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【 日本vs.韓国vs.中国vs.台湾、紛争の火種を育てる教科書戦争・第10章 】〈 前篇 〉

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所要時間 約 12分

教育の場への政治介入を繰り返し、近隣諸国との関係、そして国際的な評価を悪化させていく日本
安倍首相こそは、歴史教科書の記述を書き換えさせるべく長い間圧力をかけ続けてきた人物のひとり
正しい歴史認識を明らかにする、真の民主主義国家はどこにあるのか?

エコノミスト 7月5日

教科書戦争
東アジア地区においては、歴史の教科書は、各国の国家主義のバロメーターになっています。
そして互いに教科書の中身を批判し合っている現状は、国家間の代理戦争のひとつでもあります。

今、東シナ海と南シナ海において領土紛争が激化しつつある状況は長期化する様相を呈していますが、彼らがかつてどのような教育を受けてきたかを考えれば、別に驚くべき事ではありません。

今度の争いはいつものお決まりの組み合わせ、日本と中国だけにとどまらず、さらなる広がりを見せようとしています。
そしてこの国家間の争いに、今また強力な個性を持つ国家主義者が加わろうとしています。

新たな戦いのきっかけを提供したのは日本です。
その侵略政策があまりに露骨であったため、日本は1945年必然的に敗戦国となりました。
その敗戦こそが今、新たなる教科書戦争の火ダネとなっています。

2012年末に行われた総選挙で、自民党は学校教育の場で『愛国教育』の実施をマニフェストの中でうたい、現在の教科書について『自虐的史観に基づくイデオロギー的に偏向した表現が用いられている』と攻撃し、多くの現場の教師や学術関係者が著しい困惑を覚えることになりました。

安倍靖国
選挙で地滑り的勝利を手にした自民党は、安倍首相の下、未だにその解釈について一致した見解が得られない部分について、教科書を書き直すための委員会を早速立ち上げました。
これについてスタンフォード大学でアジアの教科書戦争を研究するダニエル・スナイダー教授は、次のように表現しました。
『日本の侵略行為に言及することを妨げるため、裏から手をまわすやり方』

安倍首相が選定した委員会も、歴史の教科書から『近隣諸国の対日感情』に関する記述を削除したいと表明しています。
歴史家が近隣諸国国民の – それはとりもなおさず中国と韓国ということになりますが – 感情に配慮し、日本の行為についての否定的な記述をどうにかしたいと考えているのです。
学区の最終責任者を市町村長とし、教育の場に政治の目を光らせようとしています。
実際、沖縄地方では学区が独自に選定した教科書を、政府が好ましいと考える教科書に変更するよう命令しました。( http://kobajun.biz/?p=16270 )

そうした動きは、戦後長くくすぶり続けてきた野心が表に出てきたことを表すものです。
安倍首相こそは、日本が戦時中に行った数々の残虐行為に関する歴史教科書の記述を、書き換えさせるべく長い間圧力をかけ続けてきた議会内グループを代表する人物のひとりなのです。

反安倍 2
近隣諸国からは予想通りの反応が返ってきました。

中国との間で領有権争いが起きている尖閣列島(中国名ダイユー諸島)について、日本がその領土であることを教科書に記載することにした際、中国側は『史実を尊重するよう』(その場合、結果はかえって中国に不利になる可能性があります)に要求しました。
同じく韓国が独島と呼び実質支配している竹島について、日本の領土であると教科書に明記することを決定した際、韓国はそれを『誤った歴史を教えることにより、不要な敵意を煽り、紛争の火種を作りだす』行為だと非難しました。
中国と韓国は、日本が隣国に対する配慮を捨て去ったことについて激怒しています。

日本国内で荒れ狂っている歴史教科書への政治勢力の介入は、韓国、そして台湾にも波及しました。

昨年、韓国の歴史教科書を監修する韓国歴史国立研究所は、『新右翼』勢力に属する歴史家の著述による高校の歴史教科書の採用を承認しました。
この立場の人々は、韓国のかつての軍事独裁政権の功績を容認する立場をとっています。

さらに韓国の与党は、民間の出版社が発行している教科書を学校ごとに選んでいる現在のやり方を、国内のすべての学校がNIKHが選んだ教科書1冊のみを採用する体制に変更すべきだと主張し始めました。
日本同様、韓国でも教科書選定の場に政治が介入する動きが明らかになってきました。

student taiwan
台湾の教育省も、今年、高校の教科書のための新しいガイドラインを発表しました。
このガイドラインは2015年8月に実施に移される見込みですが、台湾も韓国同様、教科書採用はガイドラインに従わなければなりません。

台湾は1945年まで日本の植民地でしたが、今回のガイドラインの変更について台湾政府は、50年間の日本の統治時代を評価するノスタルジックで不正確な表現を改め、世界基準にあった表現に変更するだけだと語っています。
具体的には『日本の統治』を『日本による植民地支配』という表現に置き換えます。

〈 後篇に続く 〉

http://www.economist.com/news/asia/21606332-which-democracies-join-east-asias-history-wars-textbook-cases-chapter-10?zid=306&ah=1b164dbd43b0cb27ba0d4c3b12a5e227
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写真コーナーの連載としては異例の長さになっている下記の【 戦争経験者の記憶 】、アメリカ人の独白は印象的です。

それまで幸せに暮らしていた人間たちが、次々に殺されていきました。
私の周りにいた人々がどんどん殺されていった、戦争の記憶はそれだけです。

国連の平和維持活動に参加した経験を持つ自衛隊幹部が、
「日本の政治家は現場を知らない」
と言ったそうですが、私に言わせれば今の政権も政治家も
「戦争を理解していない」のです。

周囲にいる人々がどんどん殺されていく、そしていつか自分も殺される…
考えてみれば、当たり前の事です。
戦争になった瞬間から『敵』はあなたや私を殺そうと、文字通り殺到してくるのですから。

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【 あのとき、戦場にいた人々の記憶 】〈3〉
幸せに暮らしていた人間たちが、目の前でどんどん殺されていった、それが戦場だった…

ニューヨーカー 6月5日(記事本文は再掲)
(写真をクリックして、大きな画像をご覧ください)

WW2-5
2010年、初めての個展を開催するためにロシアを訪れていたカメラマンのサーシャ・マスロフは、後に連作となる『戦争経験者』の最初の一枚になる写真を撮影しました。
ソビエト赤軍の航空整備士ピョートル・ドミトリヴィッチ・コシュキンの肖像写真でした。
こうして彼の4年越しの連作がスタートしました。
彼はこの間、写真撮影とインタビューを繰り返しました。
題材になったのは兵士だけではなく、医師、技術者、パルチザン、地下抵抗運動の参加者、そして捕虜。
そしてホロコーストの生存者と一般市民は、戦争のはざまで最も苦しんだ人々でした。

マスロフは私にこう語りました。
「人々はそれぞれの場において、戦争という衝撃的な出来事を、自分自身の膚で感じたのです。」

マスロフはウクライナ出身の30歳のカメラマンで、5年前ニューヨークに移り住みました。
『戦争経験者』という大作に取り組むことになった理由について彼は、生と死のぎりぎりの境を体験した世代の記録をしっかりと残したいという思いがあったと語りました。
そして彼は国籍の違いによって、『戦争』の体験が著しく異なることも記録に留めようとしています。
「この連作の中で、最も興味深かったのは地理的要因による運命の違いでした。」
どの国の出身であるかによって、人々を視覚的にはっきりと分けてしまう事が可能です。
私が撮影したすべての人が第二次世界大戦という、かつてない規模の巨大な事件の当事者でした。宇宙で起きたビッグバンのように、彼らは世界中至る所でこの巨大な事件の渦中に巻き込まれたのです。居間、寝室、そして台所でさえ、戦争と無関係ではありませんでした。

「あなたは、視覚的に人々がどこの出身であるかについて比較することができて、彼らの
マスロフにはここまで18カ国を旅し、写真集を完成・出版する前にさらにインド、オーストラリア、南アフリカ、そしてギリシャを周る予定です。

『戦争経験者』の写真を撮影していて、何が一番印象に残ったかマスロフに質問してみました。
「ある人々は大きな寛容を示しました。そして別の人々の中には尽きることのない憎しみが消えることなく残っています。その対比の極端なことには驚かざるを得ません。」

▽ 菊池白秋(茨城県つくば市)
「昭和天皇の手の中には、すべての国民の生殺与奪の権がありました。私は戦争が終わったと聞いた時には、もう何もかもおしまいだと思いました。次にどうなるかなどという事は、考えることすらできませんでした。
私たちは戦争に勝っているのだと言われ続けていました。最初の内は信じられませんでしたが、天皇陛下が現人神であるという洗脳は徐々に浸透して行きました。
天皇陛下自らご自分は人間なのだと告白された後は、我々はもはや戦う意志を失いました。戦争では本当に多くの人々が死んでいきました。私たちはなぜそれほど多くの人々が犠牲になってしまったのか、割り切れない思いです。」(写真上)

