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【 原子力発電所は国家の『不良債権』!原子力発電所の危険負担はあまりに長期間、あまりに巨額 】〈3〉

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当初の試算をはるかに上回る、原子力発電所の解体・廃炉費用、資金調達に追われる電力会社
莫大な廃炉費用、訴訟の取り下げと引き換えに、政府資金の拠出を迫る電力会社
石炭やガス、そして原子力発電所による発電事業の収支は、もはや辛うじてとんとんという状態

デア・シュピーゲル 5月15日

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▽ 大きな危険に直面させられる政府

ドイツ政府のエネルギー担当大臣であるガブリエリは、論議の的となっているこの課題の多い問題をこれから長く議論もしないまま放置するわけにはいきません。

ドイツの各電力会社は原子力発電が作り出した負の遺産である核廃棄物の問題から、できるだけ安い費用で逃れようとしていることは誰が見ても明らかであり、政府としてはそれをそのまま受け入れるのは困難です。
事実、政府側は電力会社の提案については交渉の上、手を加えなければ受け入れられないというのがその立場です。

長期間原子力発電を続けてきたE.on、RWE、EnBW、そしてVattenfall(ファッテンフォール)の電力各社だけが危険負担を強いられている訳では無く、ベルリンの政府も大きな危険に直面することになります。

これまで電力会社はいくつかの訴訟において、政府に対し約150億ユーロ(2兆1,000億円)の補償を求めています。

01ドイツ・反原発
福島第一原子力発電所の事故発生を見たメルケル政権はドイツの原子力発電の全廃を決定、これを受けE.onとRWEはドイツの違憲審査裁判所に補償金の支払いを求める訴訟を起こしたのです。
この訴訟はドイツ政府の決定が、電力会社の財産権を不法に侵害したかどうかについて争われています。
判決は2015年に下されるものと見られていますが、法律の専門家もこの訴訟の結審を予想することは難しいと語っています。

ファッテンフォール社は同じくクリューンメル原子力発電所とブルンスビュッテル原子力発電所の計画外の早期閉鎖について、30億ユーロの補償金の支払いを求めて、ワシントンにある調停裁判所に訴訟を起こしています。
エネルギー憲章条約の存在により、ファッテンフォールのような外国の企業がアメリカで訴訟を起こすことは可能であり、判決が下されればドイツ政府はこれに従わなければなりません。

これらの事実は、原子力発電燃料税を取り入れたヴォルフガング・シェーブル財務大臣(キリスト教民主同盟)にとっても頭の痛い問題です。
2011年に導入されたこの燃料税は電力会社に原子力発電所の使用年限の延長と引き換えに、燃料として使用したウラニウムとプルトニウムに課税するものです。

02ドイツ・反原発
2、3週前、ハンブルグの金融法廷は、この課税が憲法に反するものであるとの判決を下しました。
もしこの判決がドイツの憲法裁判所と欧州連合司法裁判所(EUの最高裁判所にあたる)によって支持されれば、ドイツ政府は最高で50億ユーロ(約7,000億円)の賠償金支払いを求められる可能性があります。
もしそうなれば、連邦予算の健全化を目指す政府の取り組みは、ほとんど達成不能に陥ることになります。
ドイツの電力会社はこの損害賠償請求訴訟を切り札に、政府との交渉を進めようとしています。

ドイツ政府がもし原子力発電所を不良債権化するプランに同意し、その後押しをするならば、E.On のCEOであるヨハネス・ティッセンとRWE社長ピーター・テリウムは、いくつかの訴訟を取り下げ、これ以上損害賠償請求を行わない用意があります。

各電力会社の経営陣は、この提案がモラルを無視したものであるとも、政府への脅迫でも脅かそうとする行為でもないと考えています。

もしそれが可能だと解れば、企業のトップは株主に代わり企業の損失に対する補償を求める義務があります。
それをしないというのであれば、株主に対する説明責任が発生することになります。

電力会社と政府との間の交渉のために残されている時間はどんどん厳しくなっています。
最初の判断は2015年前半に下されるものと予想されています。

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これらを総合的に判断した場合、この訴訟に関わっている弁護士のうちのひとりが次のように語りました。
「訴訟に関しては多分、電力会社側に有利か評決が下されるであろうことは明らかだと思います。」
そうなれば、政府側にはあまり選択の余地はないということになります。

多くのエネルギーの専門家が分析するところでは、政府が交渉のテーブルに着かなければならない理由は他にもあります。
現在のところ、原子力発電所の廃炉とそれに伴って発生する核廃棄物の処分について、各電力会社はそれを秩序だって進めるための態勢が出来上がっているかどうか明らかではなくなっているのです。
専門家は、今後さらなる税金の投入が必要になるかもしれないと警告しています。

電気を供給する企業は、本来であればこうしたコストの発生に備え、財政的に準備を行う法的な義務があったはずです。
しかし多くの場合、それは発電所という『現物の資産』によって担保されることになりました。
これはリーマン・ブラザースが抱え込んでいた各種の金融資産よりも信頼性が高いと言えるかもしれませんが、この数年間で発電所の資産的な価値は大幅に減少しました。

ドイツが行っているエネルジーヴェンデ(エネルギー革命)により、補助金を給付された太陽光発電や風力発電などの発電量は増え続け、従来の発電手段にとって代わり続けています。

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「石炭やガス、そして原子力発電所による発電事業は、」
E.On のCEOであるヨハネス・ティッセンは長年こう主張し続けてきました。
「もはやその収支は、辛うじてとんとんという状態なのです。」

RWEは今年度だけで、発電所の試算的価値を50億ユーロ(7,000億円)減額させなければなりませんでした。
各電力会社は実際に解体・廃炉作業を始めるまでは、原子力発電所は積み立てられてきた費用で十分賄えるものと考えてきました。
しかしエネルジーヴェンデ(エネルギー革命)の進展と原子力発電の廃止が決まった今、その試算はもはや有効ではないのです。

〈 第4回につづく 〉

http://www.spiegel.de/international/germany/utility-companies-want-public-trust-for-winding-down-nuclear-plants-a-969707.html
 + – + – + – + – + – + – + – + – + – + – + – + – +

この記事を読んで明らかなことは、
原発を1か所増やすごとに、社会的コストがその分膨らんでいくという事であり、
原発が1日余計に稼働すれば、やはり社会的コストがその分膨らんでいくという事です。
電力会社はそのコストについて精密な計算などはしておらず、その時になって足りない分はすべて国民にツケが回ってくるという事が実証されつつあるという事です。

現在の日本政府は経済の成長に原発の稼働は貢献をするという言い方をしていますが、それは
自分たちの政権が責任を持たなければならない「当面の経済成長に原発が貢献すると考えている」
というだけの事であり、
「多額の処理コストについては、自分たちは責任を取らずに将来の世代にそのツケを回す」
という事になります。

日本はこういう政治をいつまで続けるつもりでしょうか?

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