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福島第一・ロボットが原子炉内の溶解ウラン燃料を最終的に確認《後篇》

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所要時間 約 8分

溶解した核燃料の取り出し開始を2021年と発表した日本政府、具体的計画は未着手

核燃料を取り除く作業が終わらなければ、人々に福島第一原発の事故収束を認めさせるのは難しい

 

マーティン・ファクラー / ニューヨークタイムズ 2017年11月19日

ごく最近の訪問で確認した限り、福島第一原子力発電所の様子からはかつての緊迫した空気は無くなりましたが、敷地内の移動についてはまだ厳しく管理され、全員が放射線量の測定バッジを身に着ける必要がありました。

一方「休憩施設」の建物の中では労働者が大きなカフェテリアで食事をしたり、コンビニでスナックを買ったりしていました。

発電所の入り口には「敷地内でのポケモン等のゲームは禁止」という警告が掲示されていました。

 

福島第一原子力発電所の事故収束・廃炉作業を専門に行っている東京電力の子会社の広報を担当する広瀬氏が次のように語りました。

「私たちは敷地内のがれきの片づけを完了し、発電所を制御下においています。」

「そして廃炉に向けた準備の最終段階に入っています。」

 

今年9月に首相官邸は、破壊された3基の原子炉のうち少なくとも1基から溶解した核燃料の取り出しを、事故発生から10年後の2021年に行うという目標を設定しました。

実現すれば福島第一原発の事故収束・廃炉作業は画期的な段階を迎えることになりますが、実際にはどの原子炉でそうした作業が可能になるのかめどは立っていません。

 

日本政府は、福島第一原発の事故収束・廃炉作業を完了させるには最低でもこれから30〜40年、そして数十兆円の費用が掛かることを認めています。

そして原子炉内に入り、溶解した核燃料の取り出しを行うための新世代ロボットを科学者や技術者が開発するため、福島第一原発の近隣に100億円以上をかけた研究施設が新たに建設されました。

1986年に発生したチェルノブイリの事故では、ソビエト政府は1986年の事故の後、破壊された原子炉をコンクリートで覆って密閉するだけのいわゆる石棺工事を行いました。

しかし日本は福島第一原発を解体・廃炉処理を行い、事故後に避難した約16万人が住んでいた周辺の町村の汚染を除去することを公約しました。

 

福島第一原発周辺の町村では一部で除染作業が完了し、多くの住民に対し元住んでいた場所に戻る許可が出されました。

しかし福島第一原発自体の汚染、すなわち溶け落ちた核燃料を取り除く作業が始まらなければ、一般の人々に事故が終わったという事を認めさせるのは難しいと関係者は認めています。

そして核燃料の除去が始まれば、福島第一原発の事故後ほとんどが停止している日本国内の原子力発電所の再稼働に国民の理解が得られるのではないかと、関係者は期待しています。

 

日本政府と東京電力は現在、福島第一原発が『制御下に置かれている』という見解に疑念を抱かせる可能性のある、さらなるトラブルや事故を回避するため手順を慎重に進めています。

憂慮する科学者連盟の核問題の専門部門責任者であり、福島第一原発の事故の詳細を伝えた著作の共同執筆者であるデビッド・ロックバウム氏は次のように述べています。

「彼らはいかなる誤りも許さない、そして予期せぬ事態を引き起こさないためにきわめて慎重にものごとを進めていますが、その進み方は遅すぎると指摘する人もいるでしょう。」

「彼らは学習したのです。信頼を失うのは一瞬だが、それを回復するには長い長い時間がかかることを。」

探査用のロボット、ミニ・マンボウがたどるべき調査ルートについて具体的説明を行うため、東京電力の広瀬氏は原子炉2号機と同じ構造を持つ無傷の原子炉5号機を収納する建物の中(写真上)に私を案内しました。

広瀬氏は先の方にある狭い傾斜路を指さしました。

そこには今年2月に破壊された2号機原子炉内でがれきに行く手を阻まれ、操作不能に陥ったスコーピオンに似たロボットと別のロボットがありました。

スコーピオンは原子炉内を調査中、一時間当たり70シーベルトという極端に高い放射線のために電子部品が正常な機能を失い、送られてきていた画像はやがて真っ黒になってしまい、技術者は操作をあきらめるしかなくなりました。