▽ R・オーバートン(テキサス州オースティン、アメリカ)
「私は、戦争になど行きたくありませんでした。
でも陸軍省は私を指名し、私は徴兵に応じる事になりました。
他に選択肢などありませんでした。
向かった戦場は南太平洋、その後硫黄島に上陸しました。
それまで幸せに暮らしていた人間たちが、目の前で殺されていきました。
私の周りにいた人々がどんどん殺されていった、戦争の記憶はそれだけです。
幸いに私は戻って来る事が出来ましたが、多くの人間が二度と戻りませんでした。
本当に多くの友人を亡くしました。
部隊の全員が仲間だったのです。
私は戦争に行った事を本当に後悔しています。
一方で私は多くの事を学ぶ事が出来ました。その事だけは後悔していません。」(写真下)
WW2-6
http://www.newyorker.com/online/blogs/photobooth/2014/06/faces-of-the-second-world-war.html#slide_ss_0=1

【 中国の軍事的台頭、日米の『武力対決』姿勢を強めれば解決に向かうのか 】〈後篇〉

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所要時間 約 12分

様々な発言とは裏腹に、日本の軍事力強化路線をひた走る安倍首相
原子力ルネッサンスがダメになったの後の、日本の防衛力増強ルネッサンス
すべての国民が見守る中での公の議論が無いまま、本質的な変化が起きている、民主主義社会では稀有な事態

マーティン・ファクラー(東京)デイヴィッド・サンガー(ワシントン) / ニューヨークタイムズ 7月1日

日中紛争01
アジア地区において軍拡競争が始まってしまったというはっきりした兆候が見られるわけではない、こう語るのはマサチューセッツ工科大学の国際関係学部のリチャード・J・サミュエルス学部長です。
しかし、各国がこれまでとは違い、独自に自己防衛をどうするか真剣に検討しなければならない時代に入ったことを示す兆候はある、そうつけ加えました。
「これはアメリカの軍事能力がもはやかつてのようではないという認識が、これらの国々の間に浸透したことを表すものです。」
「アメリカと同盟関係にあった各国は、アメリカの影響力を留め置くための対策を取る一方で、互いの連携を深めようともしています。」

1980年代後半から1990年代の始めにかけて、日本は国連の平和維持活動に初めて参加しました。自衛隊は一切戦闘活動に参加しない、一見すればさほど危険が伴わない任務に就きましたが、日本国内では参加の是非について活発な議論が取り交わされました。
一方アメリカの軍当局は、北朝鮮との間で武力紛争が生じた場合日本国内にある軍事施設をどう利用するか、紛争規模別に検討する秘密協議を数年間日本側と続けていました。
この協議の場においても日本の政治家と官僚は、たとえ自国の領土に危険が及ぶ場合であっても、軍事面での協力についてはあまり積極的にならないよう、慎重な態度を崩そうとはしませんでした。

憲法解釈05
これに対し安倍氏を含むより強く国家主義的立場を取る政治家は、アメリカの恩恵はさほどのものではなく、日本が独自に防衛能力を高めていくべきであるとする議論を始めました。
そしてソニーの創業者である盛田昭夫氏と東京都知事を務めた石原慎太郎氏の共著『ノーと言える日本』の中では、日本は世界第2位のGDPにふさわしい規模の軍備を持つべきであるとの主張が展開されました。
今日、日本のGDPは中国に抜かれたため第3位に後退しました。

とある評論家がこうした考え方は、日本の地位が危ないという感覚の裏返しであると語りました。
日本経済が再び中国を抜いて世界第2位の地位を回復するという考え方はもはや現実的ではないと考えた彼らは、日本の向かうべき方向を変えようとしているのです。

安倍首相は今年、日本の軍事的能力をさらに一層強大なものにするための方法を探りました。
しかしそうした考え方は、連立与党の公明党だけではなく、自らが率いる自問党内からも抵抗の声があがりました。

憲法第9条の解釈の変更により、同盟国またはその軍隊に危険が生じたと判断される場合にのみ、自衛隊による武力行使が可能になります。ただしその際は、日本に対する「はっきりした脅威」が確認されなければなりません。

秘密保護法02
専門家と議会関係者は、内閣による閣議決定を政府の方針として実行するためには、議会において1ダース以上の関係する法律の改定を行わなければならないと語りました。
しかし安倍首相が率いる連立与党は衆参両院において過半数を制しており、このまま行けばこれらの法の改定はまずは問題なく両院を通過する見通しです。

安倍首相は1日火曜日にテレビを通じて演説を行い、自衛隊がアメリカが主導する戦場に投入されることは無く、日本が再び戦争当事国になる可能性は無いと主張し、反対意見の鎮静化を図ろうとしました。
その一方で安倍首相はアメリカとの同盟関係を強化し、日本国内に駐留する50,000人規模のアメリカ軍が、尖閣諸島を巡る中国との紛争が軍事的衝突に発展するような場合には直接戦闘に参加する可能性に言及しました。

「今回の解釈変更は、日本を再び戦争をする国にすることが目的ではありません。」
「日米同盟を一層強力なものにすることによって抑止力を高め、日本とアジア地区における平和に貢献することが目的です。」

一方、ワシントンではアメリカ政府の高官が次のように語りました。
「総合的な国家の防衛政策において、日本はやっと水準的な軍事行動が可能になったという事です。」
「それはつまりこれまで課されてきた制約により、日本の軍隊は軍隊として機能できない状態あったという事を認めたという事です。」
イラク戦争では、自衛隊は交戦の危険性がある同盟各国の首尾地域に行くことは禁じられていました。

日中紛争 2
安倍首相が憲法第9条の解釈の変更を発表する直前、6月末来日したフィリピン大統領が軍事的圧力を強める中国に対し、日本の対抗能力が強化されることへの支持を表明した一方で、中国と韓国は日本の軍備強化はかつての軍国主義日本の悪しき記憶をよみがえらせるものだと批判しました。
中国国営の新華社通信はその論説で、安倍首相が「戦争の悲惨さを弄んでいる」と警告しました。

安倍首相はアメリカとの同盟関係に焦点を当てた発言を繰り返していますが、軍事の専門家は憲法第9条の解釈の変更は同じように中国との領土領海紛争を抱える国々とのあいだに、新たに軍事同盟を締結することを可能にするものだと語りました。

「日本は、今防衛力増強ルネッサンスを経験しているのです。」

こう語るのはミッドランド州チェスタータウンにあるワシントン・カレッジの国際政治学部のアンドリュー・オロス学部長です。

「著しく特徴的なのは事態の変化していることではなく、すべての国民が見守る中での公の議論が無いまま、本質的な変化が起きているという事です。」


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最近、日本政府関係者とその広報宣伝係りとも言うべきNHKやY新聞、NテレビやFテレビなどが一切言わなくなったのが、『中国との戦略的互恵関係の構築』という言葉です。
憲法第9条の解釈の変更などには、邪魔でしかない概念だからでしょうか?

過去に書いたことがあるかもしれませんが、工場生産設備を大量に中国に移動させ、無数の技術と多量の富を中国に持ち込んだ張本人こそ日本であったはずです。
その技術と金を使って中国が日本を仮想敵国とした大軍備拡張を成し遂げたことなど、世界史に残る愚劣な展開ではないでしょうか?

