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汚染水だけが、この国が解決すべき重大な問題ではない
汚染された土をどこに持ち込めばいいのか、どこで処分するのか、全く見通しは立っていない
かつてののどかで幸せな暮らし、それはもう遠い過去の記憶でしかない
ポーラ・ハンコックス / アメリカCNNニュース 9月4日
「お聞きの放送は福島FM局です。」
調子の良いおしゃべりは聴いている人間を、今とは別の世界にいざないます。
そう、2011年3月以前、確かにこの場所に存在していたはずの世界…
私たちの乗った車は、かつての住民がもはや『我が家』と呼ぶ事を許されなくなってしまった無人の家屋を通り過ぎていきます。
屋根はブルーシートで覆われ、風で飛ばされないよう砂袋で抑えてあります。
付近の家屋の著しい損傷は2年半前に襲った巨大地震と津波の被害によるものですが、直後に福島第一原発の事故が発生したために、どの家もほとんど修理が出来ずにいます。
私たちがいる場所は、福島第一原発から20km圏内の避難区域です。
ここは2011年3月、津波が3基の原子炉の冷却システムを使い物にならなくし、そのために発生したメルトダウン、そして大量の放射性物質の放出後、一切人が住めない場所になってしまいました。
住民は立ち入り禁止区域外なら、日中に限り自宅に戻る事を許されています。
24時間毎日ここで暮らせば、多量の放射線被ばくをしてしまう事は避けられず、今のところ帰宅の見込みは立っていません。
私たちはここに来る途中、道路脇で除染を行う作業員のグループを何組も見かけました。
彼らは2011年の夏以来、土地の表面の汚染された部分を削り取ったり、汚染された草や樹木の葉などをなどをすべて取り除くという、苦痛に満ちた途方も無い作業を行っているのです。
日本政府によればこの作業を行うため、この会計年度だけで1,500億円という巨額の予算が費やされる事になります。
来る日も来る日も、8,000人に上る作業員がこの除染作業を続けているのです。
1年以上前この作業に従事していた人々は、全身をすっぽりと防護服で覆い、放射線からその身を守らなければなりませんでした。
今作業している人々は、ゴム手袋をはめてはいるものの、その他は日本のどこででも見かける市販のマスクをしているだけです。それだけ放射線量が下がったという事でしょうか。
しかし、放射能に汚染された土が詰まった何千何万という大きな黒い袋が、農地や空き地などに列をなして整然と並べられています。
これらの汚染された土をどこに持ち込めばいいのか、どこで処分するのか、見通しは全く立っていません。
破壊された福島第一原発手は汚染水の保管問題が世界的にも注視される事態となっていますが、この国が解決すべき問題が他にもある事を痛感させられる光景です。
避難区域の外側では日中道路をひっきりなしに車が行き交い、この場所に見えない脅威が存在する事実をともすれば忘れてしまいます。
しかしかつてこの地で暮らしていた住民にとって、放射能に汚染された土が大量に並べられているこの場所に、いつになったら戻れるのか、あるいはそもそもここに戻る事が可能なのかどうか、住民たちの将来はまったく見通せないままなのです。
http://edition.cnn.com/2013/09/05/world/asia/japan-fukushima-hancocks/index.html?iref=allsearch
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避難を余儀なくされた方々にとって、この2年半という月日はどのような意味を持っていたのでしょうか?
未来を全く見通せないまま、苦痛の上に苦痛を積み重ねていった、人間として最もやりきれない月日では無かったでしょうか?
これと比較すると福島第一原発から約90キロの場所にあり、東日本大震災のまさに中心であった宮城県中部~北部では『復興』は少しずつ形になってきました。
その過程で住民から不満が噴出するのが、
「この先どうなるのか?」
という点です。
少しずつではあっても、前進が見られる地区でも未来を見通すことは切実な問題です。
まして福島は…
私などが想像できない程、つらい思いをされているはずなのです。
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【 凍土壁計画は理想的手段とは言い難い 】
アメリカ原子力工学専門家マイクル・シュナイダー / アメリカCNNニュース 9月3日
http://www.cnn.com/video/data/2.0/video/world/2013/09/03/japan-fukushima-freeze-plan-schneider-intv.cnn.html
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【これから日本が取り組まなければならない巨大な課題】
日本の首相が世界に向け「安全を保証」したわずか数日後、専門家は福島第一原発の汚染水は「重大な脅威」であることを確認
ドミニク・ケーン / アルジャジーラ 9月13日
日本の安倍晋三首相は世界に向け、2020年オリンピック開催が決まった東京に福島第一原発は制御下にあり、脅威とはならないと保証しました。
しかし、その直後、現場で事故収束作業を行っている東京電力の担当者が、福島第一原発は制御されてはいないと語りました。
さらに現場で安全を取り戻すため汚染水問題のアドバイザーに就任した元アメリカ原子力規制委員会の専門家は、
「私見を述べればこれから何十年と続けなければならない事故収束・廃炉作業においては、現在の汚染水処理方法では安定した状態を長期間保つ事は不能です。」
と語り、福島第一原発では危険な状態が続いていると警告しました。
http://www.aljazeera.com/video/asia-pacific/2013/09/2013913143117961599.html
オリンピック開催には、巨額の財政赤字をさらに悪化させることを正当化する意味合いもある
「福島の現状については、全く問題がない!」日本の首相
田淵ひろ子 / ニューヨークタイムズ 9月7日
東京のこの日の夜明けは午前5時18分でした。
その1分後、待ちに待った知らせが届きました。
2020年夏のオリンピック開催地に、東京が選ばれたのです。
国際オリンピック委員会(IOC)が東京を選んだ背景には、何よりその『安全性』があったものと見られています。
国際オリンピック委員会の投票では東京は他の2都市、イスタンブールとマドリッドに大差をつけましたが、2度目の開催となる東京は準備の面においても他に先んじていました。
まだ大半の日人々が眠りについたままの東京でしたが、スマートフォンによる情報が飛び交い、大競技場で決定を待ちわびていた2,000人の東京の人々は歓声を挙げ、飛び上がって喜びました。
「私たちの東京で2020年のオリンピック開催が決まり、本当に幸せです。」
退職者の東京都民、富山康生氏が取材にこう答えました。
「私は現在79歳ですが、おかげで生きる張り合いが出てきました。長生きをして、この目で東京オリンピックを見たいと思います。東京には必要なものが何でもそろっていますし、何より安全です。」
