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星の金貨 東日本大震災や音楽、語学、ゴルフについて語るブログです。

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【 文部科学省の国立大学運営指針に猛反発 】《後篇》

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所要時間 約 7分

人文科学と社会科学の否定には、狭い専攻分野にしか興味を示さない偏った人間を作りだす危険がある
すぐにビジネスに役立たないという理由で社会学と哲学をやめさせるなど、信じられないほど近視眼的
文学、歴史学、哲学、社会科学の研究は、公平な視点で社会情勢と政治情勢を観察できる人間をつくるために不可欠

ジュリアン・ライオール / ドイチェ・ヴェレ(ドイツ国際放送) 11月6日

日の丸
文部科学省が示した方針に各界が反発する中、最も厳しい批判のひとつがジャパンタイムズの社説でした。
「人文科学と社会科学の研究を進めることでは、目に見える経済的成果をすぐには得られないかもしれません。この二つを否定することは、自分の狭い専攻分野にしか興味を示さない偏った人間を作りだす危険を冒すことになるでしょう。」

『批判的な目』

「文学、歴史学、哲学、そして社会科学の研究は、批判的な目で社会情勢と政治情勢を見ることができる人間をつくるためには不可欠です。」
ジャパンタイムズの社説はさらに次のように続けました。
「こうした意味から、下村文部科学大臣が行なおうとしているのは、日本政府の政策を批判することなく受け入れる人間たちを作る、そのための取り組みである可能性すらあります。」

大学キャンパス02
方針に対する批判は文部科学省内でも自民党内でも問題になりました。
これまで自民党内の幾人かは教育現場に対する介入を行い、教育プログラムに愛国教育を実施しようとしない教育機関を攻撃してきました。
下村文部科学大臣の今回の通達は、日本の教育現場においてすでに危ういものとなっている自由主義を、この際葬り去ってしまおうとするさらなる一撃となったのです。

一斉に批判が巻き起こったことに対し文部科学省はこの通達の取り下げは否定していますが、対応には変化が見らます。
同省のスポークスマンは10月1日付で「これまでの誤解を解消する」ための新たな文書を公表したと、ドイチェ・ヴェレの取材に答えました。

文部科学省が新たに公開した文書は、最初の方針に反発して展開された主張の多くが「事実とは異なる」と主張し、以下のようにコメントしています。
「今は教養学部時代に柔軟な思考によって解決を見つけ出す能力開発の重要性が高まっている時代であり、決まった答えが無くとも与えられた問題の答えを見つけ出す自主的な能力開発が求められています。」

▽納得できない学術関係者

しかし日本国内の学術関係者は、文部科学省の主張には納得していません。

学生の抵抗
「ビジネス社会で即戦力として働ける学生を、教養学部時代に育成しようというのが、そもそもの発想の原点だったと思います。しかしそれでは大学が大企業や産業機構の一部になってしまうようなものです。こうした理由から、大多数の大学は文部科学省の方針に強く反対しているのです。」
ドイチェ・ヴェレの取材に対し、北海道文教大学で通信・メディアについて教えている渡辺淳(まこと)氏がこう答えました。

「反発の大きさとその拡大に驚いた文部科学省は、結局撤回せざるを得なくなりました。」
渡辺氏はそう確信しています。
「自由民主党と文部科学省内の一部の人間が、通達の内容を良い考えだと判断したことは明らかです。しかしすぐにはビジネスに役立たないからという理由で社会学と哲学のような学問を廃止するなど、信じられないほど近視眼的です。」

「幸いにも日本の社会は文部科学省の官僚と政治家に対し、ビジネスと金儲けだけが社会の価値でのすべてではないという事実を突きつけました。
渡辺氏はこう付け加えました。

しかし、自らの領域が将来的に廃止の対象にされるかもしれない国公立大学の研究者の中に、今回の通達について、そのすべてには反対していない人々もいます。

日本雑踏
「文部科学省の通達には多くの人々が反対していますが、私自身はそれ程の深刻な影響があるとは思っていません。」
福井県立大学で国際関係論を専攻する島田洋一教授がこう語りました。
「私は文部科学省の担当者と話をしましたが、彼らは大学卒業生の就職先の確保を最優先に取り組んだ結果だという事を、私に保証しました。」
「私は哲学やフランス文学を専攻する学生が職を得るのは簡単なことではないと思っていますし、彼らが社会に大いに貢献しているとも思えません。文部科学省の取り組みは、彼らにとっても恩恵があるはずです。」

〈 完 〉
http://www.dw.com/en/backlash-prompts-japan-to-rethink-controversial-university-policy/a-18831857
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【 足止めされる難民たち 】《後篇》

アメリカNBCニュース 11月23日
(写真をクリックして、大きな画像をご覧ください)

難民11
11月22日ギリシア、イドメニ村、マケドニアとの国境で立ち往生しキャンプで火を焚いて暖を取るモロッコからの難民。(写真上)

11月22日ギリシア警官に通行を許可され、マケドニアに向かう難民の家族。(写真下・以下同じ)
難民12
難民を押し返そうとするギリシアの警官。
難民15
マケドニア領内に入った後、難民登録を待つ母子。
難民16
イラク、シリア、アフガニスタン以外の難民の受け入れを拒否され、抗議の声を挙げる難民。
難民17
治安警察に許可を受け、マケドニア領内に入る母子。
難民18
マケドニア領内に入った後、他の子供たちと一緒に難民登録を待つ女の子。
難民19
http://www.nbcnews.com/storyline/europes-border-crisis/europe-clamps-down-borders-leaving-migrants-stranded-n468376

【 文部科学省の国立大学運営指針に猛反発 】《前篇》

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所要時間 約 7分

「国立大学は社会科学・人文科学を廃止して、法律や経済の専門教育機関に転換せよ」文部科学省が指示
「文部科学省の方針に従わない国立大学については、給付金等を減額する」文部科学省が半ば脅迫的要求
日本の高等教育を狭い分野に限定しようとする文部科学省方針に対し、実業界が望むのはその正反対

ジュリアン・ライオール / ドイチェ・ヴェレ(ドイツ国際放送) 11月6日

日の丸
日本の文部科学省は、国立大学に対し哲学や政治学のような学問の廃止を命じていたとする報道は誤ったものだと主張しています。
しかし実際には26の大学で学科の見直しについての検討が進められています。

今年6月日本国内の86の国立大学の全てに、下村博文文部科学大臣名で書簡が送付されました。
そこには明確な指示が記載されていました、あるいはそう解釈出来る内容が記されていました
下村書簡に記されていたのは、大学当局に対し[社会科学部]や[人文科学部]といった分野の組織を廃止するか、あるいは社会的ニーズの高いものに転換するという「積極的な処置」の要求でした。

具体的には国の予算を使って運営されている各大学は、教員養成あるいは文系の場合には経済学や法学系の専門家の育成に専念するよう求めるものでした。

下村
こうした働きかけを正当化する根拠として、下村文部科学大臣は「大学就学世代人口の減少、人的資源への需要、国立大学の機能を考慮した」上での措置であることを記しました。
さらに下村大臣は各大学のそれぞれの研究機関は、日本政府の資金提供に頼らなければ存続は不可能なはずだと、その通達において念を押したのです。

この脅迫的とも言える要求の趣旨は、誤りなく大学側に伝わりました。
26の大学がこれからの数年間で人文科学と社会科学プログラムを段階的に廃止していくという方針を明らかにしたのです。

▽拡大していく反発

しかし下村文部科学大臣が明らかにしたこの方針に対し、産業界、学界、メディア、そして社会は直ちに反応しました。
そして月を追ってその反応は大きくなっていきました。

大学キャンパス
国立大学協会と日本学術会議は、大学運営を日本政府の政策に沿わせることにより、経済的恩恵を受けられるようにするという方針に反対する立場を明らかにしました。
6月に公表された下村文部科学大臣のメッセージは、大学の各機関が日本政府が提供する資金に依存しているという事実をことさらに強調していました。