上記のメディアなどは中国側に一方的に非があるような報道を繰り返していますが、外交や歴史がそんな単純なものであるはずがないのです。
今の日本に本当に必要なのは武力ではなく、真実を見通す智力であるはずです。

13日(日)は掲載をお休みいたします。

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【 戦争経験者の記憶 】〈2〉
幸せに暮らしていた人間たちが、次々に殺されていった、それが戦場だった…

ニューヨーカー 6月5日※記事本文は再掲
(写真をクリックして、大きな画像をご覧ください)

WW2-3
2010年、初めての個展を開催するためにロシアを訪れていたカメラマンのサーシャ・マスロフは、後に連作となる『戦争経験者』の最初の一枚になる写真を撮影しました。
ソビエト赤軍の航空整備士ピョートル・ドミトリヴィッチ・コシュキンの肖像写真でした。
こうして彼の4年越しの連作がスタートしました。
彼はこの間、写真撮影とインタビューを繰り返しました。
題材になったのは兵士だけではなく、医師、技術者、パルチザン、地下抵抗運動の参加者、そして捕虜。
そしてホロコーストの生存者と一般市民は、戦争のはざまで最も苦しんだ人々でした。

マスロフは私にこう語りました。
「人々はそれぞれの場において、戦争という衝撃的な出来事を、自分自身の膚で感じたのです。」

マスロフはウクライナ出身の30歳のカメラマンで、5年前ニューヨークに移り住みました。
『戦争経験者』という大作に取り組むことになった理由について彼は、生と死のぎりぎりの境を体験した世代の記録をしっかりと残したいという思いがあったと語りました。
そして彼は国籍の違いによって、『戦争』の体験が著しく異なることも記録に留めようとしています。
「この連作の中で、最も興味深かったのは地理的要因による運命の違いでした。」
どの国の出身であるかによって、人々を視覚的にはっきりと分けてしまう事が可能です。
私が撮影したすべての人が第二次世界大戦という、かつてない規模の巨大な事件の当事者でした。宇宙で起きたビッグバンのように、彼らは世界中至る所でこの巨大な事件の渦中に巻き込まれたのです。居間、寝室、そして台所でさえ、戦争と無関係ではありませんでした。

マスロフはこれまで18カ国を旅しており、写真集を完成・出版する前にさらにインド、オーストラリア、南アフリカ、そしてギリシャを周る予定です。

『戦争経験者』の写真を撮影していて、何が一番印象に残ったかマスロフに質問してみました。
「ある人々は驚くべき寛容さを示しました。そして別の人々の中には尽きることのない憎しみが消えることなく残っています。その対比の極端なことには驚かざるを得ません。」

▽ ウルスラ・ホフマン(ポズナニ、ポーランド)
「特徴的だったのは、私たちポズナニのレジスタンス組織がその本部を宮殿の通りを隔てた向かい側のビルに移転させたことです。当時そこには、ドイツ帝国のポズナニ総督のアルトゥール・カルル・グライゼルのオフィスがありました。
グライゼルが居たのは建物の2階、そして私たちレジスタンスは1階にいました。
色々な意味で勇敢さが必要な時代だったのです。

▽ フロレッティ・アコスチーヌ(ウディネ、イタリア)
「我々は国境付近で一人のギリシャ兵士を逮捕しました。
彼は部隊のたった一人の生存者だったようです。私は8人の仲間とともにこの捕虜を連行していくように命令されました。
私は彼が逃げ出そうとしていると直感し、逃げられないように彼の肩に手りゅう弾を結び付け、脅しました。いつでも爆発させられるように、私は手りゅう弾のピンを握ったまま彼の後ろから歩いて行きました。
その時歩いていた場所は岩だらけの滑りやすい場所で、わたしか彼がつまづいた拍子に手りゅう弾のピンが抜けてしまったのです。
これ以上の話はしたくありません、あまりにむごたらしいありさまでしたから。
とにかく、捕虜は私たちの前から消滅してしまったのです。」(写真下)
WW2-4
http://www.newyorker.com/online/blogs/photobooth/2014/06/faces-of-the-second-world-war.html#slide_ss_0=1

【 中国の軍事的台頭、日米の『武力対決』姿勢を強めれば解決に向かうのか 】〈前篇〉

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所要時間 約 13分

世界有数の規模と戦闘能力を持つ自衛隊、いよいよ実戦に参加する『機会』が現実に
中国との対話に基づく、協議交渉による理性的な解決の機会は一層遠のく
日本の防衛はどうあるべきか、その議論を力で一方的に圧伏した安倍政権

マーティン・ファクラー、デイヴィッド・サンガー / ニューヨークタイムズ 7月1日

SDF01
7月1日、安倍首相が憲法第9条の解釈を変更することを発表しました。
そしてこの60年間で初めて、緊張が高まる東アジア地区において日本が決定的な役割を演じることが出来るよう、その軍事力の行使に関する制限を取り払う行動に出たのです。
安倍内閣による今回の決定は、様々な制約のもとで国防にあたっていた10年前なら考えられなかったほどの日本の軍事力の自由な行使を可能にします。
現在の日本の軍事力は世界有数の規模を持ち、最新の兵器を揃えた強力なものです。
今回の解釈の変更により、アメリカ合衆国を含む同盟国の軍隊が敵の攻撃に遭遇した際には、この強力な日本の軍隊が救援に駆けつけることが可能になります。

日本の立場は中国がその存在感を強め、軍事的にも著しい台頭をとげる中、これまで同様東アジア地区の安定と均衡を保つことです。
しかし中国は同国にとって戦略的に重要な海域である東シナ海、南シナ海におけるアメリカと日本を含むその同盟国による実効的管理機構に挑戦する姿勢を露わにし、様々な要求や行動を活発化させています。

中国は第二次世界大戦時の日本の中国大陸への侵略を忘れたことはありません
今回の安倍首相によるタカ派的行動が、中国を刺激しその態度を硬化させるであろうことは確実であり、アジア滞在の力を持つ両国の緊張が一層高まることは避けられないでしょう。

「強まり続ける中国からの圧力が、日本国内の政治的議論の方向性を変えたのです。」
明治学院大学の政治学が専門の川上和久教授がこう語りました。

安倍02
安倍内閣による閣議決定はこの秋にも政策として実行されるものと見られていますが、その決定は衆目の一致するところ韓国をその伝統的な同盟国であるアメリカ合衆国から引きはがそうと図る中国が、首脳をソウルに送り込もうとするタイミングで公表されました。

日本の平和主義は、アジアの広大な地域を征服し、十数年の間終わることなく泥沼の戦争を続けた戦前の日本の軍国主義を二度と復活させてはならないという考え方です。
これに対し、日本の敗戦からは数十年が過ぎた今、その周辺には新たな脅威が生じており、これまでの防衛態勢のままでは国を守ることはできないとの考え方も生まれました。
その論争は四半世紀の間続けられてきましたが、今回の政府の決定はその論争に決着をつけようとするものです。

戦争を否定する日本の平和憲法は、多くの日本人にとって国家の柱石を成すものであり、安倍政権による再解釈は、日本ではあまり見られない路上の抗議行動に多くの人々が参加する結果を生みました。
6月末の日曜日には政権による憲法第9条の解釈の変更に抗議するため、たった一人で焼身自殺を図る人も現れました。

しかし、少なくともこれまでは、尖閣諸島に対する中国艦船や航空機による領海侵犯などが繰り返し行われる中でも、集団的自衛権の行使についての厳しい制限が緩和されることはありませんでした。

自衛隊
自衛隊の名称を有する日本の軍隊には、今回の憲法の解釈変更の後もその行動には厳しい制約が課されることになりますが、それでもアメリカの艦船が攻撃を受けた際に掩護したり、アメリカの領土に向け発射された北朝鮮のミサイルの撃墜が認められるのは初めての事です。

オバマ政権は1日、今回の日本政府の閣議決定を「同盟関係の枠内における軍事行動をより強力なものにすることが出来る」として歓迎する意思を明らかにしました。
しかし安倍政権の動きはオバマ政権に、同時に難問を背負い込ませることにもなりました。

オバマ政権は、日本政府と韓国政府との関係修復に腐心してきましたが、関係修復が実現するためには日本国内の国家主義者や国粋主義者にとってはおもしろくない事実を受け入れる必要がありました。
また、日本の中国との間の緊張関係がこれ以上悪化しないように努めても来ましたが、今や解決の糸口は遠のくばかりです。

日本の政治指導者たちは世界の安全保障体制の中で、長年、日本を従属的位置から脱却させようとしてきました。
イラク戦争、アフガニスタン戦争では西側諸国の軍事行動に協力、貨物輸送と他国の海軍の艦船に対する燃料補給を行い、武器を携行し防衛と攻撃の間にある一線を曖昧にしてきました。
安倍首相は中国の軍事的台頭に対する懸念を同じくする近隣の国々に、軍事面での援助を進める政策を採ってきました。

しかし安倍首相が行った憲法第9条の解釈の変更を行い、国際紛争を解決する初段として戦争の放棄を日本の方針から除外してしまった行為は、これまでの行き方とは本質的に異なるものです。

第二次世界大戦03
長年保守派の代表のひとりとして君臨してきた安倍首相は、第二次世界大戦時の侵略行動と非人道的行為への反省から、戦争につながる行動を抑制してきたことについて、日本はもはや国力相当の武力を装備する『普通の国』になるべきであると主張し、日本国憲法の全面的な書き換えに対する支持を得ようとしたことがあります。
しかしそうした主張に一般国民の支持は得られず、7年前安倍首相が最初の総理大臣の席を失う原因の一つとなりました。

その当時と異なるのは、中国の軍事的台頭だけではなく、アメリカの存在感が低下した事により、東アジア地区においては各国が独自に軍事力を高めようと動いている状況にあるという事です。

〈後篇に続く〉


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軍拡競争こそは、愚者の争いの最たるものだと思います。
まして世界で2番目と3番目のGDPを持つ国同士がそれをやれば、互いに莫大な額の国費を武器の購入・製造に充てなければならなくなってしまいます。
当然市民生活はあらゆる面で圧迫を受けることにもなります。
さらに日本の場合は国庫の赤字が破たん状態に近い訳ですから、国家経済のカタストロフィが発生する危険性すらあるはずです。
一方の中国にもかつてのソ連を見舞ったような連邦の崩壊の危険性がありますが、決定的に違うはその経済力がかつてのソ連とは比較にならない程強力である点、そして13億以上の人口を持っている点です。

かつてソ連と中国が緊張関係にあった時代、軍事力はソ連の方が比較にならない程卓越していましたが、巨大な人口を抱える中国には決して勝てないと言われていました。

今同じことが日本にも言えると思います。
高齢化が続き、掲載規模でも追い越されてしまった今、正面から軍拡競争を挑めば疲弊・崩壊するのは日本経済の方ではないでしょうか?

