ホーム » エッセイ » 仕組まれる危機・ミサイル避難訓練に隠された動機、狙いは憲法改定
平和憲法を廃止して大幅な軍備拡大を可能にするため、あらゆる手段を使って演出される『戦後最大の安全保障上の危機』
専守防衛という考え方を逸脱し、自衛隊に軍隊としての役割を強く求める自民党の改憲案
アメリカCNNニュース 2018年1月22日
もはや北朝鮮情勢が一定の落ち着きを取り戻したにもかかわらず、第2次世界大戦終結後初めてミサイル着弾を想定した避難訓練に加わったのは、灰色のベストを身に付けた数百人の東京都の住民たちでした。
1月22日月曜日におこなわれたこの避難訓練は、翌月韓国で開催される冬季オリンピック大会の開催準備の一環として、韓国を訪問中の北朝鮮代表団が首都ソウルで演奏会の開催の可能性について言及したその直後のタイミングで行われました。
北朝鮮と韓国の関係改善の兆しが明らかになりつつあるにもかかわらず、安倍晋三首相は北朝鮮の核・ミサイル開発の脅威が「前例のない」「差し迫った」ものであると繰り返し警告しています。
「第二次世界大戦以降、日本を取り巻く安全保障情勢は最も厳しいものであると言っても過言ではない。北朝鮮に核兵器とミサイルの開発を、完全に検証可能かつ不可逆的な方法で放棄させる必要がある。」と述べました。
昨年9月、北朝鮮は北海道の上空を通過させる形で大陸間弾道ミサイル(ICBM)の発射実験を行いました。
このミサイルはその年に北朝鮮が日本の方向に発射した2基のミサイルの1基であり、日本国内の懸念が拡大し、第2次世界大戦の敗戦後に成立した日本の平和主義憲法の廃止を求める安倍首相の立場を強める結果となりました。
▽ いつものやり方で…
大きな地震や津波が度々発生する国柄もあってか、22日に行なわれた避難訓練では参加したボランティアの人びとは、テキストメッセージと拡声器からの指示に従い、迅速かつ整然と予め決められた地下の避難場所に移動しました。
訓練の開始からわずか10分で訓練は完了しました。
部分的にアミューズメントパークを使って行なわれたこの訓練は、この数か月間全国のもっと小規模な市町村で行われたミサイル発射を想定した訓練の集大成であり、大都市での物理的対応をどうするかという課題の下で行われました。
PAC-3パトリオット・ミサイル防衛システムを備えた首都圏には約3,500万人が住んでいます。
しかしこのシステムは、実験段階においてもその性能に対する評価は一定していませんでした。
訓練に参加した東京都在住の松本俊子さんは昨年の北朝鮮のミサイル発射実験に言及し、「ミサイルの着弾に対する備えができた」とCNNの取材に答えました。
2017年3月、日本で初めてのミサイル飛来に対する避難訓練が秋田県男鹿市で行われましたが、引き続き9月には北海道の滝川市と岩見沢市でも行われました。
しかし2018年1月には公共放送NHKが北朝鮮が大陸間弾道ミサイルを発射したという誤った警告を出したため、結果的に予定していなかった訓練が行なわれることになりました。
NHKアプリを携帯電話にインストールしていた人が受信したメッセージには、「NHKのニュースアラート、北朝鮮がミサイルを発射した可能性があります。日本政府のJアラート:至急建物内や地下に避難してください。」とありました。
NHKはすぐに謝罪を行いました。
「北朝鮮ミサイルについて先に送られたニュース警告は間違いであり、日本政府はJアラートを発信していません。」
この間違いは数分で修正されました。
今回の誤報はアメリカ50州の内のハワイがすべての市民に誤って「大陸間弾道ミサイルによる攻撃」の警告を誤って送ってから数日後に発生しました。
原因についてNHKは従業員が 「間違ったボタン」を押したためだとしています。
▽反戦抗議
引退生活を送っている東京在住の三田村みやこさんは
「北朝鮮は何を考えているかわからない。」
と語り、次のように続けました。
「北朝鮮がもし本当に東京を攻撃したら、どれ程深刻な被害を受けることになるか考えるととても恐ろしいです。」
日本政府は、北朝鮮の攻撃に備えて一般市民が訓練することは必要な事だと語りました。
「避難訓練の実施についてはいろいろな意見があることは把握している。しかし現実にミサイルが日本上空に飛来している。」