人間は1シーベルトの放射線を浴びれば放射線障害を引き起します。

 

広瀬氏は次に原子炉の下の台座と呼ばれる部分に私を導きました。
原子炉の底面は巨大なボルトの集合体のように見えました。

これらのボルトは正常に機能している際には原子炉内で核分裂反応を加速させるため核燃料棒を注入し、逆に減速させる際には徐々にこれを引き抜くために使用するアクセスポイントです。

台座は金属製の格子状になっており、その下には基礎部分のコンクリートを見ることができます。

「過熱した燃料はここから滴り落ちて、この辺りの格子を溶かしてしまったと考えられます。」

広瀬氏がこう語りました。

 

私たちは原子炉の下で、頭を底部にぶつけないよう、身をかがめていなければなりませんでした。

原子炉の周囲は暗く、辺りを覆い尽くす程パイプや機械類でいっぱいになっていました。
がれきや原子炉内の構造物に引っ掛かることを防ぎながら進むため、ミニ・マンボウは原子炉3号機の底まで約6メートルを走行するのに3日を要しました。

さらに他の2機の原子炉を調べるために、エンジニアはがれきの間を縫うようにして進むことができる「ヘビ」ロボットと、ほとんどの物質を通過できるミューオンを利用した画像装置を作りました。

ミューオン装置は原子炉内部粗いゴースト画像を描き出します。

そして溶解した核燃料を取り出すという作業自体も、きわめて困難な技術的課題と危険をセットにして突きつけることになるでしょう。

技術者たちは楢葉遠隔技術開発センターで新しい放射線耐久型ロボットを開発しています(写真上)。

このセンターには実物大の原子炉の模型を収容する格納庫サイズの建物と、ひとつひとつのがれきがどこにあるのかまで原子炉建屋内を再現したバーチャルリアリティルームが含まれています。

「私は30年間ロボット・エンジニアを続けてきましたが、これほど厳しい課題に直面したことは一度もありませんでした。」

このセンターの研究開発担当責任者である川澤晋二氏がこう語りました。

「ここでは日本のロボット・エンジニアに崇高な使命が課されているのです。」

 

(冒頭の写真 : 楢葉町に建設された技術開発センター、水槽内での事故現場探索用のロボットの実験)

〈 完 〉

https://www.nytimes.com/2017/11/19/science/japan-fukushima-nuclear-meltdown-fuel

福島第一・ロボットが原子炉内の溶解ウラン燃料を最終的に確認《前篇》

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所要時間 約 8分

人間が近づいたらたちまち死に至る程高いレベルの放射線の存在が、すべてを難しいものにしている

放射線に対し高い耐久性を持つ新型ロボットを投入し、所在と状況が不明の核燃料の特定を急ぐ

 

マーティン・ファクラー / ニューヨークタイムズ 2017年11月19日

その日福島第一原子力発電所内で4人のエンジニアが数台のモニターの前に腰を下ろし、中の1人がゲームコントローラのように見える装置を操作していました。

彼らはこれまでの一カ月間、今まさに行なおうとしていることのために訓練を続けてきました。

福島第一原発内の破壊された原子炉の中心部に一台の小型ロボットを送り込み、操作するためです。

 

福島第一原発内の破壊された原子炉内にはこれまでも調査用のロボットが送り込まれてきましたが、あまりにも高い線量の放射線や内部に散らばるがれきによって破損するなどしていずれも操作不能に陥りました。

しかし、ミニ・マンボウと呼ばれる新型は放射線に対する防御能力を高くし、さらに浸水した状態の原子炉建屋内にあるその部分だけ異常に放射線量の高いホットスポットを避けるためのセンサーも備えています。

シューズケースほどの大きさのミニ・マンボウは小型プロペラを装備し、小型ドローンが空中を飛行するのと同じ要領で水中を行き来します。

事故によって破壊された原子炉建屋内を3日間慎重に走査した後、ミニ・マンボウは最終的に最も損傷の激しい原子炉3号機に到達しました。

そして原子炉底面に開いた大きな穴、そしてその下の床に凝固した溶岩のような塊が存在する画像を送信してきました。

これは事故の際に溶融したウラン燃料について初めて撮影された画像になりました。

 