それでも中国には『勝たねばならない』というのであれば、軍備競争以外の方法を考える、簡単ではありませんがそれが政治の役割なのではないでしょうか?
それを最も愚劣な軍拡競争の途を選ぶというのでは、そんなものは政治でもなんでもない、そうではありませんか?

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【 戦争経験者の記憶 】〈1〉
幸せに暮らしていた人間たちが、次々に殺されていった、それが戦場だった…

ニューヨーカー 6月5日
(写真をクリックして、大きな画像をご覧ください)

WW2-1
2010年、初めての個展を開催するためにロシアを訪れていたカメラマンのサーシャ・マスロフは、後に連作となる『戦争経験者』の最初の一枚になる写真を撮影しました。
ソビエト赤軍の航空整備士ピョートル・ドミトリヴィッチ・コシュキンの肖像写真でした。
こうして彼の4年越しの連作がスタートしました。
彼はこの間、写真撮影とインタビューを繰り返しました。
題材になったのは兵士だけではなく、医師、技術者、パルチザン、地下抵抗運動の参加者、そして捕虜。
そしてホロコーストの生存者と一般市民は、戦争のはざまで最も苦しんだ人々でした。

マスロフは私にこう語りました。
「人々はそれぞれの場において、戦争という衝撃的な出来事を、自分自身の膚で感じたのです。」

マスロフはウクライナ出身の30歳のカメラマンで、5年前ニューヨークに移り住みました。
『戦争経験者』という大作に取り組むことになった理由について彼は、生と死のぎりぎりの境を体験した世代の記録をしっかりと残したいという思いがあったと語りました。
そして彼は国籍の違いによって、『戦争』の体験が著しく異なることも記録に留めようとしています。
「この連作の中で、最も興味深かったのは地理的要因による運命の違いでした。」
どの国の出身であるかによって、人々を視覚的にはっきりと分けてしまう事が可能です。
私が撮影したすべての人が第二次世界大戦という、かつてない規模の巨大な事件の当事者でした。宇宙で起きたビッグバンのように、彼らは世界中至る所でこの巨大な事件の渦中に巻き込まれたのです。居間、寝室、そして台所でさえ、戦争と無関係ではありませんでした。

マスロフはこれまで18カ国を旅しており、写真集を完成・出版する前にさらにインド、オーストラリア、南アフリカ、そしてギリシャを周る予定です。

『戦争経験者』の写真を撮影していて、何が一番印象に残ったかマスロフに質問してみました。
「ある人々は大きな寛容を示しました。そして別の人々の中には尽きることのない憎しみが消えることなく残っています。その対比の極端なことには驚かざるを得ません。」

▽ ルイージ・ベルトリーニ(ウーディネ県ウディネ、イタリア)
「戦争中実質的にドイツに占領されていたイタリアのある村で、私は仕事を見つけました。
2人のドイツ人が経営する修理工場の整備士です。ドイツ人は一人はエンジンの専門家で、もう一人はいわゆる鍛冶屋でした。私と3人のイタリア人が雇われていましたが、ドイツ人は二人とも私にとても親切にしてくれ、熱心に技術を教えてくれました。
私はドイツ軍兵士がトラックや戦車を修理するのを手伝っていました。航空機の修理にも取り組んだことがあります。
その経験が戦後の私の人生設計の基本になりました。
私は今でも2人のドイツ人には感謝しています。
政治的なことはどうでもよかったのです、いい仕事が出来ればそれで満足でした。
当時イタリアは実質的にドイツの支配下にあり、耐えなければならないことがたくさんありました。しかし相手がどこの国の出身であっても、目の前にいた人間とまで争う必要は無い、多くの人がそう考えていたのです。」(写真上)

▽ ドミトロ・ベルホリャーク(イヴァノフランキフシク、ウクライナ)
私たちは森の中でソ連の秘密警察のNKVD(内務人民委員部)に逮捕されそうになりました。
私たちは5人で行動していましたが、NKVDが発砲してきて、私は左足に銃弾を受けました。NKVDに連行されるぐらいなら手りゅう弾で自分を吹き飛ばそうと思いましたが、まだ歩けることに気がついたのです。そこで私は発砲して来る方に手りゅう弾を投げ込み、仲間とともに走って逃げました。
NKVDは一層激しくめくらめっぽう撃って来ましたが、幸い誰にも弾は当たりませんでした。
そしてどうにかこうにか逃げ失せることが出来のです。(写真下)
WW2-2
http://www.newyorker.com/online/blogs/photobooth/2014/06/faces-of-the-second-world-war.html#slide_ss_0=1

【 日本に迫る脅威、それは外からの軍事的圧力か、それとも内なる民主主義の破壊か?】

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所要時間 約 8分

戦後を支えてきた平和主義、それとは明らかに違う方向に日本を動かす安倍首相
公における議論がほとんど行われることなく、憲法第9条の解釈は変更された
自衛隊は世界でも有数の戦闘能力と規模を誇る強力な軍隊、安倍首相はそれでも『時代遅れ』

エコノミスト 7月5日

安倍 1
安倍首相は長年日本が禁じてきた集団的自衛権の行使を可能にする決定を引き出すため、消耗戦を強いられることになりました。
連立を組むパートナーの公明党は集団的自衛権の行使容認には強く反対し続けましたが、最終的にはこれを押し切り、了解を取りつけることに成功したのです。

そして7月1日、安倍内閣は集団的自衛権の行使を容認する閣議決定を行い、戦後日本の防衛政策は一大転換をすることになりました。

公布されて67年を経た憲法第9条は、日本が国家としての交戦権を永遠に放棄すると規定しています。

しかし安倍首相による解釈変更は、一定の条件が整った場合、日本の自衛隊は集団的自衛権の行使が初めて可能になったことを意味します。
その実現のため必要な法案が成立すれば、アメリカ軍やオーストラリア軍など同盟軍の危機に陥った際には日本はいつでも自衛隊を派遣できるようになります、ただし『日本に直接の脅威が発生している場合に限り』。

7月に入り安倍首相は、遠く離れた場所でのアメリカ軍が主体となった軍事作戦に、自衛隊が派遣されることは無いと確約しました。

安倍首相自身は憲法第9条そのものを書き換えとしまう事を望んでいましたが、その選択肢は早い段階で断念せざるを得ませんでした。

集団的自衛権01
憲法の条文を書き換えるためには衆参両院議会で3分の2の賛成を必要としますが、自民党はそれだけの議席数は持っていません。
さらには国民投票において半数以上の賛成票も必要ですが、国民の大多数は日本の平和主義について守り続けるべきものと考えています。

しかしこうした国民の意思とは裏腹に、集団的自衛権の行使容認にともなう体制の変更は広範囲に及ぶことになるでしょう。

北朝鮮の核開発疑惑とミサイル発射能力の向上、中国の軍事的台頭、そして尖閣諸島を巡る中国との領土問題、これらの脅威に対し日本の防衛能力は時代遅れである、安倍首相はそうした主張を繰り返しています。
こうした『脅威』に対抗する際の最大の支えとなるべきアメリカは、今回の憲法第9条の解釈の変更についてねぎらい、歓迎の意を表しました。
日米両国はこの17年間で初めて、その共同の防衛ガイドラインの手直しに着手するための準備を進めています。

しかし今回の解釈の変更はアメリカ側が望んでいたほど大きなものでは無かった、こう語るのは元アメリカ国防総省の職員であるジェームズ・ショフ氏です。
しかし解釈の変更は日本の自衛隊とアメリカ軍との間の作戦の立案、訓練、作戦の実施の面置ける連携を、さらに強力なものにするはずです。

創立以来自衛隊が実戦に参加したことはありませんが、自衛隊が世界でも有数の戦闘能力と規模を誇る強力な軍隊であることは疑いがありません。

SDF05
今回の解釈変更により、アメリカの領土に向かう北朝鮮のミサイル撃墜、そして日本近海で攻撃を受けているアメリカ軍艦船への救援が、今やはっきりと可能になりました。
そして日本に脅威が生じるとの判断が下されれば、アメリカ軍に対し弾薬の提供を含む後方支援を行う事も出来ます。

