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星の金貨 東日本大震災や音楽、語学、ゴルフについて語るブログです。

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【 安倍首相の『新国家主義』、それは時代錯誤の帝国主義、国民を不幸にする国粋主義 】《第3回》

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所要時間 約 9分

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日本の平和を守って来たもの、それは平和憲法か?日米同盟か?
脱工業化し価値観が多様化した現代日本において、国家主義は必要性も必然性も無い

サイモン・ティズダル / ザ・ガーディアン 2013年11月27日

ASEAN2013
外交の第一線では安倍首相は近隣アジア諸国の支持の取り付けに懸命になっています。
就任1年目にはアセアン加盟10か国を歴訪し、今年12月13日には東京で見方によっては反中国決起集会とも取れるアセアン・サミットを主催することになっています。

今年11月に発生したフィリピンの台風による大災害が発生した際には、安倍首相はあらゆる分野で中国を出し抜きました。
救助部隊、艦船、そして豊富な支援物資を現地に送り、1945年以降としては最大規模の海外派遣を行いました。
これに対し中国は、スウェーデンの家具販売チェーンのイケアにも及ばない援助しか実施せず、世界中から避難されることになりました。

また安倍首相は中国の侵略行為を未然に予防するため、10隻の艦船をフィリピンの沿岸警備隊に提供しています。
さらにはオーストラリアとインドとの間では、安全保障と軍事面での連携を強化しています。

安倍政権はオバマ政権が打ち出した『アジア重視(pivot to Asia)』を最大限に利用し、2013年10月、ジョン・ケリー国務長官、チャック・ヘーゲル国務長官と、『同盟関係の強化とより大きな責任を果たす』ため、協定を見直すことで合意しました。

中国への警戒から、この協定にはミサイル防衛システムの強化、武器の開発と販売、共同の軍事訓練と軍事演習の実施、情報の共有、宇宙衛星とサイバー兵器の開発強化に加え、先進レーダーシステムと無人攻撃機の導入がうたわれています。
さらに日本はアメリカ製の最新鋭の武器、F35戦闘爆撃機、2隻のミサイル防衛システムを装備したイージス艦(駆逐艦)を購入する予定になっています。

日米艦船
アメリカ政府は安倍政権の中国に対する強硬姿勢を、もろ手を挙げて歓迎しています。

「米国は、率先してアジア地区における平和と安全に寄与していくとする、日本の決意を歓迎します」
日米共同声明にはこのような表現が見られました。
「日米同盟は民主主義、法による支配、自由で開かれた市場、人権尊重の考え方を共有して行きます。」
しかし安倍政権の方針に反対の立場をとる人々は、日本が新たな軍国主義とも言うべき路線へ踏み出していくことを警戒しています。

第二次世界大戦後に急速に変化した日本社会にあっては、この国がアジア地区と世界においてどういった関わり方をすべきか、国民がどのように考えているのか測りかねる部分があります。

中国に反感を持つ日本の国民は94%に昇ります。一方で世論調査を受けた人々の80%が、日本と中国の間では友好関係を保つことこそ大切だと答えています。

「これまでは多くの人々が古くさい平和主義的な真理にしがみついてきましたが、今や世界は急速に、しかも予測もしなかった方向に変わり続けていると、多くの人が考えるようになりました。」
キヤノングローバル戦略研究所の三宅氏はこう語り、次のように続けました。
「保守的でタカ派的なイメージにもかかわらず、安倍首相は非常に実際的な、分別のある政治家なのです。一方で安倍首相は日本を大変誇りに思っており、自分の国を誇りに思うことについて、どんな遠慮もいらないと語っているのです。」

安倍 軍隊
三宅氏はさらに次のように続けました。
「現在東アジア地区では勢力均衡の大きな変化が続いています。安倍氏首相の登場以前、一昔前まで私たちはありもしない平和社会の上にあぐらをかいていたのです。私たちはこの平和が永遠に続くものと思い、軍隊など持たなくとも誰も私たちを脅かすことは無いと考えてきました。世界中が私たちをそっとしておいてくれると考え続けてきたのです。
私たちは幻想の上に生きてきたのです。
しかし平和を実現してきたものは平和主義ではなく、日米同盟だったのです。」
「次世代の人々は、平和について幻想を持ってはいません…。平和について祈るだけでは何も実現しないことを知っているのです。日本はいかなる侵略者の介入をも阻止しなければなりません。もし中国が太平洋における覇権の確立を主張し、日米の覇権に挑戦してくれば、対決はもはや回避できません。」

東京大学の高原昭男教授は正反対の意見を持っています。
巨大な人口と国土を持つ中国の勢いを止めるといっても、日本のできることには限界があるはずです。
しかし飽くまで対決姿勢を貫く安倍首相のやり方には、危険が多すぎます。
「選択肢は多くはありません。外交交渉を重ね、対話を続けることにより、外交関係を修復することこそが、現代社会における解決策のはずです。」
高原教授がこう語りました。

秘密保護法05
「安倍首相は従来の基準から見て、右に寄り過ぎています。
しかも根っからの歴史の修正主義者です。
日本の戦没者が祀られている靖国神社に参拝することをこよなく愛しています。安倍首相は、国家主義者なのです … 。」
「しかし、安倍首相の『新国家主義』はうまくいかないでしょう。日本はもう脱工業化してしまった社会(多様な価値観と多様な生き方が成立している社会)なのです。若い世代の人々は、安倍首相の考え方にはついていけないはずです。」

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歴史は科学です。
事実の積み重ねであるからです。
積み重ねられたものが事実では無くなった時、歴史は科学ではなくなり、文学になります。

文学は何を書くのも、何を主張するのも自由です。
書いてある事を受け入れるのか、受け入れないかは読む人の自由のはずです。

それを受け入れるよう強要したのが、戦前の日本社会であり、ナチスドイツでした。
受け入れを拒否すれば、日本では特高警察に連行され凄惨な拷問を加えられました。
ナチスドイツでは強制収容所送りです。

どちらも決して再現させてはならない社会です。

では今の私たちに出来ることは何でしょうか?
私はまずは国権主義の復活、そして今なお原発の推進を主張するメディアの『不買』を徹底して行おうと思っています。
全国紙のY新聞とNテレビ、S新聞とFテレビ、それぞれのメディアグループの購読・視聴に加え、タイアップ商品などは購入しない。
そしてY新聞の系列下、週刊BSなどを使い脱原発運動の活動家の個人攻撃を繰り返すBS社の出版物も購入しません。
どうしても読みたい本はブックオフなどで古書を購入し、たとえわずかでも自分が支払った対価が国権主義の復活や原発復活を支持する企業の収入とならないようにします。

今のところこの程度のミニマムな抵抗運動しか思いつきませんが、ひとりでも多くの方がそれぞれの抵抗運動を展開していただけば、必ず結果は出ると思うのですが、いかがなものでしょう?

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【 11月の傑作宇宙写真 】《1》

アメリカNBCニュース 12月1日
(写真をクリックして、大きな画像をご覧ください)

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ケープカナベラル宇宙基地での火星探査衛星の打ち上げに、驚いて飛び上がるダイサギたち。11月18日。(写真上)

南極のパイン島の氷河から、シンガポールの国土ほどの大きさの氷山が割れて、南極海に漂い出す瞬間の写真。11月13日にランドサット8号衛星から撮影。(写真下・以下同じ)
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11月22日のオークションに先立ち、ニューヨークのサザビーズで展示された、スターウォーズの突撃隊員のヘルメット(手前)とソ連の宇宙飛行士の宇宙服。
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国際宇宙ステーションからナノ衛星が軌道上に放出された瞬間。
一連の操作を行ったのは日本の若田光一宇宙飛行士。11月19日。
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打ち上げのため、カザフスタンにあるバイコヌール宇宙基地に運び込まれるソユーズロケット。11月5日。
space11
その2日後、若田光一さん他2名とソチオリンピックの聖火が、このロケットで国際宇宙ステーションに向け旅立った。
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       11月3日に観察された皆既日食。
       ケニアのシビロイ国立公園で撮影。
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【 安倍首相の『新国家主義』、それは時代錯誤の帝国主義、国民を不幸にする国粋主義 】《第2回》

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所要時間 約 7分

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「日本を軍事大国化し、世界平和の実現に貢献する!」
どんな事例でも解釈次第で、内部告発者やジャーナリストを懲役刑に

