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【 なぜ今、ガソリン価格は値上がりしているのですか?】

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アメリカ国内では今後低下する予想、しかし日本は…

スティーヴ・ハーグリーヴス / アメリカCNNニュース / AOLエナジー 2月6日

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夏のドライヴシーズンが近づいているわけではありません。そう、未だ春にすらなっていません。しかし2月の次には3月がやって来るように、ガソリン価格が決まっていたかのように値上がりを始めています。

米国自動車協会(AAA)によると、現在1ガロンのレギュラーガソリン価格は3.53ドルです(1リットル当たり0.93ドル=約86円)です。
わずか1週間の間に17セント(1リットル当たり約4円)上昇し、先月と比較しても23セント(1リットル当たり約6円)高くなっています。

ロサンゼルス市内では、ドライバーはすでに1ガロンにつき5ドル以上を支払わされています。
「ショックですね、何が起きているのか解りませんけど。 」
ロサンゼルス中心部のガソリンスタンドで満タンの給油をしていたダイアナ・グリフィッツがこう話してくれました。
「たった1週間前は1ガロン4ドル以下の支払いで済んでいたのに。どうしてこんなに値上がりしたのか、説明してほしいわ。」

解りました、ちゃんとご説明しましょう。

専門家によれば、値上がりの理由は2つあります。
原油価格の上昇、そして石油精製施設の閉鎖です。

原油価格はこの2カ月間で10%と、大幅に上昇しました。
エネルギー情報局によるとアメリカの場合、ガソリン価格のうち、68%が原油価格になります。
他は8%が生成価格、輸送・販売費用が11%、ガソリン税が13%です。
※日本は税率では無く、1リットル当たり本則税率(本来の税率)と同額の暫定税率併せて53円80銭が課税されている。現在の小売価格を1リットル当たり150円とすると、税率は約36%になる。

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エネルギー問題の専門家は、アメリカの景気回復基調に沿う形で、一部地域でガソリン価格が上昇傾向にあると語っています。
住宅販売実績はこの5年間の中で最も良くなっており、失業率の改善も着実に進んでいます。
一方、中国経済も成長率が回復する傾向にあります。

OPECによる減産もね価格上昇の一因となっています。
産油各国はこの数か月、他の地域における増産(主に水圧破砕による原油生産がブームになっている米国)と需要の低迷を受け、一日当たり100バレルの減産を行っているものと見られています。

そして今、石油精製の現場では多くの精製所が休業しているか、または冬季用ガソリンから夏季用ガソリンへ生産の切り替えを行うため、メンテナンスの最中なのです。
夏季用ガソリンは高い気温の中でも、大気汚染の原因物質を作り出さないように精製されます。
先月ニュージャージー州最大の石油精製施設であるヘス製油所が閉鎖されました。理由は資金の枯渇です。

「ガソリンの供給量が不足しているわけではありません。」
ニューヨークのジェフリーズ・ベイク社のエネルギー・ブローカー、アンドリュー・ルボウがこう語りました。
「備蓄量が増加傾向にあるため、石油精製に対する需要減少するのではないかという見方がある事はありますが…」

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投資家は景気回復によりガソリンの需要が今後増えるとの見方から、エネルギー産業への投資を進めています。
商品先物取引委員会(CFTC)によれば、昨年の12月初旬、投資ファンドがけん引役となり原油先物取引価格が11.7%上昇しました。
先週には値上がり率は15%にまで上昇しました。

原油価格情報センターのアナリスト、トム・クロザ氏によれば、原油価格の値上がりは毎春の事だと言います。
ただし、値上がりするタイミングは年ごとに早くなっていると語りました。

車を愛する人にとってはありがたいことに、今年のガソリン価格は昨年ほどは高くはならないだろうと見られています。

クロザ氏は、アメリカで起きている水圧破砕法によるガソリンと天然ガスの増産のおかげで、ガソリン価格の値上がりは1ガロン当たり3.50ドルと3.90ドルの間のどこかで止まるはずだと語りました。
昨年の最高値は1ガロンにつき3.94ドルで、4月上旬に記録しました。

年間の平均価格は、もっと低くなると見られています。
クロザ氏は1ガロンにつき平均3.25ドルから3.50ドルの間に落ち着くのではないかと見ています。
昨年の平均価格3.60ドルと比べるとかなりの安値となる予想です。
昨年一年間のアメリカ人のガソリン消費額は、史上最高の4,790億ドルを記録しました。


http://money.cnn.com/2013/02/06/news/economy/gas-prices/index.html?iid=HP_LN
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日本は今、円安の進行に政界・財界・マスコミが揃ってバンザイ三唱状態ですが、世界の動きを見て「大丈夫かな?」と一抹の不安を感じています。

昨年、アメリカは夏の間の荒天により穀物生産が落ち込み、世界の食料品価格がこの春以降値上がりする、という予想がすでに昨年明らかにされています(【食糧争奪戦争への懸念・もう始まってしまった食糧危機】[米国CBS] http://kobajun.biz/?p=4661 、【2013年・必ずやってくる食糧危機】「2012年アメリカ・ロシア・オーストラリアの干ばつが引き金に」[米国CNN] http://kobajun.biz/?p=4481 ほか)。

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値上がりが懸念されるのは、小麦、植物油に加え、穀物を飼料にする家畜類などで、日本の家計も直撃を受ける懸念があります。
そこに円安傾向が加われば、値上がりはいわゆる「算術級数的」なものでは無く、「幾何級数的」なものになる恐れがあります。

一方で、企業側は賃金の上昇、雇用の拡大に踏み切るには早すぎるという見方が大勢を占めています。

そしてアベノミクス。
とにかく企業の業績さえ良くすれば、いずれその恩恵が一般家庭にも及ぶ「だろう」という考え方の経済政策。

結果、一般生活者の世帯は

昨年の異常気象による食料品価格の値上がり × 円高による食料品その他の値上がり × 消費税増税

という計算式の下での生活を強いられることになる危険性があります。
そのしわ寄せを最も強く受けるのが、『経済的弱者』といわれる方々です。
私個人としては、万歳三唱に加わるのはしばらく見合わせたいと思います。

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写真集(写真をクリックすれば、大きな画像をご覧いただけます)

【ファーッ!】

アメリカNBCニュース 2月14日

オーストラリアで開催された女子プロゴルフツアー、キャンベラ・オープンでカンガルーの群れが走り去るのを待つ、カーリー・ウェッブ。
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【 決着 】

アメリカNBCニュース 2月12日

年一回イギリスの国会議事堂前で開催される上院議員、下院議員、ジャーナリスト・チームによるパンケーキレース。
厚生施設のための募金を目的に開催されるこのレース、16回目を迎えた今年は下院議員チームが勝利した。
BR.Politian
【 青天の霹靂 】

アメリカNBCニュース 2月11日
ローマ法王ベネディクト16世の退位が突然告げられ、誰もが驚いたその日の夜、ヴァチカンの聖ピエトロ大聖堂に雷が落ちた瞬間。
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【 発掘 】

アメリカNBCニュース 2月9日

雪にうずもれてしまったマイカーを掘り出す女性。この日、メイン州ポートランドでは新記録となる80センチの積雪を観測した。 021802
【 到着 】

アメリカNBCニュース 1月30日

大統領専用ヘリの着陸を見守るメイトランドハイスクールの生徒と職員。フロリダ州メイトランド、1月29日。
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【 原・発・襲・撃!】狙われる発電所

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所要時間 約 11分

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銃規制と発電事業:発電所を襲えば、社会が大混乱に陥るという「認識」の広がり

ピーター・ガーデット / AOLエナジー 1月16日

アメリカ、クリスタル・リバー原子力発電所の警備員

アメリカ、クリスタル・リバー原子力発電所の警備員


半年前、ルイジアナ州にあるバレーロ製油所の前で保安官2名が射殺され、別の2名が負傷しました。
6年前にはサウジアラビアにある世界最大の製油所が襲われ、駆けつけた警官隊と施設の門を巡って銃撃戦になり、車一台が爆発・炎上しましたが、テロリストによる攻撃は失敗に終わり施設そのものには被害はありませんでした。

銃はエネルギー事業にとっては、本来の性能以上の脅威となります。
事故を起こせば目も当てられない地獄を作り出しますが、襲撃に対しては最も弱い施設、それがエネルギー施設です。
アメリカでは度重なる発砲による無差別殺人により、公共の場で銃規制に関する議論が戦わされる事態となっていますが、社会の基盤を形成するエネルギー施設を巡る保安問題と銃規制問題は不可分の関係にあり、ここで今一度この問題を正面に据え、エネルギー関連施設が持っている潜在的な危険性にどう対処すれば良いのか、じっくり考えてみたいと思います。

ある意味、アメリカのこの10年は、エネルギー関連施設の安全確保に関する問題については平和なものでした。この点に留意する必要がありそうです。
メキシコ湾のマコンドの原油流出は操作ミスによる事故であり、ハリケーン・サンディによる大規模停電は天災、いずれもテロリストには関わりがありません。
しかし問題を起こした施設に一般人が近づくのは、極めて容易なのです。

2012年8月にルイジアナ州の銃撃が起きたミシシッピ川沿いの製油所に沿って車を走らせると、ひとつの問題に気がつきます。
いずれの施設にもゲートはありますが、それ以外の場所ではどんなに施設に接近してみても、一度も見とがめられることはありませんでした。

▽ 問題は以前からあったのですが…

エネルギー関連施設を守る事、そしてどれほどの保安体制を布けば間に合うのか、それはこれからも大切な問題ですが、別に新たに持ち上がった訳では無いのです。
そしてこの問題はエネルギー産業に関連する多くのものがそうであるように、一般消費者にとっては目にとまりにくいものなのです。

火災を起こしたまま放置された、ナイジェリアの『無許可』原油採掘現場。2012年12月6日。

火災を起こしたまま放置された、ナイジェリアの『無許可』原油採掘現場。2012年12月6日。


アフリカのナイジェリアから南米コロンビアに到る各油田施設は、主に当地の政情不安定など問題から、度々武装攻撃を受けています。コロンビアでは原油を輸出港にある関連施設に運び込むまでの間、輸送列車には完全武装の警備員が乗り込む決まりになっています。
さらに大きな規模で考えると、ホルムズ海峡など主要エネルギールートを無事通過することは、強力なアメリカ軍の後ろ盾が無ければ出来ない事なのかもしれません。