実際に使用される前に、ミニ・マンボウは横須賀でデモンストレーションを行いました。

放射線に対する耐久性の高い機体とセンサーを装備した水中ロボットです。

ミニ・マンボウは以前のロボットが失敗した場所で、残骸のある場所やホット・スポットを巧みに回避しながら、福島第一原発の事故現場で極めて危険な存在であるウラン燃料の所在を明らかにしました。

 

原子炉3号機ではすでに今年7月にも溶解した核燃料の一部と見られる物質の存在を遠隔操作のカメラを使って確認しており、日本政府の関係者は同様の成功を重ねていくことで、チェルノブイリ以降最悪となった原子力発電所事故の転換点になる事を望んでいます。

2011年3月11日に発生した巨大地震と15メートルを超える津波が福島第一原発の重要設備である冷却システムの破壊して福島第一原発の大惨事が発生しましたが、それ以来、溶解した核燃料はどこにどのような形で存在しているのかという問題は、最大の謎の1つとされてきました。

冷却機能を失った原子炉の核燃料は過熱状態に陥り、6基中3基でメルトダウンが発生しました。

ろうそくのろうが溶けるようにして液状化し、鋼鉄製の格納容器を溶かして穴を開けるほど高温化したウラン燃料は、下部のコンクリート製の基礎部分にも浸透して行きました。

 

これまでのところ、後に『フクシマ・フィフティ』として賞賛されることになった福島第一原発の職員たちが海水を原子炉建屋内に注入して再度原子炉の冷却を可能にするまで、核燃料が溶解してどこをどう通りどのような状態になってるのか、誰も状況を把握できずに来ました。

最大の原因はもし人間が近づいたらたちまち死に至る程高いレベルの放射線の存在であり、溶解した核燃料の状況など確認しようがありませんでした。

しかし東京電力の職員たちが事故現場の処理に習熟していくにつれ、行方不明の核燃料を探す余裕も出てきました。

科学者やエンジニアはミニ・マンボウのような放射線耐久型ロボットや、原子炉内部の放射線量の状況を調査するためマンボのような放射線耐性のロボットと、反応炉の内部を見るためにミュオンと呼ばれるエキゾチック空間粒子を使った巨大なX線走査装置も製作しました。

 

日本政府の原子力行政の担当者と原子力発電所を所有する各電力会社は、現場の技術者が溶解した核燃料の所在を特定したことにより国内世論が変わることを望んでいます。

 

福島第一原発の事故により関東北部から東北地方にかけて大量の放射性物質が放出されてすでに6年半が経過しました。

最悪の局面では東京も一時危機的状況に陥るかに見えましたが、現在は福島第一原発が事故直後の混乱を収拾して脅威が去ったことを世間に周知したいと考えています。

すなわち計画的に事故収束・廃炉作業を進めていると…。

東京電力の木元崇宏原子力・立地本部長代理が次のように語りました。

「これまでは、溶解した核燃料がどのような状態でどこにあるのか、正確には分かりませんでした。それが特定できたため、これからはそれを回収する計画に着手することができます。」

 

東京電力は現在、福島第一原発をひとつの巨大な産業事故処理現場と定義したいと強く望んでいます。

約7,000人が毎日作業を続け、新しい汚染水の貯蔵タンクを建設し、敷地内に散乱していた放射性廃棄物を新しい処分場に移し、巨大な水素爆発によって崩壊した原子炉建屋の上に巨大な足場を組み上げました。

敷地内への立ち入りも、1年前は特別性の放射線防護服を着用しなければなりませんでしたが、現在はもっと簡単になりました。

今日では労働者や訪問者は、最も危険な領域を除くすべての領域を街を歩くような格好で移動することが可能です。

東京電力の案内担当者によれば、これは中央部分にあった樹木を伐採し、敷地内をすべて再舗装して汚染を密閉したことにより可能になったと説明しました。

 