サイモン・ティズダル / ザ・ガーディアン 2013年11月27日

安倍国連
2013年9月、安倍首相は国連総会で演説し、国際社会にはそのあまりにタカ派的な姿勢に対する危惧があるにも関わらず、日本が軍事面を含めた広範囲な分野で国際貢献を進めていくという方針を断固とした口調で、一切悪びれる事無く表明しました。

シリアの内戦、核兵器の拡散、国連の平和維持活動、ソマリアの海賊、開発援助、果ては女性の権利まで問題がなんであるかに関わらず、日本政府として積極的に関わっていく事を表明しました。
「日本を世界の平和と安定実現のための力としていきます。」
安倍首相はこう述べ、持ち前のスローガンを絡めて次のように続けました。
「日本は新たに、世界平和への積極的貢献の旗を打ち立てる事になるでしょう。」

長く続いた停滞期から日本経済を立ち直らせるための政策「アベノミクス」の緒戦の成功をふまえ、安倍首相はこう主張します。
「復活した強さと能力により、周囲に苦痛を与える事無く、日本は現在の世界が直面する課題に歴史的な挑戦を行う事になります。
日本の成長は世界に恩恵をもたらす事になるでしょう。日本の停滞は世界中の人々の損失なのです。」 

中国海軍
中国政府が彼の真意を理解し損ねた場合に備え、安倍首相は貿易立国日本の国益は、尖閣諸島周辺はもちろん、日本周辺の公海上の自由な航行を確保する事に直結する事を強調しました。

「どのような状況下でも、力や一方的な要求による海上秩序の変更は許されるべきではありません。」

国際関係論・国際法を専門とする東京大学の高原昭男教授は、この声明を明らかにした事で、日本同様中国と海上の島々の領有権を争うベトナムやフィリピンなどに対し、中国とは決定的に対立するしかないという先例を暗に示してしまう事になると危惧します。 

「尖閣諸島については二国間の紛争としてではなく、国際問題として理解し、解決を図らなければなりません。二国間紛争として対立を深めていく事は非常に、非常に危険な事です。まずは中国が徴発行為をやめるべきです。」
高原教授がこう語り、次のように続けました。
「日本が屈服してもいけません。そんな事をすれば中国の強硬派に誤ったメッセージを送る事になり、彼らを勢いづかせる事になります。そして中国国内の良識派、改革派の人々が取り残されることになります。」

日中紛争 2
ある高級官僚はもっと簡潔に表現しました。
「私たちは東シナ海や南シナ海を、中国の艦船が我が物顔に監視して回る状況など、決して見たくはありません。」

安倍首相の強硬姿勢は、強硬な反発を招く事になりました。
韓国の中央日報は最近掲載した社説で、安倍首相を「この数十年間で最右翼の政治家の一人」だとして厳しく非難し、次のように続けました。
「日本が平和主義国家として運営されていた時代から、安倍首相は右翼の国家主義者に支えられて来た政治家であり、近年日本社会が右傾化するとともに安倍首相の姿勢は軍国主義的なものにエスカレートしている。その結果、アジア情勢が不安定化してしまっている。」
その指摘は誇張が過ぎる、安倍首相の擁護者が次のように語りました。

繰り返された緊迫した状況は、中国側が力づくで東アジア地区における覇権を確立しようとした事が、最大の理由であると日本外務省の高官が語りました。
そして事あるごとに対立姿勢を強める韓国の指導部については、「感情的」であり、真意を測りかねるところがあると語りました。

外務省の女性報道官の佐藤地(くに)氏は、安倍首相が前提としているのは、長年平和憲法の下で制限されてきた「世界のどの国もしているような事を、今や日本も国際法の下で行う」という事だと語りました。

秘密保護法07
安倍首相が行っている事は、急速に軍備増強を進める中国の挑戦的な姿勢に直面している現在、「必要かつ妥当な事だ」と語るのは、前中国大使の宮本祐二氏です。

「わずか3カ国だけが、この政策を理解していません。 中国、韓国そして北朝鮮です。」
こう語るのは安倍首相の実弟で外務副大臣の岸信夫氏です。

これとは対照的に、アセアン(東南アジア諸国連合)の加盟国のほとんどはそれほど対立姿勢をあらわにしている訳ではありません。

安倍首相が進める日本の安全保障政策は就任2年目に入り、手がつけられないほど騒々しいものになりそうです。
まず挙げられるのが、アメリカ、そして英国に倣って作られた国家安全保障会議です。
英国の首相デイビッド・キャメロンとウィリアム・ヘイグ外務大臣(いずれも保守党)が助言を行い、その成立とともに日本の防衛大綱には大幅な変更が加わり、一般市民にことのほか厳しい刑罰を科す可能性のある特定秘密保護法が成立しました。

国内の主な野党、そして国連からも批判される特定秘密保護法は曖昧な表現に終始、どんな事例にも解釈次第で内部告発者やジャーナリストを懲役刑を課す事が可能になります。

自衛隊
安倍首相は就任するとすぐ、この数年で初めて防衛予算を増額、総トン数ではすでにアジア地区第2位の海上自衛隊、海上保安庁の艦船と装備の拡大増強に踏み切りました。
そしてこれまでの日本国憲法9条を改定して日本の軍備を増強する事に賛成の立場を取る学者・有識者を周囲に集め、「集団的自衛」を可能にしようとしています。
それはアメリカその他の同盟国が攻撃された場合、日本が直ちに参戦する事を意味します。

《第3回に続く》

http://www.theguardian.com/world/2013/nov/27/japan-new-nationalism-imperialism-shinzo-abe
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中国に対する経済的『貢献度』は各国中、おそらくはかなりの上位であるにもかかわらず、最大限の言辞を用いて罵倒される日本。
日本は大量のMade in Chinaの製品を消費し、莫大な対価を支払っているはずです。

その点にはあえて触れず、武装強化だけを声高に叫ぶその真意とは何なのでしょうか?

【 安倍首相の『新国家主義』、それは時代錯誤の帝国主義、そして国民を不幸にする国粋主義 】《第1回》

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所要時間 約 8分

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戦後日本の繁栄と国際的信用を築いた平和憲法を捨てる、安倍流『新国家主義』の台頭
傲慢、盲目的愛国心の持ち主、歴史を歪曲する政治家、それが国際社会の評価

サイモン・ティズダル / ザ・ガーディアン 2013年11月27日

海上自衛隊
尖閣諸島をめぐる日本とその巨大な隣人・中国との対立は一層先鋭化しています。
11月末、アメリカ軍はこの海域にB-52爆撃機を飛ばして中国側をけん制しましたが、日本の海上自衛隊の駆逐艦『むらさめ』の藤井艦長にとっては、それ程恐れるべき事態ではありませんでした。

灰色の船体の駆逐艦が海上自衛隊の艦船、そしてアメリカ第七艦隊の母港である横須賀港内を滑るように通り抜けていく間、藤井艦長はヘリコプターデッキの上に佇立したたままでした。
その彼の後ろで、昇る朝日を意匠した海上自衛隊旗が風にパタパタとたなびいていました。
彼の立ち姿には、内に秘めた決意がにじみ出ているようにも見えました。

むらさめは最新鋭のミサイルシステム、魚雷システム、76ミリ速射砲の最新鋭の攻撃システムを装備しています。
そして見るからに恐ろしげな6銃身のガットリングガンからなる艦艇用近接防御火器システム(CIWS)のファランクスを装備し、中国に対峙しています。
しかしそれ程の装備・軍備を拡充し、世界の中でその存在が大きくなり続けている点について、議論の的となっていることもまた事実です。

しかしその議論とは関係なく、藤井艦長は自らの役割を過不足なく演じ切る覚悟です。

この船は一触即発の危機にある尖閣諸島に向け、南に進路を取るのかと尋ねられると、藤井艦長は微笑みを浮かべ、軽く頭を下げました。
脇にいた上級士官が、通訳を兼ね藤井艦長に代わりこう返答しました。
「安全保障上・作戦上の理由から」艦長はその質問に答えることはできないのだと語りました。

尖閣01
尖閣諸島付近は今、緊迫しきった状態にあります。

艦名の『むらさめ』という言葉は通り雨という意味です。
しかし昨年、日本が個人の持ち物であった尖閣諸島を実質的に国有化したこと – 日本の当局者は好んで財産権の譲渡という言い方をします – は、一時的どころか、中国当局のその後の果てしない激しい抗議の嵐を呼ぶことになり、以来中国側の艦船が日本の海上保安庁の艦船に対し、挑発行為を繰り返すようになりました。

