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【 イスラム国人質事件 – シリアの地で運命がつながった、人間としては全く異質な2人】《後篇》

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所要時間 約 10分

「使命は紛争、難民、貧困、エイズと子供たちについて広く世界に知らしめること」後藤氏
戦争に強く反対し、紛争地域における子供たちの窮状について、情熱的に話をしていた後藤氏

マーティン・ファクラー / ニューヨークタイムズ 1月25日

人質事件被害者父親
後藤さんの内に秘めた決意と強い目的意識は、彼が運営する小さな通信社、インディペンデント・プレスのウェブサイトから容易に見てとることができます。
19年前に立ち上げたテレビ番組にニュース記事を提供するこの通信社について、その使命が「紛争、難民、貧困、エイズと子供たち」について広く世界に知らしめることである、とキリスト教関係のウェブサイトで紹介された昨年行われたインタビューで、後藤氏は語っています。
後藤氏は仏教が生活の中に溶け込んでいる日本人としては珍しくキリスト教に改宗しましたが、その理由について、遠く離れた交戦地帯でたった一人で死んでいくのがこわいからだと答えていました。

私生活における後藤さんの鍵となる側面はほとんど知られていません。
公の場で、後藤さんは戦争に強く反対の立場を取り、紛争地域における子供たちの窮状について、情熱的に話をしていました。
後藤さんの判断力と経験は、日本のトップジャーナリストの尊敬を得ていました。

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「彼は何が危険なのかということについて、瞬時に判断が下せるベテランの戦争ジャーナリストです。」
人気の高いニュース解説者である池上彰氏が、新聞のインタビューの中でこう答えていました。
「私は彼を全面的に信用しています。」

湯川氏は初めてシリア入りした際に、比較的穏健なグループである自由シリア軍に拘束されましたが、後藤氏はこの時初めて彼と会いました。
後藤氏は自由シリア軍に湯川氏の解放をかけ合い、感謝を得ることになりました。
イスラム国に拘束される3ヵ月ほど前、湯川氏は後藤氏の下でアシスタントとして1週間ほど後藤氏の下で働き、この際生き残るための術を教えられました。

湯川氏はブログにこう書き記しました。
「私の本能は、私たちが生涯の友人になることができると告げています。」
「私たちがシリアで出会ったことは、運命としか言いようがありません。」

しかし、湯川氏のブログの多くは複雑に入り組んでおり、時に奇怪な自己分析を試みています。
その中で最も怪奇なのは2008年、出血多量で死のうとして自分で自分を去勢した自殺未遂の際の文章です。
彼の妻と医師の迅速な対応により、彼は命を取り留めました。
後になって彼は、男性としての機能を失った以上、これからは女性として生きると記しました。

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かれは女性名の『遥菜』と名を変え、自分が満州国王女で大日本帝国のスパイとして活躍した高名な男装の女性、川島芳子の生まれ変わりであると信じるようになっていきました。

そして肺がんによって妻を喪うと、湯川氏の人生はさらなる変転を重ねることになりました。
昨年早々、湯川氏は中東に向けて出発しました。彼は友人や親せきに、これが成功を手に入れるための最後のチャンスだと語っていました。

4月のブログにはこう記されています。
「この航海によって得られる経験は、私の人生を変えるでしょう。」
「世界が私を必要とする決心を固めれば、私はいつでも戻って来ます。」

かつて湯川はAK-47突撃銃を発砲している自分自身のビデオを掲載し、自由シリア軍の日本人・韓国人メンバーの後援者になりました。

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やがてイスラム国の戦闘員がシリアの反政府軍の領域を侵し始めましたが、湯川氏は反乱軍と行動を共にしていました。
やがて尋問されて顔から血を流している湯川氏の姿が、イスラム国が投稿した動画に登場したのです。

2分の収録時間の間、イスラム国の戦闘員は湯川氏にとって答えようのない質問を繰り返しました。
「お前はなぜ、こんなところにいるのだ?」

同じ質問は日本のニュースメディアによって繰り返されることになりました。
しかしそれは後藤氏とは異なり、同情的なものではありませんでした。

首を切断された湯川氏と思われる遺体の画像が公開された後、74歳になる彼の父親は申し訳なさそうな様子でカメラの前に座り、日本にも、そして後藤氏にも迷惑をかけてしまったと謝罪しました。

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「私の息子は、後藤さんが誠実で親切な人だと言っていました。」
湯川氏の父親が25日日曜日、記者の質問にこう答え、後藤氏について次のように語りました。
「後藤氏は私の息子の身を案じて危険な紛争地帯に入り込み、その命を危険にさらすことになってしまいました。大変申し訳なく思っています。私は後藤さんの速やかな解放と安全な帰還を念願しています。」

< 完 >

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この記事にある通り、日本のメディアは殺害されてしまった湯川さんについては「自業自得」とでも言いたげです。
湯川氏についてwebで検索すると、私なら決して友人にしたくないような人たちと握手して微笑んでいる写真が多数あります。
しかしそれと、明らかに犯罪を犯した訳でもないのに裁かれ、殺害そのものを取引材料にされるという、この上ない理不尽な死を強制されたこととは別の話しです。
命に値段をつけるがごとき報道は、まさにジャーナリズムの風上にもおけない低劣極まりない行為だと思います。

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【 内戦という名の戦争、難民キャンプ、そしてずたずたにされた子供たちの心 】〈2〉

アメリカNBCニュース 3月11日
(再掲載・写真をクリックして大きな画像をご覧ください)

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レバノンのベカー渓谷では約5,000人の国外脱出をしたシリア難民が、フェイダ・キャンプと呼ばれる場所で生活しています。
AP通信のニュース・カメラマン、ジェローム・ディレイとNBC放送の番組制作者である立花由香が2日間キャンプを訪問し、まだ成年に達していない戦争の生存者がどんな生活を強いられているか、取材と写真撮影を行いました。

母と兄弟姉妹6人で暮らすテントの中、ベッドの上のロキア(8歳)。
ロキアの父親は現在行方不明になっていますが、母親は子どもたちにいつか必ず帰ってくると言い聞かせています。
(写真上)

ヤムママ(4歳)と3人の姉妹たちは、戦争地帯で子供たちを育てることを嫌った母親により、2年前にシリアのホムスを脱出し、このキャンプに逃げ込みました。
父は未だ、シリア国内で働いています。(写真下・以下同じ)
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母親にすがりつく6歳のファーダ。自宅のすぐそばで迫撃砲弾が2発爆発して以来、彼女は大きな音を極端に嫌うようになりました。
現在は難民キャンプにいて砲弾が飛んでくる恐れは無くなりましたが、母親がバタンとドアを閉める音も恐ろしいと感じるようになってしまいました。
ファーダが母親のそばから離れることは、めったにありません。
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8歳のアブドル・カリムはちょうど1年前、シリアのホムスで父親が殺された後、母と兄と4人の姉妹と一緒にレバノンに逃れました。
「僕が一番年下だったので、お父さんはよく僕と一緒に遊んでくれました。だからお父さんのことは、良く覚えています。」
アブドルがこう話しました。
しかしアブドルの心の傷は、彼と友人たちが母親が『大虐殺』と呼んだ現場にたまたま居合わせたことで、一層悪化することになってしまいました。
アブドルは神経質そうに両手を何度も腿の上にこすり付けながら、次のように話してくれました。
「僕は友だちと一緒に、学校から帰る途中でした。たくさんの人が泣き叫び、取り乱していたのを覚えています。」
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10歳のラワー(写真左)は9ヵ月前、母、と3人の姉妹、3人の兄弟と一緒にシリアのホムスからフェイダ・キャンプに逃れてきました。
シリアでは爆弾が近くで爆発し、ラワーの目を傷つけました。
「友達と遊んでいたら、突然、爆発があったのです。」
瞳孔が傷つけられ、彼女の瞳は左右別の色になってしまいました。
ラワーは未だにその時の悪夢にうなされることがあります。
兄弟たちの父親は現在音信不通のままになっています。
母親のドーハがこう語りました。
「私は子どもたちに何と言っていいのか解りません。子供たちはもう、充分つらい目に遭ってきたのですから…」
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http://www.nbcnews.com/storyline/syrias-children/tiny-survivors-faces-endless-conflict-n49401

【 イスラム国人質事件 – シリアの地で運命がつながった、人間としては全く異質な2人】《前篇》

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所要時間 約 11分

「何が起きても、責任はすべて私にある。シリアの人々を責めてはいけない」後藤氏
「優しさを燃え上がらせる事によって自分が火傷してしまう、そんな類いの人間なのです」後藤氏の母