[写真下]現在の福島第一原発・1号機原子炉建屋。上部構造は2011年3月の事故の爆発により吹き飛ばされました。

 

《後篇に続く》

https://www.nytimes.com/2017/11/19/science/japan-fukushima-nuclear-meltdown-fuel

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福島第一原発の事故について改めてもっとも許し難いと思うのは、やはり160,000人とも250,000人とも言われる人々のそれまでの暮らしを葬り去った事でしょう。

人間は新たに幸せな暮らしを手に入れればそれですべて良しとするほど単純には出来ていないと思います。

私も年齢を重ねるごとに、自分の祖先がどうだったかという事を考えることが多くなりました。

過去とつながっているという事の価値は、漠然としか理解できないものですが、だからと言ってさほど価値が無いという事でもありません。

 

福島第一原発については物理的な回復に加え、人々の心の再生という事も大切な課題だと思っています。

 

核兵器妄想に取りつかれたトランプ《4》悪夢を再び世界に押しつけるアメリカ大統領

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所要時間 約 7分

北朝鮮に爆弾を投下することを、トランプ政権はなぜ決まった予定のように話すのでしょうか?

民主主義を理解しようとしない大統領トランプの指を、核兵器発射ボタンから早く引きはがして!

 

レベッカ・ゴードン /ル・モンド・ディプロマティーク 2017年10月31日

これに対し、トランプが起用した民間人のスタッフは褒められたものではありません。

ニッキー・ヘイリー国連大使は9月、CNNの報道番組の中でトランプ政権が

「可能な限りすべての外交的手段を尽くし、まずは北朝鮮に注意を促したい。」と語りました。

しかし、もし外交手段では事態が好転しない場合には

「北朝鮮はマスティス将軍に面倒を見てもらうことになるだろう。」と語りました。

そして放送を聞いている人たちが『面倒を見る』という言葉の意味を取り違えないよう、次のようにダメ押ししました。

「北朝鮮がこれ以上無謀な行動を続けるつもりなら、米国はいかなる手段を使っても国土や同盟国を守らなければならなくなったら、北朝鮮は完全に破壊されることになるだろう。」

 

確かにレックス・ティラーソン国務長官は毅然とした態度で、北朝鮮との対話の窓口を常に開けておく必要性を繰り返し主張し、トランプ得意のツイッターで

「リトル・ロケットマンと交渉しようとして、時間を無駄にしている」と嘲られています。

テイラーソン長官は10月15日、最初の一発を投下するまで外交努力が続くだろうとCNNに説明しました。

 

なぜテイラーソン長官は爆弾を投下することを決まった予定のように話すのでしょうか?

最初の一発を投下するのは誰になるのでしょうか?

彼はアメリカ軍による第一撃について話をしているのでしょうか?

あたかもトランプ政権全体が、外交努力がうまくいかない場合には必然的に戦争もあり得るという選択肢受け入れたように見えます。

それが具体的にどういう事かわかりにくい方は、ブッシュ政権が2003年3月20日にバグダッドに最初の一発と巡航ミサイルが発射される直前まで、イラクの独裁者であるサダム・フセインとの交渉を続けるという口実を掲げていたことを思い出してください。

 

トランプは一方的に命令してものごとを進めたいと考えています。

しかし合衆国憲法の細かな点、法律の定め、そして三権分立という民主主義のルールは、トランプが思っていた以上の障害になっています。

これまで大統領令を濫発して思い通りに進めようとした試みはほとんど失敗しました。

トランプにとっては『三度目の正直』となる、イスラム教徒の入国を禁止する方針は再再度法廷に持ち込まれました。

 

さらにはオバマ大統領の下で整備された医療制度であるオバマケアを無効にし、国家からの補助金拠出を中止させようという最近の取組もすぐには実現しそうにありません。

事実、トランプの方針に対しては、すでに18もの州が無効を求めて法的手続きを行っています。

 

トランプはイライラしています。

なぜ自分は映画スタートレックのジャン・リュック・ピカード指揮官のように、手で合図をするだけで周囲の人間たちにおとなしく言う事を聞かせられないのでしょうか?