これまでは直接の武力衝突などはありませんでしたが、一触即発寸前までいった事例はいくつかありました。
中国艦船によるロックオン、そして日本の戦闘機による威嚇射撃などの事例が発生しています。

そして11月下旬、日本が実効支配する尖閣諸島を含む形で中国が防空識別圏を設定したことを、日本とアメリカが直ちに批難し、軍事衝突の危険性が一層増すことになりました。
中国側の宣言の後、米国のB-52爆撃機2機と日本の民間の大型旅客機が、中国が新たに設定した防空識別圏に入り、中国側が求める手続きを無視しました。

中国側はこの飛行状況を完全に認識していたと公表、認識の次にはどのような行動に出るか、危惧されるところです。

自他ともに認める保守派の安倍晋三氏が、日本の首相に就任してから1年が経ちました。
安倍首相にとって尖閣諸島問題は、軍事的にも、経済的にも、政治的にも史上かつてない規模に急激に拡大した中国を相手にした、東アジア地区における「きわめて厳しい」状況、そのことだけを反映している問題です。

安倍01
就任から一年、安倍首相は本来持っていた政治的姿勢を露わなものにしました。
1945年以降、日本を経済的成功に導き、近隣諸国と良好な関係を築き、日本の国際的地位を向上させることに貢献してきた平和憲法を変更してしまおうというものです。
平和憲法が課している制約を取り払い、かつての軍事大国路線に日本を変えていく、そのために安倍首相が乗りこなそうとしている『虎』は、安倍流の『新国家主義』路線と呼ぶべきものです。

安倍首相が就任して以来、北朝鮮との関係が行き詰まりを見せ、中国、韓国との関係が、特に双方の政府高官の間で急速に悪化して行ったことは、偶然の一致でありません。
現在に至っても尚、日本、中国と韓国間の今年の3カ国首脳会談の日取りが決まらない現在の状況は、もはや異常事態というべき状況なのです。

中国政府と韓国政府は、安倍首相が進めるアメリカとの軍事同盟の強化、国際的問題に積極的に日本を参加させること、さらには南西アジア諸国との防衛協定を次々と締結していく動きについて、戦前の日本の侵略行動、軍国主義につながる動きとみなし、これを警戒しています。

日本軍が第二次世界大戦の間に行った強制的売春問題、すなわち韓国人の「従軍慰安婦」をめぐる論争などを無視、あるいは矮小化することにより、国際的には傲慢、盲目的愛国心の持ち主、あるいは歴史を歪曲する政治家として安倍首相を批難する意見があります。

《第2回に続く》

http://www.theguardian.com/world/2013/nov/27/japan-new-nationalism-imperialism-shinzo-abe
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日本のテレビニュースなどは、安倍首相が国際的に同評価されているか、それを客観的には報道していない。
今回の記事を読んで、その事がよくわかりました。
特に最後のセンテンスは強烈です。

「傲慢、盲目的愛国心の持ち主、あるいは歴史を歪曲する政治家として安倍首相を批難する意見があります。」

そして同じくガーディアンの記事( http://kobajun.biz/?p=15424 )にはこんな記事がありました。

「現政権の周辺には、国民全般に対する支配・統制を強化したいという欲求がある」

これからの日本が「傲慢、盲目的愛国心の持ち主、あるいは歴史を歪曲する政治家」に「支配・統制」されてしまったら、いったいどういう事になるのでしょうか?
その恐ろしさを肝に銘じ、私たちは今日から行動する必要があるのではないでしょうか?

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【 さようなら、親愛なるネルソン・マンデラ 】

アメリカNBCニュース 12月12日
(掲載されている写真は、クリックすれば大きな画像をご覧いただけます)

マンデラ 1
2013年12月11日、南アフリカのプレトリアで国葬のため安置された南アフリカの元大統領ネルソン・マンデラ氏の遺体に、妻のグラサ・マシェルが最後の別れを告げました。

国旗で覆われたマンデラ元大統領の柩は、プレトリアのメインストリートをゆっくりと進み、3日間の間安置される南アフリカ政府の合同庁舎に到着しました。
南アフリカでの反アパルトヘイト逃走に生涯を捧げ、南アフリカ国民はもちろん、世界中の人々から尊敬され、そして愛されたマンデラ氏は、12月5日、95歳でその生涯を閉じました。
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【 世界の民主主義に明らかに逆行!日本の特定秘密保護法 】

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所要時間 約 10分

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現政権の周辺には、国民全般に対する支配・統制を強化したいという欲求がある
民主主義に対する脅威、世界中の各分野から、日本政府に対する厳しい批難が相次いでいる
急落する日本の『報道自由度』=民主主義国家としてのレベル

ジャスティン・マッカリー / ザ・ガーディアン(英国) 12月5日

秘密保護法08
日本ではこれから先、国家機密を漏えいした政府職員、そしてその事実を報道したジャーナリストは、長期間刑務所に入らなければならなくなった自分を発見することになるでしょう。
福島第一原発の過酷事故についても中国との外交摩擦についても、国民の知る権利の前に、その国家機密の壁が立ちはだかることになりそうです。

12月6日金曜日に特定秘密保護法が可決成立したことにより、『特定秘密』を洩らした公務員、民間人に対しては最高10年の、そしてその事実を報道したジャーナリストに対しては最高5年の禁固刑を科すことが可能になります。

この法律に反対する人々の中には、この法律は日本を太平洋戦争以前の軍国主義が支配する時代に押し戻し、政府に反抗するものは誰でも治安維持法によって逮捕拘禁される暗い時代を呼び覚ますものだとの批判もあります。

「この法律は、民主主義に対する脅威です」
東京新聞の論説委員桐山桂一氏がこう語りました。そしてこの法律について次のように付け加えました。
「ジャーナリストに情報を伝えることについて、公務員を委縮させる効果があります。」

防空識別04
エドワード・スノーデン氏の機密漏えい事件の影響により、中国との緊張関係が頂点に達した際、日本政府はアメリカ政府から同国が入手した情報を共有するについては、徹底した管理を行うよう圧力を受けました。

日本の安倍晋三首相は自身が発案者であるアメリカ流の国家安全保障会議が期待通り機能するためには、特定秘密保護法の成立が欠かせないと主張しました。

この法律は、中国の台頭と北朝鮮の核兵器開発疑惑への懸念に対応する形で、日本の防衛能力を強化しようという安倍首相の保守的政策の一環を成すものだと見られています。

安倍首相は今後3年間国政選挙を戦う必要は無く、その期間を利用して宿願の国家主義的政策を推進するものと見られています。
具体的には日本の軍事能力を完全に防衛にのみ限定している、日本国憲法の改定です。

特定秘密 1
衆議院における特定秘密保護法案の審議が極めて短期間のうちに終了したことは、一般市民の激しい抗議行動を巻き起こし、表現の自由が危機に瀕していることを危惧する映画監督と漫画家に加え、ジャーナリスト、弁護士、政治家、研究者と科学者なども次々と反対の態度を明らかにしました。
人々は、懲役刑を恐れて政府職員は国民の利益に反すると解っていても内部告発を思いとどまるようになり、ジャーナリストも同じ理由から報道することに及び腰になってしまうと反対しています。

この法案は会期末の金曜日夜遅く参議院を通過、成立しました。

この法案に関する最大の懸念は、『特定秘密』の定義が極めてあいまいなことです。
国家機密が何であるかについて、この法律は担当する省庁に自由な裁量権を与え、台頭する中国の軍事力に対応するため、あるいは原子力発電所の安全を妨害するなどの理由で、様々な問題が『特定秘密』扱いされ、国民の目から隠される可能性もあります。

特定秘密01
「秘密の定義に関する詳細な記述がほとんどありません。それが意味するところは、政府が国民による詳細な検証を望まない事項に関しては、全て機密扱いにすることが可能であるという事です。」
この法案に反対する野党社民党の福島瑞穂議員がこう語りました。

「現在の法律のままでは、何が特定秘密に当たるかを首相自身が一人で決めることが出来ます。」

この法律は防衛、外交、テロ対策、そして敵対的スパイ活動の分野に適用され、国民なら誰でも確認できる公有情報から除外されます。
与党の幹部級の議員はこの法律が報道関係の口を塞いだり、市民の知る権利を制限することには用いられないと主張しています。