マーティン・ファクラー / ニューヨークタイムズ 1月25日

人質事件被害者父親
【 イスラム国人質事件 - シリアの地で運命がつながった、人間としては全く異質な2人】《前篇》
「何が起きても、責任はすべて私にある。シリアの人々を責めてはいけない」後藤氏
「優しさを燃え上がらせる事によって自分が火傷してしまう、そんな類いの人間なのです」後藤氏の母

マーティン・ファクラー / ニューヨークタイムズ 1月25日

イスラム国の戦闘員の前に跪くことを強いられている2人の人質男性は、テレビから流れる映像を見つめる人々の目には密接にかかわり合う人間同士に映りました。
2人は命と引き換えに賠償金を要求する覆面をした戦闘員の両隣にオレンジ色の長着を着せられて跪き、厳しい表情でビデオの画面に映っていました。

そして週末にかけ、2人の男性の運命はより一層密接に結ばれることになったのです。
男性のうちのひとりが首が切断された別の男性の遺体を写した写真を両手に捧げ持つ画像が公開され、イスラム国のアル・バヤン・ラジオ局は男性1人を殺害したと伝えたのです。
イスラム国と連携するラジオ局1社も、25日日曜日午後遅くに男性が殺害されたことを確認しました。

ともに拘禁されるという事態に至ったシリアにおける道のりは、2人の男性それぞれにおいて結果的にはそれ程異なってはいませんでした。

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生き残った方の人質、47歳の後藤健二氏は20年以上紛争地域にこだわりを持ち、その取材を続けているフリーランスのテレビカメラマンであり、すでに5冊の著作を持つ、尊敬を集めているジャーナリストです。
彼は弱い立場の人々、特に難民にされてしまった子供たちが置かれている窮状に心を痛め、その姿を世界に伝えるという使命感に燃え、何にも増してイラクとシリアに引きつけられ、その存在を知られるようになりました。

一方の42歳の湯川遥菜氏は破産、そして妻の死という人生において衝撃的な出来事が重なった挙句、2008年には自殺を試みた、心のよりどころを失ってしまった人物でした。
湯川氏は自らが第二次世界大戦時の有名な女性スパイの生まれ変わりであると確信し、人生の再出発のきっかけを求めてシリアに入っていったのです。

ブログの中で湯川氏は、タリバンやアルカイダに対し充分な実戦経験を積んだ後で、危険な紛争地区で活動する日本企業の安全保障アドバイザーの地位に就くことを夢見ていました。
代わりに今回彼は、取り返しのつかない深みにはまりこんでしまいました。

湯川氏がイスラム国に拘束されたのは昨年8月と見られますが、その直前別のシリア反乱軍が短期間彼を拘留していました。
そしてこの2人の日本人男性は身代金を要求するビデオに並んで映し出される直前、ありうべからざる再会を果たすことになったのです。

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実際のところ、ブログから想像される2人の男性の人間像、そして双方の友人や家族の話を総合すると、見えてくるのは次のような情景です。
経験豊かなジャーナリストが、運に見放された上におそらくは見当違いの方向に進もうとしていた湯川氏を見て、責任を感じ、何とか面倒を見ようとしていたと思われます。
湯川氏がシリアとイラクの領土を広範囲に制圧しているイスラム国に拘束されたことを知った後藤氏は、何とか彼を連れ戻そうと、極めて危険な場所に踏み込んで行ったのです。

そして後藤氏の救出作戦を不運が見舞い、昨年10月、彼もまたイスラム国に拘束されたのです。

23日金曜日、後藤氏の母親の石堂順子さん(78歳)は、湯川さんとの関連について次のように語りました。
「彼は可能な限りの手立てを尽くして、先に拘束された知人を救いだすため、現地に飛んで行ってしまいました。」
石堂さんは後藤氏が今回のような危険を冒した理由について、常に弱い者に優しく接しようと努めていたからに他ならないことを次のように説明しました。

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「私の息子は立って歩けるようになる以前から、自分よりも年下の弱い立場の子供たちに、常に優しく接しようとしていました。」
「彼は優しい子供でした。でもその優しさを燃え上がらせる事によって自分が火傷してしまう、そんな類いの人間なのです。」

シリア国内の武装勢力の支配下にある地域に入り込むことついて、後藤氏は自身の最後の動画においてその危険性を十分認識していたことがうかがわれます。

カメラをまっすぐ見つめながら、後藤氏はこの先何が起きても、シリアの人びとを批判して欲しくは無いと語りました。
「今回の旅はきわめて危険です。」
後藤さんはまず母国語である日本語で、次に英語でこのように続けました。
「もし何かが起れば、責任はすべて私にあります。」

〈 後篇に続く 〉


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後藤さんは救出に行った、その湯川さんをいわば眼前で殺害され、さぞ無念の想いを募らせておられると思います。
しかし解放され、再びジャーナリストとして活躍されるようになれば、今回の経験も踏まえ何層倍ものスケールで仕事をされるようになるのではないでしょうか?
そのことを願い、そして何より無事で帰還されるよう願い、微力ではあっても何か自分も出来ることがあれば、そのことを願っています。

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【 内戦という名の戦争、難民キャンプ、そしてずたずたにされた子供たちの心 】〈1〉

アメリカNBCニュース 3月11日
(再掲載・写真をクリックして大きな画像をご覧ください)

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レバノンのベカー渓谷では約5,000人の国外脱出をしたシリア難民が、フェイダ・キャンプと呼ばれる場所で生活しています。
AP通信のニュース・カメラマン、ジェローム・ディレイとNBC放送の番組制作者である立花由香が2日間キャンプを訪問し、まだ成年に達していない戦争の生存者がどんな生活を強いられているか、取材と写真撮影を行いました。

13歳のアリは家族で車に乗って移動していた時、突然銃撃を受けました。
銃弾はアリの掌を貫通し、隣にいた弟モハメドの頭に命中してしまいました。
モハメドはそのままアリの腕の中で息を引き取りました。
その一か月後、アリの家族は国境を越えシリアを逃れ、レバノンにやって来ました。
兄弟の母ハタラは、モハメドの死以来子供の様子が変わってしまったと語ります。
アリはまだ手に痛みが残っていますが、事件そのものの記憶はあいまいです。
母によれば事件以来アリは突然異常に興奮することが多くなり、自律的行動をすることが難しくなったと語ります。
しかしアリは現在、家族にとってたった一人の稼ぎ手です。
彼は毎日1時間歩いて通勤し、自動車整備工として週に6日間働いています。
「神が一つだけ願いをかなえてくれるなら、平和になった故国に帰りたいと願うつもりです。」
(写真上)

14歳のノファはアリの姉です。
末の弟が銃撃によって死亡したことに衝撃を受けた彼女は、一刻も早く家から出たいと考えました。
そして従弟と結婚しましたが、結婚生活は長続きせず、結局もとの家族のもとに戻ってきました。
彼女は現在学校に行くことなく、母親と一緒に年下の兄弟姉妹の世話に明け暮れています。
「シリアで内戦が始まる以前、私は学校が好きでした。わたしの成績はクラスでトップでした。」
ノファがこう語りました。
「得意科目はアラビア文学でした。」
(写真下・以下同じ)
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2年前に家族と一緒にシリアのイドリブから逃れてきた5歳のガマルがフェィダ・キャンプの中を歩いていました。
当時イドリブでは頻繁な砲撃や爆撃にさらされ、近くで爆音がする度ガマルは泣き声をあげていました。
避難後の今も夜中に泣き叫ぶことがあります。
父親のカリドがガマルのこれからの人生に望むことは、平和で落ち着いた生活だけだと語りました。
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母親と一緒に暮らしている難民キャンプのテントの中で、兄弟姉妹と一緒にベッドに座る12歳の少女ファティマ。
4ヵ月前、家族のために食糧を捜していた父親が姿を消した後、ファティマと家族はシリアのホムスを逃れてこの場所にやってきました。
「私はいつも父の事を考えています。父は私たち家族が幸せでいられるよう、絶えず気を配っていました。食べ物を探し、家族全員が無事でいられるようにしてくれていました。神さまがひとつだけ願いをかなえてくれるなら、父を返してほしい、それだけです。」
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7歳のシドラ(真ん中の少女)が難民キャンプのテントの前に立っています。
家族が就寝中に自宅近くで爆発が起きた2週間後、シドラの両親は3歳の妹のジーナとシドラを連れてダマスカス郊外からレバノンに逃れてきました。
「そのとき私のおじさんが3人、そしていつも一緒に遊んでいた3人のいとこも死んでしまったの。」
シドラがこう話しました。
そしてシドラの弟も3年前、銃撃で殺されていました。
「私はもうシリアには戻りたくないわ。私はこのキャンプいる方が安心できるから。」
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【 イスラム国人質事件、人質男性の母親が目に涙をためて訴え 】

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所要時間 約 10分

イスラムの教義にまったく反し、世界中のイスラム教徒とコミュニティに深刻な打撃を与えてしまう
子どもたちを救うことに半生を捧げた後藤氏、決してイスラムの敵などではない彼を自由に!