これに対し、日本学術会議は次のような幹事会声明を公表しました。
「一層包括的な知識基盤を築き上げるために、自然科学に加え、人文科学と社会科学がより密接に連携していく必要性が、今日ほど広く理解されていることはかつてありませんでした。世界が抱える今日的課題に対処していくためには、これらは大切なことだと考えます。」
「この点に加え、人材を育成するという側面からも人文科学と社会科学を欠かすことはできません。」
学術会議声明はこう述べ、次のように強調しました。
「人類のこれからのあるべき姿と人間社会がどう機能すべきかについて、それを相対化し批判的に省察する、人文・社会科学の独自の役割に注目すべきです。」

日本雑踏
日本の企業団体であり、政治的圧力団体である経団連の榊原会長の反応も迅速なものでした。
日本のすべての高等教育を狭い分野に限定しようとする日本政府の方針について、経団連が望むのはその正反対だとする声明を明らかにしました。
榊原会長は日本企業が求めているのは文部科学省が示したような人材ではなく、自然科学や人文科学の垣根にとらわれることなく『異なる分野を総合的に理解』し、それを把握することによって様々に機能し得る学生であると記しました。

〈 後篇に続く 〉
http://www.dw.com/en/backlash-prompts-japan-to-rethink-controversial-university-policy/a-18831857
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安倍政権の教育現場への介入については、【 安倍政権下、教科書に突きつけられる『国家主義史観』記載の要求 】ニューヨークタイムズ( http://kobajun.biz/?p=25854 )等の記事をご紹介してきました。
ここに来てさらに明らかなのは、【 ユネスコにもうカネは出さない?】ガーディアン( http://kobajun.biz/?p=25697 )の記事でも指摘された『いう事を聞かない奴には金はやらん!』というその政治姿勢です。
カネをやるやらないで、その国の学問のあり方まで変えてしまおうとする姿勢には、疑問以上のものを感じます。
しかもそのカネたるや、出所は私たち国民の税金なのです。

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【 足止めされる難民たち 】《前篇》

アメリカNBCニュース 11月23日
(写真をクリックして、大きな画像をご覧ください)

難民31
大量の難民の流入を受け、ヨーロッパの玄関口になっているギリシャ、マケドニア(旧ユーゴスラビア)の2か国がシリア、イラク、アフガニスタンの3カ国の出身者に限る措置をとるようになってから、大量の難民が足止めされる事態となっています。
11月22日、マケドニアの警官隊に足止めされるイラン出身の難民。(写真上)

上半身裸になって大声でスローガンを叫ぶモロッコ、イラン、パキスタンなどの難民。(写真下・以下同じ)
難民32
11月23日、自分たちの唇を縫い合わせ、抗議の意思表示をするイラン難民。
難民33
11月23日、足止めされギリシャのイドメニ村でキャンプを続ける難民たち。
難民34
マケドニアの治安警察官の前に座りこむイラン難民。
難民35
マケドニアの治安警察隊の様子を見つめる少女。
難民36
http://www.nbcnews.com/storyline/europes-border-crisis/europe-clamps-down-borders-leaving-migrants-stranded-n468376

【 中国経済の減速と日本経済の不況転落 】《後篇》

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所要時間 約 7分

中国人観光客による『爆買い』、昨年比で倍以上の来日、しかし消費行動には陰りも見え始めた
安倍政権の経済政策が、日本経済が向かう方向を変えることができるとは考えられない
大企業とそこに連なっている投資家と、中小企業や一般庶民との間にははっきりと溝ができた

ジョナサン・ソブル / ニューヨークタイムズ 11月16日

日本中小企業機械製造
こうした影響は、パッケージツアーでやって来た中国人観光客が有名ブランドの衣類、ハンドバッグや電子機器などを大量に買い求めるためにやって来る、東京の銀座などの日本の商店街にも表れ始めています。
日本への観光旅行の爆発的ブームは、今年の9月まで中国本土から380万人を連れてきました。
昨年の同期間と比較すると、倍以上の人数です。
彼らの買い物意欲の旺盛ぶりは、日本語に新たに『爆買い』という単語を加えることになりました。

董長垣さんは、今年9月に電子機器のチェーン店であるラオックス銀座店に新たに雇用された中国人社員の1人です。
ラオックスには中国人の買い物客のために、ふさわしい空気清浄器、暖房式便座、そしてハイエンドの炊飯器を選ぶアドバイスをするため20~30人の中国の従業員がいます。
董さんによれば、友人や親せきのおみやげにするため、こうした製品を
「一度に4台購入する人もいます。」
中国経済の減速とは関係なく、円安による中国人観光客の買い物意欲はまだまだ旺盛だと董さんは言います。

日本経済
ある日の昼下がり、同じ銀座の小さな靴店では、およそ15人ほどの中国人買い物客が最近売り出されたばかりの商品を吟味していました。
店長の川島和浩さんは中国人買い物客の数は変わらないものの、2、3ヶ月前と比べると使う金額は明らかに減少していると語りました。
「以前は手当たり次第に買うと言った状態で、文字通り爆買い状態でした。しかし今では商品を吟味して購入するようになました。」
平均的購入額はひとりの顧客につき5,000円は下がっていると、川島さんは見積もりました。

しかし日本国内の小売業の好調さと観光客の増加は、重工業の不振によって減少した穴を埋めるほどの大きさはありません。
政府が発表した日本の対中輸出額は9月は3.5パーセント減少、2ヶ月連続の減少となりました。
この中の鋼材、自動車部品、産業機械などの幾つかの部門は平均を上回る割合で落ちこみを記録しました。

世界的なカメラメーカー、オフィス用品メーカーであるキャノンを始め多くの日本企業が、この数週間の利益について警戒すべきレベルに落ち込んでいるとの見解をあらかにしました。

また半導体製作機械の供給メーカーに加え新日鐵住金やJFEホールディングスなどの鋼材メーカーは、中国の需要の落ち込みを受け、その業績予想を下方修正しました。

日本経済成長率
「回復には、時間がかかりそうです。」
こう語るのはキャノンの財務部門の最高責任者である田中俊三氏です。
コマツの財務部門の最高責任者である藤塚幹雄氏は、中国の状況に対する同社の見方として、
「まだ底を打ってはいないと感じている。」
と語りました。

中国から吹く逆風は、経済分野において日本政府が上昇への勢いをつくることを一層難しくしています。

安倍首相のアベノミクスの名で知られる3年に及ぶ経済改革プログラム、日本銀行による大規模金融緩和策は持続的な消費者物価の下落に歯止めをかけ、円安誘導を行うことにより輸出企業に恩恵をもたらしました。
失業率は3.4パーセントとこの20年で最も低くなっています。

しかし改革はまだ「やりかけの」ままです。
スタンダード&プアーズの幹部級のグローバル・エコノミストであるポール・シェアード氏はこう指摘し、日本のデフレーションの程度はまだまだ問題がないレベルには程遠く、企業も一般家庭も経済の先行きに対する警戒を緩めてはいないと分析しています。

安部圧力
日本国内の報道によれば安倍政権は日本経済をさらに一押しするため、3兆5,000億円規模の景気刺激策をまとめ上げようとしています。
しかし日本経済を政策によって支えようとする手法は、政治的には慎重を要します。

日本経済を成長局面に向かわせる際の障害を減らすため、安倍首相は消費税をさらに2パーセント引き上げるタイミングを18ヵ月遅らせましたが、2017年4月には消費税引き上げを実現させると公約しています。
財務省は税収を増やすことにより、できるだけ多くの国債の償還を実現したいと考えています。
日本の国債の総残高はその経済規模と比較すると、世界でも最も大きなものになってしまっています。

柔和さんは経営する金属加工会社で働きながら、安倍政権の経済政策が日本経済が向かう方向を変えることができるとは考えていないと語りました。
アベノミクスは経済の食物連鎖の頂点に立つ大企業とその株や債券を持つ投資家を潤したかもしれないが、柔和さんが経営しているような中小企業に対する恩恵はほとんどなかったと彼は言いました。

日本の実質賃金
「大企業とそこに連なっている投資家と、中小企業や一般庶民との間にははっきりと溝ができました。」
柔和さんがこう語りました。
「持っているものを失わないようになんとか我慢するしかない、今はまさにそんな時です。」