しかしいくら武装を厳重にしても(先進国の施設では完全武装の警備員を見かけることは稀ですが)問題は残ります。
エネルギー施設の周辺住民に対する潜在的脅威です。

液化天然ガス(LNG)を取り扱う施設、そして輸送を行う場合には、万が一襲撃を受けた場合、あるいは爆発してしまった場合、辺り一面にLNGが散乱してしまった場合の科学的対処法について検証を迫られました。
シェル石油のかつての役員はAOLエナジーの取材に対し、天然ガスはその物質的特性により、爆発するよりも辺り一面に散乱する可能性の方が高く、トルコのボスポラス海峡のような幅が狭い水路ではその点は有利なのだと答えました。

9.11のテロリストによる攻撃の直後、アメリカの原子力産業界はその安全体制について再考を迫られることになりました。
墜落した飛行機が直接原子炉を直撃しても大丈夫なように、施設の強度が補強されました。
原子力発電の警備には重火器の配備が認められ、2009年には銃を持って原子力発電所に近づくことは、連邦犯罪にあたると法の改正もようやくに行われました。

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2009年3月には、原子力発電所に配置される武装警備員は10人を下回らないようにするよう求められる事になりました。
それまでの規制では5名を基準に、アメリカ原子力規制委員会がそれぞれのケースごとに必要人数を判断していたことを、議会調査局が作成した報告書が明らかにしています。

しかしこの報告書は警戒を厳重にしているにもかかわらず、大きな欠陥が潜んでいることも指摘しました。
エクセロン社のピーチボトム原子力発電所で記録されたビデオテープが、その『不適切』な安全管理を明らかにし、米国議会で厳しい批判を招きました。その結果2005年に制定された法律が強化され、原子力規制委員会の指導による戦闘訓練方式の原子力発電所内の防衛訓練が、最低でも3年に1回義務付けられることになったのです。

さらにアメリカ政府は、特定し排除するまではいかなくとも、アメリカ国内の重要エネルギー施設内に危険人物が潜んでいないかどうかの検証も行いました。
国家安全保障省は18の重要地域の1つにエネルギー関連施設を含めることにし、エネルギー部門政府情報連絡協議会を通してエネルギー省と協働して、規制の適正化に動いています。
さらに米国エネルギー規制委員会と北米電気信頼性向上機構を含む多数の組織も国家安全保障省に協力します。

▽ 今後最大の『攻撃』を受けることになるのは原子力発電所?!

アメリカ国内のエネルギー関連施設を守るための取り組みが数多く行われるようになりましたが、水圧破砕法の普及は天然ガスや石油生産量を増大させることになり、アメリカにおけるエネルギー資源の生産量が増大する可能性があります。

あらゆる地方で水圧破砕による資源開発が進むことには異論もあります。
水圧破砕による採掘がところ構わず行われ、中には乱暴なやり方をする地方、潜在的リスクに対処できずに危険な状況を作り出す場合があるかもしれません。
コンサルティング企業のコントロール・リスク社が年間報告書の中で、このような懸念がある事を明らかにしました。
「3つの流れが、将来、水圧破砕事に対する反対勢力を形作る可能性があります。採取場所の際限もない拡大、影響を受けるあらゆる分野で問題が発生すること、そしてブームに乗った勢いで節度を失いつつある水圧破砕業者に対する直接的な反発。」

多くの大規模エネルギー関連施設にとっては、エネルギー生産や送電、あるいは大規模なシステムを運営することに伴って発生せざるを得ない問題の方が、個々の施設に対するテロ攻撃などの問題よりも、より大きな脅威となる可能性があります。

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「特に原子力発電所については、その存在に反発する人々が社会のあらゆる場所に数多く存在するため、電子的攻撃も含め、新たな問題に次々遭遇することになるでしょう。」
ロッキード・マーティン社の先任部長のリッチ・マーラー氏が、AOLエナジーに掲載した記事中にこう書きました。
「国家安全保障省やメディアが指摘する通り、大規模送電網の維持管理や大規模施設の安全の確保については、これからますます難しいものになる、私たちはこの点に留意しなければなりません。」

http://energy.aol.com/2013/01/16/guns-and-the-energy-sector-risk-awareness-grows/?icid=mostPopular2
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同じAOLには、昨年アメリカ東海岸でハクケーン・サンディによる大災害が発生しましたが、その際被害を受けた一帯が、大規模発電所でつくった電気を大規模送電網で送電するシステムでなければ、すなわち地区ごとに、あるいは建物ごとに小規模な自家発電を行うシステムを採用していれば、あれほどの混乱は起きなかったであろうという記事(未翻訳)がありました。

日本の都会には細い道路にも電信柱が林立し、時には交通事故の原因になったりしていますが、規模の大きなビルディングがそれぞれ太陽光などにより自家発電を行なえば、都会の電柱の数も大分減らすことが出来るのではないでしょうか?

3.11は一方では、それまでの『認識』がひょっとしたらすでに時代遅れなのかもしれない、そう考えるきっかけとなりました。
社会の進化は、認識の転換の積み重ねにより実現してきたという事が言えるでしょう。

大規模発電所の中でも「きわめつけ」と言っていい原子力発電所を、数々のリスクを背負っても尚、維持しなければならない理由はどんどん希薄になってきているはずです。

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【 100人目の焼身自殺、故郷を追われたチベットの人々 】

アメリカNBCニュース 2月13日
(写真をクリックすれば、大きな画像をご覧いただけます)

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チベットに対する中国の支配に抗議し、焼身自殺をとげたチベット人への連帯を示すため、故国を追われた人々が13日水曜日、ネパールの首都カトマンズで徹夜の追悼集会を開催しました。

この日の早暁、一人の僧侶がカトマンズにある最も神聖とされる聖地のひとつ、ボダナート・ステューパ(巨大仏塔)で、中国政府に対する抗議のため体にガソリンをかけ焼身自殺しました。
これで中国政府に対する抗議のため自ら命を絶ったチベット人は、2009年以来100人に達しました。

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こうしてあなたは監視される…、これが権力機構による新技術

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所要時間 約 12分

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あなたが発信した位置情報により、行動パターンが解析され、リストが作られる

ライアン・ギャラガー / ザ・ガーディアン(英国) 2月10日

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特報 : レイセオン社が開発したコンピュータ用プログラム『Riot(暴動対策)』は、ソーシャルメディアの膨大な情報の中を『スパイ用グーグル』のように嗅ぎまわっているとして、市民運動家などから批判を受けています。

多国籍企業の警備会社が、ソーシャルメディアの各サイトから個人の行動記録を追跡し、将来の行動予測までを行うソフトウェアを密かに開発しました。

ガーディアンが入手した一本のビデオは、軍需企業として世界第5位の規模を持つレイセオン社が、フェイスブック、ツイッター、フォースクエアなどのウェブサイトから膨大な量の情報を集め、『驚くべきスケールで分析を行う』システムの実態を明らかにしました。

レイセオン社はこのソフトウェア『RIOT – リオット(Rapid Information Overlay Technology – 環視情報高速処理技術)』を他に販売していないと語ります(ちなみにRiotという英単語には暴動などの意味があり、Riot Police であれば機動隊警察の意味になります)。

しかし2010年、アメリカのマサチューセッツ州に本社を置く同社は、共同研究開発の一環として、サイバースペースから何兆件という情報を収集・分析できる国の治安システムを構築するため、アメリカ合衆国政府、そして他の企業に協力していたことを認めました。

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この『RIOT – リオット』の能力ですが、普段は第3者の目には触れにくい、国の治安機関や情報機関にとって価値のある情報を、人気の高いウェブサイトから法律上疑問の残る手法を使って収集することが可能です。
このような能力から、公正な市民運動に対する脅威と同時に、個人のプライバシーに関する懸念が取りざたされています。

この高度な技術を使えば、『アラブの春』の革命運動の推進役を果たしたソーシャル・ネットワークを、同時に人々の行動を監視したり、そそのかしたりする『スパイ用グーグル』として利用することが可能になります。
『RIOT – リオット』を使えば、その人との生活実態、交友関係、そして訪れた場所を地図上に表現するなどして、ちょっとした操作でその人間の一面を描き出すことが可能になるのです。

ガーディアンが入手したビデオ( http://www.guardian.co.uk/world/video/2013/feb/10/raytheon-software-tracks-online-video )の中で、レイセオン社の「主任研究員」ブライアン・アークは、ソーシャル・ネットワークに掲載されている写真には時として緯度経度情報が含まれていると語っています。
スマートフォンによって撮影された際、自動的に書き込まれたものです。

『RIOT – リオット』はこの情報を取り出し、写真を掲載した個人だけでなく、撮影した場所も特定します。

「それではわが社の一人の社員を、試しに追跡してみましょう。」
レイセオン社の社員の中から実例として選ばれた『ニック』が撮影した写真を取り出しながら、アークがこう語りました。
『RIOT – リオット』はソーシャル・ネットワーク上からたちどころに情報を集め、ニックがしばしばワシントン・ナショナル公園を訪れる習慣がある事を伝え、画面上にニックがブロンドの女性と一緒に公園で撮影した写真を表示しました。
「私たちはニックがどこに出かけるか、どのような生活習慣を持っているか、すでに把握しています。」
アークがこう語り、次のように続けました。
「今はその人の行動を予測できるようにするための開発を、行っているところです。」

さらに『RIOT – リオット』は、ツイッターでのやり取りを収集・分析し、特定個人の社会的背景や交友関係などをクモの巣状の図として表示する機能を備えています。

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さらに2,500万人が利用する、友人に現在の居場所を伝えるための携帯電話のアプリケーション、そしてフェイスブックやフォースクエアのGPS機能を使って、地理的情報を加えることが出来るようになっています。
フォースクエアを使い、特定の個人が良く訪れる場所の上位10か所をグラフで表し、訪問回数も表示することが可能です。

フォースクエアにいつも自分の居場所を投稿しているニックが、早朝午前6時ごろによくジムに通っていることを、『RIOT – リオット』がすでに把握していることをビデオは紹介しています。
「したがってもしあなたがどうしてもニックに会う必要があれば、あるいはニックが持ち歩いているノートパソコンに興味があれば、月曜日の午前6時にニックが通っているジムに行けばよいということが解るのです。」

ウェブサイトから個人に関する情報収集を行うことは、ほとんどの国で違法ではありません。
例えば昨年2月、FBIは不法行為に手を染めている個人やグループを、ソーシャルメディアの中から探し出すためのプログラムの開発への協力を要求しました。
しかし、ワシントンに本拠を置くプライバシーに関する電子情報センターのジンジャー・マッコール弁護士は、レイセオン社の技術は、個人情報を密かに取集することについて、いかなる基準も規制も無いことの問題点を浮き彫りにしていると指摘しました。