ジャスティン・マッカリー / ガーディアン 1月23日

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イスラム国の人質となっているフリージャーナリスト後藤健二さん(47歳)の母親である石堂順子さん(78歳)が身代金の支払い期限とされる時刻が迫る23日、日本外国特派員協会(東京都千代田区)で記者会見し、後藤氏の解放を求めました。

日本政府が2億ドルの身代金を支払わない限り、人質として拘束されている日本人男性2人を殺害するとイスラム国が脅迫するタイムリミットが迫る中、母親の石堂順子さんは涙ながらに後藤さんを解放するよう訴えました。
石堂さんは後藤さんについてイスラム国の敵などではなく、純粋に人道的見地から世界の紛争地帯で人々が苦しむ姿をリポートすることを目的にしていたと語りました。

「私の息子は、イスラム国の敵でありません。」
石堂さんは23日金曜日の朝、国内外の報道陣が詰めかけた記者会見の席上、こう語りました。

時折涙を拭いながら、石堂さんは息子がトラブルを引き起こしてしまったことについて謝罪すると同時に、日本政府に対したとえ身代金を支払うことになっても、後藤さんたち2人の日本人が無事釈放されるよう訴えました。

報道によれば後藤さんは昨年8月にイスラム国に拘束されたとみられる、知人で安全保障問題コンサルタントの湯川遥菜(42歳)さんの解放交渉のため、10月にシリア入りしたと見られています。

「私が母親としてできることは、解放されることを祈る事しかありません。」
石堂さんはこう語りました。
「もし私自身が息子の身代わりになれるなら、喜んでこの身を捧げます。息子が解放されるなら、私の命など惜しくはありません。」

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日本政府当局者は現地の数カ国の関係先各所に飛び、日本人男性2人の解放のため工作を続けていますが、身代金支払い最終期限が数時間先に迫った時点においてもイスラム国と直接接触できていないことを認めました。
日本政府は、最終期限が日本時間の23日金曜日午後2時50分であると認識しています。

しかし日本の公共放送NHKは、このあとすぐにでも声明が公表されるというイスラム国「広報部門」からのメッセージを受けとったと伝えました。

石堂さんは世界中の紛争地域で困窮する子供たちを救いたいという願い、そうした『優しさ』が後藤さんの行動原理であると訴えました。
そして生後わずか2週間の自分の子供を残してシリアに向け旅立ったことを後藤さんの妻から聞き、驚いたと語りました。
「私は健二がいったいどういうつもりでそんなことをしたのか解りませんでしたが、友人を助けたいという一心だったのだと思います。」
「彼はそういう人間なのだというしかありません。」

石堂さんは、オレンジ色の衣服を着せられた後藤さんと湯川さんの間にジハード戦闘員が立ち、ナイフを振り回す映像をイスラム国が公開して以降の3日間、『深い悲しみと混乱』にひどく苦しんできたと語りました。

英国のアクセントで英語を話す覆面をした男は、2億ドルの身代金の支払い期限として日本の安倍首相に72時間を与えました。
この金額は安倍首相が中東諸国を歴訪して約束した、イスラム国との戦いに必要な『非軍事』援助の総額と同じです。
その中にはイラクとシリアからの難民を受けて入れている各国への資金援助が含まれています。

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身代金を要求するビデオの中で、イスラム国は安倍首相がイスラム女性と子供たちを殺し、彼らが住んでいる家を破壊するための資金援助を行ったと攻撃しましたが、日本政府はこうした告発を否定しています。
日本の岸田外務大臣は、安倍首相が周辺職に約束したのは人道的見地に立って支援活動を行っている国々に対するものであると語り、次のように語りました。
「我が国がテロリズムに屈することはありません。国際社会と協力しながらテロリズムの防止に努めるという我が国のスタンスに変更はありません。」

日本の当局者は、場合によっては米国・英国政府との間に亀裂を生じさせる可能性がある身代金支払いについてコメントすること拒否しました。

日本政府の最高位のスポークスマンである菅義偉官房長官は、日本政府が人質を捕えている側にあらゆるチャンネルを使って接触を試みてはいるものの、20日火曜日にイスラム国がビデオを投稿して以来、新たなメッセージは何も受け取っていないと語りました。

土壇場の取り組みとして、昨年4月にシリアで初めて後藤さん、湯川さんと接触したともにイスラム教への改宗者であるイスラム法の専門家中田考氏、そしてジャーナリストの常岡浩介氏は、イスラム国側に2人を解放するよう認める嘆願書を送りました。

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「72時間という時間は、あまりに短い。」
中田氏は日本語、アラビア語と両方の言葉で読み上げた声明で述べていました。
「もう少し時間を与えてほしい。そして直ちに危害を加えるようなことは控えて欲しい。」
中田氏はこう語り、次のように付け加えました。
「話しあう余地があるのであれば、現地に交渉に行く準備がある。」

中田氏は赤新月協会(イスラム圏の赤十字組織)を通し、イスラム国の支配地区における難民や住民に対する人道援助のため2億ドルを提供することを提案しました。
「私はこれが合理的な、そして受け入れが可能な選択肢であると考えています。」

日本最大規模のモスクである東京ジャーミー・トルコ文化センターは、2人の人質をすみやかに開放するよう求める声明を発表しました。
この声明の中で同センターは
イスラム国の行為は「イスラムの教義にまったく反するものであり、世界中でイスラム教徒とイスラムのコミュニティに深刻な打撃を与え、不安定な立場に追い込んでしまうものである。」

石堂さんは、後藤さんがこれほどに危険な場所に自ら赴くという愚かな行為を犯してしまったという一部の人々の指摘を受け入れた上で、しかしその意図には尊重すべきものがあったと語りました。
「私の息子は立って歩けるようになる以前から、常に出会った子供たち全員に優しい人間でした。」
「息子は、友人や知人を救うために、できることをすべて品家腫れならないと感じていたのだと思います。」

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「彼は仲間を救出するためにシリアに行ったのです。彼はイスラム国の人間と直接話すことができれば、彼らを説得することも不可能ではないと考えていたようです。息子は子どもたちを救うことに、これまでの人生を捧げてきました。…私はイスラム国の人々に彼を自由にしてくれるよう、心の底からお願いします。あらゆる意味で、息子は決してイスラムの敵ではないのです。」

http://www.theguardian.com/world/2015/jan/23/japanese-isis-hostage-kenji-gotos-mother-makes-tearful-appeal
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【 戦争の代償 : 難民キャンプでの暮らしを強いられる子どもたち 】《再掲》

アメリカNBCニュース 8月2日
(写真をクリックして、大きな画像をご覧ください)

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ヨルダンのマフラクにあるザータリ難民キャンプに行けば、隣国シリアで行われている内戦という名の戦争がどれ程残酷なものであるか、それを幼い子供たちの表情から読み取ることが出来ます。

18才未満の50,000人以上の年若い難民たちは、広大な砂漠の中に設営された吹きさらしのキャンプを我が家と呼ばなければなりません。

ザータリ難民キャンプで暮す10歳のアマル、2014年7月29日撮影。(写真上)

ザータリ難民キャンプで暮す5歳のサマハ。
ユニセフの調査によれば、シリアには280万人の就学年齢の事もたちがいますが、そのうちの約半分が内戦のため、教育の機会を奪われてしまっています。(写真下・以下同じ)
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11歳のアマル・カルーシュ。政府軍の攻撃によりシリア国内の自宅を爆破された彼女は、家族とともにこのキャンプに逃れてきました。
「ここに逃れてくる途中も、私たちは何度も砲撃されました。とても恐ろしい経験でした。でも私たち家族は幸運なことに、全員ここに避難することが出来たのです。」
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14歳のシリア難民、フォウアド。
ユニセフはシリアの内戦では、10,000人以上の子供たちが無残に殺されてしまったと見積もっています。
生き残ることが出来た子供たちも、心に大きな傷を負ったままなのです。
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ザータリ難民キャンプで暮す6歳のバトウル、2014年7月29日撮影。
難民キャンプでの暮らしには多くの苦痛が伴いますが、イスラム教徒の重要な儀式であるラマダン明けがあったこの週、子供たちのもとに援助物資が届きました。
中には新しい洋服などがあり、一部子供たちはくつろいだ時間を過ごすことが出来ました。
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8歳のモハメッド・ガッサーン。
SYR06
9歳のマラク。一部の恵まれた子供たちは学校に通うことが出来ますが、多くの子供たちは生活を支えるために働かなければなりません。
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5歳のザイナブ。
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【 平和を愛してきた日本国民に対し、未曽有の脅迫が開始された 】