※英文からの翻訳のため名前の表記に誤りがある可能性があります。
ご容赦ください。
〈 完 〉

【 中国経済の減速と日本経済の不況転落 】《前篇》

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所要時間 約 9分

2015年第3四半期の日本経済、連続してマイナス成長を記録
日本の資材の大口需要先であった中国の製造業、建設業、鉱業などの成長率、状況は一層厳しいものに

ジョナサン・ソブル / ニューヨークタイムズ 11月16日

日本中小企業機械製造
中国経済の減速が明らかになると、柔和勉さんが経営する金属加工会社のような日本企業は売れ行き不振に陥り始めました。

日本の安来にある柔和勉さんが経営する金属加工会社は、手がけている分野が特殊なため、1,100キロ離れた中国経済の成長のおかげで好調な業績を上げてきました。
柔和さんとその14人の従業員が工作機械を使って精密に作り上げたギヤ、ベアリングやその他の金属部品は、最終的には中国国内の工場で巨大な掘削機械のエンジンに組み上げられます。
その掘削機はこれまで中国国内で、無謀とも言えるペースで行われてきた建設現場で活躍してきました。

しかし今、中国の経済成長は減速し、16日月曜日に公表された第3四半期の日本経済が連続してマイナス成長を記録したことが明らかになったのに歩調を合わせるように、柔和さんのビジネスも落ち込んでしまいました。

コマツ、クボタ、そして日立建設機械のような日本の機械メーカーにおける中国国内でのエクスカベータやブルドーザーの販売実績は落ち込み、その分、部品を供給している柔和さんの会社のような製造業者の販売実績もまた落ち込むことになりました。
建設分野の企業からの注文は今年、40パーセント前後減少したと柔和さんは見積もっています。
柔和さんは中国の経済市場について、次のように語りました。
「現実に間違いなく減速しています。私たちはそのことを実感させられました。」
日本中小企業製造02

日本が経済成長を実現するためには、他の先進国以上に必要とされる要件をきっちり達成する必要があります。
日本は総人口も、労働人口も減少を続けています。

かつては世界を席巻していた日本の家電業界は、今や他の国々の安価な製品に押され気味です。

安倍晋三首相は3年前、日本経済を活性化させるという公約を掲げて政権の座に就きました。
低い失業率や大企業が次々と記録的な額の利益を計上するなどの目だった効果があった一方で、肝心の経済成長と幅広い勤労収入の増加はまだほとんど達成できずにいます。

日本経済は相変わらず崖っぷちの状態にあり、わずかなマイナス要因であっても悪影響が広範に及ぶ可能性があります。
直近の2015年第3四半期には、経済の先行きの見方について慎重になっている各企業は設備投資を手控え、日本経済はこの7年間で5度目となる不況局面に落ちこみました。

Tokyo 7
中国への輸出は急落し、日本経済のマイナス成長を加速させ企業や消費者心理を一層冷え込ませることになりました。
しかし中国経済の減速の影響を受けたのは、日本だけではありませんでした。
中国では経済が減速した結果、原油や鉄鉱石などの需要も減少し、輸入先であるオーストラリア、ブラジル、エクアドルなどの資源輸出国も影響を受けました。
さらには中国の投資に依存する開発途上国もダメージを受け、その経済状況は不安定さを増すことになりました。
日本とドイツは超高層建築に使われる建設機械、そして何千という中国国内の工場で使われる工作機械を供給してきましたが、両国ともこの分野の状況が特に悪くなっています。

日本は「中国のインフラ基盤整備のため必要なすべての製品を供給してきた」
こう語るのは世界的な格付け会社スタンダード&プアーズの幹部級のグローバル・エコノミストであるポール・シェアード氏です。

こうした背景のため、中国経済の減速により日本のダメージが最も深刻なものになる危険性があります。

日本経済成長率
中国経済は崩壊した訳ではありません。
日本が2期連続のマイナスを記録した同じ第3四半期、中国経済は年率換算で6.9パーセント成長しました。
こうした数値は先進各国の状況から見れば、羨望の的であることに変わりはありません。
しかしリーマンショックによる金融不況が頂点に達した2009年以降、最も低い成長率になったことも事実です。

そして特に日本の資材の大口需要先であった製造業、建設業、鉱業などの部門の成長率は、中国全体の成長率と比較して、状況は一層厳しいものになっています。

中国はちょうど10年前、アメリカ合衆国に代わり日本最大の貿易相手国となりました。
家電業界などが目に見えて縮小傾向を続ける中、鉱業用輸送・工作機械製造、織物器械製造や半導体製造業者の対中国輸出は拡大を続け、日本経済の中でとりわけ将来性の高い分野となりました。
この間日本と中国の間では政治的対立などの問題も発生しましたが、互いに依存し合う関係にはそれ程の悪影響は及びませんでした。
しかしながら、経済活動における日本と中国の関係はこの間、変化を続けていました。
最大の問題は中国国内の人件費の上昇です。
人件費の上昇により中国国内に生産拠点を持つ日本企業の利益は低下、その結果タイとインドネシアなどの東南アジア諸国に生産拠点をシフトする企業が目立つようになりました。

Tokyo 6
安価な労働力を求める代わり、日本企業、特に小売り部門の各木々用は新しく裕福な消費者を獲得すべく、中国に押し寄せました。
コンビニエンスストアのチェーン各社やユニクロのような衣料品のチェーン店はいち早く中国国内で販路を拡大して行きました。

主に中国国内で働いている工業デザイナーである椎名智勝さんは、最近上海から帰国しました。
椎名さんは上海市内にオープンする靴のディスカウントショップの設計・建築の指導を行っていました。
「現在中国では、こうした節約志向の消費者向け商品の売れ行きが好調です。」

〈 後篇に続く 〉


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【 11月20日までの報道写真から 】

アメリカNBCニュース 11月20日
(写真をクリックして、大きな画像をご覧ください)

難民11
11月19日、セルビアとの国境付近のマケドニア領内で、検問を待つモロッコ、イラン、パキスタン出身の難民。
旧ユーゴスラビアのマケドニアは、難民の領内通過をシリア、イラク、アフガニスタン出身者に限って認める措置を公表しました。(写真上)

11月19日、マケドニアからセルビアに入国する際、難民が置き捨てていった衣類や身の回りの品々。(写真下・以下同じ)
難民12
11月19日、子どもを抱きかかえる、ギリシャのレスボス島にたどり着いたアフガニスタン難民。
難民13
11月19日、エクアドル、トゥングアフア火山の噴火。
Day11
11月19日、ギリシャのレスボス島に無事たどりついたことを喜び合う両親の前で、涙を流す少年。
シリア難民11
11月20日、ギリシャからの難民の入国をブロックしているマケドニアの警察官の前で、人形を持って立ち尽くす女の子。
国連難民事務所とロイター通信社によると、マケドニアは中東の紛争地帯とアフガニスタン難民にのみ領内の通過を許可し、他のアジア・アフリカ諸国の難民については国境から追い返しています。
シリア難民10
http://www.nbcnews.com/news/photo/today-pictures-november-19-n466636

【 的(まと)を外し続けるアベノミクス 】

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所要時間 約 7分

発表された最新のGDPの数値は、この5年間で日本経済が4度目の不況に転落したことを明らかにした
安倍政権発足以降続く日本の二重不況の解決に、効果を発揮できなかったアベノミクス
本格的構造改革を回避した安部政権は、結局自らアベノミクスの第1第2の矢の効力を減殺

ケイティ・アレン / ガーディアン(経済部) 11月16日

日経平均01
日本は結局、経済を成長させることは出来ないようです。
発表された最新のGDPの数値は、この5年間で日本経済が4度目の不況に転落したことを明らかにしました。

この結果は安倍晋三首相にとっては打撃です。
安倍首相は2012年、いわゆるアベノミクスを看板に掲げ、長く続く日本のデフレーションを払しょくし、弱体化している日本経済を立て直すという公約を掲げて政権の座に就きました。
しかし選挙で勝利した瞬間も日本では2種類の不況が同時進行していました。
安倍政権が行なった派手な宣伝に一度は湧いた日本経済も、結局アベノミクスによって実際には何も改善しなかったことがここに来て明らかになりました。