「ソーシャル・ネットワークのサイトは、利用者のどんな情報が共有されているのか、そして、それがどのように転用される可能性があるか、明確に示していない場合があります。」
マッコールがこのように語りました。
「ユーザーのほとんどは、友人だけがその内容を閲覧しているという事を前提に、投稿を行っているかもしれません。しかしそれは治安関係者によって見られる可能性、『RIOT – リオット』のようなデータ収集サービスの下で蓄積されている可能性があるのです。」
2012年の年商が250億ドル(2兆3,500億円)に達するレイセオン社は、それがまだ一度も市販されたことが無い製品の『概念を明らかに』してしまうとの理由から、今回の『RIOT – リオット』のデモンストレーション用ビデオを公開したくは無かったようです。

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レイセオン社の知的製品・情報システム部門のスポークスマン、ジャード・アダムズ氏は、ガーディアンの取材に対し、電子メールで以下のような回答を行いました。
「現在わが国の安全保障システムは、迅速に新しい内容のものに変換していくことを求められています。『RIOT – リオット』は、膨大な量の情報を目的のために利用できるようにするため、全社を挙げて、国の研究機関や他の企業などとの協力の下に、開発したものなのです。」

「その革新的なプライバシー機能は、私たちが最も気をつかって開発したものなのです。この技術は、保険証の番号、銀行の口座番号などは機密にしたまま、特定の個人情報を取り扱う事を可能にしました。」

昨年12月レイセオン社は、特定の人物が社会にとって危険な存在かどうかを判断するために、ソーシャル・ネットワークやブログ、その他の情報源からデータを集めるシステムの開発推進のため、新たに一連の特許の申請を行い、『RIOT – リオット』をプロジェクト開発の中心に据えました。

今年4月には、『RIOT – リオット』は、非公開で開催されるアメリカ政府と国の安全保障にかかわる産業界との会合において、新開発技術分野の「膨大な量のデータの解析・アルゴリズム(ある特定の問題を解いたり、課題を解決したりするための計算手順や処理手順のこと。これを図式化したものがフローチャートであり、コンピュータで処理するための具体的な手順を記述したものがプログラムである – Yahoo辞書)部門」製品として紹介されることになっています。

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アメリカ政府貿易管理局が公刊している輸出規則集によれば、このようなプログラムは「EAR99」という種類に分類されることになります。
それはすなわち、北朝鮮やイランなど一部地域を除いて世界中どこへでも、特別の許可を得ることなく販売できることを意味しています。

http://www.guardian.co.uk/world/2013/feb/10/software-tracks-social-media-defence?INTCMP=SRCH
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ツイッターを使っていた時、「あなたのツイートには位置情報が書き込まれています。悪用されないよう気をつけてください。』というメッセージをいただいて以来、私も自分の位置情報の管理には気をつかっています。
気をつけないと、スマートフォンが所有者の意図しない「情報発信」をする可能性があり、やはり便利な機械にはそれなり間管理方法が必要なようです。

でも、そうして得られた情報から行動パターンを割り出したり、人脈図まで自動生成するとは改めて驚きました。
しかし人間が機械が行う類型化によって分類され、場合によってはタグ付けもされる、という事を考えると、やはり不気味な感じは否めません。

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【 ウィンター・ワンダー・ランド!〈4〉】

アメリカNBCニュース 2012年1月25日~
(写真をクリックして、大きな画像をご覧ください)

ドイツの伝統行事のそりすべり大会で、せっかくの演出が風に飛ばされてしまったチーム。バイエルン地方のガイサッシュ村、1月27日。(写真下・以下同じ)
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パステルカラーに染まっ寒い冬の一日。ハノーバーの近くの道を走り抜ける一台の自動車。この日の気温は摂氏マイナス20度、1月25日。
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アメリカ、ミネアポリスのハリエット湖畔を歩く女性と飼い犬。1月23日。ミネソタ州。
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そりすべりを楽しむ母娘と一緒に大はしゃぎのポメラニアンとペンブロウク・ウェルシュ・コーギの雑種犬、タッカー5歳。コネチカット州マンチェスターの近く。1月7日。
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ニューヨークのサラナック湖で開催されるスノー・フェスティバルで作られる、氷の宮殿に使う氷を切り出す厚生施設の男性。
1月28日、ニューヨーク・ロチェスター地区。
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ポーランド、ワルシャワ近郊。2月7日。
Win01

【 ロック・オン!】

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その『戦術』に関わったのは、中国の誰なのか?
2月末の日米会談の効果は?

エコノミスト 2月9日

Senkaku01
誰も住んではいない5つの小さな島々、尖閣諸島あるいはダイユー諸島を巡る日本と中国の武力衝突はまだ起きないという観測の方が一般的です。
しかし、あり得ないという事ではありません。
危うく実弾射撃に発展しそうな事態が起きていたことが明らかになりました。

2月5日、日本政府は3km先から日本の海上自衛隊の駆逐艦めがけ、6日前に中国の軍艦がミサイル発射の前段階である射撃用レーダーの照射を行ったと発表しました。
「中国側による一方的な挑発行為であり、誠に遺憾です。」
日本の安倍信三首相は、2月6日の議会での演説でこのように語りました。

今回の事件は尖閣諸島から約100km離れた公海上での出来事で、中国が行う武力による威嚇を行う際の行動パターンに一致します。
1月19日にも中国は、日本の艦載ヘリコプターに向け射撃用レーダーの『ロック・オン』を行ったものと見られます。

昨年9月以降、中国は日本政府が尖閣諸島の内の3つの島を個人所有者から購入して『国有化』して以来、日本政府が主張する主権だけでなく、実効支配を行っていることにも強く反発しています。

日中力語句の艦船と航空機が尖閣諸島を巡る哨戒活動を繰り返し、互いの『侵略行為』に対してはジェット戦闘機による緊急発進を繰り返すなど、空と海で一触即発の危機が続いています。

アメリカ政府は尖閣諸島の所有権については一切公式の見解を明らかにしていませんが、日本との安全保障条約に則った行動を行う事を確約しています。
しかしこの数週間、アメリカ政府の複数の外交官がアジア地区に派遣され、日中力国に対し自制を求め、冷静になるよう説得工作を行っています。

キューバ危機

キューバ危機


アメリカは冷戦期間、現場における計算外の衝突や事故により深刻な軍事衝突などが起きないようにするため、ソビエト連邦との間に抑止のための仕組みを構築していました。
しかし日本と中国との間には、そうしたメカニズムはありません。

冷戦の間、誤算または事故に起因している重大な対立を妨げるために、アメリカとソビエト連邦はメカニズムを少なくとも確立しました。 中国と日本には、そのようなほとんどメカニズムがありません。

解しかねるのは、両国間の緊張関係が緩和する方向に向かっている、そのタイミングで1月30日の事件が発生したことです。

12月に首相に就任した安倍氏と、新たな中国の指導者習近平氏との間で、緊張緩和に向けた会談についての話し合いがすでに始まっていました。

中国はこれまで尖閣諸島周辺の哨戒活動に海軍では無く、沿岸警備機関の艦船を主に使っていました。
そして中国メディアも表向き好戦的な論調は行っていませんでした。

ところが実質的な中国共産党の機関紙であり、常々国家的主義的主張を展開してきた環球日報の2人の解説者が、今週に入ってただ一紙、1890年代、1930年代、そして1940年代の日本による『侵略行為』を忘れないよう、強い呼びかけを始めたのです。

こうした経緯から日本側は、今回の行為が政権の上層部の指示によるものでは無く、現場指揮官の判断によるものだと分析しています。

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日本の政権与党である自民党の外交問題に関するスポークスマンである河井克行氏は、今回の事件に中国政府自身も困惑しているのではないかと考えています。
「中国はまるで無法者の国家のようだという印象を受けました。」
中国の新政権が軍部を把出来ていないことが、日本政府の『最大の懸念』であると語りました。

しかし別の見解、今回の『ロック・オン』が中国政府の上層部の方針により決定したものであるとすれば、事態は予断を許さないものになります。

オーストラリアのシンクタンク、ロウィ研究所で中国の外交政策について研究を行っているリンダ・ヤコブソン氏は、中国側の対応については、尖閣諸島をめぐる今回の危機が重要な政策課題の一つである新政権、その指導者である習近平氏自身が深く関与していると主張しています。
ヤコブソン氏は今回の対応に関わった匿名の中国政府高官から、直接話を聴いたと語っています。
この高官は、習近平氏が『ロック・オン』という行為の危険性は認識はしていたものの、より強い姿勢を示すよう求める政権内部の強硬派の意見に従わざるを得なかったと語っています。

安全保障問題に関する前政権の補佐官を務めた長島昭久氏は、中国側は日米の同盟関係の強度を試しているのだと考えています。
尖閣諸島の問題については強硬な姿勢で臨むことを国政選挙で約束した安倍首相に対し、中国側が揺さぶりをかけたのだとする、別の見方もあります。

今のところ習近平氏と安倍首相との会談が行われる保証はありません。
どちらも『強い指導者』としての評価を得たいと考えている以上、互いに譲歩することは簡単ではなさそうです。

前出のヤコブソン氏は、今回の紛争解決の第一歩としては、両国がこの水域での漁業権を互いに認め合い、政府機関によるパトロールについては、日を違えて行うよう、申し合わせを行うべきだと考えています。
しかし日中両国によるこのような緊密な連携は、日本側が受け入れるためには多大な努力が必要であり、それは中国にとっても同じことです。

021303
こうした対応を行うためには、尖閣諸島の主権については問題が生じていることを、少なくとも安倍首相が暗黙にでも認める必要があり、そうなれば日本の体面に少なからず英気要することになります。
安倍首相は今月末、ワシントンを訪問することになっており、オバマ大統領が日米同盟の重要性についてあらためて確認することを、何より強く望んでいます。
それにより中国がより慎重な姿勢に転換するよう願わざるを得ません。

しかし、9月以降の中国の対応を見る限りにおいて、その可能性は極めて少ないと言わざるを得ません。

http://www.economist.com/news/asia/21571466-dangerous-dance-around-disputed-islets-becoming-ever-more-worrying-locked
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この問題に関する世界の視点は「あの小さな島々に一体何があるのか?」というのが主流のようですが、一方では中国の横車に対する目も厳しくなっています。
だからといって、中国の外交政策が国際社会の圧力によって簡単には方向転換しそうには無い事が、記事中で述べられています。
結局は中国もその外交政策の舵取りは、国内世論の行方を注視しながら、という点で日本と違いは無いようです。