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所要時間 約 13分

軍事・外交面における安倍首相のタカ派政策に対し、早くも現実になった反動
『積極的平和主義』海外の武力衝突に関わることにより、日本人の命が危険にさらされる

マーティン・ファクラー、アラン・カウルジャン / ニューヨークタイムズ 1月20日

人質事件01
覆面をつけた戦闘員がひざまずかせられている2名の日本人男性を殺すと脅迫しているビデオが1月20日ウェブ上で公開され、アメリカ合衆国や他の国々同様、日本をもまた人質事件の悪夢が襲うことになりました。
安倍晋三首相は脅迫に屈するつもりは無いと宣言し、日本人男性の救出を誓いました。

このビデオは中東諸国を歴訪している最中に公開され、安倍首相はこれまでとは全く異なる類いの課題を背負わされることになりました。

積極的平和主義を掲げ世界の安全保障問題に自ら関わっていこうという安倍首相の姿勢に対し、日本の国民の中で飽くまで平和主義の立場に立とうとする人々は不安と反感を抱いています
政治評論家は、オレンジ色のつなぎの服を着せられ地面にひざまずかされている日本人男性の姿は、こうした日本人の不安をより大きなものにするだろうと語っています。

過激派であるイスラム国のサイトで公開されたビデオの中の日本人男性二人は、ジャーナリストの後藤健二氏と湯川遥菜氏であることが確認されました。

ビデオの中でナイフを手にした戦闘員の男が山岳地帯と思われる場所でひざまずく2人の日本人男性の間に立ち、2人の男性の身柄と引き換えに日本が2億ドル(約234億円)を72時間以内に支払うよう求める、あらかじめ用意されたと思われる声明を読み上げました。

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この戦闘員は今回の身代金要求が、中東諸国を歴訪中の安倍首相が17日に発表したイスラム国、別名ISISまたはISILに対する戦いを行っている国々に対する非軍事経済援助がきっかけであると語りました。
安倍首相はイラク政府への支援、そしてイスラム国の占領地区の拡大とともに難民となり、トルコ、レバノン、シリアで生活している人々への援助資金として2億ドルを供出すると語っていました。

「日本の一般国民の諸氏に告ぐ。イスラム国との戦いに2億ドルを支出するという、あなた方の政府が行なった決定が如何に愚かしいものであるかを思い知ってもらうため、人質救出のために政府に圧力をかける時間として72時間を与えよう。」
覆面をした男はビデオの中でこう語りました。
男は米国英語ではなく、英国のアクセントの英語で次のように続けました。
「さもなければこのナイフは、諸君にとって悪夢になるだろう。」

イスラム国の一連の人質事件の被害者である2人のアメリカ人、ジェームズ・フォーリーとスティーブンJ.ソトロフ、そして2人の英国人、デイビッド・ヘインズとアラン・ヘニングが首を切られて死亡するビデオに登場した覆面の男の声、しぐさ、服装と今回の男のものには共通点が見られました。
この戦闘員は身代金要求の際通貨を指定しませんでしたが、アラビア語の字幕には米ドルと明記してありました。

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アメリカ合衆国と英国はこうした要求に対し、身代金の支払いを拒否すると明言しています。
アナリストや政府関係者は日本政府が過去に身代金を支払った例があるものの、最近ではそうした例は無いと語りました。
そして2億ドルという金額は政治的判断を下しようのない程非現実に高額であり、支払われる可能性は低いとしています。

日本政府のスポークスマンを務める菅義偉官房長官は東京での記者会見で次のように語りました。
「日本がテロリズムの脅迫に屈することはありません。そして、国際社会のテロリズムに対する戦いに積極的に関わっていくという我々の方針に変更はありません。」

このビデオは、イスラム武装組織がはっきりと身代金の要求を行った初めての例であると考えられます。
これまでイスラム国はビデオの中で人質を殺すという脅迫はしてきましたが、具体的要求を行った例はありませんでした。
そして72時間という期限を切って回答を要求した点においても、これまでとは一線を画しています。

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事件当時は公表されませんでしたが、アメリカ人人質の解放と引き換えに身代金の支払いを強要したもののうまくいかなかったことが、武装グループの今回の要求の規模につながったとの観測があります。
イスラム過激派の宣伝活動を監視しているSITE(諜報機関)は、最新のビデオがイスラム国の外部向け宣伝機関であるアル・フルカンによって制作されたものであると語っています。

人質に迫る脅威は、すべての日本国内のニュース番組でトップで扱われました。
国内では有権者の多くが、安倍首相のタカ派的政策の推進により、日本がこれまでの平和主義を捨て去ってしまうことについて懸念を募らせていました。

日本もこれまでアラブの過激派による攻撃と無縁だったわけではありません。
2003年後半、日本の2人の外交官がイラクで銃撃を受けて死亡、その1年後には同じイラクで若い男性が誘拐され殺害される事件が起きました。

しかし政治評論家は今回の事件が、安倍首相に対する一般国民の支持率を低下させる可能性があると語っています。
昨年12月末の衆議院議員選挙で決定的勝利を手にした後、安倍首相の政治方針に口をはさめる人間は誰もいないかのような状況が続いていました。

人質事件安倍首相
安倍首相はその経済政策に対する国民の支持を得て得意気でしたが、国民の多くは安倍首相が推進する日本の軍事面・外交面での強化策に必ずしも賛成ではありません。

日本国民は第二次世界大戦において国が破滅寸前にまで追い込まれていく中、数々の悲惨な体験を強いられました。
その事から日本国民はどのような軍事行動にも嫌悪感を抱いていると、アナリストは分析しています。
そして今回のビデオは、日本人のその思いを新たにする可能性を持っています。

「今回の危機は日本国民の心の奥深くにある、安倍首相に対する懸念を呼び覚ますことになるでしょう。」
政治学研究科の春名幹男客員教授がこう語りました。
「この事件が起きる以前に、安倍首相のタカ派的政策が遠く離れた海外の紛争に日本を巻き込み、日本人が殺される結果につながるのではないかとの懸念を国民はすでに抱いていました。」

20日火曜日のエルサレムでの記者会見では、安倍首相は人質になっている2人を救出するため、関係部局に対しあらゆる手立てを尽くすよう命じたと語りました。

Arab03
安倍首相は同時にアメリカ合衆国の同盟国として、これからは国際舞台での活動を積極的に推進するための第一歩となる、関係各国に約束した2億ドルの資金援助についてこれを撤回するつもりは無いと語りました。

「脅迫の材料に人間の命を使う事は、許しがたいテロ行為であり、私は心底憤っています。」
安倍首相は中東滞在の時間を短縮し、危機対応のため東京に戻りました。
「私は人質になった2人が無傷のまま直ちに解放されるよう、強く要求します。」

アメリカ合衆国報道官は火曜日、「これらの一般人と他の全ての人質を即時釈放するよう」を要求する声明を発表しました。
「アメリカ合衆国は、この問題において完全に日本を支援します。」

日本のニュース報道によれば、人質のうちのひとり、湯川さん(42歳)は妻を肺がんで亡くした後、心の隙間を埋めるべく戦争で国土をずたずたに引き裂かれたシリアに向かいました。
湯川さんは昨年8月、自らのウェブサイトでシリアのアレッポで作業服を着て突撃銃を発砲するシーンを公開しました。
そして8月ごろにブログで、これからシリアに向かうが詳しい場所を明かすことはできないと書き
「次に向かう場所は、これまでで最も危険である可能性があります。」

湯川さんが顔から血を流しながら地面に横たわっている動画が、彼を捕えたと思われる人間によってインターネット上で公開されました。

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もう一人の男性、後藤さん(47歳)は、交戦地帯や危機的状況にある場所の報道経験を持つフリージャーナリストです。
捕えられる前、後藤さんは移動中の詳しい様子を伝える数本の動画をオンライン上に投稿し、その中には英語で『シリア国境をめざすジャーナリスト後藤』というタイトルが付けられていました。

ツイッター・アカウントによると、後藤さんはトルコとの国境に近く、イスラム国武装勢力の包囲が続くシリアの都市コバーニ付近で、10月2にちシリア領内に入ったものと見られています。
ツイッターへの彼の最後の書き込みは、10月23日付になっています。

日本のメディアは20日、後藤さんが以前シリアで湯川さんに会ったことがあると伝えました。
後藤さんは日本国内にいる家族に、湯川さんを救出するためシリアに向かうつもりだと話していましたが、具体的にどうするかは明らかにしていませんでした。


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この事件に関する記事は早い段階で各国のメディアに登場したのですが、事実を伝える速報であれば、国内報道の方が早く詳しいはずであり、それよりも世界全体を視野に入れた上で事件全体をどう理解すればいいのか、ニューヨークタイムズのマーティン・ファクラー氏とガーディアンのジャスティン・マッカリー氏、そしてエコノミスト誌の記事を読みたいと思って待っていました。
20日付でM.ファクラー氏、23日付でJ.マッカリー氏の記事が掲載されましたので、ご紹介させていただきます。