アベノミクスの中身は、世界第3位の規模を有する日本経済において慢性的に続いている問題を、『3本の矢』、すなわち以下の3つの政策によって改善に向かわせるというものでした。
1.日本銀行による量的緩和策
2.公共事業の拡大のため、政府資金を大々的につぎ込む
3.日本経済の生産性向上と競争力強化のため、広範囲にわたる構造改革を行う

安部圧力
日本の政策担当者が学んだのは、アベノミクスが狙い通りの効果を発揮するためには、これら3つの政策が等しく実現されなければならないという事です。
金融緩和策と大規模公共投資によって時間を稼ぎ、その間により実現が困難な構造改革をするための道筋をつける予定でした。
しかし結局実際に行われたのは、日本政府と日本銀行が金を使えばよいという大規模公共投資と金融緩和だけであり、肝心の構造改革は失敗に終わりました。

進まない民間部門の設備投資や労働者不足のような長年の経済問題に正面から取り組むことを回避した安部首相とその政権は、結局大規模金融緩和についても、大規模な公共工事のための財政出動についても、その効果を減殺することになりました。

[表 : 職業別有効求人倍率の比較(厚生労働省の資料を基にIMFが作成)]
この表を見ると警備員と建設労働者不足していることが解る
アベノミクス有効求人倍率(IMF)

大規模金融緩和による財政刺激策を例として取り上げてみましょう。
政府は出費を促進し、大規模建築プロジェクトを手掛ける企業のため、より良い環境をつくることを望んでいます。
しかし日本では、その建設事業に携わるべき労働者が不足しているのです。
このため企業は労働力の確保のため、四苦八苦しています。

例えれば現在の日本経済は、燃料タンクを満タンにはしたものの、ハンド(サイド)ブレーキをかけたまま車を発進させようとしているようなものです。
財政出動も大規模金融緩和も、こうしたブレーキが日本経済の至る所にあるため、結局は効果を上げることができませんでした。

[表 : 日本の有効求人倍率の推移(厚生労働省の資料を基に作られたIMFの労働白書による)]
日本の有効求人倍率の推移
日本経済の中で、最大の問題が人口問題です。

ドイツなどの他の最先進国と同様、日本の労働人口も新たに労働力として市場に加わる人数より、引退して出ていく人数の方が多い状態が続いています。

日本の生産年齢人口は1990年代半ばから減少を続けていますが、その減少スピードには拍車がかかり、さらに4年前からは人口そのものが減少を始めました。
今や日本の各企業は必要なだけの人間を集められなくなっています。

40カ国以上で企業の採用に関わっている企業であるマンパワー・グループによれば、日本は企業に空席が出来た場合、それを埋めるのに最も苦労しなければならない国です。
世界の平均が38%であるのに対し、日本では83%の雇用主が従業員の採用に困難を感じています。(下の表)
[表 : 雇用者数確保の困難さの程度の世界比較(厚生労働省の資料を基に作られたIMFの労働白書による)]
日本雇用者数確保
日本政府は、子育て世代に対する税制上の優遇措置と育児制度の改善により、人口(少子化)問題に対する取り組みを行っていると主張しています。

しかしこうした出生率の改善が日本経済に好影響を与えるようになるまでは長い時間がかかります。
隣国中国でも一人っ子政策の廃止を宣言しましたが、出生率の改善による経済効果が現れるまで長い時間を要する点では同様です。

いずれにせよ日本が行なった出入国管理方針に関する微調整程度では、労働人口を押し上げるためほとんど効果が無かった事だけは確かです。

もう一つの課題には、これは他の先進国も同じですが、日本の最大の貿易相手国である中国の経済発展の鈍化があります。

中国との外交摩擦と世界的な景気減速による対中国輸出の減少は、もともと低迷している日本国内の経済状況と相まって、もともと慎重だった日本企業の姿勢を増々用心深いものにしています。
低迷する民間部門は、政府に対しもっと積極的な介入を求めています。

日中紛争 1
しかし安倍政権とその支持者は、民間企業こそ低迷する日本経済を成長局面に向かわせるため、もっと取り組みを強化すべきであると反撃しています。
日本政府は、日本企業に対し記録的になっている社内現金留保を取り崩し、賃金の引き上げと設備投資等の資本支出に回すよう求めています。

3本の矢、そのうちの構造改革は最も達成が困難な課題です。
しかしこの5年の間、4度目となるマイナス成長を記録してしまった今となっては、金融緩和策によって市場にカネをあふれさせることが、日本経済復活のための正しい答えでない事だけは明白です。

http://www.theguardian.com/business/economics-blog/2015/nov/16/japan-three-arrows-abenomics-recession-economy-targets-shinzo-abe

【 戦争 : 彼ら自身の中に潜む最悪の敵 : 『傲慢: 20世紀の戦争の悲劇』 】

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所要時間 約 9分

軍部の思い上がり、軍政策の傲慢さが、一般市民を繰り返し地獄に送り込んだ
人種的偏見、ハイパー国家主義・軍国主義、『神州不滅』…日本人に塗炭の苦しみをもたらしたもの
他民族に対するいわれのない人種的偏見・文化的偏見は、きわめて危険な自滅的思考法
著者 : アリステア・ホーン、ヴァイデンフェルト&ニコルソン社

ブッシュイラク戦争
エコノミスト 11月7日

サー・アリステア・ホーンは年老いた賢者です。
この英国の歴史家の多くの著作の中の一冊、アルジェリア戦争とその負の遺産について書かれた本は、イラクに侵攻し4年に渡る占領を続けた挙句、各地で血で血を洗うような反乱が相次ぎ当時窮地に陥っていたアメリカのブッシュ大統領が、最良の選択をするための物言わぬ助言者として常に手元において離さなかったと言われています。
「平和な時代における野蛮な戦争:アルジェリア1954-72」を出版してから30年以上が経った2007年、ブッシュ大統領の執務室に招かれたアリステア卿はその持前の礼儀正しさから、最良の選択はそもそもイラクには手を出してはならないというアドバイスだけは言うのを控えた可能性があります。

91歳になって刊行された彼の最新の著作は、軍事の傲慢さとそれが引き起こした影響、そしてその傲慢さが20世紀の戦争においてどのような結果をもたらしたのかについて語られています。

古代ギリシア人にとって傲慢とは、自信過剰に陥った指導者が神を神とも思わなくなった自己肥大の愚かさそのものでした。
傲慢になった指導者はその後必ず情勢の急変に見舞われ、結局最後には天罰を下されることになりました。

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アリステア卿が主題としたのは、史上名高い将軍や国家主義的指導者が軍事を優先し、強力な軍事力の整備を達成した挙句、その後必ず後継者が自信過剰に陥りそして傲慢になり、国と国民に惨憺たる地獄をもたらすことになった史実です。

著者はこの主題を証明するための戦争や紛争事例には事欠かなかったようです。
しかしアリステア卿は題材を絞り込み、20世紀前半に起きた6つの戦いを選び出しました。
それらの戦いは人類史上、最も多くの血が流されたものでした。

その中に1905年、日本人がロシア艦隊を覆滅した日本海海戦が含まれています。
そして世界的にはほとんど知られていない1939年のノモンハンの戦い。
この戦いでは第二次世界大戦における傑出した将軍の一人であるゲオルギー・ジューコフ将軍が関東軍を撃破、日本はそれ以上の北方への進出を断念せざるを得ませんでした。
そして長期的に見れば成算の無い真珠湾に対する冒険的奇襲のわずか6カ月後、日本はミッドウェー海戦で決定的敗北を喫したのです。

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そしてもうひとつの戦いは1941年、モスクワ郊外におけるドイツの誇るヴェアマハト(ドイツ国防軍)の敗北であり、アリステア卿はこの戦いが『緒戦の終わり』であったと見ています。
第二次世界大戦における太平洋戦線、ヨーロッパ戦線において、軍の誇大妄想がその後敵味方併せてどれ程の悪影響をもたらすことになったか、憂鬱な報告が続きます。