なんでも思い通りになるなら、トランプは絶対王政の君主のようなものであり、憲法、法制度、そして議会は何の意味も持たなくなります。

 

 

トランプが望む通りの体制とは絶対君主制に他なりません。

そうなればトランプ一人で核攻撃を命じることができるようになります。

そうなってしまったら、他の問題では成文法や慣習法によってトランプの恣意的な判断が妨げられる可能性は残されますが、ボブ・コーカー上院議員が警告した通り、トランプ一人のせいで世界は『第三次世界大戦への道』を進むことになり、アメリカは1945年8月9日の長崎への原爆都投下以来初めて、核兵器使用に踏み切ることになるでしょう。

「核兵器発射ボタンからトランプの指を引きはがして!」

 

アメリカ議会にもしその気があれば、トランプの狂気を止めるための時間はまだ残されています。

たとえば核兵器の先制攻撃を行うためには、国務長官や国防長官、上下両院の院内総務など指名された人々の全会一致の決議を必要とするとする法案を可決成立させ、大統領の専行を防ぐなど数多くの対策がとれるはずです。

さらに良いことに、アメリカ議会はこれまで長い間放棄されてきた宣戦布告するための憲法上の権利をまだ有しており、カリフォルニアのテッド・リュー下院議員によって1月に提案された簡単な法案を承認すればそのことを再確認することが可能です。

議会調査部によれば、この下院決議案669号法案『2017年核兵器先制使用禁止令』は大統領が核兵器を先制使用することを禁止し、議会の宣戦布告の後、核兵器については議会が承認しなければ使用できないことになっています。

まだ時間があるうちに議会は行動を起こさなければなりません。

一方的に核兵器攻撃を命令する権限をトランプから取り上げれば、北朝鮮政府関係者の不安をひとつ取り除く結果につながるかもしれません。

でもそれ以上に私たちが夜安心して眠りに就くために、是非にも実現しなければならないことのはずなのです。

 

〈 完 〉

https://mondediplo.com/openpage/trump-s-nuclear-dreams

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最も知性に優れた人間が一国の指導者に就くという事は、別に保証されているわけではない。

それはアメリカでも実際私たちが目にしているし、日本に於いてもそうだと思います。

しかしその事に一番責任を持たなければならないのは自分たち自身であり、現実を変えるために何かをしなければなりません。

核兵器妄想に取りつかれたトランプ《3》悪夢を再び世界に押しつけるアメリカ大統領

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所要時間 約 8分

核兵器使用への日本国民の憂慮に対し、トランプは作った以上使う事も選択肢の一つだと返答していた

これまでさらけ出してきた無分別・無知蒙昧さの一体どれを指して、トランプは『馬鹿』と言われたのか

 

レベッカ・ゴードン /ル・モンド・ディプロマティーク 2017年10月31日

いつでも核兵器の発射ボタンに手をかけるぞという脅しは、広く知られているトランプの『交渉術』のひとつの実例かもしれません。

トランプの交渉術なるものはただ単に攻撃的な手法を合理的な話し合いのように外観を取り繕うため、他が『えっ?』と思うような着手点から交渉プロセスを開始するものです。

 

過去に核兵器の保有への途模索していた可能性のあるイランのような米国の敵性国家であっても、これまでトランプはこうまで破壊的ではありませんでした。

トランプはオバマ大統領が中心になって交渉をまとめ上げたイランとの6カ国協定にずっと反対し続け、度々協定の一方的破棄を口にしてきましたが、実際にはそうはしていません。

イランは協定の内容を順守しているとの国際原子力機関(IAEA)の保証の受け入れを拒否しただけで、判断を議会に委ねるというだけの対応に終りました。

 

トランプが本音では独裁力を発揮したいと考えていることは明らかです。

本来採らなければならない政策をないがしろにしながらそうした衝動を隠し、政権基盤に対する信頼性を手に入れようとしているやり方には驚くべきものがあります。

 

こうしたことは先々に多少の希望が持てるという兆候かもしれませんが、現在のアメリカ大統領の発言の中に世界にとって多少なりとも希望が持てる状況を見出せるかどうかは、占いでもしないと解りません。

