ホーム » エッセイ » 【 一向に増えない日本の勤労者の収入 】《後篇》
賃金を引き上げて人材確保をしなければならない業界程、引き上げることが難しいという日本の現実
同じ仕事をしている公務員の平均的年収880万円、大企業710万円、中小企業420万円 - M. スタンレーの調査
エコノミスト 2016年9月17日
日本の勤労者の収入が一向に増えないという現実に対し、企業の経営者たちは日本政府自身がその政策を見直すべきだと主張しています。
経団連は賃上げをしてもその3分の1が社会保障費の支払いに回されるとの試算を明らかにしていますが、10月には再び引き上げが予定されています。
高齢化が進む日本においては年金と医療費の支払いが嵩み続け、、社会保障費のシェアが下がることは、当分なさそうです。
しかし高齢化が進み労働可能人口が減少を続け、人材確保がますます難しくなっているにもかかわらず、日本において労働者の賃金を押し上げることは極めて難しいように見受けられます。
理由の一つに挙げられるのが、賃金を引き上げるべき業界ほどそれが出来ないという現実です。
一例をあげると公共保育園はスタッフがひどく不足していますが、国の規制があるために賃金を引き上げることができません。
このため多くの雇用主が退職金の引き上げやその他の対策を行なおうとしていますが、厚生労働省はより高い給与の支払いは、ボーナスや時間外手当などよりも消費支出の拡大にはるかに大きな効果を発揮するという見解を明らかにしています。
さらなる問題は同様の労働を行っているにもかかわらず賃金格差が存在する現状は、習熟度の違いによってその差が生じているという説明にもかかわらず、矛盾が大きくなっていることです。
政府統計を使ったモルガン・スタンレーの調査によれば、公務員の平均的年収が880万円なのに対し、大企業の場合は710万円、中小企業になるとそれが420万円と試算しています。
このように従来の終身雇用の下での『サラリーマン』と、非正規雇用の労働者との間の不公平なギャップが日本の労働市場をゆがめています。
日本の労働者は高額な報酬が支払われることよりも、安定した雇用の継続を望んでいます。
そして大部分の日本企業は、社員に対し能力よりも長期間努めたことに対して高額な報酬を与えようとし、その結果人々は転職を避けることになるのです。
新浪氏はこうした日本のビジネス界の仕組みを「恐竜システム」と呼びます。
日本政府も長年この問題に取り組んできましたが、結果はさんざんでした。
日本ではいろいろな職場への人工知能の導入が進んでいますが、これは不足する労働力を補う、あるいは低い生産性を改善することが真の目的であり、最終的には労働者の賃金を引き下げることになるだろうという観測が一部にあります。
寿司チェーンでは徹底した省力化がすでに実現しています。
客は手元に置かれたタブレット端末を使って注文し、皿に乗った寿司はベルトコンベヤーで手元に運ばれてきます。
労働者の賃金を低く抑え込もうとする側の手元には、数多くのツールが運び込まれているのです。
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【 アイウィットネス 】
ガーディアン 2016年9月30日
インドのアミタヴァ・チャンドラが撮影したこの写真は王立生物学協会が主催する写真コンテストの入賞候補に挙げられています。
女性たちが採取しているのは、燃料や装飾用として用いられる『カシュ』と呼ばれる草です。
https://www.theguardian.com/world/picture/2016/sep/30/eyewitness-kolaghat-west-bengal-india
2016年9月9日
雪が大好きなイアン・キャメロンがいるのは英国の最高峰ベンネヴィスの雪渓下側です。
https://www.theguardian.com/world/picture/2016/sep/09/eyewitnes-scotland