その最初は1950年、ダグラス・マッカーサー将軍が虚栄心に突き動かされるようにして38度線のヤルー川を強行突破した結果、中国軍の朝鮮戦争への参戦という悲惨な結果をもたらしました。

第2はその4年後、ベトナムの民族解放戦線・ベトミンのヴォー・グエン・ザップ将軍によるディエンビエンフー要塞の陥落です。
ベトナムを植民地化していたフランスは、この要塞に1916年のヴェルダン要塞並みの威力を期待していましたが、結局は陥落し、フランスの撤退を決定づけることになりました。
しかし独立派のベトナム国民の喜びもつかの間、今度はアメリカのベトナム介入を招く結果となりました。

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これらの戦に共通するテーマのひとつは、戦争の動因の中に『人種的優越』という考え方があったという事実です。

19世紀から20世紀への入り口、日本は急速にな工業化を実現し、軍備についてもまた急速に整備を進め、同盟国となっていた英国も最新式の軍艦を提供するなどしていましたが、大国ロシアは日本など歯牙にもかけていませんでした。
包囲された旅順要塞の救援のため、極東に向け大艦隊を18,000マイル(約29,000キロ)も遠征させるなど、今となってみれば間違いなく愚かな行為です。
兵も軍艦も疲れ切った状態でやっとの思いでたどり着いたロシア艦隊を待ち受けていたのは、最新式の軍艦を揃え、東郷平八郎司令官以下訓練の行きとどいた兵員によって構成され、卓越した作戦を準備していた日本艦隊でした。
しかし日本はその衝撃的な勝利に酔うことによって、40年後に広島と長崎を見舞うことになる容赦ない攻撃の種をまくことになりました。

真珠湾
第二次世界大戦(太平洋戦争)において真珠湾への攻撃を立案し、ミッドウェーへと日本艦隊を勧めた山本五十六将軍は、日本海海戦において海軍の下級将校を務めていました。
山本将軍によって、そして1920年代から1930年代にかけ著しい台頭を見せその権力基盤を強化した国家主義者、軍国主義者によって1905年の日本海海戦の勝利は、いわば「神秘的なメシア信仰」として国民の間に流布され、定着させられました。
この時代、日本がアジア大陸への侵略を進めていったことは、起きるべくした起きたことだと言えるかもしれません。
武士道精神、ハイパー国家主義、そして海戦をすれば無敵という錯覚、そして『神州不滅』、これらはすべて国民に対するプロパガンダであったはずでしたが、いつしか国家の指導部までがこうした思考に支配されるようになっていたのです。
そして前世紀のヨーロッパ人がそうであったように、日本人は中国人に対し人種的優越性と文化的優位性を感じていましたが、退廃的なアメリカ人、そして植民地の白人支配層に対しても同様の感覚を持っていました。

こうした日本人の考え方について、アリステア卿はこう語っています。
「きわめて危険な、自滅的思考法」

広島14
軍の傲慢さがどれ程悲惨な結末をもたらすか、その具体例には枚挙のいとまがありません。
しかしアリステア卿の博識と卓越した表現力は、そのいちいちを的確にとらえています。
今日に至るまでの世界各地で発生している紛争もまた、その実態は似たり寄ったりです。

しかしアリステア卿の文章は読むものを退屈させません。
彼の判断を決定づけているのは、人間のうんざりさせられる愚かさに対する理解です。

もしこれから何らかの軍事行動を考えている首相やその他の政治的リーダーがいたとしたら、その全員が読まなければならないのがこの著作です。
ブッシュ大統領がもし最初からこの著作を読むことができていたら、わざわざアリステア卿の過去の著作の数々を読み漁る必要は無かったかもしれません。

http://www.economist.com/news/books-and-arts/21677604-study-military-arrogance-and-its-terrible-consequences-their-own-worst-enemy?zid=306&ah=1b164dbd43b0cb27ba0d4c3b12a5e227
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これまでの史実は、国の指導者が軍事について慎重さの上にも慎重さをもって臨まなければならないことを語っているのではないでしょうか?
『積極的平和主義』などという広告代理店が考えたような宣伝文句の下に戦争というものを軽々しく取り扱って良いものなのかどうか、その事を真摯に考えなければなりません。

【 ユネスコにもうカネは出さない?】

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南京大虐殺・中国側資料をユネスコの世界記憶遺産に登録、日本政府は抗議
具体的な犠牲者数を立証できる資料は現在残されておらず、具体的数値を出せるかどうかについては中国国内でも議論が分かれる

ジャスティン・マッカリー / ガーディアン 10月13日

南京大虐殺
1937年南京を占領した日本軍は6週間に渡り各所で虐殺・略奪を繰り返し、合計で300,000人を殺戮したと中国の歴史家は主張します。
これに対し日本の歴史家は犠牲者の数はもっとずっと少ないと主張しています。

日本政府は異議を申し立てていたにもかかわらず、ユネスコが中国側が提出した南京虐殺に関する記録を世界記憶遺産に登録したことに反発し、拠出金を回収するとつめよりました。
第二次世界大戦(太平洋戦争)中の中国大陸における日本軍の事歴に関わる一連の問題は、尖閣諸島を巡る領有権の争いと同様、日中関係を悪化させる主な要因となりました。

日本の菅義偉官房長官は、今回登録が決定された記録は中国側の一方的な見解に基づくものであるとのコメントを発表しました。
「見解の大きな相違が日本と中国の間にあります。一方の見解だけを取り上げるという決定は、歴史問題を政治問題化してしまうものです。」

ユネスコに対し「我々は(資金提供の停止を含む)あらゆる対抗処置を検討しています。」
菅官房長官はこう語り、次のように続けました。
「意思決定プロセスにおける透明性が不足しています。我々は中国側が提出した記録について、内容を確認する事すら拒否されました。」

南京攻略01
日本は昨年、ユネスコ予算総額の約10%、37億2,000万円の資金を拠出しました。
ユネスコは第二次世界大戦(太平洋戦争)の敗北と占領の後、1951年に国際社会に復帰した日本が国連に加盟した際、最初に関わった機関です。

14人のメンバーからなる公文書収集記録委員会から推薦を受け、ユネスコのイリナ・ボコヴァ事務局長は11日、アブダビにおける会合で南京虐殺事件の記憶遺産登録を承認しました。
日本の外務省は10月10日付で、
「日本政府が,これらの基本的な考え方について随時申入れを行ってきたにもかかわらず,中国側が提出した「南京事件」に関係する文書が記憶遺産として登録されたことは,中立・公平であるべき国際機関として問題であり,極めて遺憾です。」
との談話( http://www.mofa.go.jp/mofaj/press/danwa/page4_001450.html )を公表しました。

一方でユネスコは中国側が併せて申請した、日本軍が中国で従軍慰安婦を使役したことに関する文書や写真を南京虐殺の記録に含めることは拒否しました。

南京虐殺は1937年後半に日本軍が中国南西部にあるこの都市を攻略した際、数万とも数十万とも言われる中国人を殺害、強姦するなどした事件を総称したものです。
中国の歴史家は大日本帝国の陸軍部隊が6週間に渡り略奪・暴行などを行った結果、300,000人以上の兵士と市民が殺害されたと主張しています。
一方日本の歴史家においては諸説あり、犠牲者数は少ないもので数万、最大で200,000人と主張しています。

南京虐殺01
日本政府の公式見解は次のようなものです。
「多数の非戦闘員の殺害、略奪、その他の行為が行なわれました。」しかし犠牲者の数については「特定するのは困難です。」
日本政府当局は、ユネスコの中立性に疑問を呈し、中国政府がその政治目的を達成するための手段として国際的・文化的な舞台を利用したとして非難しました。
中国が提出した資料には、第二次世界大戦(太平洋戦争)後に行われた極東軍事裁判の法廷資料も含まれています。
この裁判では日本の戦争指導者二十数名が有罪判決を受け数名が処刑されましたが、この時証拠として提出されたのがカメラマンが南京虐殺の様子を写したものだとした写真、そしてアメリカ人宣教師が撮影したフィルム映像でした。