事件の推移は予断を許しませんが、安倍首相?あるいは外務省?の洞察力の無さには憮然たらざるを得ません。
シャルリーエブド事件直後に、アラブ世界の紛争に日本も進んで手を突っ込むぞと大見得を切った挙句の事件発生でした。
2億ドル規模の『援助』であれば、外務省の事務方の交渉で終わらせればよかったものを、と悔やまれます。

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【 虐殺を逃れて - 民族差別が行き着いたところ 】

アメリカNBCニュース 9月24日
(再掲載・掲載されている写真をクリックして大きな画像をご覧ください)

クルド 1
自分たちの故郷だった場所で勢力を拡大しているイスラム国の攻撃を逃れ、何千何万というシリア人が国境を越えてトルコ領内へ逃げ込み、難民センターはたちまち満杯になってしまいました。
ロイター通信によるとイスラム国はシリア北部で100個所以上の村を占領したため、難民の世話をしている担当者は138,000人の難民がトルコ領内に逃げ込んできたと語りました。

9月23日、トルコ領内に避難した後、トルコの警察官の姿を見て怯えて泣き叫ぶクルド人の少女。(写真上)

9月23日、以下の写真はいずれも国境を越えトルコ領内に避難するシリアのクルドの人々。

クルド 2
クルド 3
クルド 4
クルド 5
クルド 6

http://www.nbcnews.com/storyline/isis-terror/misery-border-syrian-kurds-flee-turkey-n210556

【 福島第一原発で作業員男性が死亡、福島第二でも同日に死亡事故が発生 】

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所要時間 約 5分

事故収束・廃炉作業現場では事故発生件数が増加、内容も深刻化している

ジャスティン・マッカリー / ガーディアン 1月20日

汚染水タンク

この四半世紀で最悪の原子力発電所事故が発生した福島第一原発の事故収束・廃炉作業現場にある、空の汚染水貯蔵タンクでの墜落事故で作業員の男性1人が死亡しました。

福島第一原発における死亡事故は昨年に引き続き2件目になりますが、東京電力は事故発生予防のためあらゆる手立てを講じていると主張しています。

約7,000人の労働者が福島第一の事故収束・廃炉作業に関連する業務に携わっています。
福島第一原子力発電所は2011年3月、巨大地震と津波に襲われ、3基の原子炉がメルトダウンを起こして以来、事故収束作業が続いています。
破壊された設備を分解し、原子炉内で溶け落ちた核燃料を除去するまでには、40年の歳月を必要とすると言われています。

死亡した50代男性の氏名は明らかにされていませんが、この最新の死亡事故は施設を訪れた労働局の監査官が東京電力に対し、事故発生件数が増加していることに対し徹底した対策を取るよう求めた数日後に発生しました。
昨年の3月には、溝を掘る作業を行っていた作業員が砂利の生き埋めになって死亡する事故が発生しました。

廃炉13

同じ20日火曜日、核廃棄物の保管場所になっている福島第二原子力発電所で点検器具に頭を挟まれた40代の作業員が病院で死亡したと共同通信が伝えました。
福島第二原発は地震と津波によって大きな被害を受けておらず、現在は福島第一原発の事故収束・廃炉作業のための中継基地として使われています。

福島第一原発の作業員の負傷者数は熱射病を除き、この2年間でほぼ2倍になりました。
2013会計年度の負傷事故は23件でしたが、昨年は4月から11月までの8ヵ月間ですでに40件を記録しました。
東京電力はこうした状況について、平日の作業員の数が事故直後の3,000人前後から、現在7,000人にまで増加していることを原因としてとらえています。

「我々は事故防止のため、あらゆる対策をとっています。」
東京電力の広報担当者はこのように語りました。

その対策の中には、非常に多い数の下請け会社によって雇用される作業員に対し、実際に現場に出て作業を行う前に潜在的危険を見分けるための訓練を一定期間施す対策も含まれています。
現在、福島第一原発の事故収束・廃炉作業現場は巨大な建設現場にも似た状況となっています。

今回死亡した男性は19日月曜日、汚染水タンクの点検作業中に10メートルの高さから墜落した後に死亡しました。
男性はすぐに病院搬送されましたが、翌日の火曜日早くに死亡しました。

汚染水プール

「労働者男性の死亡は痛恨の極みであり、ご家族の皆様には衷心よりお悔やみ申し上げます。
私たちはこのような悲劇が二度と起こらないよう、万全の手立てを尽くし、再発防止に努めます。」
東京電力は小野福島第一原発所長の声明を発表しました。
男性の雇用主である建設会社の安藤ハザマは、直後のコメントを明らかにはしませんでした。

福島第一原発の作業員については、適切な休養が与えられないために集中力を欠き、ミスを犯しやすいのではないかとの懸念が以前から指摘されていました。
これに対し東京電力は、最高1,200人の労働者が同時に休憩を取ったり食事したりできる施設を、今年3月新たにオープンさせることになっています。
さらにいくつかの会社が4月から毎日栄養価の高い食事を約3,000人の労働者に提供するための、新しい会社を最近立ち上げました。

大部分の作業員は東京電力が行っている事故収束・廃炉作業に対して協力する建設産業界の下請け企業の巨大なネットワークに雇用されている人々です。

汚染水タンク02

この中の一部の悪徳企業が義務化されている危険手当を支給しなかったとして、4人の元作業員と現職作業員が、東京電力と下請け企業を相手取り、昨年9月に約7,000万円の未払い賃金の支払いを求める訴訟を起こしました。

「単に事故件数の増加だけが問題なのではありません。死亡事故、重傷事故を含めた深刻な事故の発生割合も上昇しているため、我々は東京電力に状況の改善を求めたのです。」
ロイター通信の取材に対し、地元の労働監督局の担当者がこう答えました。

http://www.theguardian.com/environment/2015/jan/20/worker-dies-fukushima-daiichi-nuclear-plant

【 日本の新年度予算、過去最大の歳出拡大と負債の削減、その『両立』の根拠は? 】

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所要時間 約 8分

日本が持続的成長を望むのであれば、平均的労働者の生活状況の改善が最も重要
政府の財政再建策が達成されるためには、著しい経済成長かさらなる増税が必要

ジョナサン・ソブル / ニューヨークタイムズ 1月14日

消費税引上直前上野アメ横
1月14日、日本政府が国会に提出した新年度予算は健康福祉関連から国防予算まであらゆる経費が増額となり、史上最も多い出費を記録することになりました。

日本が巨額に昇る公的負債の削減を開始する可能性があるとの観測がある一方、予算編成にあたった政府関係者は、もし出費項目が追加されることになれば、少額ではあっても負債がさらに増加する可能性もあると語っています。

日本はこの容易ならない状況を切り抜けていかなければなりませんが、これは置かれている難しい経済局面を反映したものです。

政府と日本銀行は市場に資金を溢れる程流通させることにより経済成長を実現させる政策を続けてきましたが、2014年日本は予測していなかった不況に転落しました。

今夏提出される予算案では日本の経済成長と財政規律を両立させようとしています。

「この予算は、日本経済の復活、財政基盤の強化、その両方を実現するものになるでしょう。」
この予算案について内閣の承認を得た後、安倍首相がこう語りました。
この予算案は4月以降、随時施行されることになります。

予算案は国家の承認を得る必要がありますが、12月の選挙で与党はほぼ圧倒的多数の議席を制しており、その点に関して懸念はありません。

この予算の成否の鍵は、税収が継続して増え続けることが現実になるかどうかにかかっています。

日本の経済は苦境に立たされていますが、日本の大企業は記録的な利益を稼ぎ出し?
その結果、これら企業が収めた税金も記録的なものになり?
その中には多国籍化した日本企業が海外で得た利益も含まれています?

