ホーム » エッセイ » 【 『トランプ時代の世界』日本が低金利政策を続けていくことは可能なのか? 】
何度も約束していながら結局は構造改革に手をつけず、日銀にばかり責任を負わせる安倍政権
いかなる理由があるにせよ、2%のインフレ目標が手の届く範囲には無いという事だけははっきりしている
エコノミスト 2016年11月26日
低下を続ける日本国債の利率と増え続ける国の借金
日銀総裁の黒田東彦氏は予想外の障害が生じたからと言って、当初の方針を変えたりはしません。
予想を覆し世界に衝撃を与えたドナルド・トランプの当選により世界の金融市場が状況を一変させたのに対し、11月17日黒田総裁は日本の金融政策をこれとは反対の方向に舵を取り続ける挑戦的な判断を行いました。
黒田総裁はトランプ・ショックによりアメリカ国内の金利が上昇に転じたことに触れたあと、次のように述べました。
「しかしその事は日本国内の金利が自動的に、そして直ちにその後を追わなければならないという事を意味するわけではありません。」
トランプが新大統領に就任することによってアメリカ国内では経済状況が上向いてインフレ傾向も強まると判断した世界中の投資家は、アメリカ以外の債権を争って売却しドル資産に買い換えました。
これにより世界の債権市場から1兆2,000億ドルの価値が消えてなくなる一方、各国の債権の金利は急上昇することになったのです。
日本国内では、急激な円安の進行も加わり、10年ものの国債(JGB)の利回りはこの約2ヵ月間で初めてゼロを上回るまでじりじりと上がっていきました。
2013年3月アベノミクスの金融政策の番人として安倍晋三首相によって日銀の総裁に任命されて以来、黒田氏は何年もの間続いてきた日本のデフレーション傾向を何とか終息に向かわせようと戦い続けてきました。
国債などの債権の利回りを低く抑え続けることは、その戦いの重要な部分を占めています。
黒田総裁の下、日本銀行は日本の国債を買い入れるため紙幣を印刷し続けました。
2014年に日本銀行は量的金融緩和策の規模を一年の間に50兆円か80兆円にまで拡大しました。
今や日本銀行は日本国債の40%を保有しています。
さらに2016年2月に、日本銀行は日本経済に向けこれまでで最も大きな一発の砲撃を行いました。
公定歩合をマイナス0.1%まで引き下げたのです。
経済専門家などはこのマイナス金利政策について、日銀の金融緩和策の失敗の上塗りだとして批判を強めました。
これに対し日本銀行が大規模な金融緩和政策からの撤退を行う可能性があるという推測を打ち消すため、9月黒田総裁は挑戦的なスピーチを行いました。
日本経済が2%のインフレ目標をクリアしない限り、今後10年間日本国債の利率を0%前後に保ち続けると約束したのです。
しかしその公約を守ることはこれまで以上に難しいでしょう。
安部首相の経済政策の最大の目的は、デフレーションを克服することです。
政権に復帰した後、安倍首相はこれから価格が上昇しそうだと考えている場合、消費者は積極的にモノやサービスを購入するようになるという趣旨の発言を行っていました。
消費者が消費行動をおこさなければ、企業は設備投資をせず、経済は悲しい運命を繰り返す罠に足をとられることになります。
しかし安倍政権が誕生して4年、何度か希望が見えそうになった瞬間もありましたが、日本経済にインフレに火が点く様子は一向に見られません。
黒田総裁は新興成長市場で起きている経済成長の鈍化と原油価格の下落を呪っています。
そして日本企業の中に積み上げられた利益剰余金や資本剰余金が242兆円という記録的金額に達しているにもかかわらず、安倍首相が幾度となく実業界に働きかけても一向に上昇しない日本の一般勤労者の賃金もまた、黒田総裁の足を引っ張り続けています。
しかしいかなる理由があるにせよ、2%のインフレ目標が手の届く範囲には無いという事だけははっきりしている、こう語るのはスイスのUBS銀行東京のエコノミストである青木大十氏です。
ニュース解説者たちが指摘したように、黒田総裁は市場に流通する紙幣を増やし続けることはできても、日本の人口を増やすことはできません。
出生者数よりはるかに多くの死亡者がいる状況の下、日本の人口は2010年以降約100万人減少しました。
日本政府はこの後2060年までに、日本の労働者数は40%急激に減少する可能性があると予測しています。
一方、日本の公共負債は国内総生産の246%にまで膨れ上がり、世界の国具の中で最高の比率に達してしまいました。
日本経済の根本的構造改革について安倍政権は繰り返し実行を約束しましたが、それが一向に実現されないまま、黒田総裁とその通貨政策にのみ日本経済の回復の重責が負わされることになりました。
日本国債の利回りをゼロ%前後に留め置くため、これからも「無制限で」国債の購入を続けるという日本銀行黒田総裁の公約は、債券市場をコントロールする日本銀行の力を量る試金石となるでしょう。
「金融緩和政策には限界があるという指摘を度々受けますが、私はそうは思いません。」
黒田総裁は9月の会見でこう語りました。
市場がそうした見解に同意するかどうか、まもなくはっきりするかもしれません。
http://www.economist.com/news/finance-and-economics/21710813-bank-japan-hopes-buck-trend-global-bond-markets-global?zid=306&ah=1b164dbd43b0cb27ba0d4c3b12a5e227
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【 11月の宇宙写真から 】
アメリカNBCニュース 11月30日
11月14日アメリカ・ネバダ州スパークスのシャドウマウンテン・スポーツセンターのある丘の上に昇ったスーパームーンに輪郭を映し出された男性と愛犬。
この69年間で最も明るく最も大きな月は月の軌道が地球に最も近づいたポイントで観察されました。NASAによればこの日のスーパームーンは、普通の満月より14パーセントより大きく、30パーセント明るい光を投げかけていました。(写真上)
11月17日仏領ギアナのコウロウにあるヨーロッパ宇宙基地から4基のガリレオ衛星を載せて打ち上げられたアリアン5ロケット。(写真下・以下同じ)
11月15日に公開されたチリにある欧州南天文台の超大型望遠鏡の上に現れた銀河。
遠くの山頂に銀色に光る物体が欧州南天文台の超大型望遠鏡とそれより小さな補助望遠鏡。
この写真は、別の山の頂にある欧州南天文台の別の施設から撮影したもの。
中華人民共和国海南省文昌市にある宇宙基地から打ちあげられた重量級貨物ロケット、ロング・マーチ5型ロケットの発射直後の航跡。
中国はこれまでで最大規模のロケットの打ち上げを成功させ、その宇宙開発力が並々ならぬ力を持っていることを証明しました。
11月14日カザフスタン共和国内のバイコヌール宇宙基地の発射台にセットされたソユーズMS-03の背後に上るスーパームーン。
http://www.nbcnews.com/slideshow/month-space-november-2016-n690811