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星の金貨 東日本大震災や音楽、語学、ゴルフについて語るブログです。

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【 核兵器開発疑惑の真相に迫る 】《4》

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所要時間 約 7分

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原子力発電所の中で本当は何が行われているのか、1,000㎞話された場所から解析することが可能になる
原発で必要とされる以上の兵器級の濃縮ウランであるかそうでないか、携行装置で判断が可能になる

エコノミスト 9月5日

ECO NUKES01
据置型の探知器はより感度が高くなっています。
同条件で大量の荷物の中から隠された兵器級の核物質を新しい機械が発見する割合は、5年前の5分の1程度から格段に進歩したとカリフォルニア大学バークレー校のフェッター博士が付け加えました。
そして進化したアルゴリズムは核物質から発生られる放射線を、自然界に存在するそれと区別して探知できるようにしました。

さらに探知器はシンプルな操作インターフェースをもち、中にはiPadで動くアプリケーションもあり、こうした事が探知技術の進歩に貢献していると、米国エネルギー省国家核安全保障庁のアン・ハリントン氏が語りました。
これまでは現場の担当者には、その場で探知機器の表示結果を読み取って行動する資格は与えられていなかったのです。

▽ レンジローバー(探査範囲)

しかしこうした技術的な改善も、まだまだ広い範囲に実用化されている訳ではありません。
探知器が効果を発揮するためには、疑わしいものに近づく必要があります。
そしてこうした機器の大部分は密輸などのルートの交通発着地点、すなわち港や国境検問所などに固定されています。
探知機の走査可能範囲は10年間に約100メートル広がるかもしれませんが、これは『能動的反応測定』という技術が進歩するかどうかという不確定さに支配されています。

Nuclear 3
これは高エネルギー物質が中性子や陽子を照射した際の反応によって作り出される、検知することがもっと容易な他の物質を検知する技術です。
ただし問題は、この技術には貨物室に隠れている密航者を傷つける可能性があることです。

しかしその問題は解決済みであると主張しているのは、アメリカのロスアラモス国立研究所から分かれて設立されたカリフォルニア州のディシジョン・サイエンス([意思]決定科学の意味)という企業です。
この機器はミューオン(μ中間子)を検出するため、内容成分は秘密にされているガスが充填された16,000本のアルミニウム管を使用します。
ミューオンは電気を帯びた粒子でもともと大気中に存在するものですが、通過する際、人体はもちろんいかなる物質に対しても有害であったり、傷つけたりすることはありません。

物質を識別する際には、どの特性をどう探し出すかがポイントになります。
物質の電子軌道を測定することにより、ちょうど90秒でプルトニウム、ウラニウムを「薬、タバコ、爆薬、アルコール、人々、空白の一杯」とを識別できるコンピュータがあると語るのは、ディシジョン・サイエンス社の最高執行役員で、元アメリカ海軍調査部門責任者のジェイ・コーエン氏です。
この機械の価格は500万ドル以上というものですが、国境警備当局は一般の密輸品すら見つけ出す高い能力を考えれば、価格の高さは途方もないという程でもないと考えています。
この機械のプロトタイプは、現在バハマのフリーポートで試験的に運用されています。

Nuclear 2
他のグループはミューオン(μ中間子)を探知する機器の開発にも取り組んでいます。
いくつかは粒子物理学実験のために開発されたテクノロジーを使用したスイスにあるハドロン加速器を応用しています。
別のアプローチはニュートリノを見つけ出し、他の物資の成り立ちとどのような相互作用があるかを突き止めようとしています。
ニュートリノは太陽、そして原子炉で生み出される粒子です。

NNSAと他の組織の共同チームはオハイオ州ペインセスヴィルの岩塩坑跡に試験的に作られた『ウォッチマン』と呼ばれる装置の研究開発を行っています。
岩塩坑の中に装置を置くのは、宇宙線とその他の現象に影響されないようにするためです。
この装置は13km離れた原子力発電所で、プルトニウム生産を目的に原子炉を稼働させた場合、そのから放出されるニュートリノを細くするために用いられます。
最終的にこの装置は、1,000km離れた場所の原子力発電所の活動内容を監視することを可能にする予定です。