「外交とは、その9割が内政問題である」と英国の政治家の誰だったかが言っていました。
国際社会は尚、頑迷で自らの非を認めない政権に対しては、倦む事無く圧力をかけて行きながら、中国国内の世論を喚起する働きかけも必要なのではないでしょうか。

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写真集【世界を驚かせた突然の退位宣言】

アメリカNBCニュース 2月11日
(写真をクリックすれば、大きな画像をご覧いただけます)

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2月28日をもって世界の12億人のローマ・カトリック信者の指導者としての地位を退くと、11日にローマ法王ベネディクト16世が発表したことに世界が驚いています。
最早重要な責務を果たすだけの力がもう残されていない、というのが退位を決断した理由です。

85歳の法王はこの日の早朝に開催された少人数での会合、「オトラントの殉教者を聖人の列に加えることのための教皇枢密会議」の席上ラテン語で発言を行っている間、この発表を行いました。

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発表のあった日の聖ピエトロ広場、2月11日、ヴァチカン(写真下)。
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若き日のベネディクト16世、ジョセフ・ラッツィンガー青年(右後ろ)、家族とともに。1951年7月、ドイツ
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【 世界に対し、武力では無く、『智』による影響力の行使を 】

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ヒラリー・クリントン前国務長官、離任演説&写真集[軌跡]

アメリカCNNニュース 1月31日
(写真をクリックすれば、大きな画像をご覧いただけます)
HC12
アメリカのヒラリー・クリントン前国務長官は、その離任にあたり次のような内容の演説を行いました。

世界情勢に影響力を持つ、その「力」の質が今、きわめて速いスピードで変化し続けています。こうした環境の変化に合わせ、アメリカ合衆国は『智』による影響力の構築を急がなければなりません。

クリントン前国務長官は1月31日木曜日、外交問題評議会(1921年に作られた、アメリカの対外政策に最も強い影響力を持つとされる非営利のシンク・タンク)において、一般聴衆に向け、以下のような演説を行いました。
アメリカ合衆国は今後、第二次世界大戦以降、外交問題に大きな影響力を行使してきたこれまでの諸機関に代わり、ソーシャル・メディアなどの新たなテクノロジーを駆使する企業家や市民活動家と協力しながら、その外交政策を展開していかなければなりません。
「私たちはギリシャ時代から続く建築概念を一変させた、フランク・ゲーリー(ディズニー・コンサート・ホールなど、きわめて斬新な建築物を世に送り出したアメリカの建築家)よりもさらに新しい概念を持った、外交政策を構築する必要があります。」
「フランク・ゲーリーの建築物は一見、奇をてらっただけのもののように見えるかもしれません。しかし実際にはきわめて合理的で、洗練されているのです。」
「アメリカはかつて、しばしば世界に比類ない影響力を行使してきました。しかし私たちは今、それをいったんバラバラにし、全く新しい材料を使い、これまでには無かった構造のものに作り変える必要があります。」

クリントン前国務長官は、アメリカ合衆国政府にはそれを成し遂げるだけの世界的立場を、すでに手にしていると指摘しました。

「そうして初めて私たちが本来持っている開放的性格、あらゆるものを革新していく力、多様性、そして何よりも人権と民主主義を大切にする国民性が、互いに補い合うこれからの国際関係の中にあって、ひときわ輝きを増すことになるでしょう。」

クリントン国務長官は2月1日付で、その職を解かれることになります。
後任はマサチューセッツ州選出のジョン・ケリー上院議員であり、2月5日火曜日に正式に就任することになります。

【 写真集 : ヒラリー・クリントンの軌跡 】

当時のリチャード・ニクソン大統領に対する弾劾を行った、ロデイーノ委員会の弁護士だった時のヒラリー・ロダム(旧姓・写真中央)。1974年、米国連邦ぎかい国会議事堂の司法委員会聴問室。(写真下・以下同じ)
HC01
アメリカCBS放送のスタジオで、照明器具が落下した際、ヒラリー・クリントンを思わずかばうビル・クリントン大統領候補。左はCBSの看板番組『60分』の当時の司会者、ドン・ヒューイット。1992年1月。
HC02
アメリカ大統領選挙でイリノイ州を制した瞬間のクリントン夫妻。1992年3月。
HC03
ニューヨークの演説会場で、聴衆の歓呼に応えるクリントン夫妻とアル・ゴア副大統領夫妻。1992年8月。
HC04
議会内のクリントン夫妻。1993年。
HC05
モニカ・ルウィンスキーとのスキャンダルについて会見を行うクリントン大統領を見つめる、ヒラリー夫人。1998年1月。
HC06
民主党大統領候補者を選出する選挙の前哨戦となる民主党大会会場で。演説を行うヒラリー・クリントン。2007年1月。
HC07
民主党大統領候補者選出のための演説会会場で。左に居るのは長女のチェルシー・クリントン(現アメリカNBCニュース特派員)。2008年1月。
HC08
民主党大統領候補者選出のため全国を回る飛行機の中で、バラク・オバマ候補と談笑するヒラリー・クリントン。2008年6月。
HC09
オサマ・ビン・ラディン殺害の瞬間を見守る、オバマ大統領、クリントン国務長官と合衆国政府の要人たち。2011年5月。
HC10

http://www.newyorker.com/online/blogs/photobooth/2013/02/climate-fury-devastation-in-the-sundarbans-bangladesh.html#ixzz2JyjZE9Ac
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【 写真集 : 土地が消えてしまった農村 】
荒廃するバングラデシュ・サンダーバンズ

エリッサ・カーティス / ザ・ニューヨーカー 2月1日
(写真をクリックして、大きな画像をご覧ください)

サンダーバンズの森の奥、シャムナガール、サトヒーラ。

サンダーバンズの森の奥、シャムナガール、サトヒーラ。


世界最大のマングローブの林があり、絶滅の危機に瀕するベンガルトラが生息することでも有名なバングラデシュのサンダーバンズを繰り返し襲った自然災害は、この地を壊滅状態に追い込んでしまいました。

インドとの国境沿いにあるバングラデシュのサンダーバンズは、2007年のサイクロン『シダー』ソシテ2009年に襲った『アイーダ』により3,500人の死亡が確認され、その倍以上の人々が行方不明となりました。

6メートルを超える高潮が一帯を水浸しにし、川や湖とベンガル湾との間に築かれた堤を破壊してしまい、この地の生態系を激変させてしまったのです。

バングラデシュのカメラマン、イスマイル・ファードウズは、2011年以来、これらのサイクロンが引き起こした惨禍、すなわち地面が消えてしまった場所で生き抜こうとする人々の姿を撮り続けています。
作物を育てられなくなった農夫たちは腹を空かせたベンガルトラに襲われる危険を冒しながら、森の奥深く入り込み、魚を獲ったり蜂蜜を集めなければなりません。
飲み水が極端に不足し、雨水をためて飲料水にしています。

「あらゆる場所が水浸しになっています。」
ファードウズがこう記しています。
「しかし口にできる水は一滴も無いのです。」

健康管理と衛生管理をしっかりと行うよう指導し、塩水に使った土地でも育つ植物の苗を持ってサトヒーラに向かうNGOの職員たち。
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35歳のムスタファはサトヒーラでカニの養殖をして糊口をしのぐ。かつては農夫だった彼の畑は、もう何も育たない不毛の地と化してしまっている。(写真下・以下同じ)
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雨水を溜めてビニール袋に入れられた飲料水。
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水田だった場所にある井戸も、今はもう使えない。
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サトヒーラの住民総がかりでの、堤の修復作業。
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サトヒーラの住民たち。
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チャン・ミアも耕すべき田畑と先祖代々の墓を失った。
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http://www.newyorker.com/online/blogs/photobooth/2013/02/climate-fury-devastation-in-the-sundarbans-bangladesh.html#ixzz2JzrfESOm

【 中国政府、自国の経済指標をねつ造か?】〈後篇〉

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つじつまを合わせるため、常態化する『ねつ造』
隠される格差社会

ウィリアム・ワン / ワシントンポスト 2月5日

WP08
▽ 解釈に関する疑問

中国政府に対し、好意的な別の見方もあります。
長い間侮りを受けてきた中国の国家統計局ですが、少なくとも今は最善の努力を続けているというものです。
画一的な国営企業によって構成されていた社会主義の経済から、市場原理が支配する近代経済社会への移行期、その混沌とした状況の中、国際水準に近い数値の発表を行っていると評価する専門家もいます。

GDPの値を見てみましょう。
これまで長い間、その数値には政治的動機が隠されてきました。
何十年もの間、地方政府の役人たちは自分たちの立身出世のため、自分たちが良くやっているように見せるため、中央政府に対し非現実的な程高い「達成数値」を報告し続けて来ました。
しかしさすがに中国政府が公表してきた数値は、これら地方政府の数値を合算したものを下回っていました。

これは、地方政府が次々と送りつけてくる誇張に満ちた数値を整理し、正確な状況を明らかにしたいと考える人間が中央政府の中にいることを意味するのでしょうか?
もしくは事前に掲げられていた達成目標に届きさえすれば、それで十分だとする中国政府のGDPに対する考え方を表すものなのでしょうか?