しかし日本側はこの資料の信ぴょう性に疑問を呈しました。
日本側は中国側の専門家も立ち会った上で、この資料の中身の検証作業を行いたいとの申し入れを行ったが、中国政府が拒否したと付け加えました。
日本の外務省は今回の記憶遺産登録について、「中立・公平であるべき国際機関として、この度の取り扱いには疑問を提起する」コメントし、
「当該文書は完全性や真正性に問題があることは明らかであると考えます。」
と付け加えました。

南京攻略02
一方、中国の外務省報道官は日本の抗議を退け、南京虐殺事件を「重大な犯罪」とし、「国際社会が広く認めている史実である」とコメントしました。
「史実を否定することはできません。歴史は歪曲されるべきではありません。その発言もユネスコに対する措置も、日本側が史実と正面から向き合うことを忌避していることを明らかにしましたが、そうした態度は誤りです。」

日本国内の新聞はユネスコの決定に対し、共通して批判的な論調を展開しました。

「我々は元来世界の文化遺産を保護するための仕組みを日本を攻撃する手段として利用し、その独善的な歴史解釈を世界の共通認識に仕立て上げようとする中国政府のやり方を容認するわけにはいかない。」

自由主義の立場に立つ朝日新聞は犠牲者数が300,000以上とする中国政府の主張に対し、中国国内にも疑問を呈する歴史家が存在する点を強調しました。
「具体的な犠牲者数を立証できる資料は現在残されておらず、具体的数値を出せるかどうかについては中国国内でも議論が分かれるところです。」
朝日新聞はこう伝えました。
「しかし中国国内にはこの問題について公然と議論を行う自由がありません。」

ユネスコは今回2件の日本の申請を認定しました。
(1)東寺百合文書
平安時代以来一貫して東寺の宝蔵(ほうぞう)に収められ,1,000年以上にわたって東寺に伝承した約2万5千通に及ぶ寺院文書。日本の仏教史,寺院史,寺院制度史研究上で貴重な資料。1685年(貞享2)に加賀藩第五代藩主・前田綱紀(まえだつなのり)により「百合」の箱が寄進され,保存・管理されてきた。
東寺百合文書
(2)舞鶴への生還
1945-1956年のシベリア抑留等日本人の本国への引き揚げの記録
「シベリア抑留体験の記録」,「安否を気遣い帰還を願う日本の家族に関する資料」,「引揚関連資料」に係る570点の資料から構成。
(以上は外務省ホームページより引用)

ユネスコ記憶遺産は1990年代の発足以来、アンネ・フランクの日記、とカール・マルクスの『資本論』の草稿の注釈つきコピーを含む数十件について、認定を行ってきました。

http://www.theguardian.com/world/2015/oct/13/japan-threatens-to-halt-unesco-funding-over-nanjing-listing
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私自身も南京虐殺の犠牲者については、確定できる資料はもはや現存せず、日本・中国の歴史学者が共同調査・検証を行った上で『規模を推定』する以外の途は無いと考えています。
そしてこれ以上歴史を政治のプロパガンダの材料にすべきでないとも考えています。

シリア内戦の現状を見れば、戦時の犠牲者の数の特定が極めて困難な作業であることが解ります。
2015年の現在であっても、あれほどの混乱状態に陥ってしまえば、正確な犠牲者数の特定はほとんど不可能でしょう。
政情不安定な都市における1937年の事件ともなればなおさらであり、この点中国政府側の主張のみ認めた形でのユネスコの判断には確かに疑問が残ります。

しかし少し古い記事にもかかわらず今回ご紹介した理由はその点にはなく、与党の外交部会が
「言う事を聞かないなら金など払わん!」
という反応をした際、「ああ、これが日本の政治の本質なのだろうな。」と感じたからです。
だからこそ『金を払ってやるから俺の言う事を聞け』(例えば中央政界→地方政界)、『あんたの言う事を聞くから金をくれ』(地方政界→中央政界)という『日本の政治のルール』を無視するかのようなユネスコの対応に、与党『外交部会』の議員たちは激高したのでしょう。

そして下記のテロ事件。
テロリストによるこれだけの攻撃を可能にしているのが、旧東欧諸国から流出している武器です。
カラシニコフは旧ソ連、そしてプラスチック爆弾はチェコ製だと言われています。
冷戦の負の遺産が未だに人を殺しているのです。

【 迷走を続ける日本経済、アベノミクスでは打開不能 】《後篇》

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所要時間 約 8分

アベノミクスは最初から大胆な、場合によっては大げさすぎる公約を掲げてきた
600兆円!たった5年の間に低迷する国内総生産をどうやって20%も引き上げるのか?!
これから5年後に国内総生産を600兆円にするなど、「あり得ない数値」

ジョナサン・ソブル / ニューヨークタイムズ 10月25日

NYT アベノミクス
アベノミクスの経済政策において、かつてない規模の大きな役割を演じたのが日本銀行でした。
黒田総裁の下で日本銀行は、かつてアメリカの連邦準備制度理事会が7年前のリーマンショックの後に導入した「量的緩和」策を大々的に進めました。
しかしアメリカでは連邦準備制度理事会は景気の回復に合わせ、債券買付プログラムを徐々に縮小して行き、現在は公的金利をゼロのまま据え置くか、あるいは引き上げるかという選択肢について検討中です。
しかし日本銀行はこれとは逆を指向しています、より一層通貨政策を緩めようとしているのです。

その措置が採られるかどうかは、10月末に開催される『成長とインフレ達成』のため年2回開催される日銀の理事による会合で決定されることになります。
その場では悲観的見方の方が大勢を占めることになりそうです。
同じ10月、黒田総裁は昨年金融の分野で最後の一撃を加え、驚きが市場を支配しました。
そして日本はもちろん、世界各国で株価が高騰しました。

Abeno03
黒田総裁は市場の悲観的予想をいくらかでも和らげるため最善を尽くしてきました。
そして、現在の日本銀行のそれぞれの金融政策は充分効果を上げていると主張してきました。
インフレの数値が目標を達成できなかった理由は、予想を超えた原油価格の下落に主な原因があり、物価と賃金は上昇傾向にあるとも語ってきました。
「私は現在の方針、すなわち質的緩和策・量的緩和策は充分に機能し、日本経済に狙い通りの効果を発揮したと考えています。」
ペルーのリマで開催された世界中央銀行総裁会議で、黒田総裁は10月11日に行われたCNBCとのインタビューでこう語りました。

黒田総裁は昨年大規模な追加策を実施する前、同じ趣旨の発言をして市場をミスリードしたことがあります。
しかし今回は日本銀行の政策は思ったほどの効果を発揮できない可能性もあります。

日本銀行による景気刺激策は、円の価値を低下させる傾向があります。
それは海外で収益をかせぐ多国籍企業にとっては好都合ですが、殊勝な貿易相手国や国内の消費者、そして輸出には縁がない国内の中小企業の怒りを買うリスクを犯すことにもなります。

TPP05
今月、日本とアメリカを含む12の環太平洋地域国が、主に貿易上の取引条件を設定するための取引協定、すなわちTPPについてやっと合意に達しました。
安倍首相はこれにより、日本は域内における貿易と投資活動をより活発化できると語っています。
この二つは日本の成長率を押し上げるための大切な要件です。
しかしこの協定は各々の国の議会における承認を必要としますが、アメリカ合衆国議会のメンバーは、日本が貿易競争を有利に進めるため、不当に円の価値を引き下げていると非難しています。

「TPP交渉の場では、各国の通貨政策は波乱巣をとる上で非常に厄介な問題です。」
かつて日本銀行で働き、現在はJPモルガン証券に籍を置く足立氏は、通貨政策がTPP交渉の場におけるそれぞれの合意内容を変えてしまうほどの影響力を持つ、その政治的な微妙さを熟知しています。