しかし実際にそうした監視活動を可能にするには、例え相手が有効的な隣国であっても、原子力関連施設に限っては国境付近に設置するよう要請することが必要になります。

それまで秘密にされていた核開発施設の存在が明らかにされた場合、あるいは公表・公認されたりした場合には、イランがそうしたように、国際社会の合意の下で事業を継続するためには国際原子力機関(IAEA)の専門家による査察を受け入れなければなりません。
IAEAの専門家たちが使用する機器も進化しています。

ウラン濃縮
カナダの原子力安全委員会は、綿棒の上に乗っかる程度の少量のウラニウムが発する分光的特徴をレーザーによって解析し、原子力発電に必要な程度を超えて濃縮された事実があるかどうかを突き止める携帯用分光計の試作品を完成させました。

IAEAで保安部門の委員長を務めるラウル・アワド氏がこの装置は3年以内に実用化される予定であり、そうなれば検体をいちいち研究所に送る必要がなくなる程の先例のない能力を発揮するだろうと語りました。

-《5》へ続く –
http://www.economist.com/news/technology-quarterly/21662652-clandestine-weapons-new-ways-detect-covert-nuclear-weapons-are-being-developed?zid=306&ah=1b164dbd43b0cb27ba0d4c3b12a5e227
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【 ガーディアン[目撃]2015傑作選 】

ガーディアン EYEWITNESS 2015
(写真をクリックして、大きな画像をご覧ください)

Eyewitness 8
イスラエルとガザ市の境界線でイスラエルの警官隊と衝突するパレスチナ人のデモ隊。(写真上)

葉の上の朝露。(写真下・以下同じ)
Eyewitness 9
スイス西部のモレゾン山から、アルプス山脈をのみ込む雲海に見入る登山者。
Eyewitness 10
英国、カンブリア州ペンリス近くを流れるエデン川の夜明け。
Eyewitness 11
http://www.theguardian.com/world/series/eyewitness?page=3

【 核兵器開発疑惑の真相に迫る 】《3》

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所要時間 約 7分

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ペンタゴン内に潜む兵器級核物質追跡・解析巨大コンピューターシステム、コンステレーション
世界に張り巡らされた闇の核兵器開発ネットワーク、アクセスしているのは?
秘密裏に核兵器開発を進めようとしている国家、その隠匿手口とは…

 

エコノミスト 9月15日

ECO-NUKE02
▽ 既知の未知数

ネットワークの分析には限界があります。
大勢の人間の中からテロリストを識別するソフトウェアを応用し、秘密の核兵器開発計画を暴き出すことは困難です。
核兵器の拡散には多くの場合テロリストが関わっていますが、彼らの中からさらに核兵器の拡散に関わっている人物を特定できるようにソフトウェアの機能を拡張するためのデータはほとんどありません。

さらなる問題として、闇の世界のネットワーク同士がどうつながっているか天文学的なパターンを計算するのはコンピュータといえど大きな負担になります。
これまで核兵器開発には関係が無いと思っていた金属材料や化学物質に、核兵器製造の材料として使える可能性があるという新たな可能性が明らかになると、問題は一層複雑になります。

疑惑を持たれている国々は、ネットワークとの接触機会を減らすことにより意図を隠すことができます。
核兵器開発疑惑の中心にいる国のひとつ、北朝鮮では遠心分離施設の存在を秘密にしておくため、核燃料その他は闇市場で手に入れ、必要な部品などは国内で製造しました。

広島13
イランは核兵器開発技術を自国に根付かせようとしています。
そのためにネットワークの分析だけではイランの核開発計画の中身をつかめなくなってきている、こう語るのは、オレゴン州ポートランドのリード・カレッジの政治科学者、アレキサンダー・モンゴメリー氏です。
同氏によればイランはウラン燃料を自国内で採掘し、通常遠心分離機を製造する場合に必要とされる特別なマレージング鋼を輸入する代わり、炭素繊維でローターを制作生産したのです。

こうした問題すべてをからめとる上で、巨大コンピューターシステムが効果を発揮すると語るのは、アメリカ国防総省脅威縮小諮問委員会の副委員長ミリアム・ジョン博士です。
それこそが現在、アメリカ国防総省(ペンタゴン)が『コンステレーション(星座)』と呼ばれている巨大システムを構築している理由なのです。
ジョン博士はコンステレーションについて、あらゆるデータを総合・分析する「統合エンジン」だと語ります。
たとえばコンピュータは、数年間に撮影された衛星写真と赤外線写真をすべて調べ上げ、核関連施設が建設、あるいは変更された場所を特定することが可能です。