これとは別に、自衛隊は国連の平和維持活動において武器の使用が可能になりました。
イラクでの国連平和維持活動を行った際、オーストラリア軍に護衛してもらわなければならなかった状況は自衛隊にとっては屈辱的記憶であり、その無念さは記憶に新しいものです。
国連平和維持活動において公明党が得た主要な譲歩は、自衛隊は実際の戦闘には兵員を送り込まないというものでした。

尖閣諸島における領土紛争においても、日本側の防衛体制が変わります。
中国側が上陸を強行した場合には、自衛隊の武力行使による掃討作戦へ道を開きました。

それよりも現実性の高いいわゆる『グレーゾーン』への自衛隊の派遣と実戦配備については、まだ方針は明らかではありません。

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安倍内閣による今回の憲法第9条の解釈の変更に、抗議の声を挙げたのは中国だけではありませんでした。
様々な制約があるとはいえ、安倍内閣の閣議決定は多くの日本人にとって許せるものではありません。
この数か月、集団的自衛権の行使容認に反対する世論はより深く、そしてより大きくなり続けました。

今回の安倍内閣の一連の動きに対し、多くの日本の国民が軍国主義日本復活の可能性を危惧しています。

反対の立場をとる人々は、公における議論がほとんど行われることなく解釈が変更された点について、最も憤りを感じています。
内閣の閣議決定の2日前には、ひとりの男性が東京都内の新宿駅の前で抗議の焼身自殺を図りました。辛うじて命は取り留めたものの、重態に陥ったままです。

7月1日には一万人を超える人々が、戦争反対を叫びながら首相官邸前で抗議行動を行いました。
そして公明党も平和を大切にする支持層からの突き上げに直面しています。

内閣の閣議決定を政府の政策として実行するためには、10以上の法案を議会を通過させなければなりません。
その作業を終えるまでに数年がかかる可能性もあります。

憲法解釈変更 7
安倍首相とその周辺は集団的自衛権について、すべての制約を取り払った完全な行使容認に日本を進ませることが出来ると楽観的に考えています。

しかし彼らが当たり前の判断だと考えた第一歩ですら、すでに予想以上の反発を招いているのです。

http://www.economist.com/news/asia/21606334-prime-minister-moves-japan-step-away-its-post-war-pacifism-clear-and-present-dangers?zid=306&ah=1b164dbd43b0cb27ba0d4c3b12a5e227
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体調を崩したこともありますが、憲法第9条の解釈の変更の世界の報道については一日おきの掲載ペースになっています。
実は以前、毎日更新されると他の方にもご紹介したい記事がどんどん後ろに行ってしまい、お知らせするのが難しくなるとのご指摘をいただいたことがありました。
前回ご紹介したガーディアン、ニューヨークタイムズの、そして今回のエコノミストの記事はできるだけ多くの方にお読みいただきたいと思い、いつもより丁寧な翻訳を心掛けました。
世界のメディアの中でこうした問題について最も読み応えのある記事を提供してくれるのはやはり、ニューヨークタイムズ、ザ・ガーディアン、エコノミストの3紙ではないでしょうか。

【 70年間続いた平和主義は今や日本が誇るべき伝統、時の権力者の勝手な破壊を許していいのか?】GRD

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所要時間 約 13分

わざわざ外国に行って人を殺すような行為はしない、それは日本人にとっての新たな文化、新たな伝統
安倍首相の右傾化政策は、戦前の日本を地獄の業火に引きずり込んだ悲劇的失政に通じる
平和憲法は戦争で殺された300万以上の日本人の、そして2,000万以上のアジア人の犠牲者の上に成立したもの

ザ・ガーディアン(英国) 7月1日

No War
1943年、石田雄氏が日本軍に徴兵されたとき、彼はアジアを西欧列強の植民地支配から解放するための正義の戦争に参加するのだと信じていました。
彼の中では日本の軍国主義に対する疑いが芽生えていましたが、毎日繰り返される戦闘訓練の中でいつしか彼本来の人間性は鈍麻し、戦争の大義を信じるようになっていたのです。
そして降伏…
軍国主義の厳しいタガが外れると、戦地における日本軍の残虐な行為が次々と明らかになりました。
石田氏は以後の人生を、日本の平和憲法を護ることに捧げる決心をしたのです。
この憲法は当時日本を実質的に統治していた、アメリカ占領軍当局の下で制定・発布されたものです。

そして今、約70年の時間が過ぎた後の日本の防衛政策の劇的な転換を見て、かつての大日本帝国陸軍の士官であった石田氏は、日本の若者が再び海外の戦場に送り込まれる事態が現実となることを恐れています。

7月1日、保守タカ派の安倍首相とその内閣は、長い間禁じられてきた日本の海外での武力行使を容認する内閣決議を行いました。
この決定は石田氏が見る限り、日本を再び無謀な戦争に引きずり込んでしまう可能性があります。

「安倍首相がしていることは、私たち日本人の平和憲法の原則を破壊する行為です。」
東京大学の名誉教授である石田雄氏がこう語りました。
「国外において一切人殺しをしない、ある意味でそれは日本人の貴重な遺産の一部分を形成しています。そのような大切な理念を国民が望んだからではなく、ひとりの人間が命令したから捨て去る、なぜそのようなことをする必要があるのでしょうか?」

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現在91歳の石田氏は日本とアメリカの共同作業によって編まれた平和憲法こそが、戦後70年間続いた平和主義の土台を支え続けてきたと考えています。

「戦後私は、軍国主義青年になるために長い間洗脳されていたのだと気がつきました。」
石田氏がこう語りました。
「そのために自分の存在意義についての喪失感に打ちのめされていたとき、私は平和憲法と出会い、目の前が一気に開ける思いがしたのです。」

安倍首相が憲法を解釈しなおし、集団的自衛権の行使は容認されるとしたことで、こうした日本の平和主義的伝統が捨て去られる危険にさらされ、平和主義国家としての基盤が潰え去ろうとしているのです。

しかし日本が憲法の改変そのものを行う可能性は無いのでしょうか?
安倍首相は国会内と国民投票で手続きを進めるために必要な賛成票を得ることが出来ないと判断し、憲法の改変という選択肢を本当にあきらめたのでしょうか?
国際紛争の解決手段として戦争を放棄し、武力の行使を禁じる憲法第9条の解釈の変更は行われることになっています。

安倍首相率いる自民党と連立を組む公明党合わせた議席数は全体の過半数を上回り、この後、憲法第9条の解釈の変更は議会で承認されることになっています。
そうなれば日本は第二次世界大戦終了後初めて、集団的自衛権の行使が容認されることになります。

実際の運用では国連の平和維持活動、そして本格的な戦争状態には陥っていない、いわゆるグレーゾーンへの武装した自衛隊の派遣が可能になります。

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しかし最も心配されることは、『強い同盟関係にある』軍隊救援のため派遣された自衛隊が、アメリカ政府の強い要求により本格的な戦闘へと引きずり込まれる危険性がある事である、こうした批判もあります。
実際に安倍首相は第2の任期において防衛予算を増額し、自衛隊の体制と装備の充実に力を注いできました。

そして第二次世界大戦における日本と日本軍の歴史的記録を書き換えようと図る日本の保守派の政治家を代表する人物として、台頭する中国の軍事的脅威と、北朝鮮の核開発計画から日本と同盟国を防衛するためには、現行憲法が邪魔になると主張します。

1日火曜日に行ったテレビ演説の中で、安倍首相は日本が平和主義国家であることに変わりはなく、憲法第9条の解釈の変更により自衛隊が海外の戦闘地帯に派遣される可能性がある事を否定しました。
その代り、日本国民を防衛するためにより優れた態勢が築かれることになると語ったのです。
例えば日本の防衛のため戦闘を行っている米国艦船を、日本の海上自衛隊が防衛することが可能になる、安倍首相はこう説明しました。
「これは、日本人の幸福に資するための対策なのです。」
「平和国家としての日本の立場に変更はありません。」

今回の解釈変更について、内閣が作成した文書にはこう書かれています。『我が国に対する武力攻撃が発生した場合のみならず、我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある場合に、これを排除し、我が国の存立を全うし、国民を守るために他に適当な手段がない時に、必要最小限度の実力を行使する』

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しかし、20世紀半ば、日本の軍国主義政策の直接の被害者となった近隣諸国からは、批判的な論説が相次ぎました。
「中国政府は、中国の脅威を過剰に煽り立てる日本政府の行為に反対する。」
中国の外務省スポークスマンは北京での記者会見の席上、こう語りました。
「長い間希求し続けてきた平和な世界の実現への取り組みを、日本はもはや捨ててしまったのだろうか?近隣各国がそうした疑問を持つのはごく自然な事です。」