オリンピック開催地に東京が選ばれたことは、2年半前、東北地方太平洋岸を襲った東日本大震災と福島第一原発事故の後遺症に疲弊する日本にとって、とりわけ首都圏で暮らす1,300万人の人々にとっては歓迎すべき復興への起爆剤になります。
しかしオリンピック開催が決定したことで、東京から約240キロの場所にある福島第一原発の事故収束・廃炉作業と汚染状況について、これから世界からより厳しい視線が注がれることになるでしょう。
最近明らかになった汚染水問題の深刻な状況は、オリンピック開催地の選考投票に、暗い影を落としました。
2020年のオリンピック開催は、日本の国家予算にも重圧をかけることになります。
日本では高齢者の人口増加が続いていますが、そのための年金や医療費の増加などが原因となり、政府の公的債務は60兆円規模の日本経済の倍の金額にまで膨らんでいます。
東京の組織委員会は、会場の造営や交通網の整備などを含むオリンピック開催費用として、1兆円の予算を計上しました。
「2020年のオリンピックは、日本人の心につきまとって離れない東日本大震災と福島第一原発の事故後の、国内の活性化に意義があります。」
ポートランド州立大学の日本研究センターの所長のケン・ルオッフ氏がこう語り、さらに次のように付け加えました。
「しかし一方では、オリンピック開催には、福島第一原発の事故による汚染の恐怖から国民の心を一時的にせよ解放することに加え、巨額の財政赤字をさらに悪化させる、その正当化の意味合いもあると考えられます。」
しかし、オリンピックは最良のタイミングで日本の首都にやって来たとは言えない部分もあります。
東京は1964年の夏のオリンピックを開催しました。
この時は第二次世界大戦(太平洋戦争)による破壊から立ち直り、未来に向け歩み出した東京の姿を世界にアピールしました。
その後の半世紀、日本は世界の経済大国に発展しましたが、その終盤、日本は『失われた20年』と呼ばれる停滞の時代の中で喘ぎ続けることになりました。
しかし2012年末、安倍晋三首相が権力の座に座り、経済を始動させるために大胆な金融改革、そして政権改造を行い、日本は経済停滞から徐々に抜け出し、先進7か国(G7)の中で最速の経済回復を果たしたのです。
安倍首相は最後の投票が行われるタイミングでブエノスアイレスに飛びましたが、2020年の大会誘致を実現したことにより、その地位はさらに安定することが予想されます。
野村証券のアナリストは、2020年のオリンピック開催は日本経済に、約1兆4,000億円の経済効果をもたらすだろうと予測しました。
しかしこの数字は日本のその時々の国内総生産に対するパーセンテージで比較すると、1964年東京オリンピック、1972年札幌冬季オリンピック、1998年長野オリンピック、そのいずれと比較しても低い数字になっています。
IOCにおけるプレゼンテーションで、東京開催の一つの目玉となったのが、「コンパクト・オリンピック」構想です。
1964年の東京オリンピック会場を再利用するなどして、新たな出費を抑制しようという考えですが、このことは同時に経済しかし、オリンピック開催に効果をも小さくする結果をもたらします。
しかし、オリンピック開催には数多くのメリットがあります。
野村証券の田村弘道氏とそのチームは今回明らかにした報告書の中で、広範囲にわたるプラスの効果をもたらし、国際社会における東京の地位を旧に復する効果も期待でき、その事は結局日本経済の回復に貢献すると述べています。
オリンピック開催決定の知らせは各方面において祝賀ムードを煽り、消費マインドを上向かせ、消費拡大を現実のものとし、これまでに失われてきた日本の景気回復のためのパズルの部品を再び手にすることが出来るようになる、この報告書はそう述べています。
2020年までに「もし政府の成長戦略が予定通りに進めば、利益は誰にとってでも明らかなものとなるはずです。」
この報告書には、そう綴られています。
「1964年の東京オリンピックが、日本が近代的先進国家の仲間入りを果たしたことを証明したとしたら、2020年の大会は日本の回復の実現を世界に示すことになるでしょう。」
しかし、誰もが祝賀気分に浸っているわけではありません。
「福島の深刻な状況が、無視され続けています。」
福島で被災し、現在は東京都内で避難生活を続け、東京新聞のウェブサイトでも紹介されたことがある専業主婦、37歳の二瓶和子さんがこう語りました。
「私たちのことなど、どうでもよいのです。」
ブエノスアイレスの国際オリンピック協会の会場で、安倍首相は福島の問題を軽視しているとも受け取れる発言を行いました。
彼は日本政府は福島第一原発について、包括的な解決策をすでに手中にしていると語ったのです。
「肝心なことは、福島の現状については全く問題がないということです。」
安倍首相はこう語りました。
「新聞の見出しなどでは無く、現実を見てください。」
こうした発言に対しても、日本のニュースメディアはほとんど無反応でした。
どころか、日本の若いニュースキャスターは、東京のスタジオでこうまくしたてたのです。
「東京中、至る所でこれから英会話能力が必要になりますよ。」
「英語を勉強しましょう!あなたも、英語で道を尋ねられるかもしれませんよ。」
( 取材協力 : 井上まり子、上野ひさ子 )
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2020年東京オリンピック開催の『経済効果』について、半ば興奮するように「何兆円!」と報じるニュースを聞くたび、私は徒労感に襲われます。
「福島第一原発の事故収束・廃炉費用は40兆円~50兆円だろう」
と思うのです。
そして日本の首相がブエノスアイレスで、福島についてどう語ったか?
その内容が明らかになればなるほど、この人が率いる政府が
「これから政府が責任を持って対応にあたる…」
と発言していることについて、恐怖にも似た感情を憶えるのです。
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連休のため変則になりますが、明日17日火曜日を休載日とさせていただきます。
よろしくお願いいたします。
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【 まるで間欠泉、噴き出す下水 : アメリカ、コロラド州 】
アメリカNBCニュース 9月14日
(掲載されている写真は、クリックすれば大きな画像をご覧いただけます)
コロラド州マニトウ・スプリングスのウォルド・キャニオン地区では、夏の山林火災の現場を嵐が襲い、大量の雨を降らせました。
キャノン通りでは下水が間欠泉のようにわき上がり、人々を驚かせました。(写真上)
デンバー・ポストによると、マニトウ・スプリングスのすべての道路は洪水の危険のため、木曜日にすべて閉鎖されました。
洪水の被害はここ数年山火事が続いた地区でひどくなっています。
コロラド州グリーリー、サウスプラット川の氾濫により、駐車場の車がすべて水没してしまった。9月14日。(写真下・以下同じ)
洪水で破壊されてしまった橋、コロラド州リヨン。9月13日。
友人宅の家財の持ち出しを手伝う地元の在住ベン・ロッドマン、コロラド州リヨン。9月13日。
自宅の戸口で座り込んでしまった男性、コロラド州リヨン。9月13日。
自宅の被害の様子を覗き込む9歳のケイシー・ロイ。、コロラド州ノース・ボールダー。9月12日。
ノース・ボールダー公園の中の「激流」。9月12日。