しかし政府の谷垣法務大臣は、この法に関し警察が法を犯したとして告発しようとした場合に、新聞社を告発対象から外すよう求めた法案の修正要求を拒否しました。

特定秘密04
またこの法案の担当である森少子化問題担当大臣は、原子力発電所はテロリストの潜在的攻撃目標であり、特定秘密保護法が原子力産業内で適用される場合があると語りました。
しかし同時に森大臣は、この法律が福島第一原子力発電所の放射能漏れの情報に適用されることは無いと語りました。

11月最終週与党自民党の石破幹事長は、この法案に反対して路上で声を挙げている大勢の人々はテロリストと変わらないという意見を明らかにし、国民と世論の怒りを買いました。
後にこの意見を撤回し、謝罪しました。

「現在の政権周辺には、国民全般に対する支配・統制を強化したいという欲求があるようです。」
こう語るのは明治大学法学部のローレンス・レペタ教授です。

「この欲求は国家機密を取り扱う政府にはより幅広い権限を持つ必要があるという概念と、基本的に一致しています。
そして今回の法律によって、日本のジャーナリズムを委縮させてしまおうという意図は、極めて明白なようです。」

安倍01
この法律に対する広範囲にわたる反対は、安倍政権への支持率を急落させました。
朝日新聞紙による最近の世論調査によれば、昨年12月の発足以来、安倍政権への支持率は初めて50%を割り込みました。
調査を受けた人々の60%が、法案の成立を急ぎ過ぎたことに対して懸念を表明しました。

この事態に安倍首相は12月初旬、政府職員や各省庁が公共の利益に反する情報を隠ぺいするためにこの法律が濫用されることは無いと、国民を説得しようとしました。

「この法律についての誤解があります。」
安倍首相はこう語りました。
「ジャーナリストの通常の取材・報道行動を罰することが、この法律の目的であってはならない、その点は明らかです。」

その上で安倍首相は『特定秘密』について政府がはっきりとした定義づけを行い、法の運用においては監視を行うための第三者機関を指名すると語りました

特定秘密 5
しかしこの問題を検証する人々は、安倍首相が提案した『第三者機関』は、外務省、防衛省、警察庁の高官によって構成されており、とてものこと『独立した機関』と呼べるものではないと指摘しています。

「私たちに必要なのは『第三者機関』であって、『第三者機関のようなもの』ではありません。」
野党民主党の海江田万里代表がこのように語りました。
「この法律は官僚が情報を隠すために、官僚自らが作り上げたものである、そのように言うことが出来ます。」

スノーデン・スタイルの内部告発者と、それを報道するジャーナリストを厳しく罰しようとする日本の特定秘密法の成立は、国内のみならず世界中のジャーナリストの懸念を増幅させることになりました。

国境なき記者団は、
「日本は調査報道を違法にしてしまった」
と批判し、以下の声明を発しました。
「福島第一原発の事故発生に憤慨する一般市民から、行政の情報開示、透明性の保持に対する要求が高まっているにもかかわらず、政府が情報を国家機密であるとして自在に非公開にできるような法律を成立させてしまえば、どうやって国民の負託にこたえることが出来るというのだろうか?」

秘密保護法 1
人権のための国連高等弁務官のナヴィ・ピレイ氏は、国民との間でほとんど議論らしい議論をすることなくこの法律を押し付けたとして、日本政府を厳しく非難しました。
「日本国憲法と国際人権保護法が保障する表現の自由、そして適切な情報入手の権利を守るための手段を講ずることなく、日本政府は法律の成立を急ぎましたが、このような行為は許されるべきではありません。」

特定秘密保護法案の成立は、国境なき記者団が主宰する『世界の報道自由度ランキング』において、日本の順位の急落を反映しています。
2012年の順位22から31段階も順位を落とし、2013年は179か国中53位の成績でした。

http://www.theguardian.com/world/2013/dec/05/whistleblowers-japan-crackdown-state-secrets
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通常なら2回に分けてご紹介する文字量の記事ですが、一回でご紹介させていただきます。
昨日もご紹介したように、世界の世論を引っ張るニューヨークタイムズ、ワシントンポスト、エコノミスト、ザ・インデペンダント、そしてこのザ・ガーディアンが日本の特定秘密保護法を厳しく非難していることで、世界の世論の動向は明らかになったと思います。
日本の民主主義が危ない!
その論調は一致しています。

とりもなおさずその事は、私たちの生命、平和な生活、そして自由と平等が危険にさらされているという事です。
これ以上の日本の民主主義の崩壊を止めましょう。
私たちの力で、ひとり一人が何とか工夫して行きましょう。

【 安倍政権による自由主義社会の否定、市民社会への挑戦 】

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自由主義社会で、最も整然とした抗議活動を行う日本の市民
世界で最も礼儀正しい市民を、平然と『テロリスト』呼ばわりする自民党幹事長
民主主義が保障する市民の権利を行使すれば、罪に陥れられるという恐怖が日本で現実になってしまう

エコノミスト 12月3日

 特定秘密 1
日本の一般市民による抗議行動は、自由主義社会において最も秩序だった整然としたものでありながら、日本の警察によって自由主義社会で最も厳しい取り締まりを受けています。

11月26日、国会の両院において過半数の議席を独占する与党自由民主党が、論議の的となっている特定秘密法案を衆議院を強引に通過させました。
この事態を受け、英国から派遣された特派員は、国会の外で一列に並び、この法案に反対するサインボードを静かに掲げている市民たちの様子を観察しながら歩いてみました。

その中で最も- 飽くまでその場の人々の中で - 暴力的であったもの、それはメガホンで法案反対のシュプレヒコールを叫びながら、空に向かってこぶしを何度も突き上げていた一人の女性でした。

現実はそのようであるにもかかわらず、法案を通過させた3日後、自民党幹事長で党内の実力ナンバー2の石破茂氏は、自由主義社会で最も整然と抗議活動を行う人々をテロリスト同様の存在であると、そのブログに書き込んだのでした。

特定秘密 3
11月21日は東京の中心部において講義をする人々の数は相当数に上り、万を数えるまでに膨らみました。
そしてこの日、国会に向け行進をしていた抗議者の中心となっていたのは比較的年齢の高い人々でしたが、国会議事堂に近づくと警察から掲げていたのぼりや旗を降ろすよう命令されると、みな素直に警察の指示に従いました。

それにもかかわらず石破氏は、そのブログにこう書き込んだのです。
「単なる絶叫戦術は、その本質においてテロリズムの行為と何ら変わるところは無い」

この書き込みに対してはさすがに嵐のような批判が巻き起こり、石破氏は態度を軟化させざるを得なくなり、いち早くその表現を撤回しました。
12月1日の演説において石破氏は抗議活動の騒がしさについてのみ言及しテロリズムの定義については明言することを避けました。

特定秘密 2
しかし時すでに遅し、石破氏の書き込みは現在の安倍政権のアンチリベラル、非市民的性格を暴露しただけでなく、一般市民の今回の法案に対する幅広い不安をかき立てる事になりました。
それでも自民党はこの法律の国会通過を強行しようという態度を変えてはいません。

この法律之成立により、4つの分野において国家機密を漏洩した政府職員に対し、最高10年の禁固刑を科す事が可能になります。
防御、外交、敵対的スパイ活動とテロ対策の4分野です。
しかし法律の条文の表現はきわめて曖昧で、政府が常軌を逸脱した範囲の情報をすべて国家機密であると規定し、国民の手の届かないところへしまい込んでも、それを抑止する手だてはありません。

野党の中で著名な政治家の一人、山本太郎議員は次のようにツイートしました。
「石破氏に感謝!彼の書き込みのおかげで、秘密保護法が成立したら、政府に対し批判的言動を行った人間がどのような扱いを受けるかはっきりしました。」

特定秘密 5
石破氏の書き込みはこの法律について、さらなる懸念がある事を気づかせる事になりました。
原子力発電所の再稼働に反対する抗議行動を禁止するために、テロリストの標的にされる恐れがあるとして、特定秘密保護法が拡大運用される可能性があります。

野党の民主党、維新の会、その他の野党5党が揃って、石破氏の書き込みは「常軌を逸した暴言」だとして一斉に反発しました。
今回の法律のテロリズムの定義も、あまりに漠然としている事にも留意するよう、野党側が呼びかけています。