韓国政府のスポークスマンは次のように語りました。
「過去日本の軍国主義の犠牲となった近隣諸国の懸念を払拭し、地域の平和と安定のために平和憲法をこれからどう生かすべきか、日本はそこを原点に議論すべきあると考えています。」
自衛隊に対する制約を取り払おうとする安倍首相の一連の政策に対しては、日本国内でも多くの反対の声が挙がっています。
約10,000の人々が月曜日の夕方、首相官邸前でデモを行いました。
同様の集会は1日火曜日にも開かれました。

「現在の憲法は、300万人以上の日本人の、そして2,000万人以上のアジア人の戦争の犠牲の上に成り立っているのです。」
74歳になる村田良彦さんがこう語りました。
「私たちはその事を肝に銘じる必要があります。」

いくつかの最近の世論調査の結果は、有権者の大部分が集団的自衛権の行使容認には反対していることを明らかにしました。

一方、解釈変更を支持する立場の人々は、不確実性を増すアジア太平洋地区の状況に対応するため、日本は他の見民主主義国家同様の防衛政策を採用しているだけだと語りました。
「地域の平和と安定を守るため、関係諸国と協力しながら共同の枠組み作り上げるために、我々は現在より率先的な役割を演じようとしているのです。」
AP通信の取材に、自民党の安全保障研究委員会の委員長を務める岩屋たけし氏がこう答えました。

憲法解釈変更 7
しかし石田名誉教授が次のように指摘しました。
安倍首相は靖国神社参拝により、あえて日中、日韓の間の緊張関係を演出し、その上で今度は自衛隊に対する最終的な制約を取り払う挙に出た事により、東アジア地区に危険な時代を創り出してしまった、と。

かつて徴兵され太平洋戦争の戦場に送り込まれた男性から見れば、昨年末に世論の反対を押し切って特定秘密保護法を成立させたことを始めとする安倍首相の日本の右傾化政策は、かつての日本を地獄の業火に引きずり込んだ悲劇的な失政に通じるものがあります。

「特定秘密保護法の成立を見て、私はすぐに1928年の治安維持法を思い出しました。治安維持法の成立により、反対者を逮捕する事、そして国政に関わる情報を隠してしまう事が極めて容易な事になってしまいました。」
石田名誉教授が当時をこう振り返り、次のように続けました。
「憲法9条の解釈を変更した事により、日本は再び海外に実戦部隊を送り込む事が可能になりました。 歴史が再び繰り返すのではないか、そう心配せざるを得ないのです。」

http://www.theguardian.com/world/2014/jul/01/japan-pacifists-military-intervention-shinzo-abe
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集団的自衛権の行使容認が閣議決定された後、自民党が多数を占める宮城県議会が『この際、憲法改正までやりましょう』という決議を行いました。
その提案演説を聞くとこれまで各所で語られてきた改憲派の主張と比べて何ら新しい論点などは無く、要するに現在の内閣に「宮城県の自民党はよくやっている」と言われたいがためのこびへつらい、私にはそう見えます。

しかしこういう人間たちが一番怖い、私はそう考えます。
なぜなら長年研究・考察を続けてきた挙句の結論ではなく、ただ権力の一部に連なりたいという『欲』だけが動機であるため、議論などができるはずがないからです。
前回も書きましたが、筋の通った国権主義者などならそれなりに研究・考察を続けてきた上での主義・主張なので、対立した立場の人びとともきちんとした議論ができるはずです。

しかし欲が動機の人間たちは、どこかに後ろめたい気持ちがあるのかどうか、そして自分の中で論理が完結している訳でも無いため、反対する市民などには、往々にして高圧的・強圧的な態度をとることになります。
日本の戦時中、気に入らない相手を『非国民』と罵倒して歩いたのは、まさにこのような人間たちです。
実際に権力を握ったとき、この人間たちは特高警察、ゲシュタポなどの組織を使嗾し、民主主義的議論をしたというだけで凄惨な暴行、拷問を加えられる世の中が出現してしまいました。

これ以上の『闇』を広げてはいけないと思います。
私たちはできることを倦むことなく、こつこつと続けていかなければなりません。

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【 2014年6月の傑作宇宙写真 】〈3〉

アメリカNBCニュース 6月30日
(掲載されている写真をクリックして大きな画像をご覧ください)

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6月23日 NASAの火星探査車キュリオシティが火星の表面で『ウィンジャガ』と名付けられた砂岩地帯の目標地点でドリルを使って穴を掘る様子。アームに取り付けられたカメラを使って撮影された、何枚もの画像を組み合わせて作られました。
キュリオシティは火星滞在687日(火星の1年に等しい)目を迎えました。(写真上)

5月27日に太陽から噴きあげるプラズマ。しかし宇宙に向かって噴出する程の爆発ではなく、しばらくして太陽面に再び吸収されました。
NASAによれば、この程度の太陽面爆発はほぼ毎日発生しており、その動きから太陽面の強力な磁力を窺い知る事が出来ます。(写真下・以下同じ)
SPC10
6月6日に公表されたハッブル宇宙望遠鏡が撮影した、地球から4000万光年離れているNGC 1566、旗魚座(Dolado、またはドルフィニッシュ)の写真。
星座の中心部分は非常に明るく、旗魚座がセイファート銀河級の星団である事を表しています。
多量の放射線が放出され、中に太陽の数百万倍の重力を持つ巨大なブラックホールの存在を暗示しているのです。
SPC11
5月30日の太陽のマンハッタンヘンジ(半年ごとに起きる、太陽がニューヨーク市のストリートに一直線に沿って沈んでいく日)。
SPC12

【 日本の中にいる、歴史の真実に向き合おうとしない人間たち 】NYT

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所要時間 約 8分

安倍首相自ら『歴史の歪曲』を否定し、アジアの安定と平和を守るべき立場に立つ、その資格を手にすべき時である
国家主義者の主義主張に同調する態度は、今後日本がアジア社会で主要な役割を演じたいという希望の実現に、どのような貢献もしない
日本は民主主義国家であり、世界で3番目に大きな規模の経済を有する - 過去の歴史を歪曲する国家であって良いはずがない

ニューヨークタイムズ社説 6月22日

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今後の東アジア地区における平和と安定を確立する上において、日本と韓国の建設的な関係こそは最も重要であるはずですが、共にアメリカの同盟国であるこの両国間では、過去の歴史上の解釈解決が困難な問題が再び争いの原因として浮上してきました。

残念なことに、6月20日に公表された第二次世界大戦(太平洋戦争)当時の従軍慰安婦に関する報告書も、目下の状況を変えることにはなりそうにありません。

第二次世界大戦中、日本はその占領下にあった各国から数千人とも数万人とも言われる女性たちを連行し、日本軍兵士に売春を強要するという人道上許されない行為を行いましたが、1993年に公表された調査報告書は、この問題に日本軍が組織的に関わっていたとして謝罪しました。
今回政府の諮問委員会が再調査を行って1993年の報告書の内容を再確認しましたが、日本の安倍晋三首相は今回初めてその内容を認めることにより、韓国との関係改善に利用するつもりでした。

しかし今回の再調査の結果についての報告書には、1993年におこなった謝罪が必要だったどうかという点に若干の疑問を呈しており、もしこの再調査が韓国国内の世論を鎮静化させる目的で行われたのだとすれば、それは成功しなかったと言わなければなりません。
問題の部分で今回の報告書は、1993年の報告書が出来上がる過程で韓国と日本との間で激しい駆け引きがあり、結論についてはすべてが厳然たる事実だけを積み上げて得られたものではないと示唆しています。

日本以外の歴史学者やこの分野の専門家の大半は、日本軍が売春宿で働くように女性たちに強要したとする見解を共有しています。
しかし日本国内の国家主義者たちは、女性たちはもともと売春婦であり、日本軍が女性たちを従軍慰安婦として強制的に徴発した事実はないと主張しています。

安倍首相は初期の段階では、国家主義者によるこの偏向した主張に迎合するという、戦争犯罪の被害者にとってみれば犯罪の上に犯罪を重ねるという行為を敢えて行い、国際社会における日本の信用に傷をつけました。

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安倍氏は最初に首相に就任した2006年から2007年にかけ、国家主義者の主義主張を支持する態度を明らかにしていました。
そして2012年再び首相に就任すると、今度は1993年の日本政府による正式な謝罪について、これを撤回する可能性について言及したのです。
その結果前任者の姿勢を引き継ぐ形で、安倍首相は今年3月に従軍慰安婦として使役された女性に対し心の痛みを表明しましたが、これも含め以後日本政府が公表した声明が韓国国民の不信と不安を払しょくすることはありませんでした。