ルブミン原発廃炉
コンステレーションが目指すのは無数の調査結果をつなぎ合わせ、一連の有益な情報としてまとめ上げることです。
例えば大学で原子力工学を教えていたはずの複数の核科学者たちが、引退する年齢でもないのに教育現場から姿を消し、核兵器開発の疑いがある施設の通勤圏内に居を移した場合など、調査対象として浮上するのです。

それでもこれまで実際的効果を発揮してきたのは、地球を周回している探査衛星による写真撮影と温度検知でした。
衛星の軌道が低ければ低い程、多くの事を明らかにすることができます。

北朝鮮の技術援助を得て、シリアが外見通常と変わらないものの、床面を思い切り下げた建物を建造し、秘密裏に原子炉を製造しようとしたことがありました。
外側から見る限り、その屋根の高さから原子炉を収納することなどは不可能と思われました。

原子炉に必要不可欠な冷却塔については、川の近くの貯水池まで地下を水道管でつなぎ代用させました。
この時原子炉の存在を突き止めたのは衛星探査ではなく、人間による諜報活動だった、こう語るのは元国家安全保障会議のメンバーであったトービー博士です。
結局この施設は2007年の完成直前、進入してきたイスラエルの戦闘爆撃機により爆破されました。

Cosmo4
オーストラリアの専門家であるカールソン氏は、特殊なセンサーの開発により、宇宙からでもフッ化水素酸やフッ素の漏出を突き止めることがこの10年で可能になったと語りました。
しかし放射線の漏出によってウラン濃縮施設などの存在を突き止めるには別種のセンサーが必要であり、この場合はもっと調査対象に近づく必要があります。

カリフォルニア大学バークレー校の物理学者であるカイ・フェッター博士は、中性子、アルファ、ベータ、ガンマの各放射線の漏出程度は、そこにある放射性物質がどれだけのエネルギーを有しているかによって変化すると語りました。
高エネルギーの物質がすなわち核兵器の材料になります。
しかし兵器級のウランとプルトニウムであっても、現存する装置を使って空間線量を計測するやり方では、少なくとも対象物質の2、3メートル以内に近づかないと検知することは不可能です。
(従来型の爆薬を混ぜて製造される「放射能拡散兵器」に使用される放射性物質は、もっと離れた場所から検知することが可能です。)
また、銅によって核物質を密閉されてしまうと、発見はより困難になります。

010502
ウィーンに本部を置くNPO団体で軍縮と核拡散防止対策を専門とするシンクタンクの責任者であるエレーナ・ソコーウァ氏は、これまで摘発された兵器級ウランあるいはプルトニウムを輸送途中で摘発したこれまでの20以上のケースでは、探知器の警報によって発見された例は2、3に留まらないと語りました。

 

-《4》へ続く –
http://www.economist.com/news/technology-quarterly/21662652-clandestine-weapons-new-ways-detect-covert-nuclear-weapons-are-being-developed?zid=306&ah=1b164dbd43b0cb27ba0d4c3b12a5e227

【『従軍慰安婦』への視点 : 癒しがたい傷を癒やすことへの第1歩 】

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太平洋戦争中の残酷な歴史の中でも、従軍慰安婦にされてしまった女性たちの悲惨な境遇は長く記憶されるべきものである
『慰安婦問題の経緯』は種々様々であったことは想像できる、しかし重要なのはその先にあった人間として耐え難い苦しみの方
領土問題が先鋭化し、国家主義者たちが地域の安定をかき乱そうとする状況下、引きずって来た過去の清算は、国家間の融和を導く

 

社説 / ガーディアン 2015年12月28日

慰安婦像ソウル
最高で200,000人に上る主に朝鮮半島出身の女性が、第二次世界大戦中、性的な強制労働者として使役されました。
そして今、ついに日本が謝罪しました

彼女たちは「従軍慰安婦」と呼ばれています。
しかしこの言葉は彼女たちを最も恥ずべき方法で搾取し、その人格を踏みにじった人間たち自身が考えだしたものです。
その人間たちは女性たちをあたかも戦利品のように扱い、性的奴隷へと貶めました。