残念ながら私たちは、トランプが大統領執務室にいる限り、核兵器使用の可能性の方が高まるだろうという事を懸念しなければなりません。

トランプは核兵器に対して個人的に愛着を持っていることを繰り返し表明してきましたが、実際に使用してしまったらその先に何が待っているのかを真剣に考えている様子はありません。

事実2016年3月、ビル・オライリーがホストを務めるアメリカのFOXニュースの報道番組で、ヨーロッパにおける核兵器の使用を検討することになるかもしれないと語りました。

そしてヨーロッパを『広大な場所』と表現し、そこに明確な目標を定めて核兵器を使用することについて、あたかも理に適った事のように語っていたのです。

そしてさらに同じ月、今度はMSNBCのタウンホールで「私は勝負を降りるつもりはない」と語り、イスラム国(ISIL)の『カリフがいる首都』に対する核兵器攻撃を提案したのです。

少人数であちこちに隠れているゲリラ戦闘員に対する核兵器攻撃?

そんなことは無意味なだけでなく、最悪の結果をもたらすことになるでしょう。

 

NBCニュースのコメンテーターのクリス・マシューズ氏が、トランプが核兵器使用も辞さないという態度を表明していることについて、日本の国民が憂慮しているようだと告げると、彼はこう語りました返答しました。

「じゃなぜ私たちは核兵器を作ってるんだ?我々は使うために核兵器を作ってるんじゃないのか?」

マシューズ氏の質問はドナルド・トランプ以外の別の人間に向けられていたなら、意味のあるものになったかもかもしれません。

レックス・ティラーソン国務長官がトランプを「馬鹿だ」と呼んでいたことが最初に明るみに出た時、トランプがこれまでさらけ出してきた無知蒙昧さの一体どれを指して馬鹿といったのか、私たちは疑問に思っていました。

今はもう誰もが理由を解っています。

2017年7月の国家安全保障ブリーフィングの席上、トランプはアメリカがすでに保有している4,000基の核弾頭を10倍に増やすべきだとの提案を行っていたのです。

 

トランプが最も敬意を払っている顧問は現役の将官あるいは退役した将軍たちですが、ジョン・ケリー参謀総長、ジェームズ・マティス国防長官、H.R.マックマスター国家安全保最高障顧問を含む、リベラル派とは対極にある人物たちです。

まるで軍人の同窓会のような顔ぶれですが、それでもトランプの大統領執務室にあってはまだしも『成熟した』人間に分類されます。

別に確信している訳ではありませんが、気質上彼らの方がアメリカ合衆国のかじ取りに向いているとしても、事実その傾向が見えていますが、顔ぶれを見れば外交問題の解決手段として軍事力の行使が最初のアプローチになる可能性があります。

 

実際にマティス国防長官は、米国やその同盟国に対して北朝鮮が脅威を与えれば「大規模な軍事的報復」行う可能性があると、2017年9月に警告しています。

「私たちは、北朝鮮という国家の全滅を目指しているわけではない。ただし、我々には多くの選択肢がある。」

同様にABCのジョージ・ステファノプーロスに取材を受けた際、マックマスター国家安全保最高障顧問はこう答えました。

「はっきりしていることは、脅威だけでアメリカ軍が実際に行動を起こすことは無い、そうだろう?諸君。」

「脅しだけなら、結果は必然的にそうなる。そうだろう?」

 

そしてマックマスターは特に次の点を強調しました。

「キム・ジョンウンはすでに親族を殺し、北朝鮮国民を冷酷に扱っている。核兵器を使用すれば、『相互確証[確実]破壊 - MAD』という冷戦時代の核兵器戦略がどう機能するのか、そこまで頭が回らないのかもしれない。」

 

奇妙な話ですが、史上名高いもう一人の共産主義者の独裁者であるヨシフ・スターリンは血で血を洗うような党内の粛清を行い、数百万人ものソビエト市民を死に至らしめましたが、核兵器についてはそれを使えばどういう結果を招くか充分理解していたようです。