韓国の国民にとっては、1993年に日韓共同で作成した従軍慰安婦問題に関する調査報告書の結論の背景に、両国政府による駆け引きがあったと指摘することは、そのまま日本が謝罪に誠実に向き合ったことが無いという事実を証明することになるのです。
こうした外交上微妙な問題については当事国間で協議を行う事が何より大切であり、協議を行っても成果は得られないだろうというような否定的な態度は慎まなければなりません。

疑いなく日本の国家主義者達は、謝罪の撤回を迫るために今回の報告書を利用しようとするでしょう。
しかし国際社会にあっては、安倍首相自身が『歴史を歪曲する』姿勢は誤っていることを明らかにすべき時です。
安倍首相がこれまでしてきたような国家主義者の主義主張に同調する態度は、今後日本がアジア社会で主要な役割を演じたいという可能性の実現には、どのような貢献もしません。

台頭を続ける中国の軍事的脅威に対するアメリカの戦略が有効に機能するためには、日本と韓国の緊密な連携が不可欠です。
という事はつまり従軍慰安婦の問題について、韓国をはじめとする国際社会の反発を招くような言動をこれ以上行えば、日本はさらに困難な立場に追い込まれてしまうという事です。
国際社会において、武力紛争が発生している地域における性的暴力は、正しい意味でますます注目されるようになっています。
各国政府と人権擁護団体を始めとする国際社会は、こうした性犯罪者に対する処罰と被害者の適切な保護を求めています。

6月にロンドンで開催された武力紛争地区における性的暴力について話し合い国際会議の席上、日本の代表団の団長を務める安倍首相の実の兄弟である岸信夫氏がこう発言しました。

「性的暴行は犯罪に他なりません。犯罪を犯したものを容認するがごとき文化は排除しなければなりません。これまでの私たちの考え方を変える必要があります。」

反日本
日本は民主主義国家であり、世界で3番目に大きな規模の経済を有する国家です。
過去の歴史を歪曲する国家であって良いはずがありません。


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欧米メディアがこの問題について報道をする際、従軍慰安婦については Sex Slaves、すなわち『性奴隷』と表記します。
この単語を見れば、メディアを始め欧米社会がこの問題に非常に敏感な理由がわかるような気がします。
植民地支配をした挙句、現地の女性を『性奴隷』として使役した体制を擁護したり、そもそもそんな事実は存在しなかったのだと開き直れば、上記の認識を持つ欧米社会がどのように反応するでしょうか?

現在のNHK、Y新聞-Nテレビ、S新聞-Fテレビは安倍首相の『得点』となるニュースは徹底して大きく、そしてどんな小さな話題も漏らさず報道し、国民の心象が悪くなる話題は極力取り上げないことにお気づきの方も多いと思います。
一方、民主党の菅首相の時は、徹底して逆をやっていたと思います。

別に虚偽の報道をしている訳でもなく、伝える題材の選択はメディアの自由ですが、結果として国民の『首相に対する評価』は決定的に違ってきます。

「テレビ報道をそのまま鵜呑みにする方が間違っている。」
こう語る若者が増えてきました。
でもそうではない国民の方が多い、その結果が現在の議席数に反映されている、このことにも私たちは留意して行かなければなりません。

【 世論の大勢に逆い、平和主義的な防衛政策をひっくり返す日本の首相 】GRD

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所要時間 約 10分

すでに強力な装備の自衛隊の軍事力をさらに強化し、その武力を行使できるようにするには、日本国憲法は邪魔
数の力にものを言わせ、議論を尽くす事もせず、日本の平和主義を捨て去る
民主主義の正統的手続きを踏まない変革、より一層の政治不信を招く

ジャスティン・マッカリー / ガーディアン 2014年6月30日

憲法解釈変更 5
日本の安倍晋三首相は世論の大勢に逆い、日本の軍隊が海外紛争において戦うことを簡単にするための国の防衛政策の劇的な転換を発表することになっています。

日本では長い間集団的自衛権に基づく武力行使が禁じられてきました。
しかし安倍内閣は、たとえ日本自体が直接の脅威にさらされていない場合であっても、同盟国の危急を救うための集団的自衛権の行使を容認する憲法解釈の変更を、7月1日火曜日に閣議決定する予定です。

日本の戦後の憲法は国際紛争を解決するための武力行使を禁止していますが、安倍内閣は北朝鮮の核開発疑惑、そして中国の軍備の急拡大による領土紛争の拡大を理由に挙げ、憲法が武力行使を禁じている現状は、日本が自らの領土と同盟国を守る妨げとなっていると主張しています。

安倍首相が最初に狙ったのは、第二次世界大戦以降戦争の放棄を規定した憲法第9条を書き変える事でしたが、世論調査の結果この施策は議会内で充分な支持を得られる見込みが無い事が明らかになりました。これを受け今度は憲法の解釈を変更する事により、武力行使を可能とすることを目指したのです。

火曜日に閣議決定される憲法開始やの変更は、衆参両院で過半数の賛成を売る必要があります。
安倍首相が党首を務める自由党民主党は、衆議院で過半数の議席を制し、参議院では連立を組む公明党の議席と合わせ過半数の票を制しています。
憲法そのものを変更するためには議会において3分の2の支持を得た上で、国民投票により過半数の賛成を得る必要があります。

憲法解釈変更 7
日経経済新聞社が6月30日に発表した世論調査の結果は、34%が憲法解釈の変更を支持する一方、有権者の50%が集団的自衛権の行使を禁ずる現状を変えてしまう事に反対しています。
29日日曜日東京の都心でこの解釈変更に抗議する男性が焼身自殺を図る事件がありましたが、世論調査の結果はその翌日に公表されました。
初心自殺を図った男性は身元不明で現在重態に陥っていますが、彼は人々が見守る前で安倍首相の憲法解釈の変更を批判しました。

与党自由民主党は憲法解釈変更に関する公明党の支持を確保した事が、ニュースで伝えられました。
公明党の党是は世界平和の実現であり、当初憲法解釈変更に関する支持を取り付ける事は難しいと見られていました。
仏教徒の宗教団体である創価学会に後援される公明党ですが、解釈変更にこれ以上抵抗すれば連立を解消すると迫る安倍政権の前に、節を曲げてしまったようにも見えます。

安倍首相は道のりが遥かに困難で時間もかかる憲法改定の選択肢を捨てた後、今度は憲法解釈の変更を認めさせるため、議会における絶対多数という立場を濫用する挙に出たとの批判が上がっています。

「日本国民の生命と財産を守るための制度を整備する事は、日本の抑止力を高め、戦争に引きずり込まれる危険性を減らすものです。」
安倍首相は先週、このように演説しました。

「憲法を適切に解釈することが必要です。一般の議論を深め、憲法改正についての決断がなされる必要があります。 私はこの問題についての国家議論の盛り上がりを期待します。」

安倍 1
現在の憲法を支持する人々は、30日月曜日の夕方に安倍首相の官邸前でデモをする予定です。

中道左派の朝日新聞は、安倍首相は一般的議論をほとんど行う事なく、戦後日本の平和主義を捨て去ったとして批判しました。
「国家の重要な政策決定の場でこうした手法が押し通され日本国憲法の平和主義の原則が全くの骨抜きにされてしまう事になった。しかも国民の意見が全くまとまっていない状況下で。」
紙面がこう伝えました。
「それは、日本の政治不信をより一層深刻なものにしてしまう事になる。」

現在日本と中国との間では尖閣諸島の領有権を巡り紛争が起きていますが、すでに世界的に見て一流の装備を誇る日本の自衛隊に関する制限が取り払われる事は、中国をより一層刺激する事は確実です。

しかしながらアメリカは日米安保条約に置ける日本の具体的な役割を強化するよう、圧力をかけ続けてきました。
そして独自に中国との間に領海に置ける紛争を抱えるフィリピンも、日本に対し具体的な支援を求めてきました。

戦争の放棄を規定する憲法9条を見直す事により、日本は同盟関係にある国々への軍事協力がやりやすくなります。
日本の領海から遥かに離れた場所であってもアメリカ軍が攻撃を受ける事態が起きれば、今後日本は大手を振って軍隊を送り込む事が可能になります。

解釈の変更は国連の平和維持活動において、現在は後方支援に限定されている自衛隊の役割について、戦闘への参加を可能にします。
そして、全面戦争に発達しないいわゆる「グレーゾーン」に分類される紛争においては、先週メディアに公開された草案に具体的内容が記されています。