同じような状況が、最近公表された所得格差に関するデータにも見て取れます。
1月半ばに公表された『ジニ係数』と呼ばれる値は、政府が新たな目標を掲げてから10年以上過ぎてから明らかにされましたが、多くの人がショックを受けました。
発表された数値は、ぜいたくな暮らしを手に入れた官僚たちと一般の人々との間の経済的格差に怒りを募らせている人々をこれ以上刺激しないよう、ねつ造されたとしか思えないものだったのです。

中国政府が公表した、ジニ係数のグラフ。

中国政府が公表した、ジニ係数のグラフ。


政府がここ数年で中国国内の所得格差は改善されたとして発表したジニ係数は、疑念や批判を招くのに充分な数値でした。

ジニ係数は、著しい不公平社会を表す1.0から、完全な公平社会をあらわす0までの間で表現されますが、昨年中国政府はこれを0.474と発表しました。
これに対しては直ちに批判が巻き起こり、政府発表の一か月前に大学研究センターが発表した、2010年の中国のジニ係数は0.61であるとした数値の方が正しいと指摘したのです。

「政府の統計局は統計処理の手順について一切明らかにしないので、いったいどうやったらそんな低い数値になるのか、皆目見当がつきません。」
南西金融経済大学の調査研究所の副所長である尹志朝氏が、こう語りました。

▽ 正確さに関する疑問

しかし中国政府内でも慎重な立場に立つ当局者も、中国国内の統計を取ることの難しさについて認めています。

所得格差について統計を取る場合を例にとってみましょう。
当然中国の超富裕層の所得について明らかにするため、その調査をしなければなりませんが、その仕事はひどく骨が折れる上に場合によっては無駄に終わることすらあります。
莫大な金額の『灰色の収入』は、目には見えない場所で手に入れたものか、あるいははっきりと違法な手段によるものであり、正直に申告するはずがありません。

WP 04
中国における数値の決定方法、そこには誰でも知っている妥協点を見出す方法が用いられています。
長年この方法を用いてきたため、中国の統計担当者の手法は洗練の度を増し、自分たちや国家にとって邪魔になる数値を闇に葬る手口などは、実に巧妙なものになりました。

「百歩譲って、中国政府が一年間の正確な統計データを作ろうとしたと仮定してみましよう。」
世界銀行で中国部門を担当していたユーコン・ホアン氏がこう語りました。
「ところが、昨年公表したデータを改めて検証すると、どこもかしこも不正確で、あちこち矛盾だらけである事が解りました。誰も責任を取らされることなど無いように、都合よく数字を改変してしまっていたためです。このまま今年の正確な数字を公表すれば、昨年との比較はめちゃくちゃなものになってしまいます。さて彼らはこの後どうするでしょうか?」
「もちろん、自分たちが面倒に巻き込まれないように、せっせと数字の書き換えを始めることになるのです。」

公表される数値はすべて中国に利益をもたらすものでなければならない、このような不文律に縛られ政府内で統計を取る作業を行っている経済の専門家たちにとって、状況は良くはありませんが、改善の兆しもあります。

WP06
「彼らは今、必死の作業を行っているでしょう。」
ホアン氏はこう語りました。
「しかし世界中の専門家が中国が公表した数値について再検証を始めてしまった今となっては、いずれ彼らが公表する結果が、中国に不利益をもたらすことの無いよう祈る、彼らにできることはそれだけになってしまいました。」

http://www.washingtonpost.com/world/asia_pacific/chinas-economic-data-draw-sharp-scrutiny-from-experts-analyzing-global-trends/2013/02/04/f4de4b84-6ae0-11e2-af53-7b2b2a7510a8_story.html
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私には浙江省杭州市で外科医をしている、中国人の親友がいます。
彼のお兄さんは物理学者として、日本の研究機関で働いていますが、奥さんは内科医として瀋陽市で働き、娘さんは母親のもとにいます。
お兄さんは何度か中国に帰り家族とともに暮らそうとしましたが、結局は思いとどまりました。

お兄さんは穏やかで優しい、いかにも学級肌の人です。
「これでは中国では生きては行けません。」

必要な箇所にまんべんなく賄賂を配り、あっても無くても自分の功績を徹底的に売り込む。
同僚の過失を見つけたらここぞとばかりに蹴落とし、たった一段でも階段を上る。
そんな事が親友のお兄さんにできるはずが無い事は、私が見ても解ります。

別の中国人の友人も親が大学を経営し、自分自身は国内に留まれば医師として働ける「富裕層」であるにも関わらず、日本の民間企業で医療関係の技師として働き、奥さんと子供ふたりとつつましく暮らしています。
現在はアメリカに派遣され、家族を連れてテキサス州で研修を受けています。
彼もおとなしい、優しい人間です。
奥さんが
「あの性格では、中国では生きていけません。」
とあきらめたように語り、家族で日本国籍を取得しました。

この話を聞いただけで、中国の支配層、あるいは指導層と言われる人たちの「強靭な神経」が想像できようと言うものです。

相手が腕力に訴えるなら、こっちも!
短絡的な対応では、こちらの思うような結果にはならないでしょう。

そんな中、9日夜、沖縄県が尖鋭化する中国との関係に対応するため、中国問題に詳しい研究者を職員として採用するというニュースが伝わってきました。
誠に賢明な対応だと思います。

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スーパーのごみ箱から食卓へ
【ドイツの新たな市民運動、フード・シェアリング】

アメリカNBCニュース 2月8日
(写真をクリックして、大きな画像をご覧ください)

FS01
ちょうど午前零時を回った頃、ベルリン市内のスーパーマーケットに2人の若者が現れました。
毛糸の帽子を目深にかぶり、懐中電灯でくず入れの中を確認しながら、野菜やパン、そして季節外れになったため捨てられたサンタクロースをあしらったチョコレートなど、まだ食べられる品物を選び出すと、乗って来た自転車のかごの中に詰め込み、次の量販店をめざして闇の中へと走り去っていきました。

彼らは貧しいからそうしているのではありません。

国連食糧農業機関の統計によれば、世界で生産されるうちの実に3分の1、金額にして約1兆ドル(約92兆円)分の食料品がそのまま捨てられています。
こうした事態に怒りを募らせ、ごみ箱からまだ充分に食べることのできる食品を『救い出す』、フードシェア活動を行うドイツの若者たちが増えています。
21歳の大学生ベンジャミン・シュミットもその一人です。

ベルリン市内のスーパーマーケットのごみ箱から、まだ食べられる食料品を選び出すベンジャミン・シュミットとヘレナ・ヤッハマン。2人はフードシェアリング運動に参加している。2月4日、ベルリン市内。(冒頭の写真)

フードシェアリング運動はインターネットを使い、個人、小売業者、生産者が余っている食料品を無料でやり取りしています。(写真下・以下同じ)
FS02
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フードシェアリング運動のラファエル・フェルマーがゴミとして捨てられた大量のクリスマス用のビスケットを整理しています。1月31日、ベルリン市内。
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有機野菜を取り扱うスーパーが捨てた野菜を調理し、パートナー・ニエベス・パーマー・ムンナーと昼食をとるラファエル・フェルマー。1月24日、ベルリン市内。
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【 中国政府、自国の経済指標をねつ造か?】〈前篇〉

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 世界の政府・金融機関、中国政府発表の経済指標について相次いで調査を開始

ウィリアム・ワン / ワシントンポスト 2月5日

WP 01
中国政府が予想を上回る経済数値を発表したことについて、世界の大手金融機関(ゴールドマン・サックス、スイスの金融機関UBS、オーストラリアのANZ銀行等)は、発表された数値には疑問があるとの態度を明らかにしました。

引き続いて数日後に中国政府が、国内の貧困層と富裕層の所得格差は縮小傾向にあると発表するにおよび、各金融機関の疑念は一層深まりました。

大気汚染が今後改善するとの楽観的見通しから、オリンピックに出場する体操選手の年齢に到るまで、中国政府が公にする数字については、これまでもすべてが疑いの目で見られてきました。
そしてかつての目覚ましい経済成長が一段落し、経済失速への懸念が世界中の投資家の間に広がっている現在、中国政府が発表した経済指標については世界中の金融機関や各国政府の間で、これまでで最も強い疑念が生じ、各機関は詳細な検証を行っています。

「すべてがバラ色なら、さしたる問題にはならないのですが…。」
北京清華大学商学部のパトリック・ゴバネック教授がこう語りました。
「しかし。中国経済が急激に失速することへの懸念が人々の間に広り、経済不振の程度がどれ程なのかはっきりさせようとしている現在、人々は敏感にならざるを得ないのです。」

なぜ中国政府がこうした数字を発表したのか、そしてどれほどのねつ造が行われているのか、外国の経済学者の見解を検証することにより、世界が今、中国経済がどうなっているのか、おおよその状態を把握することが可能です。

この発展途上国が、数値上の目標をクリアするために正確な数字を公表しているのか、あるいは世界の金融機関の厳しい目をかいくぐり、都合の良い数値をねつ造して自分たちの身を守ろうとしているか。

WP 02
複数の専門家が以下のように指摘しています。
いかなる動機があろうと、ねつ造された経済指標により、最も悪い影響を被るのは国内経済である。
複雑かつ巨大な経済問題に取り組まなければならない中国指導部が、それによって誤った政策を採用した場合には、その結果は一層深刻なものになります。

「信号機が機能しなくなった道路で、車を運転するようなものです。」
香港にあるソシエテ・ジェネラル銀行の経済専門家であるウェイ・ヤオがこう指摘しました。
「たとえば現在のインフレ率が高いか低いか判断できないのに、どうやって金融政策を立てることが出来ますか?こうした政策は正しい経済指標が無ければ、立てようがありません。」

昨年12月に中国政府が発表した、近隣諸国からの輸入額を含む、貿易収支その他の経済指標が明らかにされた後、今年1月になって世界の金融機関の間で一連の批判が巻き起こりました。
それらの数字を突き合わせていくと、あちこちで矛盾が生じることが解ったのです。

各国の経済専門家たちは普段の穏やかな仮面をかなぐり捨て、「ありえないことだ!」と批判し、「馬鹿げている」とこき下ろし、挙句「明らかに間違っている」と断定したのです。

このように正確な状況がつかめない中、国内産業が著しい成長を続けているという分析に対し、主に海外の金融関係機関からの疑念が生じ、それが伝わっていったのです。
彼らは『信頼できる』政府筋の公表データも鵜呑みにせず、何か隠されてはいないか詳細に検証します。
電気の使用量、鉄道による貨物輸送量、ビジネスマンの渡航回数や新築されたビルの延べ床面積などまで検証し、独自の結論を得ているのです。

WP 03
さらに2007年にアメリカの外交筋から入手した情報により、中国政府が公表した国内経済に関する指標はねつ造されたものであると批判し、次世代の中国政府の要人の一人、経済運営を引き継ぐことになる李克強でさえ、その政策は鉄道輸送、銀行からの借金、そして電力消費量に頼り過ぎていると槍玉にあげました。

しかし、彼らが分析の根拠としている詳細な数値ですら、操作されたものである可能性があります。
昨年明らかになったところでは、電力消費量に関する数値が政府にとって望ましい値に落ち着くと、石炭消費量を始め、その他のエネルギー関連の数値が軒並み書き換えられていたという事がありました。

このような状況について専門家は、中国経済が政府の管理能力を超える所まで拡大してしまった結果、信頼性の問題が生まれているという側面がある、と指摘しました。
そして場合によっては、集めたデータすべてが食い違い、使い物にならないケースもあると語りました。

「あなたはそれが気象観測のように、正しいデータだと思うかもしれません。」
北京に本拠を置く調査・投資会社の共同設立者であるアン・スティーブンソン-ヤン氏がこう語りました。
「しかし中国では、経済指標は国家機密扱いなのです。政府以外こうした数値を集めたり、公表したりすることは許されません。」