当たり前の人間にとってこの二人のアジア人を理解することには困難が伴いますが、その中身はまったく異なっているようです。

CNNによれば退役将官であるケリー氏ですら、記者団に次のようにそっと耳打ちしました。

「核兵器を搭載したミサイルをアメリカ本土の目標に到達させるだけの能力は、北朝鮮にはありません。」

「もし彼らがすでにその能力を手に入れており、アメリカにとっての脅威が増しているとすれば、外交がうまくいくことを祈りましょう。」

 

《4》に続く

https://mondediplo.com/openpage/trump-s-nuclear-dreams

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核兵器妄想に取りつかれたトランプ《2》悪夢を再び世界に押しつけるアメリカ大統領

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所要時間 約 9分

核兵器使用のトランプの基準はあまりにも曖昧で、その決断条件は誰も理解できない

核兵器を用いた戦争が始まる危険性を現実の世界に持ち込んでしまったトランプ

 

レベッカ・ゴードン /ル・モンド・ディプロマティーク 2017年10月31日

実際、「核シェルターに関するモラル」は当時、好んで取り上げられた倫理問題のひとつになりました。この問題の中身は次のようなものでした。

万が一に備えて核シェルターを準備しておいた人々が実際に核攻撃が行なわれ自分たちが助かった場合、準備する事無く攻撃で犠牲になった人々に対し責任はあるのか?

 

ライフ・マガジンは1962年発行の号に巻頭記事で、核攻撃に備え『持てる者』と『持たざる者』に格差が生じないように政府に対し、核シェルターの大量建設を求めました。

フィレンツェ・エルガン夫人によるこの記事の中で、彼女は「私は核シェルターに関するモラルに失望しています。」と述べ、次のように続けました。

「自分の家族を守りたいというのは人間として当然のことですが、私の中の倫理観は隣人をも守るための姿勢をもとめています。」

 

今日でも大学の政治学やビジネス倫理学を学んでいる学生が「核シェルターに関するモラル」の課題を与えられることがありますが、これはもう間違いなく古代史の一項目のようなものであり、やらされている学生たちは困惑気味です。

この課題では限られたスペースと乏しい食料しかない核シェルターの中に、ラテン系の娼婦とその幼い息子という親子、白人男性の生物学者、等々が留まり続けることを許すべきかどうかということを考えなければなりません。

スマートフォンの画面に描き出されるこれらの人物は1950年代に制作された、核戦争に備えるよう求める映画の3人の短いスカートを身に着けた女性たちに比べれば、明らかに多様化しています。

思春期、私は皮肉屋として知られたトム・レーラーの『次は誰?』の全文をほとんどそらんじていました。

『まずは核兵器を手に入れること。それでもう大丈夫、なぜなら私たちは平和を愛しているし、母性の大切さをちゃんと認識しているから…』。

そして核戦争に関わるフィクションも読みました。

『フェイルセーフ』、核戦争の結果地球上の生物が全滅に向かう様子を描いた『渚にて』など、どれもぞっとする内容でしたが、中でも最悪だったのは核戦争と人種差別の二重の恐怖を描いたロバート・ハインラインの『ファーンハム・フリーホールド』でした。

この物語では核爆発によって作者の分身とも言うべき自由主義者の主人公が、異次元世界にあるアメリカに送り込まれます。

そこで主人公が目にするのは、若い白人女性が『珍味』として扱われるほど、黒人と白人の人口割合が逆転している世界でした。

 

そしてこの作家は『異星の客』を発表、この本は直感と物事の深層を理解し『共感』し合う事を説き、後にヒッピーの経典とされ大切にされました。

ハインラインは1960年代の快適な白人社会のモラルを完全否定し、別種の完璧な調和をフィクション化した作家でした。

 

核兵器が持つ瞬時に大量殺戮を行う能力や潜在的脅威、つまり自分の人生の中で核戦争の危険性がどの程度現実味を帯びてくる可能性があるかということについて説明することは難しいことですが、1991年のソビエト連邦崩壊の後に生まれ育った人たちに理解してもらうのはなおさら難しいことです。