今回の法律成立の立役者である安倍晋三首相は、特定秘密保護法は国家の安全を強化するものだとの主張を続けていますが、国民からはきわめて厳しい視線を向けられている事を痛感せざるを得なくなりました。

2012年12月に政権の座について以来、安倍政権への支持率が今回初めて50パーセントを割り込みました。
12月1日に朝日新聞が発表した世論調査の結果は、安倍政権の支持率は前回の53%をさらに下回り、現在49%にまで低下しました。

石破01
石破氏の書き込みの、逆の意味での貢献は明らかです。

http://www.economist.com/blogs/banyan/2013/12/japan-s-illiberal-secrecy-law?zid=306&ah=1b164dbd43b0cb27ba0d4c3b12a5e227
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「世界で最も礼儀正しく政治的主張を行う国民に浴びせる言葉が、それなのか?」
そんな厳しい指摘が聞こえてきそうな記事です。
まったくその通りです。
脱原発運動の際も、一部の心無い週刊誌(日本最大の発行部数を呼号する新聞社の傘下の週刊BS)が、首相官邸前の抗議行動でリーダー的活動をした市民の個人攻撃をしたことがありました。

自分たちは一定の影響力を行使し得る、そう考えた上での発言であるだけになおさら悪意を感じます。

記事中の山本太郎さんの言葉を借りれば、この発言のおかげで私たちがしなければならないことがはっきりしました。
闘う市民になる事です。
相手は礼儀正しくすればするほど、そこにつけこんでくる類いの人間。
これ以上、近代的民主主義が保障する権利を奪われないためには、私たち日本人は闘う市民になる必要がありそうです。

これで世界の世論をリードする米国のニューヨークタイムズ、ワシントンポスト、英国のエコノミスト、ザ・インデペンダントが日本の特定秘密保護法とその成立を強行した安倍政権に批判的なことがはっきりしました。
明日はさらに英国の良識ガーディアン紙はこの問題をどう伝えているか、ご紹介する予定です。

【 東京電力の広報事業と福島第一原発、その現実 】

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メルトダウンした1~3号機の廃炉、現在の東京電力にとっては難しすぎる課題
日本は未だ、破滅の淵から抜け出した訳では無い
毎日放射線を浴びその身を危険にさらし、懸命に働く数千の作業員

アンナ・コレン / アメリカCNNニュース 12月5日

120121
2011年3月11日金曜日の午後、私はCNNのニュース編集室にいて、日本から恐ろしい内容の報道が次々と送られてくる、そのテレビの画面にくぎ付けになっていたことを憶えています。
そして日本の沿岸に押し寄せ、そこにあるもの何もかもを飲みこんでいく津波の上空からの映像に、身も心も恐怖でいっぱいになりました。
この時目にした映像は、一生私の心から消えることは無いでしょう。

そのわずか24時間後には自分自身が日本の災害現場に立ち、現地からの報告を行うようになろうとは、その時点では思ってもみませんでした。

そのとき私たちは地震と津波による大量破壊、そして膨大な数の犠牲者の発生と向き合っていましたが、他方ではその時点ではまだ視界に入っていない、もうひとつの大災害が進行していたのでした。
そう、福島第一原子力発電所事故…

大量破壊をもたらした地震と津波は福島第一原発では3基の原子炉をメルトダウンさせました。
そして日本の前途にはアルマゲドンが見え始めていたのです。
当時福島第一原発の状況はあまりに危険であり、報道関係者の立ち入りは一切許されませんでした。
あれから2年半以上が経ち、私はやっと福島第一原発の施設内に足を踏み入れることが出来たのです。

082904
私たち報道関係者は現在福島第一原発の内部で行われて事故収束・廃炉作業の進捗状況を検証するよう、東京電力からの招きを受けていました。
この事故収束・廃炉作業をメディア関係者が間近で直接検証するのは、これまで一度もありませんでした。

その日私たちは福島第一原発に向け車を走らせていましたが、通過する途中の家々には人の気配は無く、庭や田畑には植物が伸び放題に生い茂っていました。
察するに2011年の福島第一原発の事故発生の際、この場所から避難して以来、一度もここには帰ったことが無いのでしょう。

かつては60,000人の人々がにぎやかに暮らしていたこの場所は、今や完全なゴーストタウンと化してしまいました。
唯一人間が居る場所、それは道の途中に設けられた検問所だけです。

我々は、「立ち入り禁止区域」に入りました。
目の前を行きかう人間は福島第一原発の施設内で事故収束・廃炉作業に従事するため、毎日宿舎と現場を往復する3,500人の作業員だけです。
放射線量の高い場所で働く彼らは、毎日放射線を被ばくし続けています。

101302
東京電力の案内で福島第一原発に到着した私たちは、放射線量を測定するためある建物に連れていかれました。
私たちは福島第一原発を出る際にもう一度この検査を受けることになりますが、これは敷地内に滞在している間、どれだけの被ばくをしたか確認するためです。

最初の検査の後、私たちは同じ場所で放射線防護服のセットを完全装備しました。
防護服はタイベック・スーツ、2枚重ねの靴下、ゴム長靴、3枚重ねの手袋、帽子、そして防護マスクからなります。
皮膚の露出部分はありません。
また、自分がいる場所の空間線量の確認のため、線量計を携行していきます。

防護服の着用、機器の携行を確認の上、私たちは山裾を切り開き、海岸線のすぐ脇に位置する福島第一原発の現場に入っていきました。

当時の海は穏やかに凪いでおり、この海が2011年3月のあの日、巨大な規模の殺人者・破壊者として襲いかかってきたことを想像することは、きわめて困難です。

4号機建屋
東京電力によってたったひとつ幸運なことがありました。
事故当時、4号機だけは稼働を停止していたという事実です。
水素爆発が起きましたが、4台並んで建っている原子炉のうち、被害は最小限に留まりました。
理由?
それは当時4号機は呈点検中で、地震と津波に襲われた当日、稼働を停止していたからです。

巨大な原子炉建屋の中に、補強・修理工事の済んだ使用済み核燃料プールがあります。
陽のプールの上に、緑色をした水の中深く沈んでいる核燃料アセンブリの取り出し作業を開始した巨大なクレーンがあります。
1,500組の核燃料アセンブリの取り出し作業は順調な滑り出しを見せ、東京電力はそれをもって「事故収束・廃炉作業において、記念碑的な一歩をしるした」と表現しました。

取りだされた核燃料アセンブリは、別の場所にある共用プールの中に運ばれ、これから20年の間貯蔵されることになっています。
この作業は2014年内に完了することになっていますが、原子炉4号機を廃炉にするための困難な上に、ゆっくりとしか進行しないさぎようで作業です。
しかし、これ以外に「事故収束・廃炉作業において、記念碑的な一歩」を期待できる状況は福島第一原発の中にはみあたりません。

3号機
東京電力が本当に克服しなければならない課題は別にあります。
メルトダウンしてしまった原子炉1~3号機を、どうやって廃炉にするかという問題です。
付近は放射線量が極めて高く、近づくことすら容易ではありません。

もう一つの大きな問題は、高濃度の放射性物質を含む汚染水です。
東京電力は毎日約400トンの高濃度の汚染水を汲み上げ、敷地内に作り続けているタンク内にため続けています。
この汚染水が地面に漏れ続け、最終的には海に浸出しているのではないかという恐れは未だ払しょくされてはいません。

私たちはひとつの高い建物の上から、福島第一原発の全体を見渡すことが出来ました。
そこから見えた景色は、必死に事故収束・廃炉作業に取り組んでいる原子力発電所、そしてその事故により未だに破滅の淵から抜け出せないでいる日本の姿でした。

110621
福島第一原発の現場で毎日放射線を浴びその身を危険にさらしながら、与えされた仕事を何とかやり遂げようとしている数千人の人々の姿は、日本の歴史に鋭い痛みとともに刻まれなければなりません。
この国の未来は、まさにこの人々の双肩にかかっているのですから。

http://www.independent.co.uk/news/world/asia/fukushima-nuclear-plant-delicate-operation-underway-to-remove-uranium-fuel-rods-from-unstable-storage-facility-8946429.html?origin=internalSearch
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明日12日(木)は都合により掲載をお休みさせていただきます。
13日(金)新たな記事をご紹介しますので、よろしくお願いいたします。

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【 海に輝く星空 】

アメリカNBCニュース 12月9日
(写真をクリックして、大きな画像をご覧ください)