ノース・ボールダー公園の芝生の上「のはずの」場所に浮かぶニック・トア、15歳。9月12日。
世界各国からの提案はすべて却下、そして泥沼にはまり込んだ日本
「何としても事故を解決する」その覚悟も無く、保身を先行させ、愚策の山を築いた東京電力
ジュリアン・ライオール / ドイチェ・べレ(ドイツ国際放送) 9月4日
事態の展開を受け原子力発電の専門家は、日本政府は介入するならもっと早い段階で介入すべきであったと批判しています。
「事故は30ヶ月も前に起きたのです。そして東京電力は政府に対し、充分に対処し得ると返答したのでしょうが、それはあまりに楽観的過ぎました。あるいは、これから何をしなければならなくなるのか、理解できていなかったのかもしれません。」
アメリカ、メリーランド大学のトム・スニッチ教授が、ドイチェ・べレの取材にこう答えました。
「不幸なことに、政府は彼らを信じてしまったのです。」
「世界中の原子力関係機関や企業から様々提案がありましたが、そのほとんどが実施計画から除外されてしまったのです。」
スニッチ教授がこう続けました。
「福島の問題を解決するための具体策は存在します。ただし、いずれもが技術的に高度なものであり、いずれも高度な技術を持つ世界各国の専門機関、あるいは企業が直接行うべきものです。」
「問題は、日本政府がこれらの解決手段を実行する、そのための政治決断ができないということなのです。」
同教授によると日本の政府関係者は、アメリカの企業には福島の事故収束・廃炉作業を行うためのふさわしい技術は無いと主張しています。
彼らは、米国企業はかつては核兵器工場であった施設での作業経験、それしかないと主張しているのです。
しかしスニッチ教授はこうした主張は、アメリカとイギリスの原子力関連機関・企業を締め出すための、言いがかりに過ぎないと語りました。
「利用される場所に関わりなく、原子力工学の中身は世界共通なのです。」
▽非現実的願望を抱かせることは、かえって残酷である
スニッチ教授は、日本政府は苦しくはあっても正しい決断をしなければならないと語ります。
日本の国民、そして世界中の関係者に対し、ありのままを伝えなければなりません。
日本政府は漁業関係者に対し、汚染水が福島第一原発の内港に留まるなどと言う事はあり得ない、外洋に向け拡散していくことは避けられないと伝えるべきである。
さらには20キロ圏内の立ち入り禁止区域の住民の帰還は、半永久的に実現できないと正直につげるべきである。
スニッチ教授がこう付け加えました。
「福島第一原発の周辺で生活していた人々は、事故から2年半も過ぎれば、2011年3月10日以前と変わらない生活ができるようになる、そうした誤った見解を信じ込まされてきました。
それはあまりに非現実的な戯言であり、現実になるはずの無いものです。」
さらには複数の専門家が、1,533本の使用済み核燃料を取り出していったいどこに保管するのか、これまでに大量に使用された放射線防護服、防護マスク、ゴム手袋やその他の装備が放射性物質によって汚染され、作りだされた大量の『核廃棄物』をどう処分するのか、一刻も早く議論を始める必要があると指摘しています。
スニッチ教授は次のような見解を持っています。
日本が始めから事故の解決だけに専念していれば、結局は役立たずだったアレバ社のフィルターなど購入することは無かっただろう。
購入して間もなく問題が見つかった、62種類の放射性物質を取り除くとのうたい文句のALPS(アルプス – 放射性物質除去設備)などという、高価な機械を購入することも無かっただろう。
品質がバラバラのボルト止めの、結局は多数の汚染水漏れ事故を起こした汚染水タンクを、何百基も急造することも無かっただろう。
「人生において危機に直面した時、人はまず最初に問題を抱えてしまったことを素直に認め、謙虚になる必要があります。」
スニッチ教授が最後にこう語りました。
「そうして初めて、本当に役に立つ援助の手が差し伸べられることになるのです。」
〈 完 〉
http://www.dw.de/can-tokyo-stop-the-fukushima-crisis/a-17066352
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日本の首相がブエノスアイレスでついた、あの『大ウソ』が頭を離れません。
あの発言で、福島を始めどれ程多くの人々の心が傷ついたか…
介入規模はあまりに中途半端であり、そのタイミングはあまりに遅すぎた
福島第一原発ではいかなる有効な対策も打てなかった、と同時にあらゆる場所で状況をコントロールできなかった
ジュリアン・ライオール / ドイチェ・べレ(ドイツ国際放送) 9月4日
福島第一原発の事故収束・廃炉作業現場で次々と新たな問題が発生し、汚染水の漏出を止められなくなっている状況を受け、日本政府が直接その対応にあたることになりました。
しかし、その介入規模はあまりに中途半端であり、そのタイミングはあまりに遅すぎた。
早くもそうした批判が巻き起こっています。
日本政府は、3月11日に襲った巨大地震と巨大津波がきっかけとなり、3基の原子炉がメルトダウンを引き起こした福島第一原発で、溶け落ちた核燃料を冷却する過程で出来る汚染水の浄化と、汚染水の漏出を止める対策に4,710億円の国家予算を投入すると発表しました。
それと同時に安倍晋三首相は、東京電力によって今日まで行われてきた取り組みが、大局的見地から見て適切なものでは無かった事を認めました。
「これまで行われてきたその場その場の対応に代わって、私たちは福島第一原発の汚染水問題を根本的に解決するための対策を今日、まとめました。」
安倍首相は9月3日火曜日東京で、原子力災害対策本部のメンバーにこのように話しました。
「汚染水問題を含め、事故収束・廃炉作業を成し遂げることが出来るかどうか、今や福島第一原発の現場に世界の視線が集まっています。」
政府発表によれば、事故発生以来、毎日300トンの放射能汚染水が海洋中に漏出し続けています。
さらには東京電力は8月下旬、高濃度の汚染水を貯蔵している約1,000基のタンクの内の1基から、気づかないうちに300トンが漏れ出していたことを認めました。
▽ 今日まで繰り返された失敗
いちばん最近、問題となっているのは、9月2日月曜日に原子力規制委員会が公表した、福島第一原発内の放射線量が一番高いところで最大20%急激に上昇している、という問題です。
汚染水が漏れ出したタンクの近くでは、放射線量が人間を数時間で死亡させてしまうレベルである2,200ミリシーベルトに達しました。
汚染水漏れに対する日本政府の対策の鍵となるのは、原子炉建屋の周囲にドリルで30メートルの穴を開けて冷却剤を注入し、地面を零下40度に保ちます。
原子炉建屋周辺の土地を凍結させてしまうことにより、地下水の流れ込み汚染されてしまう事を防ぎ、そのまま迂回させて海に流し込むようにするのです。
さらには新しい水の浄化装置を設置し、2011年3月以降、貯まりに貯まった数万トンの汚染水の処理を進めることになっています。
この新たな試みは、これまでこれ程の規模で実施されたことは無く、仮に可能になったとして、期待通りの効果が得られるかどうか、その点にも懸念が残ります。
「この凍土策が現在最もふさわしい対策であるかどうか、私には判断がつきかねますが、これを機会に日本政府が福島第一原発の事故収束・廃炉作業の中心に座る、その取り掛かりを意味するものだと考えられます。」