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もう一つの問題は、公表されるデータの透明性の問題です。
用いられた統計手法などについては一切明らかにされません。
また、最終的な数値を割り出すためにどのようなデータが使われたのかも、明らかにされることはめったにありません。

こうした理由から、中国の指導部は経済が好調であることを内外に印象づけるため、経済指標を操作していると信じる専門家が複数います。
一般大衆の怒りをなだめるため、そして市場の混乱を招かないよう、中国政府はGDPの値を当初目標として掲げた数値まで引き上げ、失業率と所得格差については極力小さく公表する『ねつ造』を行っていると信じています。
〈つづく〉

http://www.washingtonpost.com/world/asia_pacific/chinas-economic-data-draw-sharp-scrutiny-from-experts-analyzing-global-trends/2013/02/04/f4de4b84-6ae0-11e2-af53-7b2b2a7510a8_story.html
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中国の油断ならないところは、北朝鮮の核実験問題に対し少しばかり強い態度を見せ、対外的に「少し態度が変化した」と思わせていることです。
これにより北朝鮮について強い懸念を持つアメリカなどに、「今、中国を刺激して、せっかく変化した姿勢を後戻りさせたくない」と思わせることが出来ます。
そうしておいて、近隣諸国に対しては強く出る。
アメとムチの使い分け、一種の分断政策を行っているのかもしれません。

それもこれもこの記事が伝える、経済発展による「国力伸張」の結果ですが、その数字には裏があるようです。

かつての毛沢東、周恩来体制の頃は純粋に内治に専念していましたが、今は対内問題を対外問題にすり替えることを常套手段とする国と化してしまった中国。
尖閣諸島を巡る問題では、そもそもの始め、日本側が相手が作った土俵にうかうか乗ってしまうという思慮の浅い反応をしてしまったため、思うような対応ができずにいますが、世界の世論は「中国の横暴さ」に目を向け始めました。

しかしフォークランド紛争の際の英国のようにはいかないでしょう。
対応を誤ると、せっかく好転してきた世界の世論の風向きが変わるかもしれません。
「いいように」されないよう虚々実々の駆け引きをしながら、相手の正体を見通す目が必要です。

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写真集【 米国郵政今昔物語 】

アメリカNBCニュース 2月6日
(写真をクリックすれば、大きな画像をご覧いただけます)

アメリカ郵政の郵便馬車。1909年。

アメリカ郵政の郵便馬車。1909年。


アメリカ郵政サービスは6日水曜日、今後土曜日の郵便配達は行わないと公表しました。
電子メールやその他の電子コミュニケーション手段の発達により、米国郵政の業績は縮小を続けています。
273年もの歴史を持つアメリカの郵政事業、その今昔を比べてみましょう。

馬そりとスキーを使っての郵便配達。1950年頃。(写真下・以下同じ)
USPS02
雪の日の郵便配達。2002年、ニューヨーク市内。
USPS03
一斉にクリスマスの日の郵便配達に出発する。1955年ごろ、ニューヨーク市内。
USPS04
道路わきの郵便受けに郵便物を入れる。メイン州、1930年夏。
USPS05
日系アメリカ人同士が郵便物のやり取りをする、ワシントン州ピュオーラップ郵便局内。1942年ごろ。
USPS06
故郷に手紙を書く米西戦争の従軍兵士。1898年。
USPS07
故郷宛ての電子メールを書くアメリカ海兵隊隊員。2004年イラク。
USPS08

【 今語られる、福島第一原発の地獄 】〈第3回〉[ 福島の50人 ]

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「事故が作り出した影の中で、ひっそりと生きてきた『福島の50人』」

ジャスティン・マッカリー / ザ・ガーディアン(英国) 1月11日

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▽ 喪・失

危機が始まって最初の二週間、現場の作業員は2日分の水として500mlのペットボトル1本だけを与えられました。
「2週間ぶりでカップ一杯のコーヒーを飲むことが出来ましたが、何とも素晴らしい味がしました。」

長時間労働、貧しい食事、そして慢性の睡眠不足が、現場にいる人々の健康を徐々に蝕んでいきました。
吉澤さんも急激に体重が減り、血圧が異常に高くなりました。

2011年12月、政府が福島第一原発の事故を起こした原子炉が『冷温停止状態』に到達したと宣言するまで、吉澤氏と彼の同僚が以前と変わらぬ規則的な勤務を行った日など、1日もありませんでした。

事故発生から約2年、福島第一原発の現場に留まり続け、事態がそれ以上悪化しないよう懸命の戦いを続けてきた男は、福島第一原発の事故後この国を支配する微妙な空気の中で、居心地の良くない思いをしています。

2010年に発生し、暗い穴の中に69日の間閉じ込められ、生き延びたチリの鉱山労働者は英雄とたたえられました。
一方、福島第一原発の現場で戦った多くの労働者が、目には見えない事故後の影の中でひっそりと生きてきました。

東京電力はインタビューの申し入れのほとんどを却下します。
これまで公の場でコメントをしたのは、大勢の関係者のうち、たった2人だけでであり、それも匿名が条件でした。
ほとんどの関係者が口をつぐむことを選択しました、一緒に戦った仲間たちが暮らす世界からひとり追放されることを恐れて。
彼らは懸命の戦いを挑みましたが、一帯を放射能汚染にまみれた場所にしないための戦いに勝つことはできませんでした。
今後数年間、否、数十年間、この場所は汚染されたままの状態が続くでしょう。

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吉澤氏には人々の怒りが解っていました。
「概ね日本の人々は、私たち東京電力が事故を起こしたと考えています。私たちもそれを心にとどめておく必要があります。私たち東京電力の職員は、今回の事故の責任を取らなければなりません。そして2度と事故が起きないようにしなければなりません。それが人々の信頼を回復するための道のりです。そのためにはしかし、ずいぶんと時間がかかるでしょう。」

「振り返ってみれば、私たちの備えは充分なものでは無かったかもしれません。
しかし、事故が発生してからは、私たちはできる限りのことをしてきたつもりです。」

福島第一原発における不適切な運営により事故が起き、事故の収束にもずいぶん手間取っている、そんな認識が日本社会の隅々にまで浸透してしまっているようにも感じられます。

事故後1年8カ月たって、当時の野田首相が福島第一原発の現場を訪れ、『福島の50人が日本を救ってくれた』ことに対し、公的に謝意を表しました。
そして今年の1月にも、安倍新首相が同じパフォーマンスを繰り返したのです。

▽ 感謝

020801
フクシマの50人に対し感謝を表すためのメッセージが、世界中から長きにわたり寄せられつづけ、福島第一原発で戦い男たちを支えてきました。
そうした感謝の言葉が書き込まれた巨大な日本の国旗が、中央制御室の壁にも貼られています。

昨年10月に訪れた野田首相が福島第一原発にとどまっていた時間は、わずかに1時間でした。

吉澤氏はこう語ります。
「私自身は自分を、ヒーローだなどと考えたことはありません。でも世の中の人々が私たちのしていることに感謝してくださっている、それを聴いたときは素直にうれしいと思いました。」

彼が事故後急きょ福島第一原発の現場に戻り、一カ月余りを過ごした際の報告は、『フクシマの50人』の知られざるヒロイズムについての最も信頼すべき情報かもしれません。

家族と2、3日を共に過ごすために、他の何人かの作業員とともに福島第一原発を後にした際、吉澤氏は彼に来ているものを脱ぎ下着姿になり、義務づけられた放射線量の測定を行いました。
そして体に合わない、彼には大きすぎる上下揃いの運動着に着替えました。
彼の髭は伸び放題で、4週間もの間ふろにも入らず、シャワーも浴びることが無かった髪の毛はもつれあったまま、皮膚にべったりと貼りついていました。

数時間後に、彼らの乗ったバスが東京駅に到着しました。
それから彼らはめいめいの自宅へ向かう電車へと乗り込んでいきました。

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「我々の姿はきっと胡散臭いものに見えたにちがいありません。長いあごひげと見るからに不潔な髪の毛、体に合わない運動着を着てバスから降り、多くも無い荷物をビニール袋に入れてぶら下げて歩いていましたから。」
「私たちが駅構内に入ると、一度私たちの方を見た人は、二度と視線を向けようとはしませんでした。まるで福島第一原発の事故など無かったかのように、東京駅の構内は普段と変わらない様子でした。電車に乗って座席に着くとすぐ、誰も私の隣に座りたがらないことに気づきました。」

吉澤氏は自身の累積被ばく線量を明かそうとはしませんでした。

彼は被ばく線量が異常な値であることは認めましたが、福島第一原発で2度と働けない程高い訳ではありません。

「私は自分の健康について心配することはもう止めました。」
吉澤氏は福島第一原発を離れた後、たった一度だけカウンセリングを受けただけです。
「他の人はもっと頻繁にカウンセリングを受けているようですが、大事なことはだれか隠し立てする事無く、話ができる相手を持つことだと思います。」
「でも私は自分を欺くことはできないし、もう以前と同じ自分には戻れないでしょう。東京電力の社員として、また同じ生活に戻ることは不可能です。」

日本の人々の意識の中から、『フクシマの50人』の姿がゆっくりと消え去ろうとしています。

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しかし、もし彼らが事故の真っただ中に留まり続けることが無かったら、福島第一原発はさらにひどいことになっていた可能性がありました。

『フクシマの50人』がそこで過ごした時間について忘れることはありえない、彼はそう語りました。
「私たちの間には、特別な絆が出来ました。」
吉澤氏が語りました。

「言葉で表現することはできませんが、互いを強く思いやる、同じ戦場で戦った戦友同士のようなものだったと思います。」

「私たちの場合、敵は原子力発電所でした。私たちはその敵に、力を合わせて立ち向かったのです。」
〈 完 〉

http://www.guardian.co.uk/environment/2013/jan/11/fukushima-50-kamikaze-pilots-sacrifice?INTCMP=SRCH
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全文を訳し終えたとき、かつて好きだったイギリスの作家、アラン・シリトーの小説を読み終えたときのような感動を覚えました。
そして次にあげる二つのセンテンスが、私には非常に意味深く思えるのです。

「でも私は自分を欺くことはできないし、もう以前と同じ自分には戻れないでしょう。東京電力の社員として、また同じ生活に戻ることは不可能です。」
But I don't kid myself that life will ever be the same. As a Tepco employee, returning to a normal life is impossible.

「私たちの場合、敵は原子力発電所でした。私たちはその敵に、力を合わせて立ち向かったのです。」
In our case, the enemy was a nuclear power plant. And we fought it together."