例えば夜中サイレンの音にたたき起こされて、すべての人が地球最後の日が訪れたことを知らされるような世界で生きていることを説明することは、とても困難なことです。

当時眠れなくなった私はトランジスタラジオを枕の下に置いて、普段は馬鹿にしていたポップスやロック・ミュージックを専門に流していた放送局にチャンネルを合わせ、当時のトップ40のヒット曲を聞きながら、そんな事態はやってこないと繰り返し自分に言い聞かせていました。

現代から見れば病的としか言いようがないこうした恐怖感は、当時は珍しいものではありませんでした。

核戦争に対する絶えざる恐怖は、この時代に子どもだったすべての世代の背景を形作りました。

私の友人たちの両親の多くはアメリカ合衆国政府の職員として働いていましたが、私と同じ恐怖に脅かされていました。

私たちは電話でおやすみを言い合いましたが、高校のボーイフレンドと私は時々、明日自分たちは生きていられることができるかどうかという疑問を口にすることがありました。

私たちの青春時代は常に死という問題と向かい合い、それは人間という種の絶滅によるものでした。

中には少しおかしくなってしまう人すらいました。

私たちは他に例のない戦時意識の中で暮らしており、そんな中で自分たちの将来について計画することは何の意味も無いように感じていたのです。

 

▽21世紀の私たちの現実

 

ベビーブーマー世代の恐怖は現実のものにはなりませんでした。

しかしドナルド・トランプはその恐怖を復活させただけではなく、2017年に北朝鮮との間で核兵器を用いた戦争が始まる危険性を現実の世界に持ち込みました。

世界の各所で行われている調査や分析の結果は、そうした危険が現実のものになる可能性は低いという事を示唆しています。

トランプは今年8月9日に北朝鮮に対し、もしアメリカを脅迫するようなことを再度行ったら「世界がかつて見たことの業火と怒り」によって国土を焼き払うといった類いの脅しを口にしなくなりました。

あるいは、アメリカ本国や同盟国を北朝鮮の攻撃から防衛しなければならない事態に立ち至った場合には躊躇無く北朝鮮の全土を破壊するという、周囲を唖然とさせた国連での約束も実行してはいません。

どちらの場合についても政治学者のスティーヴン・ブラムス氏が指摘していますが、トランプの言い方では核兵器の使用に踏み切る基準をあまりにも曖昧にしているため、どのような事態になれば一線を超えることになるのか理解できません。

 

2017年10月13日のニューヨークタイムズ紙によると、北朝鮮の政府当局者から次のような情報を入手したと伝えています。(https://www.nytimes.com/2017/10/13/...

「西太平洋におけるアメリカ軍の軍事的領域であるグアム周辺に、北朝鮮が弾道ミサイルを撃ち込む脅威が再燃している。」

現時点でトランプからは何の反応もなく、北朝鮮の脅威が何を意味するものであろうと核兵器を使った報復などは考えられないということだけは言えます。

人類にとって幸いなことに、トランプは当初の過激な発言については後に撤回するか、あるいは別の対応を選択するしか無い状況に置かれているようです。

 

《3》に続く

https://mondediplo.com/openpage/trump-s-nuclear-dreams

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トランプはアメリカ国内で共和党の議員に、北朝鮮は未だアメリカ国内に目標を設定できるだけのミサイル技術を持っていないという前提で、

「戦争になっても、今度は死ぬのはアメリカ人ではなく、朝鮮半島と日本列島の人間たちだ。」

という意味の発言を行ったと一部で伝えられました。

こんなアメリカ大統領はおそらく史上初めてであり、『アメリカ・ファースト』というキャッチフレーズの持つ意味が

「そこまでのものなのか…」

と、絶句せざるを得ません。

 

根底にそんな考えを隠し持つ大統領の国から、

「さあ、やるぞ!」

とばかりに、進んで高額な兵器を大量に買い入れる現政権の姿勢には強烈な違和感を感じます。

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ほんとうの「今」を知りたくて、ニューヨークタイムズ、アメリカCNN、NBC、ガーディアン、ドイツ国際放送などのニュースを1日一本選んで翻訳・掲載しています。 趣味はゴルフ、絵を描くこと、クラシック音楽、Jazz、Rock&Pops、司馬遼太郎と山本周五郎と歴史書など。 @idonochawanという名前でツィートしてます。
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