世界最大の政治リスク専門コンサルティング会社として知られるユーラシアグループの奥村準氏がこう語りました。
「このことは結局、東京電力がこれまで福島第一原発において、いかなる有効な対策も打つことが出来なかった、と同時に施設内のいかなる場所においても、状況をコントロールしていることを日本の人々に対して約束できなかった。その事実が決定づけられた、そうとしか思えません。」
〈後篇に続く〉
http://www.dw.de/can-tokyo-stop-the-fukushima-crisis/a-17066352
メルトダウンした核燃料の取り出し、実際には状況不明で、計画すら立てられない
ロボット工学の進歩も追いつかない程複雑な、福島第一原発の事故現場
チェルノブイリで実施された『石棺』を行っても、福島第一原発の汚染拡大は防げない
日本の原子力産業界の印象の悪化、そればかりを恐れる日本の原子力行政
マーティン・ファクラー / ニューヨークタイムズ 9月3日
茂木氏が大臣を務める経済産業省は、福島第一原発の事故収束・廃炉作業を所管しています。
冷却剤を用い、1~4号機の原子炉建屋の地下を凍結させて防護壁を作り、地下水の流れ込みを防ぐ対策も同省が担当することになります。
しかしこの凍土対策にも批判の声があがっています。
ひとつは広大な地面を凍結させ続けるためには莫大な電力を消費しますが、福島第一原発の施設内には間に合わせの送電システムしか存在せず、これまでもたびたび停電などのトラブルを引き起こしてきました。
もう一点はこの凍土対策は、もともとこれ程の規模で行う事を想定していない技術であり、しかも一時的に用いられる手法だという事です。
その手法を事故収束・廃炉作業に、これから数十年の月日を必要とする福島第一原発の現場に使っても大丈夫なのかどうか、その点の検証はなされていません。
しかし、業界の専門家はこの凍土策は大規模な建設事業で、軟弱な地盤を安定される際、用いられることが多い技術だと主張します。
アメリカではボストンのビッグディッグ・ハイウェイ・プロジェクトの際、実際にこの技術が用いられました。
原子力技術の専門家は、破壊された原子炉の炉心から溶け落ちた核燃料を取り出す、日本政府の長期にわたる計画についても、疑問を呈しています。
この作業が成功すれば、現在起きている汚染の大きな原因のひとつを取り除くことが可能です。
そもそも爆発とメルトダウンが起きた現場から、溶け落ちた核燃料だけを取り出すことが技術的に可能なのかどうか、その点を疑問視している専門家もいます。
原子炉容器には損傷が無かったスリーマイル島の事故の時ですら、リモコン操作で核燃料の核燃料を取り出す作業は、技術的に非常に複雑で気骨の折れる作業だったのです。
その当時と比べれば、ロボット技術は大きな進歩を遂げたかもしれませんが、福島第一原発の事故現場はその発展を凌ぐほどに複雑なものなのです。
スリーマイル島の事故では溶け落ちた核燃料は、ろうそくから溶け落ちたロウのような状態で原子炉容器の底に溜まっていました。
しかし今回は配管が破裂するなどして、溶けだした核燃料は格納容器の底を突き破り、建物の下の地中にまで到達している可能性がある、複数の専門家がそのように警告しています。
一方で現在福島県沿岸における放射性物質の脅威は、2011年3月の事故発生当時と比較すれば遥かに少ないものでしか無い、現在の危機についてそれ程重大なものではないとの見解を明らかにする科学者もいます。
「現在も汚染水の漏出は続いていますが、その規模は事故発生当時と比較すればそれ程大規模なものではありません。」
福島第一原発の事故発生当初から海洋汚染の問題に取り組んできた、アメリカのウッズホール海洋科学財団のケン.O.ビュッセラー博士がこう語りました。
「ただしその影響は、きわめて長期間に及ぶでしょう。」
今回の汚染水問題で最大のダメージを被ったのは日本政府だったかもしれません。
なぜなら元来政府発表に対する日本国民の信頼は薄かった上、福島第一原発の事故により原子力発電の安全性に関する疑惑も浮上しており、そこへ持ってきて今回の汚染水騒ぎは火に油を注ぐ結果となってしまいました。
こうした観点に立てば、福島第一原発で行われてきた作業は、日本の原子力ムラをそのまま温存するために、日本国民に対し、以下の事を信じ込ませようとしました。
すなわち、
現在のやり方で福島第一原発の事故収束・廃炉を前進させることは可能である
そして現在の体制で、避難・移住を余儀なくされた被災者に対し充分な補償を行うことも可能である
したがって、福島第一原発以外の原子力発電所を廃炉にする必要などは無い
「これこそまさに責任を回避するための巧妙な戦術です。」
法政大学で社会科学を専攻し、2,000名の会員からなる日本学術会議において、復興のための検証作業のリーダーを務める船橋晴俊教授がこう語りました。
「現在生きている人々は、福島第一原発の周辺には一生住むことはできない、そのことを認めてしまったら、ありとあらゆる種類の質問、疑問が殺到することになってしまいます。」
船橋教授や他の専門家などは、他の選択肢、すなわち旧ソビエト連邦がチェルノブイリにおいて採用したコンクリートで原子力発電全体を覆い密閉してしまい、周辺地区を少なくとも4半世紀の間、立ち入り禁止とする方策なども検討する必要があると指摘しています。
日本の当局者は、大量の地下水が原子炉建屋の下に流れ込んでいる状況を考えれば、原子炉をコンクリートで覆ってしまうだけでは、汚染の拡大を防ぐことはできないと語っています。
さらには福島県内の広大な面積の土地を居住、使用ともに不可能にしてしまう事は、狭い国土に多数の人間が暮らす日本においては採用しがたい選択だと語っています。
そして次の点についても懸念を持っているのです。
ソ連が採用した石棺方式を福島で採用すれば、これまでの事故収束・廃炉作業が失敗に終わったことを公式に認めることになり、福島第一原発の事故で原子力発電に対し慎重になっている国民に対し、日本の原子力産業に対する信頼を決定的に失わせ、敵意すら抱かせることになる、と。
「福島第一原発で石棺方式を実施してしまったら、もう誰も他の原子力発電所が稼働している様子など見たく無い、そう考えるようになってしまうでしょう。」
日本政府の原子力規制委員会に関する諮問機関である、原子力委員会委員長の近藤駿介氏がこう語りました。
福島第一原発の状況は一層悪くなっているのではないか?
その事に対する懸念は、避難を強いられた楢葉町の旧住民の人々にとっては隠しようのない事実です。
楢葉町の除染作業は他の市町村よりも進んでおり、2014年度内には完了する予定になっています。
しかし楢葉町当局が7,600人の旧町民に聞き取り調査を行ったところ、福島第一原発が現在のような不安定な状態が続いていることを理由に、期間を拒否する住民がほとんどでした。
「福島第一原発では、3日おきに新たな問題が発生しているように感じられます。」
楢葉町町長の松本幸英氏がこう語りました
楢葉町役場は現在、半径20kmの立ち入り禁止区域のすぐ外側にある、いわき市の大学の会館内に仮住まいしています。
「こうした状態が続けば続くほど、東京電力と日本政府に対し、この町の人々の心はどんどん離れていく一方なのです。」
〈 完 〉
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「福島の状況は完全にコントロールされている」
あの『ウソ』を、世界の人々はどう受け止めたでしょうか?