末永洋之内閣参事官はこう述べ、次のように続けました。
「日本政府は国民に安全と安心を提供するためには、どのような行動が必要かを国民が理解することが重要だと考えている。」
東京で避難訓練が行なわれたすぐ近くでは、少人数の2つの反戦グループがサインボードを掲げ、小冊子を配布しながら、安倍政権が北朝鮮の脅威を政治利用としているとして大きな声で抗議活動を行っていました。
安倍首相が率いる保守派の自民党は戦後の日本の平和主義憲法を改定しようとする議論を展開しています。
この動きに批判的な人々は、自民党が提案している改定が純粋な意味での自己防衛を逸脱し、自衛隊に軍隊としての役割を強く求める内容になっていることを懸念しています。
さらに安倍政権は主に米国からの軍事装備の大規模な新規購入を発表しました。
抗議活動をしていた伊藤友子氏はCNNの取材に対し、ミサイル避難訓練を「戦争の練習」と表現しました。
「安部政権は国民の意向を無視しています。逆に私たち国民全員を精神的に支配し、戦争に向け心の準備をさせようとしています。戦争というのは、往々にしてこの種の小さなことがきっかけとなる場合が多いのです。」
「些細な事のように見えるかもしれませんが、実際の意味は大きく、彼らはすでに戦争を始めたのかもしれません。」
https://edition.cnn.com/2018/01/22/asia/tokyo-missile-drill-intl/index.html
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テレビ報道などを見て、ミサイル避難訓練についてはいくらプロパガンダだとは言え、ずいぶんあくどいやり方をするものだと思っていました。
見過ごせないのは、こうした訓練をさせられたり見せられたりしているうちに、どうしても『北朝鮮の脅威』が現実以上に大きなものになることです。
これは人間の心理として仕方がないことであり、そこを狙って国民の洗脳を進めようという意図があるとすれば、まさにあくどいとしか言いようがありません。
隠された洗脳という事であれば、私自身高校時代の日本史の教科書を思い出します。
第一次世界大戦は世界規模の戦争の惨禍というものが、人間にとってどれほど破壊的なものであるかを強く認識させ、世界的に軍縮へ向かおうという機運がようやく高くなりました。
しかし第一次大戦の特需により経済的恩恵を強く受けた米国と日本は戦艦や巡洋艦を大量に建造し、いわゆる建艦競争という逆の現象が起きました。
日本の場合は軍部の要求通りの艦隊整備を行なえば財政が破たんする危険性がありましたが、国内にそれを止める機能はありませんでした。
結局1921年のワシントン条約によって建艦競争に強制的に一定の歯止めがかかることになり、米国英国に対し日本の戦艦・航空母艦の保有割合は10対6ということになりました。
当時の国力から考えて『その辺りかな』と思える数字だと思うのですが、当時の日本は『自国防衛のため』『対米7割』を主張しましたが、米英に容れられませんでした。
この辺り、私が使わされた日本史の教科書には『米英に不公平を押しつけられた』というニュアンスの記述がされ、ごく当然のことのように自分の感覚の中に入りこんできました。
しかしその後、世界史をさらに深く学習した視点からこの辺りの事情を紐解けば、日本の『防衛力強化』(この時代の日本は1910年に併合した韓国や日露戦争によって権益を得た中国東北部、いわゆる満州までが含まれます)というものが、実は『帝国主義的権益の強化』であったことが理解できるようになりました。
改めて考えれば、軍拡に正論などあるはずがないのだと気がつきました。
こうした教科書の洗脳効果を狙った加筆訂正というものは、自民党の一党支配が続けられる中でこれまで目立たないように行なわれてきたのだと思います。
それが安部政権になって、森友学園の問題に代表されるように、何事も目立つようになりました。
要はやり過ぎなのだと思いますが…
だからこそ、私たちは声を挙げるべきなのだと思います。
無言でいることは、それを受け入れたことになってしまいます。
避難訓練している脇でその不当さを訴えるのは随分と勇気がいると思いますが、こうした方々がおられることに敬意を表したいと思います。