存在しない
デア・シュピーゲル 5月15日
まず言わなければならない事があります。
それは多くの場合、原子力発電所の解体・原子炉の廃炉費用が、当初予想した金額より多額に上ってしまうという事です。
そして中でも最も緊急性が高く重要なのは、高レベル放射性核廃棄物を、安全に保管できる場所を見つけられるのか?という問題です。
ドイツは原子力発電所を始めて半世紀が過ぎましたが、未だにこの答えは見つかっていません。
ニーダーザクセン州にあるゴールベンの岩塩ドームに核廃棄物を一時的に保管する作業が始まってすでに30年が過ぎましたが、中間処分場として本格的に利用するための安全審査は未だに完了していません。
さらに電力会社はこれまでに16億ユーロ(2,240億円)もの巨額の費用を使ったにもかかわらず、永久処分場は未だに確保できずにいます。
昨年ドイツ政府は、2031年までに永久最終処分場として確保できる可能性のある場所を、他の州で調査する決定を行いました。
1カ所の可能性のある場所の調査を行うだけで、その費用は10億ユーロ(1,400億円)以上に昇る見込みです。
しかもドイツ人が近年学んだことは、大規模な公共事業は当初の見積額をたちまちオーバーしてしまうという事です。
未だに開業できずにいる新しいベルリン空港しかり、あるいはハンブルグ・エルブ・フィルハーモニー・コンサートホールしかりです。
新ベルリン空港やハンブルグのコンサートホールは、あまりに複雑な構造のため建設予算がオーバーしてしまったとお考えですか?
であれば極めて危険な高レベル放射性核廃棄物を、数千年の間安全に保管し続けるための施設を建設するには、どれ程複雑な設計と工事が必要になるのでしょうか?
考えるだけでも、最高に複雑な設計と工事が必要になることは目に見えています。
10億ユーロ(1,400億円)、20億ユーロ、いや300億ユーロ(4,200億円)が必要になるのか、前もって予測する事は不可能です。
こうして理由から各電力会社は、原子力発電の解体・廃炉費用を政府に肩代わりしてもらいたいと考えるようになったのです。
▽ 反原発運動が正しかった事を証明する現実
1970年代と1980年代に巻き起こった、多数の人々が参加する事になった反原発運等が行った数々の主張が結局は正しいものであった事を、多くの点において各電力会社の計画が証明する事になりました。
1986年のチェルノブイリ原発事故、そして2011年の福島第一原発が引き起こした原子力大災害の後、原子力が安全で完全に制御可能なテクノロジーであると主張することは、もはや不可能です。
そして核廃棄物を安全完璧に永久保存する方法も、あるいは無害なものへと変えてしまう技術も、現実には存在しません。
これらの事実が明らかになった今、原子力発電のすべての経済的な側面が、白日の下にさらされる事になったのです。
現在太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギー開発にそうしているように、政府は原子力発電の開始時期に補助金を出していました。
いずれが正しいかあなたの判断を待つしかありませんが、これまで政府は原子力発電に対し170億ユーロ(2兆3,800億円)〜800億ユーロ(11兆2,000億円)の国民の税金を投入してきました。
原子力発電が軌道に乗り、利益を上げ始めると、その利益は国民に返される事無く電力会社と株主たちの金庫の中にしまい込まれる事になりました。
そして原子力発電が終わりを迎えようとしている今、その費用負担が再び国民一般に求められようとしています。
現在のところ、ドイツの経済界、そして中道・左派連合を形成する社会民主党員(SPD)のエネルギー担当大臣のシグマール・ガブリエは、この問題に関する公式コメントを明らかにしていません。
5月上旬、ガブリエ・エネルギー担当相はE.onとRWEの社長との会談を土壇場でキャンセルしました。
その理由について、ドイツの原子力発電からの転換の道筋を定める再生可能エネルギー法の解説の手続きを一刻も早く完了させたいというものでした。
〈 第3回につづく 〉
http://www.spiegel.de/international/germany/utility-companies-want-public-trust-for-winding-down-nuclear-plants-a-969707.html