「板子一枚下は地獄」、本来は海洋航海の危険なことを指した言葉です。
今回ご紹介したこの記事をお読みいただければ、福島第一原発の実際の状況はまさにそれだということが解ります。
福島第一原発の現場では、破壊されたそれぞれの原子炉をマスキングするような建造物が出来ていることが、ニューヨークタイムズのこの画像から解ります。
ちなみに図の中の赤い線は『凍土対策』を実施するライン、黒い線は海洋漏出を防ぐための防護壁を設けるラインです。
『壁一枚向こうは地獄』、それが福島第一原発の現実なのではないでしょうか。
その現実を作り出した日本の原子力ムラは、世界の世論、そして市民感情をはっきり敵に回したのです。
それがこの2年半の現実ではないでしょうか。
原子力ムラ『標準仕様』の事故処理作業を続け、取り返しのつかないところまで追いつめられてしまった日本
反故にされ続ける、周辺住民への日本政府の公約
それぞれの段階において東京電力が行った対策は、次々と新たな問題を作り出しただけ
マーティン・ファクラー / ニューヨークタイムズ 9月3日
事故を引き起こした福島第一原発を取り囲むように存在する、農業を基幹産業とする小規模なコミュニティ福島県楢葉町、立ち入り禁止区域内のこの場所では防護マスクにゴム手袋をした人々が、日本政府の約束 – いつの日か83,000人の住民の帰還を可能にするという約束を現実のものとすべく、地面の表土を削り取る懸命の作業を行っています。
けれども雨が降る度、ごつごつした岩肌を伝い、汚染物質を含んだ水が滝のようになって流れこみ、除染を終えたはずの地面に浸み込んでいくのです。
そしてこの場所の近く、相変わらず深刻な状況が続く福島第一原発で、周辺諸国が懸念を深めていく中、これ以上の環境破壊を食い止めるための作業に取り掛かるべく、数千人の作業員と何台ものクレーンが準備態勢を整えようとしていました。
原子炉建屋が破壊された原子炉4号機の核燃料プールから、使用済み核燃料を取り出す作業です。
日本政府は9月3日火曜日、地下水が原子炉建屋の地下に流れ込み高濃度の汚染水が作り出されないようにするため、地中に凍土壁を作り上げる対策に約500億円の政府資金を投入することを公表しました。
そして日本政府が東京電力に代わり、福島第一原発の事故収束・廃炉作業の管理監督を行うことになりました。
2011年、3基の原子炉がメルトダウンした福島第一原子力発電所の事故は、チェルノブイリ以来最悪のものであるという評価は、すでに定着しました。
これから始まる取り組みは、その危険性、そして複雑さゆえに、費用的にも高額なものとならざるを得ませんが、これまでいくつものトラブルが繰り返された事により、現在行われている事故収束・廃炉作業がさらに高額なものとなり、時間的にも大きく遅れる事態が避けられなくなってきました。
その結果、原子力発電に関与する複数の政府機関が事故の初期、国民に対して行った『福島第一原発の跡地を元通りにして返す』という約束は反故にされ、大量の汚染水が漏れ出し、それが海洋にまで達する事態となってしまいました。
事故発生からすでに2年半が経つ中、福島第一原発の周辺の環境破壊と海洋汚染には一向に改善の兆しが無く、日本政府と東京電力にはこの問題に対処できるだけの専門知識、そして収束させる能力があるのかどうか、多くの専門家が疑問を抱き始めています。
東京電力は事故の初期、事故を制御下に置くための対策の実施に失敗、日本は原子力発電分野の危機対応能力の弱さを露呈した上、難しい問題については、解決に向けた対策の実施をすべて先送りしたという批判がこれまで相次ぎました。
日本政府が新たに提案した対策も、結局はこれまでの失敗の二の舞になる可能性がある、そうした指摘と批判が繰り返されています。
「明らかに日本は、受け入れ難い状況を認めようとしない姿勢に終止しています。」
福島第一原発の事故を受け昨年組織された、国会事故調査委員会の議長を務めた黒川清医学博士がこのように語りました。
「福島第一原発の敷地内では汚染水が積み上がり、敷地の外では汚染された廃物が積み上がっている、そうした状況が続いています。解決不能の問題はすべて将来に先送りする、巨大な八百長試合が行われているのです。」
福島第一原発の状況は7月に汚染水が海洋に直接漏れ出していることが明らかになってから、急激に悪化して行きました。
8月中旬には東京電力が、人間の体内に入った場合、骨に蓄積しやすい性質を持つ放射性ストロンチウムを含む高濃度の汚染水が、貯蔵タンクから漏れ、海洋に流れ込んだことを公表しました。
メルトダウンにより溶け落ちた核燃料が再び過熱しないよう、3基の原子炉内に毎日絶え間なく水が送り込まれ、その結果大量の汚染水が作り出されている他、地下水が建屋の地下、汚染のひどい場所に流れ込むことによっても汚染水が作り出されていますが、その流れ込みを食い止めるまでには短くて数か月、長ければ数年という時間が必要と考えられています。
それと同時に、汚染された農地や土地の大規模な除染作業の遅れ、そして思わしくない結果が明らかになるにつれ、日本政府の公約の実現能力に対する信頼は徐々に蝕ばまれ、原子力発電に対する市民の信頼は失われていく一方です。
政府当局、そして除染作業が有効だと信じる人々は、問題の巨大さを考えれば、困難が伴うのは当然のことだと語っています。
しかし、一見部分的に見えている様々なトラブルは、実は現在の事故収束・廃炉作業の根本部分が間違っている、その事を証明するものだとする批判が高まる一方です。
そして日本政府が資金を拠出して、直接事故対応にあたるとの発表は、すぐ後に実施される2020年夏のオリンピック開催地を決める投票に合わせ、同委員会の視線を意識して行われた、そう批判する意見もあります。
以下のような批判があります。
日本の原子力産業界、すなわち原子力ムラは、排他的であり、しかも利益をグループ内で独占しようという傾向が強いことで知られていましたが、福島第一原発の事故を起こしたことで一般社会や外部からの批判が一気に高まる可能性がありました。
そこで中央官庁の官僚たちはこれまでもそうしてきたように、この批判をかわし、原子力ムラを守ろうと動いたのです。
その結果が今日まで行われてきた事故収束・廃炉作業であり、事業規模と予算ばかりが膨らんで結果が出ない、悪い意味での『公共事業』に他ならなかったのです。
しかし日本の原子力行政に対する最大の批判は、完全に制御下に置くどころか、結局事故収束・廃炉作業を軌道に乗せることが出来なかった東京電力に、福島第一原発の現場を任せ切ってしまったことに集中しています。
それぞれの段階において東京電力が行った対策は、次々と新たな問題を作り出しただけのようにも見受けられます。
今回の汚染水漏れのトラブルは、430,000トンに及ぶ高濃度汚染水を貯蔵するため急造された、何百というタンクのひとつで発生しました。
この汚染水は一日に400トンのペースで増え続けています。
4日になると、日本の原子力規制委員会は汚染水の貯蔵タンクが並んでいる場所で、放射線量が非常に高くなっている個所がある事を公表しました。
新たな汚染水漏れが原因である可能性があります。
さらには東京電力の事故収束・廃炉作業を監督してきた政府の委員会には、原子力ムラの内部関係者が含まれており、その上原子力発電を推進する立場の経済産業省の茂木大臣が管理する立場にある事に対しても、批判の声が上がっています。
同時に、もしこれまでの事故収束・廃炉作業を、国内の原子力ムラ以外の企業、そして経験のある外国企業にも門戸を広げていれば、事故収束作業を前に進め、その場限りではない、長期に安全を確保できたはずだと指摘しています。
結局は日本政府が直接乗り出さなければならない事態に陥り、茂木大臣はこれまでの状況を見る限り、従来の手法では満足な結果が得られなかったことを認めざるを得ませんでした。
「汚染水問題への対応を東京電力に任せてきたが、結局はモグラ叩きゲームに終わってしまった。」
2日月曜日、記者の質問に対し、茂木大臣がこう返答しました。
〈 後篇に続く 〉
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今日から前・後編に分けて、ニューヨークタイムズのマーティン・ファクラー氏の長編の記事をご紹介します。
通常なら3回に分けて掲載するほどの文字量ですが、緊張感が途切れる事の無いよう、2回に分けてご紹介します。
私から付け足すような事は何もありません。
大切な事はすべて語られている、そう思います。
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【 週6日、一日10時間砲弾づくりをする少年 – シリア 】
アメリカNBCニュース 9月8日
(写真をクリックすれば、大きな画像をご覧いただけます)
10歳の少年イッサは、アレッポ市内にある自由シリア軍の兵器工場で、1日10時間、毎週金曜日を除く週6日、父親と一緒に働いています。