【 今語られる、福島第一原発の地獄 】〈第2回〉[ 福島の50人 ]

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所要時間 約 12分

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撤・退 : 撤退などすればその時こそ…
爆・発 : すべての人々の表情には、生きては帰れないだろうという覚悟が…

▽ 撤・退

白煙を上げる現場
この時点における状況について、当時の菅直人首相は、もはや打つ手が無くなったと判断した東京電力が、福島第一原発内の全従業員撤退の準備に入ろうとしていた、そう主張しています。
菅前首相は、撤退などすればその時こそ東京電力が終わりを迎える時だと周囲に語りました。
彼は2011年秋、辞任に追い込まれた後、反原子力発電に立場を変えました。
後の回想によればその時がもっとも厳しい瞬間でしたが、菅前首相は首都圏に居る3,500万人の人々の避難計画を作るため、心の準備を始めました。

吉澤氏によれば、東京電力による福島第一原発の総員退去の申し出が東京において却下された、そうした類いの話は前線で働いていた人の耳には一切入りませんでした。
しかし、東京電力の下請け作業を行っている膨大な数の企業の中には、従業員に対し、福島第一原発から撤退するよう命令した会社もあったのです。

彼らの家族もまた、他の従業員同様、家族は津波に襲われた一帯、あるいは福島第一原発の事故の影響をまともに受ける場所で生活していました。
家族と連絡が取れた従業員は一人もいませんでしたが、津波で家を流されてしまった従業員は家族を探すために福島第一原発から帰宅して行ったのです。
どの部署においても、そこに留まる事を強制されることは無かった、吉澤氏はそう述懐しました。

「私は部署を放棄するつもりはありませんでした。そこに留まり、状況を把握する必要がありました。従業員たちが自分たちの家族についてどれほど心配をしていることか、そう考えることはありましたが、自分の家族のことは思い浮かびませんでした。」

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「私たちに代われるものが、誰もいないことが解っていました。留まる事を強制された人間は一人もいませんでしたが、その場にいた全員が、最後まで取り組み続けなければならないと解っていたのです。原子力発電所を守れる人間は、私たちだけだという事が解っていました。考慮の余地など無かったのです。」

吉澤氏にとって最もつらかったのは、危険な事故現場に部下を送り込むことだったと語ります。
福島第一原発は度々強い余震に襲われ、電気装置付近の水には感電の危険があり、そしてもちろん、放射線障害の危険性がありました。

津波が襲った翌日、福島第一原発の施設は2号機で起きた水素爆発により、再び大きく振動しました。
そして数日のうちに、別の2基の原子炉も爆発を起こしてしまったのです。

「何人もの作業員が水素爆発によって負傷しました。なのに危険な場所に戻るよう部下に命じるのは、本当につらい決断でした。
しかし吉田所長は誰にも、不可能なことをしろとは命令しませんでした。
そんなことをすれば、人命を危険にさらすだけだという事が解っていたのだと思います。
そうする代わり所長は、私たちが団結して事故処理に取り組めるようにしたのです。」

▽ 爆発

吉澤氏が福島第一原発から5kmの場所にある危機管理センターに移動したとき、つかの間の平安が訪れました。
しかし彼がその場所にいた間に、事故は一層深刻な様相を帯び始めていたのです。

1号機爆発
加熱しすぎている燃料棒の温度を何とか下げようと、現場では冷却水を原子炉内に直接流し込めるようにするための作業を続けていたのですが、2度に渡り原子炉建屋で発生した爆発により、すべての努力が水の泡と化してしまったのです。

危機管理センターに移動して3日後、吉澤さんとその同僚たちは、この上は福島第一原発の現場に再び戻る他は無いと思い定めました。
吉澤さんたちが再び戻ったことにより、福島第一原発の事故現場では消防士、警察官、自衛隊員、そして東京電力関係者が一体となって事故と戦うことになりました。

「第二次世界大戦中の特攻隊員のように、自分のすべてを事故処理に捧げる覚悟でした。」
その時の気持ちについて、吉澤さんはこう語りました。

「事故現場に居並ぶ人々は、多くを口にしませんでした。でもそこにいたすべての人々の表情には、生きては帰れないだろうという覚悟が表れていました。」

この頃から海外のメディアが吉澤さんたち現場で戦っている人々を『フクシマ・フィフティ / 福島の50人』と呼ぶようになりました。
実際に現場にいたのは数百人で、大気中を浮遊する放射線被ばくを極力少なくするためには、短時間で勤務を交代する必要がありました。

「『福島の50人』については耳にしました。しかし実際に居たのは数百人で、現場には私が考える以上の数の人々がいました。そして、誰もが覚悟を決めていたのです。」

続く何週間もの間、『福島の50人』たちは延々と繰り返される勤務シフト、頭のてっぺんからつま先まで覆う防護服を身に着けての長時間労働、そして放射線防護対策を施された建物の床で眠る不快な夜に耐え続けました。

災害規模は大きく、福島第一原発内の器材は何もかも不足していました。
ある場所では現場内を行き来するための防護服が不足し、一人一人の被ばく線量を計測するための線量計は津波に流されてしまっていました。

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「通常なら外部に注文することが出来ますが、私たちがいた場所は原子力災害の現場の真ん中でした。しかも東日本全域が災害の真っただ中にあった当時は、誰も福島第一原発に近づくことなどできなかったのです。」
「あるもので何とか間に合わせるしかありませんでした。」

最初の内、口にできるものといえばビスケット、そして乾燥食品の類だけでした。
多数の自衛隊員が津波のがれきの中から遺体を探し出す懸命の作業を行っている以上、緊急時の補給を期待することなど問題外でした。
水も不足し、備蓄されていたカップ麺に入れるお湯さえなかったのです。

〈『 喪・失 』に続く〉

http://www.guardian.co.uk/environment/2013/jan/11/fukushima-50-kamikaze-pilots-sacrifice?INTCMP=SRCH
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久しぶりに写真集を見て感動しました。
下にご紹介した写真はカラー写真でありながら、セピア色を基調にしているせいか、強烈な郷愁をかきたてます。

私が少年時代を過ごした昭和30年~40年は、現在は『都会』になってしまった仙台市中心部にもそこら中に野原がありました。
私の場合、仙台駅周辺も子供時代の遊び場の中に含まれていました。
当たり前のように線路の上に蒸気機関車が並んでいた仙台駅、その木造の駅舎のコールタールを塗ったこげ茶色の板は、見慣れた景色のひとつでした。

ご紹介する写真集と自分の体験の間はよほどかけ離れているはずですが、一瞬のうちに結びついてしまったのですから、写真とは不思議なものです。

最後の列車の連結部分と若者たちの足。
たぶんタダ乗りだからこんな場所にいるのでしょうが、若い時自分にもあった放浪願望、その思いが見事に表現されていると思います。

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【 マイク・ブロディー写真集[若き日の輝き]】

ジェシー・ウェンダー / ザ・ニューヨーカー 1月29日
(写真をクリックして、大きな画像をご覧ください)

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マイク・ブロディーは芸術家になろうなどとは、一度も思ったことは無いと語りました。

しかし彼は5,000マイル(約8,000km)を列車で旅し、フィラデルフィアでは売れないロックバンドと共同生活をし、ポートランドでは絶対菜食主義者たちと暮らし、そのすべてを写真に撮りました。

彼の写真 - 列車と飛び去っていく景色、深い眠りをむさぼる姿など – は、時に感動的であり、時には見る人を戦慄させ、刺激的であり、臨場感にあふれています。

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ご紹介する作品は今年3月1日に、ツインパーム・パブリッシャーとTBWブックスから発売になる彼の初の写真集、[若き日の輝き(A Period of Juvenile Prosperity)]に掲載されます。
同じく3月、ニューヨークのヨッシ・ミロ・ギャラリーとロサンジェルスのM + Bで写真展が開催されることになっている他、書店でのサイン会も予定されています。
以下はマイク・ブロディーとの一問一答です。

ジェシー・ウェンダー : どうして写真を撮ろうと思うようになったのですか?そして一度やめてしまった理由は?そして、再開した訳も教えてください。

マイク・ブロディー : ある日僕はナショナル・ジオグラフィックの写真家、スティーヴ・マッカリーが撮影した肖像写真を目にしました。その時ひらめいたんです。ああ、ぼくも彼のようなポートレイト写真を撮影しなくちゃ。そこで僕は世界に出て、印象深い人々や場所の写真を撮り始めたのです。
やってるうちに鉄道列車の写真が多くなってきました。
私は知識を深めるため、列車のエンジンや電気系統について勉強し、一通りの知識を身に着けました。
この時に写真を撮るのを休んだのです。代わりに勉強に打ち込むことも悪くは無いと思ったのです。
学校に通い、ディーゼルエンジンについて学びました。将来の自分のために役立つかもしれないので、もっと専門的な知識を身に着けることになるかもしれません。
だって私は芸術家になろうとは一度も思ったことが無いのですから。
写真は私にとってはこれまでずっと、趣味でしかありませんでした。これからも多分そうだと思います。

MB03
ウェンダー : 写真に写っているのはどんな人々ですか?

ブロディー : コーリー、ブレイク、シャノン、パトリック、ロケット、スープ、ルル、ブランディ、ヴェネッサ、サヴァンナ、ハリソン、アレクシス、オリバー、ロスト、トリニティー、あといろいろです。

ウェンダー : インスピレーションのもとになるものは何ですか?

ブロディー : こんなふうに言ったことがあります。伝統的なアメリカの価値観にパンクロック的要素を少し加えたもの。

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ウェンダー : あなたが撮影した写真の人物には親近感が漂っていますね。撮影する時に被写体の人になる人の心を解きほぐす、何か特別の方法があるのですか?