第二次世界大戦の戦前戦中、最高で200,000人に上る主に朝鮮半島出身の女性が身柄を拘束され、日本軍兵士を相手にするため設置された売春宿に送り込まれました。
その後女性たちが置かれた窮境は、終わることの無い政治的、外交的論争の対象となりましたが、中には彼女たちが強いられた厳しい現実そのものを、否定しようとする動きすら見られました。
太平洋戦争における、そして日本が占領していた諸国、諸地域における残酷な仕打ちの中でも、従軍慰安婦にされてしまった女性たちの悲惨な境遇は長く記憶されるべきものであり、その責任を負わなければならない人間が誰であるかは、時間が経った今でも解明されるべきです。

慰安問題決着
そして戦争が終わって70年以上が過ぎた今、日本と韓国両政府は、この問題について「最終的に、そして不可逆的に決着させる」ことを決定しました。
日本政府は「その責任を痛感している」と断言し、安倍晋三首相は「計り知れない程つらい経験をされたすべての女性に対し、心からの謝罪と後悔」を表明しました。
韓国内では今も「従軍慰安婦」にされた犠牲者の女性46人が存命していますが、彼女たちのために基金が設立され、日本政府は10億円を拠出することになります。
韓国の朴大統領は、日韓両国の「信頼に基づく新たな関係」が構築されることになると語りました。

戦時中の記録についての緊張関係が数十年間続いた後、戦略的な必要性が日韓両国の今回の合意を導き出した点は疑いありません。

軍事的台頭を続ける中国と予測不能の北朝鮮の政治に直面し、日韓両国は安全保障上緊密な協力関係を構築することが不可欠であることを認めるようになりました。
この点については両国の最大の同盟国であるアメリカ合衆国もまた利害を同じくしています。
いつの時代においても、領土問題が先鋭化し、国家主義者たちが地域の安定をかき乱そうとする状況下では、過去から引きずって来た問題に決着をつけることは、国家間の融和を導くことに貢献します。

従軍慰安婦NBC
批判的観点に立てば、日本の謝罪の誠意を疑う見方もできます。
日本はこれまでも謝罪を行ってきました。
しかしこれまでの謝罪は範囲を限定することによって問題を小さくしようとする意図があり、韓国民にとって到底受け入れられないものもありました。

「従軍慰安婦」に対し最大の支援を行っている人々は、今回の合意で日本政府から賠償金という形で直接の支払いを引き出せなかったことについて、最終的に日本側の法的責任がうやむやにされる可能性がある事を残念に思っているかもしれません。
一方で日本側には、これまでの主張が認められなかったと感じている人間たちもいます。

しかし、一歩前進があったことは明らかです。

しかし日本がかつて植民地支配と侵略を行った国々と新たな信頼関係を構築したいのであれば、第二次世界大戦の戦前戦中に軍が行なった残酷な仕打ちの史実と正面から向き合うことは大切なことです。
安倍首相が国内において国家主義を煽っていることは世界的に知られていましたが、今回は長期的視野に基づいて行動したか、あるいは少なくともその手法に円熟の度を加えました。

 


アメリカの圧力に加え、2015年の始めに来日したドイツのアンゲラ・メルケル首相が一役買ったかどうかは、誰にもわからないことです - メルケル首相はドイツが第二次世界大戦中に犯した数々の国家的犯罪とどう向き合ったかに言及し、かつての敵国の要求に誠実に向き合い過去を清算する事の大切さを安倍首相に伝えました。

韓国朝鮮は1910年に併合されて以降、戦争が終わるまで日本の植民地でした。
この間の朝鮮半島の歴史は複雑であり、何が正しいかについてはまだまだ論争が続くでしょう。
しかし当時の日本の支配層の責任は否定できない事実です。
一方で韓国朝鮮の不当利得者や日本の民間人も女性たちに甘言を用いて誘ったり、強制的に売春施設に送り込んだりしました。

これまで外交的な協定が可能にしたのは、国家間の対立する見解に妥協点を見出すことだけでした。2、3年前、1人の韓国の歴史家が、慰安婦となった女性たちの中には貧しさなどから自暴自棄になり、自ら売春施設に身を投じたと報告しました。
しかし疑いようのない事実は、その先にあった人間として耐え難い苦しみの方です。