原子力発電所再稼働を急ぐ自民党政権下、福島に専念できない日本の原子力行政
エコノミスト 8月24日
(以下の写真をクリックして、大きな画像をご覧ください)
[ニューヨークタイムズ http://www.nytimes.com/interactive/2013/09/03/world/asia/controlling-contamination-in-fukushima.html?ref=asia&_r=1& からの画像]
事故収束・廃炉作業を行う上で困難な状況が続く福島第一原発、8月下旬、また新たな大きな問題が持ち上がりました。
8月21日日本の原子力規制委員会は、福島第一原発で起きている高濃度の放射能汚染水の漏出トラブルについて、最高でレベル7まである国際原子力事象評価尺度(INES)の暫定評価をレベル3に引き上げました。
これまで何度かアメリカの専門家から支援の申し出がありましたが、日本は飽くまで日本独力での対応にこだわってきました。
しかし事ここに至り、東京電力ですら海外の専門家の支援を受け入れる姿勢を見せています。
東京電力は現在、国内においても強烈な批判にさらされています。
汚染水問題が悪化する一方の現実を前に、原子力規制委員会の田中委員長は東京電力には
「まったく、危機感がありません。」
と不満を露わにしました。
別の原子力規制委員会の委員の一人は、東京電力が公表しているデータが信ずるに足るべきものなのかどうか、疑問を呈しています。
高濃度の汚染水が海に漏れ出しているのではないかという指摘を受け続けていたにもかかわらず、東京電力はその事実を何影にもわたって否定し続けてきましたが、8月になってやっとその事実だけは認めました。
東京電力の発表を受け、中国と韓国は事態に対する懸念を表明しました。
3基の原子炉から溶け落ちた核燃料は、それ自体温度が上がらないよう送り込まれる冷却水と、原子炉建屋の付近に水脈がある地下水、その両方を汚染し続け、莫大な量の汚染水が毎日作りだされています。
今年に入って地下貯蔵施設からの汚染水漏れが明らかになると、東京電力は現在1,000基の規模になっている急造の鋼鉄製の貯蔵タンクの設置を急がなければならなくなりました。
その結果、このうちのいくつかのタンクの継ぎ目、ゴムでシールドしている部分から汚染水が漏出している事実が確認されたのです。
直近に明らかになった300トンに上る高濃度汚染水の漏出は、原子力規制委員会をして緊急事態であると認識させるに至りました。
さらに多くのタンクが危険な状態にある、専門家はそう指摘しています。
東京電力が財政難に陥っていることが、事態を一層悪化させた可能性があります。
同社は福島第一原発周辺で暮らしていて、現在は避難を余儀なくさせられている人々への賠償、そして代替の発電手段の燃料代が嵩み、急増した汚染水タンクに水位計を取りつけるという、最も基本的な対策を施す余裕すらありませんでした。
東京電力の作業員はタンクの上に立ち、水量をメモしておくだけでした。
原子力規制委員会は8月下旬、東京電力に対し直ちに汚染水タンクに水位計を取り付けるよう命じました。
「福島第一原発の現場に必要なのは、ステンレス鋼で密閉された貯蔵タンクです。しかしそれを設備するためにはある程度の資金と時間が必要になります。」
シェフィールド大学の放射性廃棄物管理が専門のニール・ハイアット教授がこう語りました。
日本で福島第一原発の状況が軽視されている背景には、これまで原子力政策を推進してきた自民党が政権の座にあり、現在停止中の複数の原子力発電所をできるだけ早く再稼働させるべく、積極的に動いているという事実があります。
日本では現在、2基を除くすべての原子炉が停止しています。
エネルギー資源の輸入量の増大は日本経済と東京電力の財政状態の、両方を圧迫することになります。
原子力規制委員会は東京電力が行っている汚染水の保管状況の検証よりも、国内の原子炉を再稼働させるための新たな安全基準づくりに忙殺されていました。
しかし原子力発電の安全性に対する一般市民の不信感は大きく、再稼働に踏み切るようなことになれば、国内の混乱は一層大きなものになるでしょう。
福島で次々に明らかになる制御不能の事態は、日本のエネルギー問題をより一層困難な状態に追い込むことになりました。
http://www.economist.com/news/asia/21584054-fukushima-nightmare-lingers-no-end-sight
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私は個人的には賛成でも反対でもありませんが、2020年のオリンピックの東京開催が決定しました。
決まった以上は、日本の人々、特に福島の人々の生活の向上に少しでも貢献できるよう、「利用」出来れば良いと考えています。
ただし、東京さえ安全なら…その考え方だけは許されないはずです。
そして福島第一原発の現実から目を逸らさせる、そのための手段にさせないこと。
今回、首相を始め、日本は福島の「安定と制御」を国際社会に公約しました。
その事を現実に出来るのか、これからは国際社会からこれまで以上に厳しい視線が注がれる事になります。
トライアスロンの選手たちを、汚染された海で泳がせる訳にはいかないはず。
もうこれ以上、『余計な事』をしている余裕は無いはずです。
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【 2020年東京オリンピックと福島第一原発 】
アメリカNBCニュース 9月8日
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2020年夏のオリンピック開催地はどこになったのでしょうか?
最終選考会に残ったのはイスタンブール、マドリッド、そして東京でした。
そして勝者は…
IOCロゲ会長「第32回2020年夏のオリンピック開催地は、東京に決定しました。」
マドリッドは第一回の投票で敗退、残るイスタンブールと東京が決選投票に臨みました。
安倍首相「日本は世界で最も安全な都市のひとつです。」
日本は破壊された福島第一原発の新たな問題の発生により、自らを弁護しなければならない事態に追い込まれていました。
安倍首相「福島第一原発の状況は制御下に置かれています、誓ってこう申し上げます。」
しかし実際のところは、日本が財政的に豊かであり、政治的にも安定酸している事が、IOCにとっての最終敵な選択要因であったでしょう。
冬ののオリンピック開催地のソチがあるロシアでは最近デモが頻発、そして2016年夏の大会が開催されるリオデジャネイロではオリンピック関連施設建設の遅れに加え、社会的騒乱が深刻さを増してきています。
そして東京のライバル、イスタンブールでも今年始め、大規模なデモが発生した事に加え、遠くないシリアでは凄惨な内戦が続いています。
特派員「半年前なら、2020年オリンピック開催地がどこになるか予想せよと言われたら、私は躊躇無くイスタンブールと答えたでしょう。しかし、その後深刻な騒乱が発生、ドーピング疑惑も引き起こされ、自滅の道を辿ってしまいました。
東京は日本を代表する都市です。こうなったからには、覚悟を決めて東京へ行くしかありません。」
「おめでとう、東京!」
今回東京が選ばれた事で、日本にはやっと明るい材料がもたらされました。
前回東京でオリンピックが開催されたのは1964年の事でした。
原子力発電の「本当のコスト」を積算すると、従来型石炭火力以外のすべての発電手段より高額になる
従来型石炭火力発電と原子力発電は、淘汰されるべき運命にあり、大規模送電網もまた、その後を追うことになる
マーク・ビットマン / ニューヨークタイムズ 8月23日
発電コストについては発電手段によって、あるいは様々な条件によって多様に変化します。
そしてどのような発電手段であっても反対する人々が必ずいますが、実際には様々な発電手段が稼働しています。
しかしそれらの中で形式的にではあっても環境を守る、あるいは周辺住民の健康を守るための費用を、発電コストに計上している例はきわめて稀です。
こうした外部費用を加算した場合、原子力発電を行うための費用は、石炭を除く他のすべての発電手段よりも高額になります(気候変動問題に対処するため、真っ先に従来型の石炭火力発電がやり玉にあがる理由もここにあります)。
私たちに気候変動を阻止するという強い意志があったならば、従来型の石炭火力発電はこの20年間で全廃させられていたはずです。
そして次に続くのは原子力発電であったはずなのです。
しかし、地球温暖化や環境にとって脅威となる2つの発電手段、従来型の石炭火力発電と原子力発電に代わって、真の再生可能エネルギーがエネルギー需要に対する供給体制を万全なものにするまでの間、新たな原子力発電所の建設が行われなくなる可能性があります。