足立氏は来年実施される参議院議員選挙を視野に起きながら、こう付け加えました。
「一般家庭は円安によって家計が圧迫されることを望んでいません。」

景気悪化
普段は日本銀行の大規模な金融緩和策に拍手喝さいしている安倍政権の経済担当チームも、今回に限っては慎重に言葉を選んでいます。
麻生財務大臣は最近行われたNHKとのインタビューで「喫緊に日本銀行が緩和策を実施することは無いと考えています。」

安倍首相は相変わらず派手な公約を掲げ続けています
9月、安倍首相は2020年までに日本の名目経済生産高を600兆円にまで増やすという目標を掲げて見せましたが、これまでの20年間成長できなかった日本経済をこれから5年の間に、現在の数値を20%も上回るこの目標までどうやって引き上げるのか、その詳細については一切明らかにはしませんでした。

アベノミクスは最初から大胆な、場合によっては大げさすぎる公約を掲げてきました。
これについて日本銀行の黒田総裁は『デフレ心理』を払しょくするための取り組みの一つだと弁護しています。

Tokyo 5
しかしこの3年間、アベノミクスにはこれといった成果も無く、これまで当たり前のように自民党政権を支持してきたビジネス・エリートたちを含む多くの識者から、その骨格構想に疑問を突きつけられるようになりました。
「600兆円というのはあり得ない数値だと思います。」
経済同友会の小林喜光代表幹事がこう語りました。
「政治的メッセージとしか思えません。」

〈 完 〉

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【 11月11日までの報道写真から 】

アメリカNBCニュース 11月11日
(写真をクリックして、大きな画像をご覧ください)

Day05
11月3日、一般公開を前に政府関係者に公開されたレストアされたローマのトレビの泉。(写真上)
ファッションメーカーのフェンディから資金が提供され、17カ月がかけて修復がおこなわれました。

ギリシャからマケドニアに入国する手続きのため、列を作る難民の人々。(写真下・以下同じ)
国連難民事務所はこの冬、1日あたり5,000人のペースで中東難民がギリシャ国内を通過していくと予測しています。
day01
11月8日、ダマスカス郊外の反アサド勢力の実効支配地に空爆が行われ、少なくとも23人が死亡、多数が重傷を負いました。
シリア内戦監視団は7日土曜日にも同様の爆撃があり、57人が死亡し100人以上が負傷したと報告しています。
day02
11月9日、トルコ、チェシュメの崖の上から満員のゴムボートを見下ろすシリア難民の男性と男の子。ボートはこの場所から対岸にあるギリシャのキオス島に渡ることになっています。
トルコからギリシャへの難民の流入はすでに100万人を超えました。
day03
11月9日、ギリシャ、レスボス島の廃棄物処分場に積み上げられた数千個のライフジャケット。
すべてエーゲ海を越えてやって来た難民たちが残していったもの。
Day04
11月11日、エーゲ海を横断中の難民を乗せたボートに向かってライフジャケットを打ち振り、目的地を教える難民の女性。
week01
http://www.nbcnews.com/news/photo/today-pictures-november-12-n462581

【 迷走を続ける日本経済、アベノミクスでは打開不能 】《前篇》

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所要時間 約 8分

日本の潜在的成長率はほぼゼロ、わずかなショックで経済が不況に落ち込む可能性がある
安倍政権が誕生してからもうすぐ3年が経過、しかし経済局面が打開されるのはまだまだ先
アベノミクスに対する幻滅を、ますます露わにしている海外の投資家たち

ジョナサン・ソブル / ニューヨークタイムズ 10月25日

NYT アベノミクス
日本経済はこの2、3年、不況に落ち込みかけたまま、先行き不透明な状態が続いてきました。
成長局面に入ったのと同じ回数だけ不況局面に落ち込んだ日本経済において、それぞれの不況局面が意味するものとは何でしょうか?

現在の日本は、再び不安定な状況にあるように見受けられます。
2015年は第2四半期にマイナス成長に落ち込んだ後、続けて第3四半期にも生産高が縮小してしまった兆候があらわれています。
その原因を作ったのは減速する中国経済でした。

国内の経済学者などはどのような不況局面であっても短期間で済み、かつ深刻なものにはならないだろうと見ています。
しかしよりさらに厄介な事態を引き起こす可能性がある問題が、より深い場所に隠れている可能性があります。

日本の不況を終わらせるという公約を掲げて安倍政権が誕生してからもうすぐ3年が経過しますが、局面が打開されるのはまだまだ先のように見受けられます。

GRPH Real GDP
「潜在的成長率はゼロに近いため、どんなわずかなショックであっても日本経済は不況に落ち込む可能性があります。」
JPモルガン・チェイスの幹部級の日本経済学者である足立正道氏がこう語りました。
「日本経済の成長予想は貧血状態にあります。」
こうした状況から一部の経済学者は、国債を買い取るという形で莫大な金額を市場に注ぎ込んできた日本銀行10月末に開催される理事会で、一層の金融緩和策を打ち出すものと見ています。

アベノミクスの名で知られる安倍政権の経済政策の中心部分を成していたものが、この日本銀行によるかつてない大規模な資金注入(金融緩和)政策でした。
しかし日本の経済の実態はこうした政策によっては浮上しないことが、徐々に明らかになってきました。

そのひとつが昨年間の悪いタイミングで実施された、消費税率の引き上げでした。
日本の消費者心理を一気に冷え込ませ、出費を思いとどまるようになりました。
そして引き続き襲ったのが、日本製工作機械の最大需要家であった中国の景気減速でした。

しかし多くの専門家が、最も根本的な問題は、日本経済にはそもそも成長する要素をほとんど持っていない事だと指摘しています。

日本の経済成長は、基本的にゼロです。

安倍甘利
国内総生産の規模は1990年代半ばと同規模です。
その原因の大きなものは労働人口の減少です。

局面が目まぐるしく移り変わる状況下、こうした構造的要因により日本経済は何かあればたちまち不況局面に後戻りする危うさを持っているのです。

日本経済が持つ構造的弱点の改善については、これまで安倍首相が進めてきた経済政策はほとんど無力でした。

「海外の投資家はアベノミクスに対する幻滅を、ますます露わにしています。」
ゴールドマン・サックスの幹部級の日本経済学者である馬場直彦氏が、10月下旬にヨーロッパ、アメリカ、アジア諸国の投資家との会談を終えた後こう語りました。

これまでアベノミクスに対する外国人投資家の前向きな評価の中心にあったものは、安倍政権の経済政策の数少ない性向の中の日本の株価の上昇でした。
ここ数カ月間はそれ以前と比べ日本の株価は、他の世界市場の動きと同様その上昇の勢いは失われましたが、それでも2012年末に安倍首相が就任した時点と比較すれば、時価は約2倍になっています。
しかしそれ以外の日本経済の側面は弱体化しているように見えます。

日本経済02
アベノミクスの主要課題の一つは、労働者の給与アップと商取引上の障害となっている各種の規制を取り払うことに加え、持続的かつ全面的な物価上昇を生み出すことですが、「なかなか上昇局面には乗せられずにいます。」と馬場氏は語ります。
これらすべての要件の改善が実現されれば、日本経済の代謝が活発になり、経済構造の基幹部分に成長の可能性を現実のものにするための因子が組み込まれるはずでした

〈 後篇に続く 〉

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【 眠っている難民の子供たち…あなたが感じるものは何ですか?】《後篇》

アメリカNBCニュース 11月5日
(写真をクリックして、大きな画像をご覧ください)

難民子供 4
カメラマンのマグナス・ウェンマンが、大量の中東難民が移動を続けている中、最も弱い立場の子供たちが眠る姿をカメラに収め、その背景にあるものを伝えています。

アフマド、7歳(セルビア、ホルゴスにて・写真上)
眠っている間ですら、自由にはなれない場合があります。
恐怖体験の再現が子供たちを苦しめています。
シリアのイドリブで暮らしていたアフマドが家に帰ってきた瞬間、爆弾がさく裂しました。彼は爆発の際破片に頭を強打されましたが、幸い命を取り留めました。
しかし弟はそうではありませんでした。
アフマドの一家は数年間戦争と隣り合わせの暮らしを強いられてきました。
しかし家を破壊されてしまった以上、もう選択肢はありませんでした。
彼の一家は逃げ出すほかなくなりました。
逃避行が始まって16日目、今アフマドは閉鎖されたハンガリー国境に通じる高速道路の脇のアスファルトの上で眠っています。
これまで家族はバス待合所で、道路で、そして森で眠ったとアフマドの父が説明しました。