「慰安」などという言葉は、許しがたい婉曲表現です。
彼女たちが経験させられたのは、一生消すことのできない傷跡を残すことになった残忍な搾取でした。

希孟廬02
事実の存在確認と責任の自覚、この二つが実現したという点において今回の合意は重要なものになりました。

現存する88歳の元慰安婦の女性がこう語りました。
「振り返ってみると、私たちは基本的人権を奪われ続ける人生を送らされてきました。私たちは本当に長い間待ち続けてきたのです。」

http://www.theguardian.com/commentisfree/2015/dec/28/the-guardian-view-on-japan-south-korea-and-comfort-women-one-step-towards-healing-the-wounds-of-the-past
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前回、ニューヨークタイムズの記事をご紹介しましたが、『慰安婦問題』に関する正論中の正論ともいうべきものに出会いましたのでご紹介します。
私自身も歴史の常識から、女性たちが慰安婦にされてしまった経緯には強制徴用から自分から身を売った例まで、その両方があると考えていました。
そしてその割合など200,000人という規模から考え、到底正確な数値は出せないだろうとも考えています。
しかし本文中にある通り、重要なのは女性たちの「人間として耐え難い苦しみの方です。」
日本の江戸時代には、女郎として身を売られることについて『苦界に身を沈める』という表現がありましたが、慰安婦の女性たちの状況はさらに悲惨であった可能性があります。

かつてご紹介した記事の中には「女性たちは日に何回も強姦された。」という表現がありました。
男女の差はあってもそうした状況がどういうものであるか考えるとき、思い浮かぶ言葉は『絶望』しかありません。
「女たちは自分から身を売ったんだ」と主張し日の丸をかついで練り歩く人間たちに、同じ人間としてこのことに思いを巡らす想像力はあるのでしょうか?
問題の性質が性質だけに、彼らに対する世界の嫌悪はドイツのネオナチに対する以上のものがあることを、そして一般の日本人も同質の感覚を持っていると見なされる恐れがあることを、私たち日本人は考える必要があると思います。

【 日本と韓国の『従軍慰安婦』に関する議論の『決着』】《後編》

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所要時間 約 7分

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この合意は、自分たちの願いを完全に裏切る外交的な陰謀だと憤る元従軍慰安婦の女性たち
経済面と安全保障面での協力関係の強化し、対中国「力による均衡」の実現を目指す日韓両国の首脳
女性たちの強制徴用に大日本帝国が国家として直接関わっていたかどうか、長く続いてきた議論には言及せず

ニューヨークタイムズ 12月28日

NYT Comfort 1
今回の合意に基づき日本政府は韓国政府が立ち上げる基金に830万ドルを提供し、基金は従軍慰安だった女性たちへの医療、介護、その他の援護措置を実施します。
両国の報道によれば、当初日本側はこれほどの金額は想定していなかったとみられます。
しかし従軍慰安婦として使役された女性たちはこの援助を受け取りたがらないだろうというのが、韓国政府当局者の観測です。

しかし日本政府が国家予算から基金に資金提供することは、明らかな前進です。
1993年の謝罪によって生み出された基金は、民間の寄付を募って運営されましたが、韓国内では完全平等に提供されたわけではありませんでした。
60人の韓国人女性が基金から財政援助を受けましたが、他の多くはそれを受け取りを拒否しました。

日本政府も韓国政府から、この問題について二度と日本政府を非難しないという大きな譲歩を引き出しました。

歴史家は韓国を中心に少なくとも数万人の女性が、1930年代初頭から1945年の間売春宿に強制的に送り込まれました。
その中、戦争を生き延びることができた女性たちは恥辱から沈黙を守り、そして多くの女性が決して結婚しようとはしませんでした。

従軍慰安婦02
1990年代になってやっと、当時のことを証言する女性が出始めました。
最終的に238人の女性が韓国内で名乗り出ましたが、現在なお生存しているのはわずか46名になりました。
今回の合意に対するこれらの女性たちの反応は、歓迎からは程遠いものでした。

記者会見で88歳のリー・ヤン・スーさんは次のように語りました。
「この合意は従軍慰安婦にさせられた人々の意向を反映したものではありません。」
「私は完全に無視します。」
彼女は今回の合意が日本に法的責任を認めさせ、正式に賠償金を提供させるという女性の長年の要求からほど遠い不完全なものだと語りました。

さらに彼女は市民グループが2011年にソウル市内の日本大使館の前に建立した従軍慰安婦を象徴する女の子の像の撤去にも反対すると語りました。
交渉の間、日本は像の撤去を要求して来ましたが、28日韓国政府はこの問題について女性たちとの協議を行うと語りました。