ブロディー : そうですね、まずはカメラを構えずに被写体になる人と親しくなることです。
実を言えば女性の中の3人はかつてのガールフレンドで、親友も2人います。
私は生活する中で写真を撮っているのです。

最近まで私は人々の生活と車の関わりをテーマに写真を撮っていました。
車は人々にとって重要なものであり、車にまつわる出来事はたくさんあります。
私はそれを撮影すればよいのです。

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http://www.newyorker.com/online/blogs/photobooth/2013/01/slide-show-pictures-from-mike-brodies-a-period-of-juvenile-prosperity.html#ixzz2K4PJlY1h

【 今語られる、福島第一原発の地獄 】〈第1回〉[ 福島の50人 ]

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所要時間 約 12分

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「自分たちのすべてを犠牲にする事を求められた、神風特攻隊のような気持ちでした。」

FR24 破壊された福島第一原発
チェルノブイリ以来最悪の事故がもたらした放射性物質をどうするか、苦悩が続く日本で、福島第一原発のスタッフたちは誰の目にもとまることなく事故の影の中で生きている。
東京電力の職員、吉澤厚文(よしざわあつふみ)氏がこう語りました。

ジャスティン・マッカリー / ザ・ガーディアン(英国) 1月11日

胸ポケットに会社のロゴが印された青い作業服に身を包んだ吉澤厚文氏は、一年の大半を過酷な戦いの連続の中で過ごした人のようには見えません。
しかしそんな彼自身の口から語られたのは、日本史上最悪の原発事故の真っただ中に留まり、自分の命を危険にさらしながら働いた現場の技術者、特殊作業担当者、自衛隊員、そして消防士たちの物語です。

世界のメディアは彼らを『フクシマ・フィフティーズ / 福島の50人』と名づけました。
しかし、福島第一原子力設備で3基の原子炉のメルトダウンに対処するため、その場にいた作業者の実際の数は数百人に上りました。

彼らは、この巨大災害の英雄になりました。
世界は彼らの勇敢さと献身的な行動に賛辞を贈りつづけました。
そして、その割を食うように、何ら有効な手立てを持たない日本の原子力行政にたずさわる人間たちと政治家に対しては、世界中から批難が浴びせられました。

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しかし日本国内にあっては、『フクシマ・フィフティーズ / 福島の50人』の人々の名が知られることはほとんどありませんでした。
何割かの人々は、英雄として脚光を浴びることを潔しとはしませんでした。
しかし[ 福島の50人 ]の中で一番多かったのは、チェルノブイリ以来最悪の原子力事故を引き起こし、放射性物質をまき散らし、政治的な問題まで引き起こした福島第一原発に関わっていたことにより、何者かに報復されることを恐れていた人々だったのです。

数少ないインタビューのひとつとなった会見の中で、吉澤氏は危機が登勢のように展開したのか、そしてなぜ自分を英雄とは思えないのか、胸の内を明らかにしました。

2011年3月11日の午後、マグニチュード9.0の地震が東北沿岸を襲った時、吉澤氏は2つの事だけを考えていました。
自分は決して逃げない、そして死ぬことは無いだろう。

最初の強力な衝撃が見舞われたとき、54才の原子力技術者は福島第一原発における勤務シフトを終えようとしていました。
凶暴な揺が襲い、天井からパネルが次々と剥がれ落ちました。
発電所の主制御室の外の廊下に居た吉澤氏は、自分の机の近くにあるシェルターに行くこともままならず、その場にしゃがみ込むしかありませんでした。
「何とか態勢を建て直して窓の外を見ると、地震のものすごい力で、駐めてあった車が上下にボンボンはねていました。そんな光景を見たのは、生まれて初めてでした。」
東京電力本社で最近行われたインタビューで、吉澤さんがこう話しました。

大学を卒業してすぐに東京電力の社員となった吉澤さんは、当日午後に福島第一原発内に居た6,000人の作業者のうちの一人です。
当時このうち約2,000人の人が、6基の原子炉の立ち入り制限区域内で作業を行っていました。
吉澤さんの頭にとっさに浮かんだのは、東京の南郊、横浜市内で暮らす妻と2人の娘のことではありませんでした。
彼女たちについては、無事だと思うしかありませんでした。
彼が考えたこと、それは福島第一原発のほとんどの職員の家族が、発電所近くに住んでいるという事でした。

▽ 津波

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痩せて根金をかけている吉澤氏は、かつて東京の本社にいた時はネクタイにスーツ姿でした。
しかしこの時、一旦揺れが収まった後、彼は自分が部長を務める核燃料サイクル部門の部屋で、素早く放射線防護スーツを身に着け、今後の対応をどうするか検討するため幹部職員が集まっていた、耐震工事を施した避難棟に向かいました。

その場所で吉澤さんは、予想もしない現実に直面させられることになったのです。
地震発生から一時間も経たないうちに、福島第一原発が高さ3メートルをはるかに超える津波が襲われたと、ニュースが何度も繰り返して伝えました。

伝えられた津波の高さは、福島第一原発の防波堤が想定する高さを、はるかに超えるものだったのです。

彼らがいた避難棟には窓が無かったため、津波が原子炉建に襲いかかる場面を実際に見た人間は一人もいませんでした。
行く手を阻むものすべてを根こそぎ押し倒し、何もかも飲みこんでしまった真っ黒な濁流を。
「私の耳に飛び込んできたのは、電気の供給に問題が発生したという報告でした、そして海の上一面に破片が浮かんでいるという報告も。」
吉澤氏が語りました。

しかし、進行していた現実はもっと恐ろしいものだったのです。

津波は福島第一原発の予備電源装置を破壊し、発電所内は闇に包まれました。

そして闇より恐ろしい事態が発生しました。

発電所を襲う津波
もし吉澤氏がかろうじて助かった、そう思う事があったとすれば、それは2機の原子炉、5号機と6号機がすでに冷温停止の状態にあった事でした。
この2機は定期点検のため、稼働を停止していたのです。

しかし送電停止の状態が続けは、残り4基の原子炉内部では核燃料棒が熱のために溶けてしまい、大量の放射性物質の放出につながる危険性があります。
そうなれば、放射性物質の飛散は福島の県境を越え、はるか遠くにまで広がることになります。
〈『 撤・退 』に続く〉

http://www.guardian.co.uk/environment/2013/jan/11/fukushima-50-kamikaze-pilots-sacrifice?INTCMP=SRCH
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今日から3回に分け、イギリスの[ガーディアン]に掲載された 今語られる、福島第一原発の地獄 】[ 福島の50人 ]を掲載します。

[ガーディアン]の記事は、私はアメリカのニューヨークタイムズと並んで、内容が充実したレベルの高いものだと感じています。
特に今回の記事はすべて訳し終えた後に、出来のいい短編小説を読んだ様な感動を覚えました。
ぜひ全3回、お読みいただけたら、と思います。
そしてできれば「主人公」が東京電力の社員だという事で、偏見等を持たずに読み進んでいただければ、と思います。

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「人々と会話をする駅」
写真集【ニューヨーク・グランド・セントラル駅100周年】

アメリカNBCニュース 2月1日
(写真をクリックして、大きな画像をご覧ください)
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空港が大量輸送を実現する、そして人々をイライラさせるようになる前、遠くへ出かけようとする人々が向かった先、それはグランド・セントラル駅でした。
ちょうど100年前の2月1日、グランド・セントラル駅舎内のすべての鍵の束が初代駅長に手渡されました。
その日、夜明けを迎える前、一番列車が静かホームを離れて行ったのです。
以来数百万の人々がこの駅舎内を行き来することになりましたが、変化にとんだ空間、魅力的な建築は、それ自体ニューヨークの重要な観光名所となったのです。

ニューヨーク市は現在、グランド・セントラル駅100周年を祝う様々な行事でにぎわい、『大スケールのデザイン、グランド・セントラル駅』と銘打たれた展示も行われています。

「私はグランド・セントラル駅が、好きで好きでたまらないのです。」
歴史学者でありながら、ニューヨーク市内のツアーガイドも勤めるジャスティ・フェレート氏が語りました。
「世界一とはいかないでしょうが、グランド・セントラル駅はアメリカでもっとも偉大な建築物です。」

フェレート氏は日に2回、1週間に5回、空港に観光客を迎えに行き、記念写真を撮る生活を何十年と続けて来ました。
彼は空港で観光客たちに、こう尋ねることにしています。
「空港はあなた方を温かく迎えてくれましたか?降り立った時、ほのぼのとした気持ちになりましたか?」
イエスと答える人々はほとんどいません。

空港は、訪れる人々すべてに何かを語りかけてくるグランド・セントラル駅とは違うのです。

1930年代、太陽の光が射しこむグランド・セントラル駅構内。(写真下・以下同じ)
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写真の上部は駅構内を行き来する人々。下部は構内のアップルストアに集う人々。1月31日。
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グランド・セントラル駅中央通路の天井に描かれた夜空の12宮。59の星は金箔をあしらって表現している。1月25日。
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100周年を迎える前日の駅構内。1月31日。
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【 キプロス、野鳥密猟のそのわけは… 】

アメリカNBCニュース 1月31日
(写真をクリックすれば、大きな画像をご覧いただけます)
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朝日が射し染め、オレンジ、ザクロ、イチジク、イナゴマメ(カラブ)などの木々の間に、鳥をつかまえるためのカスミ網が張られている様子が浮かび上がりました。
イナゴマメの樹が一面に生い茂る辺りから、か細い小鳥たちの鳴き声が聞こえてきました。
それはカスミ網に捕えられた小鳥たちが上げるものでした。

午前中、一人の男がカスミ網に絡まった中から6羽ほどの小鳥を取り出し、その首を歯を使ってへし折ると、持ってきたバケツの中に入れました。

何世紀もの間、キプロスの人々にとって、野鳥はごちそうでした。
キプロスの人々は、カスミ網やとりもちを使って野鳥を捕獲します。

野鳥は煮るか塩漬けにされるかして、丸ごと皿に乗せられ食卓に出されます。
キプロス以外の人々にとっては何のためにそんなことをするのか理解に苦しむ光景ですが、キプロスには、その独特の甘みを味わう瞬間は、至福の時だと語る人もいます。

しかしEUに加盟した際、キプロスは伝統にしてきた習慣を禁止され、野鳥の捕獲は違法になりました。
キプロス内に生息する野鳥の中には、絶滅危惧種も含まれていました。

現在、ヨーロッパを覆う経済危機は、出稼ぎをしていたキプロスの人々に島への帰還を余儀無くさせています。
国内の軽食堂に料理として出される野鳥料理の食材を扱う闇の市場に売り払うべく、彼らは罰金と収監のリスクを冒し、野鳥の捕獲を行うのです。
今や貴重な現金収入の途なのだと語りながら…。

とりもちを塗った枝に捕えられた野鳥

とりもちを塗った枝に捕えられた野鳥


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このサイトについて
ほんとうの「今」を知りたくて、ニューヨークタイムズ、アメリカCNN、NBC、ガーディアン、ドイツ国際放送などのニュースを1日一本選んで翻訳・掲載しています。 趣味はゴルフ、絵を描くこと、クラシック音楽、Jazz、Rock&Pops、司馬遼太郎と山本周五郎と歴史書など。 @idonochawanという名前でツィートしてます。
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