アブドゥラ 5歳(セルビア、ベオグラードにて・写真下)
アブドゥラは、血液疾患にかかっています。
この2日間、彼はベオグラード中央駅の外で眠りました。
彼はシリアにいるとき、目の前で姉妹が殺害されるのを見ました。
アブドゥラはまだショック状態が続いており、毎晩悪夢にうなされています。
アブドゥラは疲れがたまり健康でありません。
しかし母親には彼に治療を受けさせたり、薬を買うだけのお金がありません
難民子供 3
アフマド、6歳(セルビア、ホルゴスにて)
アフマドが芝生の上で眠るのは真夜中が過ぎてからです。
周囲では難民申請をすることなくハンガリーを通過し、さらに西に行く方法を求める大人たちがうろうろしています。
アフマドはまだ6歳ですが、家族が荷物を抱えて徒歩で逃避行を続ける間、彼自身も自分で荷物を担いでここまでやってきました。
シリア国内で父親が死亡して以来、アフマドの世話をしている叔父がこう語りました。
「アフマド勇敢な子です。時々泣いていますが、それはいつも夕方だけです。」
難民子供 5
http://www.nbcnews.com/news/world/fleeing-childrens-sleeping-portraits-haunt-n458111

【 信じられますか?安全!ニッポンのゲンパツ : 避難区域への帰還2015 】《後篇》

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所要時間 約 7分

事故発生以降、福島県内の子供たち、青少年の間で甲状腺ガンの発症割合が異常に高くなっていることを確認
土地が安全になったのなら、なぜそこで収穫した農産物の放射線量の検査をしなければならないのか?
政府機関に対する不信感は、町や村の再建を不可能にする程、住民の間に広くかつ抜き差しならぬものになっている

エコノミスト 10月24日

楢葉町帰還住民
かつて福島第一原発の周辺で暮らしていた約80,000の人々のうち、多くの人々がすでに別の場所で生活を再建しました。
帰還を果たした人々の多くは高齢にさしかかっています。
地元自治体では帰還する住民は多くても半分程度と見積もっており、特に放射線による健康被害が発生しやすい子供たちがいる家庭は、二度と戻らない可能性がある考えています。

人びとが放射線による被害を恐れる大きな理由は、日本政府と東京電力が公表している計測値に対する不信、そして放射性物質がもたらす本当の脅威です。

10月20日には、福島第一原発で事故収束作業にあたっていた作業員が、メルトダウンによる放射性物質の放出と関連性があるガンを発症したと公表されました。
これは福島第一原発の事故とガンの発症との因果関係が公式に認められた初めてのケースですが、最近行われた医療調査では福島第一原子力発電所の巨大事故が発生して以降、福島県内の子供たち、青少年の間で甲状腺ガンの発症割合が異常に高くなっていることが確認されています。

人類の敵
2011年に発生した福島第一原発の事故へのその後の対応のまずさは、日本の原子力関係諸機関に対する一般国民の信頼を大きく損ねることになりました。
2013年田村町都路地区の再開を当局が認めたとき、住民は帰還することの安全性に不信を露わにし、もっと徹底した除染作業を行うよう要求しました。

避難命令が解除されて1年後、川内村の遠藤町長は政府機関に対する不信感は、もはや村がかつての規模を取り戻すことは不可能な程住民の間に広く、かつ抜き差しならぬほどのものになっていると語りました。

彼は29年前に世界最悪の原子力発電所事故を引き起こしたウクライナのチェルノブイリ周辺地区を視察しました。
そこで目にしたまるで墓場のようないくつもの捨てられた町や村は、逆に川内村再建の彼の決意を一層強いものにしたと語ります。

しかし帰還を果たした人々もその多くが、彼らに対して示された保証を果たして信じていいものかどうか、未だに迷い続けています。

汚染02
たくさんの人がこんな疑問を持っています。
土地が安全になったのなら、なぜそこで獲れた農産物はいちいち放射線量の検査をしなければならないのか、と。

楢葉町には旧都路村や川内村には無い、もうひとつの希望の光があります。
この町は福島第一原発の事故収束・廃炉作業、そして3.11の巨大地震・津波の被害が比較的軽微に済んだ福島第二原子力発電所に関連する仕事の恩恵を受けることが出来ます。

もうひとつ、楢葉町の喫緊の課題は新しい街灯を設備することです。
そのための資金は日本政府から出される助成金によって賄われます。
街灯が整備されれば町は蘇ったように明るくなり、その分住民の帰還が進むものと松本町長は期待を寄せています。

NBC 6
しかしいまは、すでにある街灯もほとんど点いてはいません。
夜は暗闇が支配し、不気味な気配があたりを支配したままです。

〈 完 〉
http://www.economist.com/news/asia/21676828-lack-trust-authorities-hindering-resettlement-near-fukushima-back-nuclear-zone?zid=306&ah=1b164dbd43b0cb27ba0d4c3b12a5e227
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【 眠っている難民の子供たち…あなたが感じるものは何ですか?】《前篇》

アメリカNBCニュース 11月5日
(写真をクリックして、大きな画像をご覧ください)
難民子供 1
カメラマンのマグナス・ウェンマンが、大量の中東難民が移動を続けている中、最も弱い立場の子供たちが眠る姿をカメラに収め、その背景にあるものを伝えています。

5歳のワラアはシリアの自宅に帰りたいと願っています。
アレッポの自宅には彼女自身の部屋がありました。
自分の部屋で眠る時、彼女は泣くことはありませんでした。
ここ難民キャンプでは、ワラアは毎晩泣いています。
ワラアは夜が来るのが恐ろしいのです。彼女の家も部屋も爆破してしまったのは夜間爆撃でした。(写真上)

5歳のラマールがバグダッドの自宅で暮らしていた時には、人形たちやたくさんのおもちゃに囲まれて暮らしていました。
でもたった一発の爆弾がすべてを変えてしまいました。
爆弾が投下された時、家族は買い物に出ていました。
家に帰ると、そこはもう住める状態ではありませんでした。
祖母のサラはトルコからゴムボートに乗ってらエーゲ海を渡り、やっとの思いでハンガリーとの国境にたどり着きました。
しかしその国境は閉じられ、ラマールたち家族は野宿を続けています。
森の中で寝るのは怖いし、寒いし、そして悲しい…ラマールがこう話しました。(写真下・以下同じ)

難民子供 2
アフマド、7歳(セルビア、ホルゴスにて)
眠っている間ですら、自由にはなれない場合があります。
恐怖体験の再現が子供たちを苦しめています。
シリアのイドリブで暮らしていたアフマドが家に帰ってきた瞬間、爆弾がさく裂しました。彼は爆発の際破片に頭を強打されましたが、幸い命を取り留めました。
しかし弟はそうではありませんでした。
アフマドの一家は数年間戦争と隣り合わせの暮らしを強いられてきました。
しかし家を破壊されてしまった以上、もう選択肢はありませんでした。
彼の一家は逃げ出すほかなくなりました。
逃避行が始まって16日目、今アフマドは閉鎖されたハンガリー国境に通じる高速道路の脇のアスファルトの上で眠っています。
これまで家族はバス待合所で、道路で、そして森で眠ったとアフマドの父が説明しました。

難民子供 4
http://www.nbcnews.com/news/world/fleeing-childrens-sleeping-portraits-haunt-n458111

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ほんとうの「今」を知りたくて、ニューヨークタイムズ、アメリカCNN、NBC、ガーディアン、ドイツ国際放送などのニュースを1日一本選んで翻訳・掲載しています。 趣味はゴルフ、絵を描くこと、クラシック音楽、Jazz、Rock&Pops、司馬遼太郎と山本周五郎と歴史書など。 @idonochawanという名前でツィートしてます。
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