景気悪化
これらの企業が得た利益は、過去2年に渡って進んだ円安によって一層拡大されることになりました。
取引形態の変化や価格の動向を調整すると、現在の円の価値は1970年代以降、最安値となっていると経済学者が分析しています。

そのおかげで日本企業が海外で得た利益が日本に送金されると、これまで以上の価値を持つことになるのです。
もうひとつの財政再建手段は消費税を含めた税収の確保です。
日本政府は2014年4月に消費税を引き上げましたが、その結果消費支出が一気に縮小し、日本経済を再び不況に追い込んだと非難されることになりました。

しかし経済が再び安定に向かう傾向が見られてきた今、国家財政の赤字を縮小するための手立てが採られる必要があります。

世界標準と比べ緩めの日本の規準から言って、税収のリバウンドは新たな借り入れが減少することを意味するのでしょうか?
新規公債発行額(財政赤字)は36兆8,600億円、とこの6年間の予算案の中で最も少ない額になります。
おそらくさらに重要なことは、日本銀行が市場から膨大な量の国債を買いあげることによってその金利を抑え込んでいるため、日本政府が支払うべき債務の利息が史上最低になっている点です。
この変化は重要です。

日本は現在先進国中最大の公的負債を抱え込んでおり、その金額は国内総生産の年額の2.5倍に達しています。
日本の歳出額は人口の高齢化とともに徐々に増え続けていますが、ここ数年は歳出のかろうじて半分を税収が賄ってきました。

予算全体で、出費は増えています。

公的年金制度と健康保険事業費を含む社会的福祉関係予算は、2015年度には3パーセント以上増加すると予測されています。
予算全体の拡大ペースが年0.5%前後であるのと比較すると、福祉関連予算の出費の拡大スペースはかなり大きいと言わなければなりません。
福祉予算は96兆3,400億円の予算総額の約3分の1を占めることになっています。

SDF01
安倍首相は台頭する中国の軍事的脅威に対抗するためだとして、就任以来日本の軍事費の増額を続けてきました。
日本にとっては記録的な金額となる金額4兆9,800億円、予算総額の2%の防衛予算が今回計上されました。
主張されているのはその金額であっても日本の国内総生産のまだわずかおよそ1パーセントである?
中国の軍事予算の約半分であり、アメリカ合衆国と比較すれば4分の1にすぎない?という事です。
しかし多額の軍事支出は、憲法において戦争の放棄をうたっている日本国内では論争を呼ぶことは必至です。

日本政府の財政的な見通しは、消費税引き上げにより日本経済が再び不況局面に落ちこんでしまったことに加え、予期せぬ混乱が生じたことで白紙に戻さざるを得なくなりました。

しかし経済学者の多くは2015年という年が日本にとって、そしてアベノミクスにとって状況が改善に向かう年になるはずであると語っています。
個人消費支出に対するさらなる打撃を避けるべく安部首相は2度目の消費税の引き上げを延期、そしてエネルギー資源の大部分を海外からの輸入に頼る日本にとって、このところ続いている原油価格の急激な値下がりは経済的な恩恵をもたらすはずです。

今後の重要な課題は、平均的労働者が安倍政権の政策によって恩恵を得られるのかどうかという点です。

安倍政権の下で企業収益が爆発的とも言うべき伸びを示したにもかかわらず、労働者の賃金増加は物価上昇・増税の動きにはるかに遅れることになりました。
経済学者は日本が持続的成長を望むのであれば、まずこの点を改善しなければならないと語っています。

GRD日本の景気
「多くの企業が社内に遊休資金を積み上げています。」
クレディ・スイスのエコノミストである白川弘道氏がこう語りました。
「日本企業の経営において費用削減という時代が作られました。」

政府の予算予測が正しければ、2010年度には国内総生産の6.6%だった国債費用が、2015年度には3.3パーセントにまで減少させるという政府目標が達成されることになります。

しかし経済学学者は2020年までに政府の主要な赤字を解消するという政府目標の達成は極めて難しいと語っています。
実現のためには著しい経済成長率の増加か、またはさらなる増税、場合によってはその両方が必要です。

「長期にわたる財政再建計画は、不明なままです」
白川氏がこう語りました。


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テレビには中東を歴訪している安倍首相が気前よく『援助資金』配って回っている姿が映し出されていますが、そのお金は別に首相のポケットマネーではなく、私たちが収めている税金から支出されていることを忘れないようにしたいものです。
給与明細を見ると所得税や住民税、厚生年金の額に加えて、介護保険料もばかにならない金額になりつつあることに気づかされます。

テレビが写しだす数々の日本政府の政策の費用負担者は、私たち自身に他ならないのです。

【 台頭する中国、増大する軍事的圧力を前に、日本は記録的金額の防衛費を計上 】

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所要時間 約 7分

台頭する中国の力にはチカラで対抗する、財政事情が逼迫する中、それは果たして賢明な選択なのか?
大切なのは外交努力と軍事的圧力のバランスを取り続ける、その取り組みを忘れない事

ジャスティン・マッカリー / ガーディアン 1月14日

日中紛争 2
中国が東アジア地区における軍事的影響力を増大させるとともに、日本政府が実効支配している東シナ海の一群の島々に対し領有権を主張していることに対応するため、新年度予算の中で過去最大規模の防衛費を計上することを発表しました。

1月14日に閣議了承された4兆9800億円(420億ドル)の防衛予算は、昨年と比較して2%の上昇となり、民主党政権まで10年連続で減少を続けていた防衛予算は安倍内閣誕生とともに一転、3連続で増加を記録しました。

防衛費の増額は、戦後平和憲法の下で課されていた軍事面の様々な制約を取り払い、日本の軍事能力を高めて中国の圧力を跳ね返そうとしている、タカ派の安倍晋三首相の防衛方針と軌を一にするものです。

安倍首相は今年、日本が同盟国とともに第二次世界大戦の終了以来初めて他国の領土で戦闘行動を行う事を可能にするため、憲法第9条の解釈の変更に伴う新たな法律の制定を進めることになっています。
こうした一連の動きは、日米安保条約に基づく軍事面での日本側の貢献度合いの増大を求めるアメリカ政府の歓迎するところとなりました。

一方中国の今年度の軍事予算は1,122億ドルで、日本と比較すると2倍以上になります。
ロンドンにある国際戦略調査研究所によれば、中国の軍事予算は2013年に6,004億ドルを使ったアメリカ合衆国に次ぐ規模であり、日本の軍事費は世界で7番目の規模になります。

防空識別03
新年度の日本の防衛予算が主眼としているのは、東シナ海の尖閣諸島をはじめとする遠隔地域の島々に対するいかなる侵攻も跳ね返せるだけの兵器を装備することです。

この中にはP-1海上用哨戒機20機(国産)、F-35戦闘機6機、垂直離着陸が可能なオスプレイ5機、、グローバルホーク無人機、イージス(駆逐)艦2隻の購入費用、そしてアメリカと共同開発中のミサイル防衛システムの開発予算が含まれます。
防衛省はさらに日本の南方の領域で監視活動を行うための早期警戒機と水陸両用攻撃車両30両を購入する予定です。

中谷防衛大臣は中国の監視船による尖閣諸島周辺での度重なる領海侵犯にはっきりと言及し、国防費の支出額の増大が東アジア地区における『状況の変化』に対応するためのものであると述べました。

「国防支出のレベルは、日本の空域と海域、そして国土を守り、我が国の市民の命と財産を守るための必要量を反映するものです。」
中谷防衛大臣はこう語り、中国の戦闘機が日本の航空機に異常接近した事実を付け加えました。

「本当の問題は、日本の防衛予算を積み増すことが、中国の台頭に対応するための最も賢明な方法であるかどうかということです。」
昨年度の防衛予算が日本の歳出の12パーセントにまで膨れ上がった点について、上智大学の政治中野孝一教授はこう指摘しました。

CBS03
「日本はすでに莫大な公的負債を抱え込んでいる上、高齢化が進行する、成熟した経済です。中国のGDPは日本の2倍に昇り、人口は日本の10倍以上なのです。」
中野教授がこう語りました。

「対等な軍事力を保持することは、全体の解決の中の一部分に過ぎません。緊張した外交関係を解くため可能な限りの外交的努力を積み重ねた上で、軍事的抑止力というものを考えるべきなのです。」
「ごく単純な事実があります。それは日本には中国と軍拡競争を続ける体力などは無いということです。」

今回の防衛予算については、その視線は明らかに尖閣諸島を含めた離島にへの侵攻の危険性に向けられており、日本は水陸両用車量の導入だけでなく、アメリカ海兵隊の日本版というべき部隊の整備にも努めてきました。

しかし一部のアナリストは、安倍首相の防衛計画は、東シナ海において増大し続ける中国の軍事的脅威にだけ対応したものではないと分析しています。

明治大学国際総合研究所の客員研究員の奥村準氏が次のように語りました。
「日本政府は北朝鮮の核兵器プログラムについても懸念を抱いています。そしてシーレーンの確保の問題、さらには冷戦時代には北方領土が最大の問題でしたが、現在ではずっと南に下がった海域に対する脅威が最重要課題に変わったのです。」
「中国の東シナ海とその空域における軍事的圧力の増大、そしてフィリピンやベトナムに対する明らかな軍事的敵対行動が日本の防衛予算の拡充、軍事政策、そして関係国との同盟強化の方向性に影響を与えていると言われています。」

 特定秘密 1
「中国政府が国際法を守ろうとしない限り、緊張関係は続かざるを得ません。」
日本国際問題研究所の小谷哲男主任研究員がこのように語りました。
「他国の領海と領空を脅かすと同時に、中国は他国の軍隊に航行と領空飛行の自由を認めようとしません。
「中国が国際法や国際規則を守らない限り、これらの危機が続くことになるのです。」

http://www.theguardian.com/world/2015/jan/14/japan-reveals-record-defence-budget-as-tensions-with-china-grow
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防衛予算の記事を見ていつも思うことは、守るべき国の中身は大丈夫なのか?ということです。
無人島を守るために巨額の費用を惜しまない一方で、母子家庭や父子家庭の生活はしっかり守られているのでしょうか?