ランドサット
緑がかった植物プランクトンが、バルト海に浮かぶスウェーデンのゴットランド島を囲むようにして渦巻いており、さながらファン・ゴッホの有名な作品「星が多い夜」を見ているかのようです。
この写真は2005年にランドサット7号衛星によって撮影されたものですが、41年間に渡り続いているランドサット地球観察プログラムの中でも、ベスト5に入る傑作とされています。

【 特定秘密保護法、自由主義社会からの脱落への途を歩み出した日本 】〈後篇〉

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秘密保護法が無かったために日本には情報が入らなかった?そんな事実は無い
パブリック・コメントに寄せられた90,000件の意見のうち、77%がこの法律に反対を表明

AP通信 / ワシントンポスト 11月26日

特定秘密 1
現在日本では、防衛省が定める『防衛機密』も含め、機密保護については各省庁がそれぞれに規則を定めています。
今回の特定機密保護法案はそれらの省庁の規則を補う一方、国家安全保障会議の設立とともに、各指揮系統を首相官邸に一本化し、首相により多くの権限を与えることになります。

カート・トン在日米国大使館臨時代理大使は今回の法案について、アメリカ政府は「より効果的な同盟関係」を築く第一歩と考えていると、つい最近行われたスピーチで語りました。
しかしその一方で、法律の運用過程については透明性を保つこと、そして近隣諸国に運営方針について明らかにすることを、強く要請しました。

首相官邸で安全保障と危機管理を担当した柳沢元官房副長官補は、在任中、特定秘密保護法が存在しなかったために、同盟諸国から必要な重要な情報を入手できなかったというような具体例は一切記憶には無いと語りました。

秘密保護法01
米国または他の同盟関係にある国が情報を日本と情報を共有しないと決めたことはあったが、その理由はそれぞれの国益に関わることが理由としてあったためで、日本に秘密保護法が無かったためでは無かったはずだ、柳沢氏はそうつけ加えました。

問題となっている特定秘密保護法が存在しなかった当時でさえ、今年82歳を迎えたジャーナリストの西山太吉氏は、1972年、沖縄の返還に伴い、日本政府と米国政府との間に存在した密約を暴露させたとして、有罪判決を受けました。
西山氏自身はこの事件について、それまで表に出ることが無かった膨大な秘密に関し、その氷山の一角を公にしただけで、罪に問われることになった、そう語りました。

政府は過去7年の間、70,000件以上を新たに防衛上の機密として分類しました。
一方で約40,000件の情報が破却されました。
これは日本の機密情報の約1割に当たります。

「日本においてはもうすでに、自身の歴史について事実を確認する事が難しくなっているのです。」
西山氏がこう語りました。
「新しい法律は、その状況をいっそう悪いものにするだけです。」

特定秘密 3
野党民主党の長島昭久議員は、今回の特定秘密保護法が日本政府自身が秘密を保護したいがために立案されたものだと語り、その一方で日本ではアメリカの制度と比較すると歴史的記録の保存と国民に対する情報開示が著しくなおざりにされていると語りました。

にもかかわらず今回この法案の成立に伴い、この制度を監視する第三者機関の長に首相を充てる事にしています。
特定秘密保護法には日本人、そして海外のジャーナリスト、作家、研究者、市民活動家などが反対を表明しています。

9月に実施された政府主催のパブリック・コメントでは、寄せられた90,000件の意見のうち、77%がこの法律に反対を表明していました。
そして一般市民の活動が抑圧される事態を懸念しています。

市民の中には、今回の法律が言論の自由、報道の自由が厳しく制限されていた第二次世界大戦以前、そして戦争中の暗い時代に日本を押し戻すのではないかと懸念する人々もいます。
この時代日本では治安維持法の下、約100,000人もの人々が逮捕拘禁されました。

特定秘密 2
市民活動家の徳根和之氏は、原子力発電所の情報にアクセスしようとしている取り組みが、特定秘密保護法を拡大解釈する事によって、違法とされる可能性があると語ります。
「将来私は反原発活動を行ったとして、逮捕されてしまうかもしれません。」
首相官邸前の抗議活動の場で、徳根氏がこう語りました。

「しかし特定秘密保護法が、私を止める事は出来ません。」

〈 完 〉

http://www.washingtonpost.com/world/asia_pacific/japan-secrecy-law-stirs-fear-of-limits-on-freedoms/2013/11/26/b2447b24-566f-11e3-bdbf-097ab2a3dc2b_story.html
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安倍首相が秘密保護法の成立によって
「通常の生活が脅かされる事は断じてない」
「国民の知る権利が脅かされる事は無い」
と語ったと、9日夜のニュースが伝えていました。
しかしそのコメントには、冒頭
「時の権力に逆らうような事さえしなければ」
という前置きがあるのではないか?
そう勘ぐりたくなります。

そして次のようには言わなかったようです。
「報道の自由が妨害されるような事は断じてない」

とにかく、
「戦争には反対!」
と口にしただけで『非国民』と罵られ、特高警察に連行するような世の中だけはまっぴらなのです。
そんな当たり前の事を、多くの国民が当たり前に願っているのです。

【 特定秘密保護法、自由主義社会からの脱落への途を歩み出した日本 】〈前篇〉

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自由・平等を保障する民主主義に、キバをむき始めた安倍政権
「日本の報道の自由に対する深刻な脅威」国外の有識者からも深刻な懸念
国民の監視の目が届かないところで、国民の目に触れることなく、自分たちが望む形にこの国を変えてしまうための環境づくり

AP通信 / ワシントンポスト 11月26日

特定秘密03
日本ではより権限の大きな衆議院は、11月24日火曜日、業務上の秘密を洩らした政府職員とその情報を入手したジャーナリストに対し、厳しい刑事罰を科すことが出来る特定秘密法案を議決・通過させました。
この法案については、政府内部の情報を隠し、報道の自由を抑え込む高圧的な手法を形にするものだとの批判が高まっています。

政府は『特定秘密』が何であるか明確な規定を明らかにしていないためも、運用次第ではどのような解釈も可能であり、この点にも市民の懸念が強まっています。
評論家等はこの法律により、政府が国民に情報を開示せずに政治を行う可能性があり、最終的に日本の民主主義が弱体化していく危険性があると指摘しています。

この議案の審議については野党議員からの激しい抗議が相次ぎ、議案は予定を数時間遅れて可決されました。
与党とその支持者は、参議院において12月中に可決されることを望んでいます。
与党側はアメリカをはじめとする同盟国間で安全保障上の重要な情報を共有するために、この法律はぜひとも必要であると述べています。
アメリカ同様の国家安全保障会議の設立とともに、特定秘密保護法は国際社会における日本の軍事的貢献度合いを強化し、さらには政府により大きな権限を持たせようという安倍首相の取り組みの第一歩となります。

特定秘密01
「この法律は、国民の安全を保障するためのものです。」
安倍首相はこう語り、国会で自由文に審議を尽くした上で国民の懸念を払しょくすると約策しました。

この法案では各省庁、各機関の長に、防御、外交、防諜活動とテロ対策に関連した23種類の漠然とした言い回しの事柄に対し、一方的に機密指定できる権限をほとんど無制限に与えるものです。

この法律が施行されれば、政府は原子力発電所に関する情報について、テロリストの攻撃目標になる恐れがあるとの理由で、大切な情報のほとんどを機密扱いにしてしまうことも可能である、このような批判的な意見もあります。

または貿易自由化の交渉において、政府や与党が日本にとって不利な譲歩を行った際、交渉の障害になるとの理由からその事実を隠ぺいしてしまう可能性もあると警告しています。
一方で台頭する中国の軍事的脅威に神経をとがらせているアメリカ合衆国は、日本がその抑止力として強く働き掛けることが出来るとして、特定秘密保護法の成立を歓迎しています。
しかし日本国内では、かつて政府機関が自由な言論・報道を厳しく弾圧し、軍国主義を推し進めた過去に再び回帰する恐れがあるとして、特定秘密保護法案の成立には懸念が広まっています。

特定秘密02
一部の専門家は、この法律によって安倍政権は、国民の基本的人権よりも国民の義務を強調する社会の成立をめざし、かつてアメリカの影響下で成立した平和憲法の軍事面に関する制限を取り払おうとしていると指摘しました。

「私が一番恐れるのは、政府の意思決定プロセスを国民が監視することが非常に難しくなる、という点です。」
こう語るのは元防衛庁の高官で、2004年から2009年にかけて首相官邸で安全保障と危機管理を担当した柳沢協二元官房副長官補です。
「つまり国民は、政府がどこでどのように誤りを犯したのかを確認できなくなり、政府がより懸命な選択を行うよう意見を言うことが出来なくなるということなのです。」

