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天皇陛下万歳!の時代へ押し戻そうとする人間たちとの闘い

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安倍首相のような戦前を賛美したがる人間たちは、戦前の秩序によって21世紀の日本を締め上げようと悪戦苦闘

多くの日本人は性差別や人種差別が、そして思想統制が厳しく息が詰まるようだった戦前の日本を懐かしんでなどいない

 

D.Z. / エコノミスト 2018年2月5日

1868年1月、若い武士や商人の後援者が日本の徳川幕府を倒し、約700年の間続いてきた日本の封建制が終焉を迎えました。
明治維新として知られるこの体制変換は日本の急速な工業化と近代化の出発点となり、そのスピードは現代の中国の改革開放もはるかに追いつかないほどのものでした。
明治維新の成果は、たちまちのうちに日本を世界の列強の一国に押し上げました
今日の安倍政権にとって明治維新の150周年の記念日は特別なものになるはずでした。

 

安倍首相にとって明治維新の誇るべき教訓とは、国民が日本の伝統的体制をあがめつつ、近代性と変革に積極的にとりくむべきであるということです。
しかし日本人の多くはこうした解釈の仕方を不快に思っています。

1853年に江戸湾に黒船が、すなわち現在の東京湾にアメリカ軍の艦隊が現れて日本との自由貿易権を要求するまで、日本は200年以上もの間鎖国制度が続いていました。
近代的艦隊の登場により、武士階級による支配がもはや時代に合わないという事実を暴露しました。

交易権と条約に基づく開港を要求する西洋列強の圧力が高まりに比例するようにして、若い武士の幕藩体制への批判が高まり続けました。
そして好意的な表現を用いればいわば熱血漢たちが変化を求めて行動を開始しました。

彼らがクーデターを開始した際のスローガンは「尊皇攘夷 - 天皇を崇拝し、夷狄(野蛮人)である外国人を日本国内から追放する」というものでした。
『尊皇』の部分について志士たちが求めたものは伝統でした。
彼らは何世紀にもわたっていわば飾り物として京都で生活してきた皇族を再び政治の中心に据えました。
彼らは12歳の睦仁天皇を江戸に行幸させ、江戸は東京と改名されました。
睦仁天皇は元号に明治(天下は明るい方向に向かって治まる)を選び、それゆえこれ以降この政変は明治維新と呼ばれるようになったのです。

 

しかし実質的に維新は革命でした。
野蛮人である外国人を追放する代わり、日本の新しい指導者たちは外国人のすべてを積極的に受け入れました。
1868年4月には『五箇条の御誓文』が示されて封建制度が正式に終わり、「智識ヲ世界ニ求メ大ニ皇基ヲ振起スべシ」との方針が明らかにされました。
政府の運営、貿易、産業、軍事について学ぶために、約50人の明治政府の関係者が岩倉遣欧使節団としてアメリカとヨーロッパに視察旅行に出発しました。
帰国後諸外国の援助を受けるなどして明治の日本は西洋に追いつき、鉄道や道路を建設し、封建制に基づく領国を再分配する土地改革を行い、西洋の教育制度を確立し、近代的軍隊を整備しました。

1889年、プロシア憲法をモデルにし明治憲法が制定され、太政官政府と天皇を神聖なものとして祭り上げました。
この二つの組み合わせは強力なものとなりました。

1895年、日本は東アジアの老大国であった中国と韓国の実質的支配権を巡って短期間の戦争を行い、屈辱を与えました。
1905年にはロシアを相手に1年間戦い再び勝利しました。

 

明治維新の前後、日本は西欧列強諸国により自国の独立が脅かされることを恐れていました。
19世紀に生まれた社会進化論は適者生存・優勝劣敗という発想から強者の論理となり、帝国主義による侵略や植民地化を正当化する論理になったため、日本も西欧列強の餌食になってしまう危険を感じていました。

 

しかし日露戦争に勝利した日本は、強者の側に立つことになったのです。

すべての状況が日本をのぼせ上らせることになりました。
同時期のドイツの場合はヒットラーが全権を掌握する前と後では明確な違いがあります。
しかし日本の場合は明治維新直後の改革者が築いた見識の高い明治政府がいったいいつ、軍国主義者の国家に変容してしまったのか、明確な線を引くことができません。

軍国主義者は1937年に日本を全面戦争に引きずり込みました。
天皇崇拝と明治政府が近代化の最重要課題のひとつに挙げた近代的軍隊の整備、その中に軍国主義者たちがせっせと侵略と残虐行為の種を撒き始めました。
これは安倍首相が時にそうした態度をあからさまにするように、戦争中に日本が犯した誤りに向き合うことを拒否する人間たちにとっては触れてはならない問題です。

それをしてしまうと日本の体制についての疑問を、大政奉還という出来事に象徴される明治維新の時点まで押し戻してしまう危険があるからです。

 

では安倍首相のような戦前を賛美したがる人間たちが誇示しようとしているものはなんなのでしょうか?
磨き上げた神話です。
安倍首相が率いる自民党内の一部の保守派は、明治憲法が個人の自由より家族の結束を優先し、そしてすべてに天皇の存在を優先させていた時代を懐かしんですらするのです。
しかし多くの日本人は、性差別や人種差別が、そして思想統制が厳しかった時代を懐かしんでなどいません。

安倍首相は日本の急激な人口減少と対等を続ける中国を強く意識せざるを得ない立場にあり、歴代の首相の誰よりも日本の将来を前向きにとらえなければならない立場にあります。
しかし安倍首相は、明治維新によって出来上がった秩序によって21世紀の日本を締め上げようと悪戦苦闘しているのです。

 

https://www.economist.com/blogs/economist-explains/2018/02/economist-explains-1

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まず誤解のないよう申し上げたいのは、私自身は天皇制を否定するつもりはなく、どころか現在の明仁天皇、そして皇太子の日本と世界の平和を希求する誠実な姿勢に感動し、賛同しているということです。

日本の問題はその天皇制を自分たちに都合よく利用しようという人間たちが集まる場所にあります。

 

2010年代に入り世界全体の構造が激変する中で、先進各国の中枢は激しく変わり続ける世界と自国とのフィッティングを多数の優秀な人材を聡明な頭脳の下で機能させることにより可能にしなければなりません。

それは自由で平等な雰囲気の中で、繰り返し議論しながら進められるべきでしょう。

世界中から優秀な頭脳が自然と集まる体制こそ望ましいからです。

 

しかし日本はまさにそのタイミングで、ちょうど150年前に始まった王政復古の体制の下で国民の基本的人権を制限し、軍備拡大に最大限力国力を傾けようという首相を政府の中心に据えているわけです。

 

うまくいくはずがないではありませんか?

 

安倍首相の政権の継続には一部の大手メディアや大手広告代理店を始めとする翼賛体制が機能しているわけですが、いくら金を貰っているとはいえ、人として日本人として恥ずかしくないのか?

そう問い詰めたい思いです。

 

安倍首相自民党の改憲案は国民主権を廃し、天皇を国家元首に据えることを企図していると伝えられていますが、それこそは天皇ご自身が望んでいないことでしょう。

安倍首相の下で軍隊の文民統制がなし崩しに壊されようとしていますが、われわれ国民こそ主権者だということを声を大にして主張していきましょう。

 

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