NYT Comfort 3
韓国の市民グループ『日本軍の性的な奴隷制度のために強制徴用された女性のための韓国会議』は今回の取引について「衝撃的なもの」だと語りました。
「韓国は1ペック(約8.8リットル)を得ただけなのに、日本には1ブッシェル(約35リットル)も与えるなど、屈辱的な外交もいいところです。」
グループは声明でこう述べました。
「この合意は、従軍慰安婦と韓国の人々の願いを完全に裏切る外交的な陰謀です。」

韓国の朴大統領はその声明において、重要な取引相手である隣国日本との関係を改善する必要性に触れ、より大きな視野の中で今回の合意を受け入れるよう韓国国民に訴えました。
そして従軍慰安婦であった女性たちが亡くなってしまう前に、この問題の解決を望む韓国政府の立場について強調しました。

日本はこれまで、韓国に対する植民地支配から生じたすべての法律問題は、1965年の条約で解決済みだと主張してきました。
両国の交渉担当者は28日、漠然とした表現が用いられた合意書に妥協点を見出しました。
この合意書は日本が認めた『責任』について、合法的だったのか、そして道義的にはどうだったのか、いずれについても明確にはしていません。

反安倍 1
岸田外務大臣は日本政府の拠出金が、法的な賠償金とは異なることを明言しました。
さらに合意書は女性たちの強制徴用に大日本帝国が国家として直接関わっていたかどうかという、長く続いてきた議論については触れませんでした。

日本国内の当初の反応は概ね好意的でした。
1995年、国内の保守層の反対を押し切って第二次世界大戦中の日本の歴史的な謝罪をおこなった村山富市元首相は、安倍首相が「良い決断を行った。」と感想を語りました。
安倍首相が率いる自由民主党の右翼メンバーである稲田朋美氏は、韓国との論争を沈静化させることにこの取引の価値があると示唆しました。
最大野党の民主党は合意の成立を歓迎しましたが、安倍政権が再び歴史を歪曲する人間たちを支持するようなことになれば、せっかくの和解も壊されていくことになると警告しました。

東京財団研究班の上級研究員である渡部恒夫氏は、安倍首相はこれまでしばしば擁護してきた歴史を書き換えてしまう攻撃的姿勢を引っ込め、隣国韓国と経済面、安全保障面での関係を強化するため、現実的な選択を行ったと語りました。

そして安倍首相が外交上の最終目標に到達する上で韓国との安定した関係を築くことは、不可欠だったと渡辺氏がつけ加えました。
台頭する中国との勢力均衡を保つため、同盟関係を強化することです。
「最終的に安倍首相が信じるのは、力による均衡です。」

従軍慰安婦NBC
アムネスティ・インターナショナル東アジア部門の研究者である庄司祥加さんは、今回の合意がかつて性的強制労働を強いられた女性たちが正義を実現するための戦いの、幕引きであってはならないと語りました。
「今回の交渉に当事者の女性たちは参加することができませんでした。そして彼女たちを、正義の実現より政治的功利主義を優先した取引の犠牲者にしてはなりません。」

 

http://www.nytimes.com/
「comfort-women-south-korea-japan」

【 日本と韓国の『従軍慰安婦』に関する議論の『決着』 】《前編》

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慰安婦問題は、当時の日本軍の関与の下、多数の女性の名誉と尊厳を深く傷つけた問題であり、このような観点から日本政府は責任を痛感
日本国の内閣総理大臣として改めて、慰安婦として数多の苦痛を経験され、心身にわたり癒しがたい傷を負われた全ての方々に対し心からおわびと反省の気持ちを表明

 

ニューヨークタイムズ 12月28日

NYT Comfort 1
第二次世界対戦が終了して70年以上が経過した韓国と日本の外務大臣が、韓国が日本の統治下にあった間、大日本帝国陸軍の性的奴隷として強制使役された女性の問題について「最終的かつ不可逆的決着」に合意しました。
この合意は日本が謝罪とともに、かつて従軍慰安婦出会った女性たちへの補償として830万ドルを拠出するものです。
この合意はアメリカ合衆国の重要な同盟国である日本と韓国の間の、外交関係の行き詰まりの一つを取り除くことが目的でした。

いわゆる従軍慰安婦問題は、日本により韓国併合が行われた1910年から、1945年第二次世界大戦に日本が敗北するまでの日本統治下の韓国における、最も辛い記録になりました。