11月23日、特定秘密保護法案の採決の前、たった一度福島で開催された公聴会で、弁護士の牧博康氏はこの法律では秘密の定義が曖昧で漠然としており、もし別の原子力発電所事故が発生した場合、周辺住民にとっては避難の際に不可欠で、かつ死活問題となる放射性物質の飛散状況などの情報が機密扱いされ、公開されなくなる危険性があると語りました。

この法案に反対する人々は、公聴会の席上、地方自治体の7名の当局者が一致してこの法案の可決に反対したにもかかわらず、翌日にはあたかもそんな事実など存在しなかったかのように法案を可決してしまった安倍政権について、民意などまるで無視したやり方だと批判しました。

特定秘密04
与党自民党の国会議員は、日本には機密を保護するための法律が無いため、最高度の国家的機密情報を日本と共有することについて不安があると、繰り返しアメリカ政府が表明したと語っています。
特に中国に機密が漏れてしまう事を、アメリカ側がことのほか恐れていると自民党国会議員が口にしました。

「日本の諜報レベルを上げるためには、この法律が必要なのです。他の多くの国々には、国家的機密を保護するための法的枠組みがすでに存在しています。しかし、日本にはまだ無いのです。」
このように語るのは、与党自民党の特定秘密保護法案作業チームの幹部、町村信孝議員です。

この法律が成立すれば、現行法では機密を漏えいした政府職員の罰則が1年間の懲役であるのに対し、最高で10年間の懲役刑が科されることになります。

「不適切」な手段により、あるいは「不当に」機密情報を入手したジャーナリストには懲役5年以内の刑が科されることになります。
特定秘密保護法は、政府職員にとっては報道機関に対する情報開示について一層後ろ向きになってしまう材料となる一方、ジャーナリストにとっては取材活動に対する脅迫として機能する可能性があります。
機密漏えいを企てたり、機密を暴露する報道を共謀したり要求しただけでも違法性を問われ、検挙されてしまう可能性があります。

特定秘密05
「この法律は、日本の報道の自由に対する深刻な脅威です。」
明治大学法学部のローレンス・レペタ教授がこう語りました。

「安倍政権は望んでいたものの多くを、手に入れることに決めたようです。政府と官僚が国家機密の指定に関する幅広い権限を行使することにより、国民の監視の目が届かないところで、国民の目に触れることなく自分たちが望む法案を成立させられる環境を…。」

〈 後篇に続く 〉

http://www.washingtonpost.com/world/asia_pacific/japan-secrecy-law-stirs-fear-of-limits-on-freedoms/2013/11/26/b2447b24-566f-11e3-bdbf-097ab2a3dc2b_story.html
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今回の特定秘密保護法案の成立、そして現政権は原子力発電を「ベース電源」、つまり発電手段の『根幹』だと規定しようとしています。
つくづく思いました、今を生きる日本の市民は「戦う市民」にならなければならないのだと。

まさに写真コーナーに掲載した、ネルソン・マンデラ氏の言葉通りです。

「自由と正義を手に入れるための戦いは、本当に骨の折れる仕事です。
だからこそあなたが参加する価値があるのです。
私たちが暮らすこの世界を、より良いものにするための鍵、それはあなたの手の中にこそあるのです。」

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【 ネルソン・マンデラの言葉の中に 】

アメリカCNNニュース / アメリカNBCニュース 12月15日

マンデラ 3
「世界中のどこにも自由を簡単に手に入れられる場所などはありません。
多くの人間が念願の自由を手にするまで、仲間の死が散乱する暗い谷間を何度も何度も越えていかなければならないのです。」

マンデラ 2
「自由と正義を手に入れるための戦いは、本当に骨の折れる仕事です。
だからこそあなたが参加する価値があるのです。
私たちが暮らすこの世界を、より良いものにするための鍵、それはあなたの手の中にこそあるのです。」

マンデラ 3
「今の時代にあっても、自由を手に入れるという事は容易な事ではありません。
そして一人で行動しても自由を手にする事は出来ません。
そのために市民が連帯する必要があるのです。
国民同士が和解し合うために、市民のための国家を作り上げるために、新しい世界を創造するために。」

マンデラ 4
マンデラ 5
マンデラ 6
マンデラ 7

【 政治権力の闇の力を強化した安倍政権 : 後退を重ねる日本の平和主義、失われていく国民の権利 】〈後篇〉

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危機的状況であればある程、重要な情報を隠したがる日本政府
政府にだけ独占的権限を与え、人々の知る権利、報道の自由、そして情報開示を求める権利を著しく侵害する
先進国は今、国民に対しできるだけ多くの事実を公表すべく動いており、その中で日本だけが逆行する法律を制定しようとしている

 

マーティン・ファクラー / ニューヨークタイムズ 11月28日

秘密保護法03
安倍政権による特定秘密保護法案の処理速度のあまりの早さは、反対派の人々に、この法律が民主主義に対する明らかな脅威となり得る、との恐れを抱かせることになりました。
さらには国政上大きな変革をもたらすような法案については、国会において充分な合意を形成した上で物事を前に進めるという、日本的民主主義の手法をも無視するものだとして、大きな不満を引き起こしました。

「我々は、安倍政権のその外面とは裏腹の、タカ派的な正体をまざまざと見せられた思いです。」
11月24日に特定秘密法案が衆議院を通過した後、日本最大の野党、民主党の海江田万里党首がこう語りました。
この法案に対して最も懸念を表明する声は、破壊された福島第一原子力発電所の周囲からも上がりました。

福島第一原発の事故により避難区域に指定されている浪江町の馬場町長は、11月23日にこの法案に関してたった一度開かれた公聴会の場で、2年以上前の事故の最中、政府が放射性物質の飛散状況を広報することを怠ったため、何も知らされていなかった町民が放射性物質が降り注ぐ場所に向かって避難してしまった事を指摘しました。
馬場町長は危機的状況であればある程、重要な情報を隠したがる政府のあり方について警告しました。

「大切なことはより多くの情報を公開することであり、それを隠すことではありません。」

日本国内の著名な作家、ジャーナリストや学識経験者は、この法案を廃案にするよう熱心に主張を展開し、さらには高級官僚が様々な情報を恣意的に隠す行為を行なうことの無いよう、第三者が厳しく監視する機関の設置を求めました。

彼ら、そして他の多くの人々が、今回の法案は何を国家機密として規定するのか、その点極めてあいまいだとして非難しています。
そして日本はアメリカをはじめとする他の民主主義国家ほど、報道の自由について明確に規定する法律が存在しない点を挙げ、憂慮しています。

秘密保護法04
さらにはこの法律が施行されれば、秘密を洩らした公務員だけではなく、取材をしたジャーナリスト、研究のため資料として入手した大学の研究者までもが犯罪者として処罰される危険性があると警告しました。
さらには機密情報と選挙によって選ばれた議員との関係についても、事前に検証されずに法案の審議が続けられているのです。

日本を代表する別の日刊紙である朝日新聞の社説は、国家機密の漏えいを防ぐことは大切であるにしても、現在の法律は欠陥だらけであり、有権者が何も知らされない場所に追いやられてしまう可能性があると指摘しました。

この法律は政府にだけ独占的権限を与え、人々の知る権利、報道の自由、そして情報開示を求める権利を著しく侵害するものだと批判しました。

11月下旬、安倍首相は議会で、今回の法律は日本が機密情報の管理を強化するために必要であると延べました。
そしてこれは、機密情報の漏えいによってスキャンダルに巻き込まれてしまったアメリカ側からの要請でもあると付け加えました。
これに対し一部の専門家は、こうした批判は当たらないと語っています。

法案の条文には含まれてはいないが、国家機密の指定の運用を監視するため、安倍首相が野党に対し第三者機関の設置に合意した点を挙げました。
彼らはこの法律の運用の対処は軍事機密や、諜報によって得たテロリストの会話記録などに限られると語っています。

「今回の法律は、日本の機密情報の管理能力がアメリカ合衆国と同様のレベルになるだけだと考えています。」
東京大学法学部の長谷部安夫教授がこう語りました。

秘密保護法05
しかしアメリカ合衆国の現行法を模倣することこそが問題なのだと、多くの批判が集まっています。
アメリカを始めその他の先進国は今、国民に対しできるだけ多くの事実を公表すべく動いており、その中で日本だけが逆行する法律を制定しようとしていることに懸念を抱いています。