そうなれば、今度こそ本質的な方向転換が可能になるでしょう。
原子力発電の支持者たちは、原子力発電は従来型の石炭火力発電よりも優れた発電手段であり、これまで通り手厚い補助金を支給すべきだと主張しています。
従来型の石炭火力に代わるものが原子力発電しかないというのであれば、その主張にも正当性はあります。
しかし現実はそうではありません。
天然ガス(開発途上ですが、改良の余地は大いにあります)と風力発電は、エネルギー効率も含め、すべての面において原子力発電よりも安価な発電手段です。
太陽光発電に至っては、手厚い補助金を差し引いた後の原子力発電のコストをすら凌駕する経済性をすでに実現しています。
いくらかの研究結果により、再生可能エネルギーは現在の技術水準で、2050年にこの地球上で必要になる電力の80%を供給可能だとしています。
しかも発電部門における温室効果ガスの削減も、80%行うことが出来るのです。
地球温暖化防止策、そのために古くて危険な発電手段を復活させる理由にはなりません。
進歩が続く再生可能エネルギーをこそ選ぶべきです。
その方がより現実的な選択です。
しかし再生可能エネルギーは、まだまだ現実には利用されていません。
水力発電を除く再生可能エネルギーの昨年度の全発電手段に占める割合は5%に過ぎませんでした。
しかしその成長速度は目覚ましく、太陽光発電と風力発電による発電量はこの5年間で4倍に増えました。
アメリカの連邦エネルギー規制委員会の議長は今週、今後太陽光発電システムは2年ごとに倍に増えていくだろうとの予測を公表しました。
メインフレーム・コンピュータがパソコンに取って代わられたように、郵政事業が電子メールに取って代わられたように、発電会社は太陽光発電システムに今の地位を奪われてしまう事を何より恐れているのです。
技術の進歩が古くて危険な発電手段 – 従来型石炭火力発電と原子力発電を追いつめています。
従来型石炭火力発電と原子力発電は、淘汰されるべき運命にあります。
そして大規模送電網もまた、その後を追うことになるでしょう。
それは地球上に生きる私たちにとって、歓迎すべき事態なのです。
※マーク・ビットマン(Mark Bittman)は、オピニオン誌のコラムニストであり、タイムズ誌を代表する食に関するコラムニストです。
彼のコラム『Minimalist(ミニマリスト、ミニマリズム支持者)』は、タイム誌で13年間連載が続いています。
〈 完 〉
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この記事の執筆者が『食』を専門とするコラムニストであるという点に着目して良いと思います。
エネルギー問題や環境問題の分野だけでなく、様々な分野の人々がそれぞれの立場から原子力発電の非なることを訴えていく。
こうした動きの広がりに期待をしたいと思います。
地球温暖化が心配だからと言って、地球を終わりに向かわせる発電手段の復活を許すのはかえって危険
信じられないことに、原子力発電を始めて50年経つのに、未だ核廃棄物の有効な処理方法は確立されていない
マーク・ビットマン / ニューヨークタイムズ 8月23日
ここにきてその現実が明らかになって来た地球温暖化に対する懸念から、原子力発電に関する新たな議論が活発化しようとしています。
ジェームズE.ハンセンによって公開された原子力発電を擁護する論文、その名も『パンドラの約束』というものです。
ハンセン氏は地球温暖化に対して警鐘を鳴らし続けてきたことでその名をはせましたが、一方で原子力産業界の擁護者であり、原子力発電の推進者として筆頭に挙げて良い人物です。
しかし地球温暖化を防ぐために、原子力発電を推進せよという彼の理論を受け入れる前に、確認しておかなければならない大切なことが3つほどあります。
原子力発電は安全でクリーンな発電手段でしょうか?
原子力発電は効率的な発電手段でしょうか?
もっと良い選択肢は無いのでしょうか?
答えは順に、ノー、ノーそしてイエスです。
未だ明らかではない気候変動の自然災害の発生を防ぐために、それと同等あるいはそれ以上に危険な選択をするようなことは避けなければなりません。
懸命の努力、そして国際的な協力体制が敷かれているにもかかわらず、福島第一原子力発電所の事故収束作業は解決に向かうどころか、その目処すら立たず、今も危険な状況が続いています。
事故の発生を見て、ドイツはすでに原子力発電の全廃を決定しました。
原子力発電を支持・推進する人々は新たな、より安全な技術の実現を約束しています。
しかしその主張には、あいまいで不明瞭な点に対する疑問が次から次へと湧き上がってきます。
原子力発電に『全くの安全』などはあり得ません。
そして様々な危険の可能性は、決して減少などしていないのです。
果たしてこの問題を見過ごして良いのでしょうか?
そしてあまり触れられる事の無い話題ですが、ウラニウムの採掘について回る危険を減らすことには成功しているのでしょうか?
ただでさえ水資源の確保に苦労しているアメリカ西部では、莫大な量の水がウラン採掘の際に消費されていますが、これまでその消費状況が管理されたことは無く、なぜそれほど大量に水を消費するのか、検証されたこともありません。
これまで数千か所に上るウラン鉱脈が廃棄されましたが、きちんとした安全処理がなされているのかどうか、未だに確認できない状況です。
そしてもし危険を除去するためのクリーン・アップ作業が必要ということになれば、その費用を支払うのは税金を納めている一般市民なのです。
原子力産業界ではありません。
そして使用済み核燃料の問題があります。
使用済み核燃料は使用前の核燃料と危険性において比較になりません。
その場所にあるというだけで、きわめて高い濃度の放射線を放出することになります。
信じられないことに、原子力発電が開始されてから50年の歳月がたつのに、未だに核廃棄物の有効な処理方法すら確立されてはいないのです。
アメリカ合衆国のどの政府機関よりも原子力産業界寄りの原子力規制委員会の、つぎはぎだらけの放射性核廃棄物廃棄の処理計画は、昨年上訴裁判所によって拒絶されてしまいました。
さらには、オバマ政権はその選挙公約通り、ネバダ州のユッカ・マウンテンに建設する予定だった核廃棄物処分場の建設計画を撤廃しました。
原子力発電の経済性もまた、悲惨な状況になってきました。
原子力発電所の廃炉が次々と決定しています。
そして発電能力も低下を続けています。
電力会社はこれからも原子力発電によって、利益を上げ続けることは可能かもしれません。
しかしそれは国から巨額の補助金が支出されているからに他ならないのです。
この補償により、保険の経費は限られた金額に抑えられています。
そして債務の補償は巨額に上っています。
破たんしたソリンドラ社が得ていた補償金額は5億ドルでしたが、これとは対照的に、新たに原子力発電所を建設した場合、政府は最大80億ドルまでの債務保証を引き受けることになっています。
費用(原価)回収と投資利益率も数十年間、政府によって保証を受けることになっています。
そして一部の電力会社に至っては、原子力発電所の建設開始から実際の稼働まで、地方自治体から補償を受け取り、それを株主に還元することすら認められているのです。
この特権は、最終的に原子力発電所が稼働しない場合でも、認められているのです。
もしあなたがオーナーなら、原子力発電所が本当にウマ味のある存在であることを実感することでしょう。
これまでの実績を見る限り、発電のためにかかった経費の倍の補助金を受け取ることが出来るからです。
〈 後篇に続く 〉
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このところ、異常気象による自然災害が続いたせいか、改めて地球温暖化の問題がクローズアップされているようです。
そして気になるのは『この機に乗じて』原子力発電の『復権』を図ろうという動きが出てくるだろう、という事です。
現にツイッターでは『日本はこの地球温暖化の中、原子力発電という手段がありながら、化石燃料をバンバン燃やして発電している困った国』という書き込みを見かけました。
何と恥知らずな、というよりは無知なのかもしれませんが、原子力発電によって生み出される使用済み核燃料は長期間にわたって冷却を続けなければならず、その際に大量の二酸化炭素を排出することになります。
第一地球温暖化については、発電手段などより地球人口の増加、都市化の進行、森林の消失などの方が大きく関わっているでしょう。
しかもこの記事にもありますが、原子力発電には他の発電手段には無い補助金がてんこ盛りで、その分『見かけの経費』だけが安く感じられるよう『仕組まれた』料金体系を有しています。
そして何と言っても福島の現状があります。
160,000人を超える人々が故郷に帰れなくなってしまう災害、それ程にひどい災害が地球温暖化によって生まれているのでしょうか?