国民とその財産を「守る!」「守る!」と見栄を切りますが、一方では『反日』や『非国民』は許さんぞ!という態度も見え隠れしています。
それ、『守る』のではなく、脅しているのではないでしょうか?

【 戦前の亡霊たちの復活 : 物言わぬ羊であるべき日本国民、監視されることを許さない日本政府の官僚 】《後篇》

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所要時間 約 6分

安倍首相の構造改革は見た眼は立派でも、本腰を入れて取り組んでいるものはほとんど無い
構造改革は安倍首相にとってはワイドショー、真に望むものは戦前日本の『国体』の復活
福島第一原発の事故対応を厳しく批判した、原子力産業界と官僚の癒着ネットワークの司令塔とは?

 

エコノミスト 1月10日

マーフィー教授は、長い間日本を支配してきたその統治機構に共通する体質をも批判しています。

1930年代前半から『総力戦遂行』のため、国内にあるものすべてを徴発して資源の集中を行ったのは『革新官僚』主導体制でした。
そしてそれと同じ官僚主導システムが、1945年以降今度は日本の奇跡的復活と高度成長を成し遂げるため『戦時体制』で機能したのです。
戦前の体制の体質をそのまま戦後も継続させる上で、戦後政治家の中で軍国主義日本とのつながりが最も強く疑われていた岸信介氏以上に、そのことに貢献した人物はいませんでした。

彼は中国東北部で日本の傀儡国を統治していた満州国の高官を務め、その後大日本帝国の商工大臣として太平洋戦争の軍需品のすべてを取り仕切っていました。

彼は連合国の裁判により戦争犯罪人として短期間巣鴨拘置所に収容されていましたが、やがて出所して頭角を現し、保守合同により自由民主党の初代幹事長に就任、やがて首相に登りつめました。

大東亜共栄圏02
自民党は、共産党勢力の台頭を強く警戒するアメリカの黙認の下、権力の座に就き、以来政権の座から降りたのはたったの2回に過ぎません。

早くから権力の座に返り咲いた岸氏は軍国主義と高圧的政治というその両翼をもぎ取られた上で、左翼勢力を権力の座に近づけないことを条件に、アメリカの保護下での日本の運営を任されました。

以来日本の本質はさほど変わってはいません。

2009年、自民党に大勝して政権を握った日本の民主党は、アメリカ政府に対し平等な立場からの同盟関係の見直しを求めました。
これに対するバラク・オバマ政権の反応は、民主党が出来るだけ早く権力の座から滑り落ちるよう、あらゆる手立てを尽くすというものだったのです。

もうひとつの日本社会固有の体質、それは官僚が陰謀を巡らせたりすることを政治的に監視するための、中心となる機関機構が存在しないという事です。
これまで設立された数多くの委員会等も、そのほとんどは形式的なものでしかありません。

事故調査委員会06
こうした機関機構の欠如は1930年代、軍国主義者である軍人や官僚が日本を破滅の淵に追いやるのを許してしまいました。

最近の例では、数十年に渡る一党支配の間、汚辱にまみれた原子力産業界と官僚たちとのネットワークの中心にあったのが自民党でした。
そして、日本国内各所で活断層の上に原子力発電所を建設するという、本来なら決してするべきではない政策を推進してきた自民党が2012年の選挙で政権の座に復帰すると、民主党政権の福島第一原子力発電所の事故対応のまずさを徹底的に攻撃したのです。

 

安倍政権は現在、いくつかの景気づけ的な経済政策の実施を約束しています。
これはほんとうにこれまでとは明らかに一線を画する、革新的なものなのでしょうか?

安倍首相の根本的な構造改革は見た眼は立派でも、本腰を入れて取り組んでいるものはほとんどありません。
実情は、マーフィー教授が指摘していますが、構造改革は安倍首相にとってワイドショーでしかありません。

安倍首相が本当に危機感を持っているのは、日本の精神性の欠如についてです。
台頭する中国に侮られることなど、安倍首相にとって耐えられる事ではないのです。

尖閣・日中艦船
安倍首相は戦前の日本の『国体』に限りないノスタルジーを感じており、その復活を切望しています。
安倍首相は日本が国家としての誇りを取り戻すために、戦前の日本人なら誰もが抱いていた概念 - 神聖犯すべからざる天皇制の復活を願っています。

しかしその一方、当然ですが国体を再建する手始めとして隣国と戦争することを望んでいる訳ではありません、

安倍首相は偶然ながら岸信介元首相の孫にあたりますが、今は過去の亡霊を再びこの国の中心に持ってくるようなことをしていてよい場合ではないのです。

日本は地質学上地震が多発する国土の地震活断層が存在する場所に原子力発電所を建設したことにより、3.11の自然災害の被害を一層大きなものにしてしまいました。
そして今、中国、韓国北朝鮮と隣り合っているという地政学上変えようの無い事実が、再び日本を不安定な立場に追いやろうとしています。

 

〈 完 〉

http://www.economist.com/news/books-and-arts/21638094-despite-shifts-past-century-and-half-japan-still-trapped-its-past?zid=306&ah=1b164dbd43b0cb27ba0d4c3b12a5e227
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ここに下手なことを書いて本文の印象を薄めたくはない、と思えるほどの記事です。
歴史の教科書には決して書かれることが無い、迫真の事実がここにはあります。
訳していて、ここまで『書ける』メディアは日本には無い、そう痛感しました。

【 戦前の亡霊たちの復活 : 物言わぬ羊であるべき日本国民、監視されることを許さない日本政府の官僚 】《前篇》[エコノミスト]

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所要時間 約 7分

なぜ戦後日本で『戦前の体制』が、少しずつ少しずつ復活を続けているのか?
明治維新、太平洋戦争の終結、その都度日本の支配者はほんとうに変わったのか?
日本の大手メディアの特徴は既存の権威・秩序の維持にきわめて協力的である事、疑問を呈することはしない

エコノミスト 1月10日

Japan
日本における歴史分析は、時代と時代の断絶を強調し過ぎているかもしれません。

19世紀中頃には、鎖国という極端に内向きな体制を守って来た徳川将軍家が権力の座から滑り落ち、代わって、天皇家が『王政復古』により日本の支配者として立つことになりました。
それから4分の3世紀あまりを経た第二次世界大戦後、日本はアメリカ合衆国に降伏し、その占領政策に服することになりました。
やがて日本の戦後経済は「奇跡的」復活を果たし、国民の収入は10年ごとに倍になっていきました。

そして時代と時代との間に明確な一線を引こうとする最新の動きは、1980年代後半にバブルが崩壊した後、あらゆる分野で停滞が続いている社会を改革し、日本を再び成長軌道に乗せると宣伝を繰り返している安倍晋三首相が現在行っている取り組みです。

これとは対照的に、日本の病患とは一体何であるかを解明するのに洞察力に満ちた分析を行っているのが、元投資銀行の役員であり、現在は筑波大学でビジネス学の教鞭をとるタガート・マーフィー教授であり、彼は日本の歴史の連続性に着目しています。

希望牧場04
そのいくつかは、非常に興味深いものです。
日本を訪れた海外からの訪問者は、バーテンダーからビジネスの取引相手に到るすべての日本人から、手厚い心遣いともてなしを楽しむ機会を与えられることになります。
そして、たとえそれが社会的に最も低い類いの職業であっても、日本人が最高品質の職務遂行に励む姿に衝撃を受けることになります。
また社会生活、公共生活における明快な予見性は、日本の各都市を地球上で最も安全な場所にしています。
そしてそれぞれの場におけるコンセンサスの成立を強く求める日本人の特質は、日常生活の中では束縛されることが多く、サラリーマンとして過ごさなければならない時間が長きに渡ったとしても、戦後の驚異的成功を可能にした基盤形成に大いに役立ったことは間違いありません。

今日の社会においてさえ、『日本文化』は人々を組織化していくとき、そして社会をまとめていく上で極めて重要な役割を演じ続けています。

2011年3月11日に日本を襲った巨大地震、巨大津波、そして福島第一原発の3基の原子炉でメルトダウンが起きるという壊滅的な三重災害は言うまでもなく、20年も続いている停滞状況を黙って耐え続けるという不屈の精神を維持し続けることは、他の国々においては容易に成し遂げられる事ではないのです。