「スノーデン氏による機密漏えい事件は、アメリカでは国家機密というものを考え直すきっかけとなりました。」
上智大学の田島教授がアメリカの国家安全保障局のエドワード J. スノーデン氏による機密漏えい事件に言及しました。

「そして現在、日本は明らかに間違った方向に向けて走り出してしまったのです。」

 


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下の写真を見ていて思いました。
太平洋戦争が終了してから約70年、どんなふうに時の政府を非難、あるいは罵倒したところで、まさか『国家反逆罪』に問われることはありませんでした。
ところが今度の特定秘密保護法、将来の日本には『国家反逆罪』に問われ、法廷に立たされる人が出てくるのではないか、そんな懸念が頭をよぎります。

今なら私たちは未だ、ネルソン・マンデラ氏程長く戦う必要は無いはずです。

そして現在、特定秘密保護法案に群れながら狂奔する議員諸兄に申し上げます。
人々が敬愛し、哀惜するのは、一市民の手から自由や平和を取り上げる権力者ではありません。
市民と一緒に、自由と平等を勝ち取るために戦ってくれる市民目線の『人間』なのです。

 

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【 自由と平等の戦士よ、安らかに眠りたまえ… 】

ネルソン・マンデラ元南アフリカ大統領、95歳で死去

 

アメリカNBCニュース 12月5日

マンデラ1
ニューヨーク、ブルックリンの南アフリカ・レストランで、ネルソン・マンデラの死を悼む人々。(写真上)

ネルソン・マンデラは、1918年に、南アフリカのイースト・ケープの小さな村で生まれました。
1950年ごろ、アフリカ民族会議(ANC)青年部を設立して6年後のマンデラ。(写真下・以下同じ)
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1956年、国家反逆罪の審判のため法廷に向かうネルソン・マンデラ。この時は4年間の審理の後、告訴が取り下げられました。
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1958年、2番目の妻、ウィニー・マディキゼラとの結婚写真。2人の娘を設けたが、1996年に離婚。
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1961年にアフリカ会議(ANC)で演説するマンデラ。1960年にANCは非合法化され、マンデラは地下活動に専念。軍事教練を受けた後、海外で支持を集めるために1962年に南アフリカを離れました。
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1964年6月、逮捕され、法廷で終身刑を言い渡されたマンデラは、囚人護送車の鉄格子の間からこぶしを突き上げ、闘争継続の意思を露わにしました。
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1998年3月27日、18年の間投獄されたロッベン島の第5号監獄で、アメリカのビル・クリントン大統領と談笑するマンデラ。クリントンは「新年を捨てる」ことなく、監獄生活を耐え抜いたマンデラを誉め称えました。
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【 政治権力の闇の力を強化した安倍政権 : 後退を重ねる日本の平和主義、失われていく国民の権利 】〈前篇〉

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路上での怒りに満ちた抗議活動もどこ吹く風、安倍政権の異常な熱意
日本は中国や北朝鮮などの独裁国家と、本質的に何ら変わらない国になってしまう
近代史が証明 : 日本には言論の自由に関する根強い伝統はない

マーティン・ファクラー / ニューヨークタイムズ 11月28日

秘密保護法01
路上での怒りに満ちた抗議活動、主要な新聞の社説の軍国主義国家回帰への懸念、そんなことには一顧だにする事無く、日本の保守派を代表する一人、安倍首相は第二次世界大戦後長く続いた日本の平和主義を追憶の彼方に押しやるべく、その立法上の課題のひとつをもうすぐ達成できそうな所までたどり着きました。
特定秘密保護法の制定です。

特定秘密保護法案は衆議院を、それこそ『あっという間に』通過し、今年中に参議院で可決・成立する見込みです。
安倍首相はアジア地区における集団自衛行動に積極的に参加し、自衛的軍事行動に対する制限を最低限にする事こそ国家としての『当たり前の姿』だと規定、それを実現するための取り組みを続けていますが、今回の法案成立はそのための第一歩を印すことになります。

11月最後の週に可決成立したアメリカ合衆国と同内容の国家安全保障会議の創設に加え、特定秘密保護法が議会を通過することになれば、いわゆる『有事』の際の首相の権限が一層強化されることになります。

防空識別01
安倍首相は日米間で軍事面での高度の機密情報を共有できるようにするためには、日本の高度の機密に属する情報管理体制の『穴』を塞ぐ必要があり、そのために今回の特定秘密保護法案の成立が必要なのだと力説しました。

台頭する中国と強まる自己主張に対し、安倍首相は日本をより強力なアメリカの軍事同盟国とすべく、取り組みを続けてきたのです。

しかし特定秘密保護法案はたちまちにして、報道機関の多く、そして大学関係者など反対派に対する避雷針と化しました。
これら法案に反対する人々は、一握りの高級官僚によって国家機密が何であるかが裁量され、さらには現在でさえ情報の開示については後ろ向きな日本政府が、国民に対する情報提供を増々避けるようになる事態を恐れているのです。

数多くの人々が今回の法律が施行されれば、政府による権力の濫用が常態化してしまうと警告しています。
さらには昭和初期、軍部の台頭とともに報道に対して厳しい制限を課す法律が次々と施行され、結果的には真実を知らされないまま国民が第二次世界大戦へと引きずり込まれて行った時代を例に挙げ、今回の法律の危険性に警鐘を鳴らす人々もいます。
「近代史が証明するように、日本には言論の自由に関する根強い伝統というものはありません。」
こう語るのは上智大学の言論関係の法律を専門とする田島泰彦教授です。

秘密保護法07
「官僚が国家機密の定義を自由に決められるようになってしまえば、日本は中国や北朝鮮などの独裁国家と、本質的に何ら変わらない国になってしまいます。」

この法案に対する批判の中で最も大きなものは、特定秘密の定義があまりにも漠然としすぎていて、どのようにも解釈可能であるという点です。
現在の条文では各省庁のトップが外交、防衛、あるいはテロ対策などの国家の政策に関わる重要な情報であると定義してしまえば、公開不可の国家機密として一般国民には知らされないことになります。

さらにはこれらの秘密を漏らしたことで有罪の判決を受ければ、日本の現行の法律の規定よりはるかに長い、最高で10年の懲役刑を科せられる可能性すらあるのです。

この特定秘密法案は、国家安全保障会議の創設案とともに、11月の最終週に国会での審議が始まりました。
日本国内の政治評論家は、この二つの法案は安倍首相の宿念の政治課題である、防衛目的の軍備しか許さない現行憲法の改正、そして日本が完全な形での近代的軍隊の保有を実現するための第一歩になるだろうと語っています。

安倍首相が党首を務める自民党の代弁者として、長年日本の保守政界のために世論作りを行ってきた読売新聞は、10月に次のような社説を掲載しました。
「国家の安全保障戦略のための指令塔として新たに設立される国家安全保障会議が、正常に機能するために必要な法的枠組みが、今回の特定秘密保護法なのである。」

秘密保護法02
安倍首相は衆議院、参議院でともに与党で過半数の議席を占めていることを武器に、決められない政治に終止符を打つと宣言し、衆議院における特定秘密保護法案の審議を3週間で切り上げ、直ちに参議院に送りました。

〈 後篇に続く 〉

http://www.nytimes.com/2013/11/29/world/asia/secrecy-bill-could-distance-japan-from-its-postwar-pacifism
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『近代史が証明 : 日本には言論の自由に関する根強い伝統はない』という部分にドキッとしました。
確かにそうなんだ、戦後生まれの私は現行憲法が与えてくれた平和で自由な社会を当たり前だと思っている部分がありました。
しかし日本史を紐解けば、それ以前の日本には新聞条例、讒謗律、治安維持法など、国民の自由な言論を圧伏させようとばかりしていたことが解ります。
もっともっと危機感を持つべきだった、そう悔やまれてなりません。

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ほんとうの「今」を知りたくて、ニューヨークタイムズ、アメリカCNN、NBC、ガーディアン、ドイツ国際放送などのニュースを1日一本選んで翻訳・掲載しています。 趣味はゴルフ、絵を描くこと、クラシック音楽、Jazz、Rock&Pops、司馬遼太郎と山本周五郎と歴史書など。 @idonochawanという名前でツィートしてます。
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