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政府官僚は、解釈の変更により将来日本の指導者が、軍隊を成算の無い海外の戦争に自由に送り込めるようになるという可能性を否定しています。
最も新しい草案によれば、日本は『緊密な同盟関係にある』国の国民の命に『明白な危険』が存在する場合に限って、集団的自衛権を行使できるとしています。
そこには軍事力の行使について『必要最小限にとどめなければならない』と付け加えられています。

そしてこの草案にはこうも書かれています。
『平和主義国家としての歴史が、これからも続く事に務める。』

http://www.theguardian.com/world/2014/jun/30/japan-pm-overturn-pacifist-defence-policy-shinzo-abe
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私はずっと安倍氏にある種のうさん臭さを感じ続けていて、改めてなぜなのだろうと考えてみていくつかの理由が思い当たりました。

彼が政治家であるのは、それが『家業』であるからで、何か自らの理想を実現したいがために政治家になったのではないという事がひとつ。
そのバックボーンは母方も父方も大物政治家という事で完璧に近いものですが、それだけに『配慮』すべき既得権者がわんさかいるだろうという事がふたつ。
もうひとつは、彼の『保守』もまた政治家として考えに考えた挙げ句の結論ではなく、単に『家業としての看板』がそうだからという事が三つ目。

私は自分がリベラリズムに立っていると考えていますが、その私が正当な保守政治家の一人と考えるのは、英国のディズレーリ(ベンジャミン、1804-1881)です。彼の政治信条には『哲学』を感じます。
哲学があるが故にその言動には節度があり、矜持があります。

それに対し、私が安倍首相に強く感じるものは『広告代理店』です。

3日木曜日は掲載をお休みさせていただきます。
よろしくお願い致します。

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【 2014年6月の傑作宇宙写真 】〈1〉

アメリカNBCニュース 6月30日
(掲載されている写真をクリックして大きな画像をご覧ください)

SPC 1
6月26日国際宇宙ステーションの中で、アメリカの宇宙飛行士スティーヴ・スワンソンの頭を剃るドイツの宇宙飛行士アレキサンダー・ガースト。彼らはワールドカップのドイツ対アメリカの試合に髪の毛を賭け、ドイツが1-0でアメリカに勝ったため、スワンソンが坊主頭になりました。(写真上)

このイメージの色による爆発は、6月11日に16人の乗組員を乗せた国際宇宙ステーションから撮影されたブラジルのサオシモン貯水池の写真。このパッチワーク模様は、宇宙ステーションから地球に送られた地球の写真の中、ちょうど300,000枚目の写真になりました。(写真下・以下同じ)
SPC 2
6月27日、マレーシアのイスラム教の高位聖職者が、地平線をにインドネシアのジャカルタでラマダンの神聖な断食月の開始を決定するため、望遠鏡を使って地平線上の三日月を調べています。
SPC 3
6月24日、NASAのチャンドラX線天文台がとらえたペルセウス星団。

【『解釈変更』は卑劣な手段により、日本の平和主義・民主主義の土台を破壊する行為 】AP

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所要時間 約 7分

集団的自衛権の行使容認、その合意に近づいた連立与党
『戦争の放棄』、その理念に基づく武力行使への制限は、長年にわたり『解釈の変更』により緩められ続けてきた

AP通信 / ワシントンポスト 6月27日

集団的自衛権02
行使について厳しい制限を課している日本の防衛方針に関し、著しい方針転換となる同盟国との集団的自衛権の行使容認について与党自民党と連立を組む公明党の間の合意が近づいています。

この防衛方針の変更は、中国の軍事力の増強とともに緊張が高まる東アジア地区の安全保障において、日本がより強力な戦闘能力を発揮できるようにするための、安倍首相による日本の体制変更の一環を成しています。

27日金曜日、安倍政権の閣僚と連立与党公明党の幹部により、政府の安全保障プランの草案の表現について、最終的な調整を行いました。
安倍内閣は日本の戦争放棄を定義している日本国憲法第9条の解釈を変更することにより、7月1日火曜日『集団的自衛権』の行使を容認する閣議決定を行うことになっています。
こうした行為は卑劣な手段により日本国憲法の土台を破壊する行為であると、解釈変更に反対する人々は批判しています。

与党自民党と公明党は、安倍首相が任命した委員会が今年5月に提示した答申書に基づく解釈の変更について協議を重ねてきました。

集団的自衛権01
公明党は当初この解釈の変更に反対の立場をとっていましたが、10回の協議が行われた後、自民党は中道派の仏教徒が中心に支持をする連立相手に対し大きな圧力をかけました。
安倍首相は日本が直接攻撃の対象となっていない場合でも、同盟国が攻撃を受けた場合には日本の武力行使が許される態勢を築こうとしています。

安倍首相は中国の軍事面での著しい台頭と、北朝鮮による長距離ミサイル、核開発の脅威を具体例として挙げ、日本がもはや単独で地域における安全保障を確保することは不可能であると主張しています。
金曜日にまとめられた最終案に限りなく近い草稿では、わが国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃で日本の国民の生命、自由および幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある場合に限り、集団的自衛権を行使できると謳っています。
その際使用される軍事力については、必要最小限度の実力行使に留めるとしています。

公明党の山口代表は集団的自衛権の行使について厳しく制限している今回の草案を受け入れる意向を表明しました。
反対の立場をとる人々からは、この解釈変更により日本は過去のイラク戦争などのように、アメリカが直接軍事介入を行った場合、日本が参戦し武力行使できる途を開いたと批判しています。
現在の日本は国連平和維持活動においても、直接戦闘には参加しない後方支援などに行動が限定されています。

集団的自衛権04
第二次世界大戦の後、アメリカの統治下にある1947年に成立した日本国憲法第9条には、日本が
『国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する』ことを規定し、さらに
『陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。』としています。

しかしそうした制限は長年にわたり、『解釈の変更』により緩められ続けてきました。
日本ではそれを軍とは呼ばず、代わりに自衛隊という呼称を与えることにより、軍事力の保持が認められるようになりました。

そしてこれまでの日本では幾人もの指導者が集団的自衛権の保持を認める一方で、行使は容認されないとの立場を取り続けてきたのです。

(冒頭の写真)6月26日木曜日、東京の首相官邸前に、憲法解釈の変更により集団的自衛権の行使容認に踏み切ろうとする政府に抗議の声を挙げる人々。

http://www.washingtonpost.com/world/asia_pacific/japan-ruling-bloc-near-agreement-on-security-shift/2014/06/27/d757dcaa-fded-11e3-91c4-01dcd9b73086_story.html
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私個人の見解に過ぎませんが、安倍首相は近代的民主主義を理解していません。
国家、あるいは日本の社会の公僕であると言う意識もありません。
安倍首相はことあるごとに「私が最高責任者だ!」と言う事を口にしますが、そのニュアンスは明らかに
「私が日本の最高権力者だ!」と言っています。

これに対し、前回ご紹介したイギリスのメディア( http://kobajun.biz/?p=18877 )も、アメリカのメディアもこう批判しています。
「それは民主主義ではない!」

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【 第一次世界大戦の未発表写真、その不気味な戦闘用機械 】〈2〉

アメリカNBCニュース 6月26日
(写真をクリックして、大きな画像をご覧ください)

WWI08
第一次世界大戦当時の未発表の一連の写真は、戦争について別の視点を提供しています。
ここにご紹介する写真は、ロンドンにある近代戦記録保管所が個人所蔵のコレクションを新たに入手したもので、いずれもこれまで発表されていませんでした。
記録写真には墜落した飛行機や船舶が撃沈される瞬間など、珍しいシーンも記録されています。
あるいは塹壕で兵士が生死の境をさまよっている瞬間に、司令部ではパーティが行われているといった戦争の冷厳な一面も伝えています。
2014年、第一次世界大戦の開戦から100年が経ちました。

1918年、イタリア前線に配置されたイタリア軍の巨大な大砲と兵士。(写真上)

1916年8月1日、西部戦線のフランスのロンゴーの地面に寝転ぶ捕虜になったドイツ兵。(写真下・以下同じ)
WWI09
1918年西部戦線の近くの城の中で読書をするドイツ軍将校。
WWI10
1919年にフィラデルフィアにあるアメリカ軍の化学兵器研究所で、検証のため世界中のガスマスクを装着するアメリカ軍兵士。
WWI11
1918年、西部戦線の近くの民家の中でパーティをするドイツ空軍将校。
WWI12
1916年、ロンドン市内、ブルーワリー通りにある軍需工場で働く女性たち
WWI13

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ほんとうの「今」を知りたくて、ニューヨークタイムズ、アメリカCNN、NBC、ガーディアン、ドイツ国際放送などのニュースを1日一本選んで翻訳・掲載しています。 趣味はゴルフ、絵を描くこと、クラシック音楽、Jazz、Rock&Pops、司馬遼太郎と山本周五郎と歴史書など。 @idonochawanという名前でツィートしてます。
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