そもそも、火力発電を原子力発電に切り替えてきたこの40年間にこそ、地球温暖化は進行したのではありませんか?
貧弱な内容の汚染水漏れの点検体制、その記録すら適切に行われていなかった
正確な情報が無いため、国際原子力機関(IAEA)の国際原子力事象評価尺度による判断すら出来ない
東京電力の対応は、常に後手に回り、場当たり的で、危機意識も欠如
AP通信 / ワシントン・ポスト 8月28日
日本の原子力規制委員会は津波がきっかけとなり、巨大事故を引き起こした福島第一原発で高濃度の放射能汚染水がタンクから漏れた事故について、日本の原子力規制委員会は8月28日、国際原子力事象評価尺度(INES)の暫定評価を、これまでのレベル1『逸脱』からレベル3『重大な異常事象』に引き上げました。
そして東京電力について、事故の初期に問題の存在を把握していなかったとして厳しく非難しました。
東京電力に対する原子力規制委員会の批判は、一日当たり約300トンの汚染水の漏出が少なくとも1か月半以上続いていることを8月19日時点で確認した、そのことを明らかにした翌日に行われました。
27日火曜日の夜に行われた原子力規制委員会の職員と専門家との会合の席上、東京電力は現場を巡回していた監視員が、7月上旬、汚染水漏れがあった貯蔵タンク周辺での放射線量が上昇していることを確認していたことを明らかにしました。
しかし、汚染水漏れが発見されるまで、東京電力は放射線量上昇の原因を一切突き止めようとはしなかった疑いがもたれています。
そして28日水曜日、原子力規制委員会は東京電力に対し、汚染水漏出のトラブルを決して見落とすことの無いよう、監視体制と巡回手順を改善するよう求めたにもかかわらず、東京電力がこの指示を繰り返し無視したと批判しました。
原子力規制委員会は東京電力が当初報告した場所よりも浅い場所に地下水が存在している事実を取り上げ、東京電力にはこの問題に関する専門知識が欠けていると同時に、そこに潜む危険性をも軽視していると批判しました。
「東京電力への指示は、書面であると口頭であるとを問わず、これまで守られたことがありません。」
原子力規制委員会の更田豊志(ふけた・とよし)委員は28日水曜日、定例の会議の席上こう述べました。
最近になって東京電力は、1,000基の高濃度の汚染水を貯蔵しているタンクの監視について、たった2人の担当者が線量計を携行して1日2回、2時間だけの見回りしか行っていなかったことを認めました。
しかもその測定結果については、適切に記録されていないことが明らかになったのです。
これについて東京電力は監視要員を現在の8名から、50名体制に変更することを明らかにしました。
今週始め、茂木経済産業大臣は、日本政府が福島第一原発の事故収束・廃炉作業を引き継ぎ、汚染水対策を継続的に実行するため政府資金を投入するつもりであることを表明しました。
日本の原子力規制委員会は貯蔵タンクからの汚染水漏れについて、国際原子力事象評価尺度(INES)の暫定評価を、当初レベル1『逸脱』としていました。
しかし原子力規制委員会は実情を見てレベル3『重大な異常事象』にまで引き上げることを検討、国際原子力機関(IAEA)と協議した後、レベルの引き上げに踏み切りました。
IAEAの評価それ自体は国際社会に対する情報提供のための判断基準であって、レベルの引き上げによって東京電力や日本政府の事故収束作業に対し、何か具体的な影響を及ぼすわけではありません。
2011年に発生した福島第一原発の事故そのものは、1986年に発生したチェルノブイリ事故とともに、レベル7の評価を与えられました。
「大切なことは、レベルの数値そのものではなく、問題の規模に関する基本的情報をきちんと提供することなのです。」
原子力規制委員会の会議の後、田中俊一委員長がこう語りました。
「私たちは福島第一原発がひどい状況にあるという、数々の報告書を見せられてきました。しかしそこには真実は書かれていなかったのです。」
田中委員長は、さらに大きな深刻な問題が、現在福島第一原発で進行中だと語りました。
高濃度の汚染水が、大量に海に流れ込んでいる問題です。
しかしどれだけの汚染水が海洋中に流れ込んでいるか、その汚染の程度はどうなのか、そして海や海洋資源にどのような影響を与えているか、これらの問題に関する正確な情報は無く、国際原子力機関(IAEA)の国際原子力事象評価尺度による判断すら出来ない状況にあります。
田中委員長はこの問題に対する東京電力の対応は、常に後手に回り、場当たり的で、危機意識も欠如していると批判しました。
東京電力は最新の汚染水漏れの事故について、その原因をまだ特定できていません。
「当惑させられています。」
田中委員長がこう語りました。
「福島第一原発の状態を安定させるには時間がかかるかもしれませんが、事故収束・廃炉作業を何としても軌道に乗せる必要があります。」
東京電力は漏出のあったタンクの修復作業を行いましたが、雨水用の側溝を経由して、汚染水が海まで到達した可能性は否定できないと語っています。
汚染水の大部分はそのまま土壌中に浸み込んだものと見られていますが、そのことにより、発電所の敷地の地下を流れる地下水が一層汚染されてしまった新たな懸念が生じています。
東京電力は福島第一原発の敷地に流れ込んで汚染された地下水を貯蔵するため、数百基のタンクを建造しましたが、汚染された地下水の一部は一日当たり数百トンという規模で海に流れ込んでいるものと見られています。
福島第一原発では2011年3月に発生した巨大地震と津波が引き金となって、3基の原子炉でメルトダウンが発生しました。
この際に溶け落ちた核燃料の冷却を続けるため、東京電力は毎日数トンの冷却水を送り込んでいますが、このためにできる汚染水をどう保管し続けるのか、困難な問題が残されたままになっているのです。
http://www.washingtonpost.com/world/asia_pacific/japanese-regulator-upgrades-severity-of-radioactive-water-leaks-at-stricken-nuclear-plant/2013/08/28/479f8e02-0f99-11e3-a2b3-5e107edf9897_story.html
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明日5日(木)は休載日とさせていただきます。
ご迷惑をおかけいたしますが、よろしくお願いします。
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【 100万人のこどもたち 】
アメリカNBCニュース 8月27日
(写真をクリックすれば、大きな画像をご覧いただけます)
ここにいる子供たちは、もう何週間も父親と会っていません。
そしてたくさんの母親たちが、亡くなってしまった子供たちのために涙にくれています。
ここにいる子供たちの夢は、もういなくなってしまった同じ年頃の仲間たちと、もう一度一緒に元気に遊ぶ事です。
いなくなった子供たちは、もう少しで国境を越えることが出来る、そんな場所で死んでいきました。
100万人のシリア難民の子供たちが故郷を追われ、難民キャンプでの暮らしを強いられています。
この6週間こどもたちが暮らしているのは、14万人のシリア人が暮らすヨルダンのザータリ難民キャンプです。
【 希望無き日々 】
アメリカNBCニュース 9月3日
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