日本と韓国の外務大臣はソウルで合意内容について声明を発表、両国が今回の決着を「この問題の最終的かつ不可逆的なもの」と考えると語りました。
今回の合意による謝罪と支払いはこれまでの基金とは異なり、直接日本政府が直接行うことになりますが、この形が取られたということはすなわち、日本の安倍首相が妥協に応じたことを意味します。
軍国主義日本が過去に行った侵略や残虐行為について、安倍首相は改悛の意を表明することを度々拒否してきました。

NYT Comfort 2
今回の取引の成立は韓国内では朴大統領の与党、そして米国のジョン・ケリー国務長官の賞賛を勝ち取りました。
しかし底流に未だに根強い反日感情がある韓国内では、野党の政治家から、そして自身が従軍慰安婦として使役された女性たちの一部から、合意内容は不十分であるとの批判が巻き起こりました。
「私たちが一番の望むものはお金ではありません。」
従軍慰安婦として使役された経験を持つ88歳のリー・ヤン・スーさんがこう語りました。
「私たちが要求しているのは、日本が犯した犯罪に対する公式な補償を行うことです。」

アメリカ合衆国は、日本と韓国にこの問題に関する論争に終止符を打つよう、繰り返し迫りました。
アメリカは東アジア地区で軍事的台頭を続ける中国、そして核兵器開発をつつける北朝鮮と対峙するために日韓両国との緊密な連携を必要としており、この問題の存在が何としても目障りだったのです。
そして韓国の朴大統領も日本の安倍首相も、両国の国交正常化50周年と第二次世界大戦終結70周年とが重なる2015年のうちに合意形成を終わらせることを切望していました。

従軍慰安婦02
日本の岸田外務大臣は12月28日、合意形成の後韓国ソウルで次のように表明しました。
「慰安婦問題は、当時の軍の関与の下に、多数の女性の名誉と尊厳を深く傷つけた問題であり、このような観点から、日本政府は責任を痛感しています。」

岸田外務大臣はさらに次のようにつけ加えました。
「安倍総理大臣は、日本国の内閣総理大臣として改めて、慰安婦として数多の苦痛を経験され、心身にわたり癒しがたい傷を負われた全ての方々に対し、心からおわびと反省の気持ちを表明します。」

韓国大統領府は岸田外務大臣の発言の後、安倍首相が電話で朴大統領に対し、同じ内容の謝罪を行ったことを明らかにしました。
これに対し朴大統領は安倍首相に次のように語ったと伝えました
「日韓両国がこの合意に基づく信頼関係を構築し、新たな関係を築くために密接に協力することを期待します。」

関係改善へと動き出す以前、朴大統領は安倍首相との首脳会談の開催を拒否し、日本政府に対し、従軍慰安婦の主張に正面から対処するよう、繰り返し主張してきました。

村山・河野
日本政府は1993年の声明において従軍慰安婦問題の問題の存在を公式に認めたことを含め、これまでも謝罪を行ってきましたが、28日の合意は安倍政権がその立場を微妙に変化させたことをうかがわせるものでした。
国内の右翼からの圧力を受け、昨年まで安倍首相とその周囲は日本政府が行った謝罪を破棄するべく、従軍慰安婦問題の存在を立証する根拠を見直すことに同意していたはずでした。

 

〈 後篇に続く 〉

http://www.nytimes.com/

「comfort-women-south-korea-japan」
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【 ガーディアン[目撃]2015傑作選 】

ガーディアン EYEWITNESS 2015
(写真をクリックして、大きな画像をご覧ください)

Eyewitness 5
英国。レイク・ディストリクト国立公園。(写真上)

ハルバーゲート・マーシュ、ノーフォーク、英国。(写真下・以下同じ)
Eyewitness 6
ロシア、カムチャッカ半島の火山の上に現れたレンズ雲。
Eyewitness 7
http://www.theguardian.com/world/picture/2015/dec/20/eyewitness-liwa-oasis-abu-dhabi

このサイトについて
ほんとうの「今」を知りたくて、ニューヨークタイムズ、アメリカCNN、NBC、ガーディアン、ドイツ国際放送などのニュースを1日一本選んで翻訳・掲載しています。 趣味はゴルフ、絵を描くこと、クラシック音楽、Jazz、Rock&Pops、司馬遼太郎と山本周五郎と歴史書など。 @idonochawanという名前でツィートしてます。
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