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この日本社会で見られる均一的な人々の対応について、マーフィー教授はそのルーツを徳川幕府が日本を支配していた時代に求めました。
この時代、常に刀を持ち歩いていたサムライたちは、些細な落ち度であってもその場で相手に制裁を加える、切捨て御免の権利を与えられていました。

今日の日本社会において、人々はその場その場でいちいちどのようなしきたりを守らなければならないかを説明してもらう必要はありません。
日本の人々はその場の『空気を読む』べきことを、ごく当然のこととして理解しています。

結果、日本は社会が矛盾を抱えていてもそれを問題として表に出さないことができますが、これは他の国ではほぼ不可能です。

日本社会の観察を続けてきた一人、カレル・ウォルファーレンはこれを「理想を求めず現実に順応する」特性と呼びました。

組織内において役に立たない人間が、無能であることを理由にクビになることはありません。
周囲の人々は、彼が行った仕事の中身をもう一度見直せばよいのだという事を知っています。

特定秘密 5
ビジネス界の一匹狼が公然と攻撃されることもありませんでした。
彼らは自分たちがブランドとしての名声を確立するまで、新しいテクノロジーに対する融資を取りつけたり、その技術が採用されるまで苦労しなければならないだけです。

日本の大手メディアは自分たちの使命は既存の権威・秩序を維持することだと考えており、疑問を持つことだとは考えていません。
それに代って社会的矛盾を突くのは漫画コミックの役割であり、社会秩序を破壊する程ではなくとも、時に性的にも生き生きとしてほとばしるような魅力にあふれ、中には世界的な大ヒット作になった漫画コミックやアニメ映画が多数存在します。

国が明らかに間違っている進路を変更する必要があるとき、何としても均一性を保たなければならないとする姿勢は逆に障害になります。

戦後日本の成長を支えた経済モデルがもはや通用しないことは、もはや国民の誰もが理解していることです。
企業収益もすべての社員の終身雇用を保証できる程確実なものではなくなりました。
そして若い女性たちは伝統社会に根付いてきた日本的な妻がこなさなければならない骨折り仕事と向き合うよりは、性的なストライキをしてでも自分の立場を大切にするようになり、日本の出生率は史上最低にまで落ち込んでしまいました。

〈 後篇に続く 〉

http://www.economist.com/news/books-and-arts/21638094-despite-shifts-past-century-and-half-japan-still-trapped-its-past?zid=306&ah=1b164dbd43b0cb27ba0d4c3b12a5e227
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この記事、前篇はそれ程ではありませんが、後篇は非常に衝撃的です。
結論から言って前篇を一気に掲載しようかとも思いましたが、やはり長すぎるので前後篇に分けさせていただきました。
私たちが民主国家だと思ってきた日本、そして世界。
特定秘密保護法も、憲法第9条の解釈の変更も、原発再稼働も、何ゆえ国民の意思が無視されて一方的に進められてしまうのか…

この記事の原題は『 In the Air 』というもので、そのまま訳せば何となく漂ってくる雰囲気、空気というもので、戦前の軍国手記的風潮と、その場の空気を読むという場合の空気をかけているのだと思います。
しかしそれではパッと見、意味が伝わらないので題名をどうするか、ずいぶんと迷いました。
この日本を支配しているもの、後篇でその正体をご確認ください。

【 日本が中国と戦争を始めても、オーストラリアは援軍を送るべきでは無い 】

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所要時間 約 7分

オーストラリア国民の71%が、日中間の武力紛争には関わるべきではないと回答

レノア・テイラー / ガーディアン 2015年1月5日

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日中間に武力衝突が発生した場合、たとえ米国が日本に援軍を送っても、オーストラリアは中立を守るべきである。
新たな世論調査が、オーストラリアの一般国民の71%がそう考えていることを明らかにしました。

アメリカ軍が日本をバックアップし、たとえアメリカ大統領から直接要請があったとしても、どんな形であっても日中間の武力紛争に関わることにオーストラリア国民が強く反対している事実が明らかにされました。

オーストラリア - 中国関係研究所(ACRI)が委託して新たな世論調査が行われ、オーストラリア国民の71%が、領有権を争っている東シナ海の尖閣諸島を巡って日中間でどのような武力紛争が発生しても、オーストラリアは中立のままでなければならないと考えていることが解りました。
そして68%の国民が、アメリカ大統領が援助を求めてオーストラリア首相に電話するようなことがあっても、オーストラリアは断固として断るべきであると考えていることが明らかになりました。

尖閣諸島を巡る領土問題は東アジア地区の紛争の発火点ですが、オーストラリア-中国関係研究所(ACRI)が先に公開した報告書では、オーストラリアのアジアにおける最大の取引相手である日中間の、いくつかの『あり得るシナリオ』について言及していました。

防空識別04
ACRIの所長とボブ・カー前外務相は、世論調査の結果はオーストラリアにとって最も分別ある戦略、すなわち飽くまで中立姿勢を保持する事を決定する際の、有力な材料になり得ると語りました。
「ANZUS(アンザス)条約[オーストラリア、ニュージーランド、アメリカ合衆国間の安全保障条約]は、日中間で武力衝突が発生した場合には、オーストラリアに対し協議に参加する以上の事を要求していません。…そしてオーストラリアはどのような武力衝突が起きても、一切関わり合いを持つつもりが無いことを、はっきりと表明しなければなりません。」

アボット政権は紛争が発生した場合には日本側を支援するとも受け取れる声明を発表し、中国政府の怒りを買いましたが、カー元外相は政権が『完全な中立』姿勢を保っていると語りました。

そしてカー元外相は、トニー・アボット首相が首相就任してすぐに日本について『オーストラリアのベストフレンド』と表明した後、オーストラリア政府がこの点についてはすでに「効果的に軌道修正」していると語りました。

しかし、カー元外相によれば、遅れているオーストラリアの次期潜水艦配備計画のゆくえによっては、オーストラリアが日中間の領土紛争において日本側に立つ可能性があるとの観測が成り立つ可能性もあると考えられてきました。
オーストラリアにとって最大の防衛設備契約である次期潜水艦配備計画については様々な憶測がありますが、ドイツのティッセンクルップ潜水艦システムやフランスの造船会社DCNSなど他に有力な選択肢があるにもかかわらず、入札や他の競争的選択手段を一切取ることなく、日本の『そうりゅう型』潜水艦に決定する可能性が高いと言われています。

日中紛争 2
「もしオーストラリア政府が入札を行うことなく次期潜水艦配備計画に関する決定を行うことになれば、戦略的方向性に関する無言の意思表示と受け取ることができると思います。」
カー元外相はこう語りました。

今回のアンケート調査に関する具体的な結果は下記の通りです。

日本と中国の間で武力紛争が発生した場合、オーストラリアが採るべき対応は?
71% - 中立を守るべきである
15% - アメリカ合衆国とともに日本を支援すべきである
4% - 単独で中国を支援すべきである
9% - わからない
というものでした。

日本と中国の間で武力紛争が発生し、オーストラリア首相に対し米国大統領から日本への援軍派遣要請があった場合、採るべき対応は?
68% - 支援要請を断り、中立を守るべきである
14% - アメリカ合衆国とともに日本を支援すべきである
17% - わからない

1,000人を対象とした世論調査は、UMR調査会社により実施されました。

http://www.theguardian.com/australia-news/2015/jan/05/australians-opposed-taking-sides-china-japan
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果然、というべきか、先進国の中で戦争を望む国民など存在しないという当然の事実が改めて確認されたように思います。
当たり前だと思います。
21世紀の大国同士が本気で戦争を始めれば、その人的被害は第一次世界大戦、第二次世界大戦当時とは比較にならない悲惨なものになることは目に見えています。

そして下記のシャルリーエブド事件では、この自由の行進にアメリカがオバマ大統領、バイデン副大統領、ケリー国務長官の内誰も参加しなかったことがアメリカ国内で問題になっています。
しかし、逆に考えるとこの3人のうち誰が「言論の自由」「報道の自由」のための行進に参加しても違和感はありません。
日本の内閣はどうでしょうか?
「ナチスを見習え」という発言歴のある副総理をパリの自由の行進に派遣する訳にも行かず、他を見渡しても靖国ならいざ知らず、「言論の自由」「報道の自由」のための行進などまっぴらとでも言いだしそうな顔ぶればかり。
唯一谷垣氏なら…と思うものの、同氏は党幹部であって、重要閣僚ではありません。
改めて日本の内閣の顔ぶれの異常さを感じました。

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ほんとうの「今」を知りたくて、ニューヨークタイムズ、アメリカCNN、NBC、ガーディアン、ドイツ国際放送などのニュースを1日一本選んで翻訳・掲載しています。 趣味はゴルフ、絵を描くこと、クラシック音楽、Jazz、Rock&Pops、司馬遼太郎と山本周五郎と歴史書など。 @idonochawanという名前でツィートしてます。
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