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【 日本は戦前の暗黒社会を復活させたいのか? 国際社会で波紋を広げる財務相のナチス礼賛 】

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所要時間 約 8分

ナショナリズムを煽って戦前の暗黒社会の復活を謀るがごとくに振るまい、国際社会において日本のイメージを低下させ続ける政権与党自民党

ラナ・ミッター / ガーディアン 8月2日

麻生 1
再軍備についての麻生太郎外務大臣のコメントは、日本を再軍備に向かわせようとする勢力を勢いづかせようとするものであり、中国との緊張を一層悪化させる可能性があります。

「憲法改正はヒットラーに学べ?!」

日本の再軍備を禁ずる、第二次世界大戦後アメリカ占領下で編纂された日本国憲法を改訂したければ、ワイマール共和国憲法を密かに骨抜きにしたナチス・ドイツの手法を参考にすれば良い、これが日本の財務大臣という要職にある麻生太郎氏が7月末におこなった『提案』の要旨であるようです。

8月1日になって麻生氏はこの発言を撤回しました。
この発言は突如行われた訳ではありません。

日本が尖閣諸島と呼び、中国がダイユー諸島と呼ぶ東シナ海の不毛な島の主権を巡り、両国は1年以上に渡り論争を続けてきましたが、しばしばジェット戦闘機や艦船を繰り出して軍事的緊張が高まる場面も頻出しました。
日本と中国は1937年に始まり、未だに本質的解決に至っていない紛争の危機の新たな場面を作り出してしまいました。
日本の中国侵略に関する一連の清算を行い、その後永続させるべき平和的関係の骨格を作り上げることに、両国は1945年以降多くのことをやり残してしまいました。

紛争の始まりは、歴史に克明に刻まれています。

日中戦争 1
1937年7月7日北京郊外の盧溝橋で、日本の占領軍と中国国軍の間で戦闘が発生しました。
この戦闘をきっかけに、数週間のうちに戦火は中国各地に拡大して行きました。
日本は上海、広州、そして南京を占領し、史上悪名高い数千数万の一般人の虐殺が行われました。
約1,400万人以上の中国人がこの戦争の犠牲になり、8,000万人以上の難民が生み出され、中国は極めて高い代償を支払わなければなりませんでしたが、日本に対する降伏だけは拒否し続けました。
その抵抗は1945年の日本の無条件降伏まで続いたのです。

それから70年近くを経た現在に至るまで、両国は日中戦争についての完全な清算にも至らず、また双方ともに互いの国内政治、国際政策について認め合った訳でもありません。
中国においては未だに抗日戦争は、この国の精神的支柱のひとつとなっています。

慰霊碑が併設された南京‪大虐殺紀念館‬では、薄暗照明の中に浮かぶ数々の写真が、1937年12月日本軍に占領された当時の首都における大虐殺の恐怖を思い起こさせます。
そして今、中国全土ではビデオ・オンラインゲームが何万人もの参加者を集め、画面上に再現された日本軍を倒すために腕を競っています。
しかしこの中国における戦いへの見方は、まだかなりゆがめられたままです。 

東西冷戦の間、毛沢東の統治下にあった中国では、抗日戦争のかなりの部分、すなわち蒋介石率いる国民党軍の抵抗戦争の大部分が『公式』に忘れ去られていました。
具体的には1937年秋の激戦となった上海防衛戦では、187,000名もの国民党軍兵士が日本軍との戦闘で死亡しました。
しかし1949年の内戦で中国共産党が勝利すると、蒋介石とその残党は台湾に逃亡。
このためこれほどの戦いもその犠牲者も、抗日戦争勝利のためのどのような評価も得ることなく、歴史の狭間に埋もれてしまったのです。

日中紛争 2
こうした状況は、冷戦の終結とともに変わり始めました。
中国政府が台湾統一を国家の目標のひとつに掲げ、それとともに国民党政府が抗日戦争に果たした役割もまた、少しずつ再評価されることになったのです。

しかしそこには厳しい制限もあります。
抗日戦争の主役、そして勝利者は飽くまで中国共産党でなければなりません。
対日戦争継続のための国共合作は歴史上有名な事実ですが、公の場で語られることは滅多にありません。

中国の大衆文化において、善悪が明らかな日本との戦いは、まるで漫画のように万人にとって解りやすい通俗活劇になりました。
こうした背景に煽られるように、尖閣諸島では日中双方が「完全勝利」を収めようとし、緊張が高まりました。
日本側で緊張を煽ったものとしては、まずは政治家の責任をあげなければなりませんが、最近になって太平洋戦争は侵略ではなく、日本がアジア各国を白人帝国主義から『解放』した戦争であったとする考え方が、この四半世紀、徐々に浸透してきました。

漫画家の小林よしのり氏の劇画が大きく影響しました。彼は1992年に発表した『戦争論』の中で、日本軍をアジアの同胞の解放者のごとく描きあげ、65万部を売り上げました。

もちろん、日本は現在民主主義国家の一員です。
そしてナショナリズムを煽って戦前の暗黒社会の復活を謀るがごとくに振るまい、国際社会において日本のイメージを低下させ続けている政権与党自民党の中にも、そして最左派の日教組にも、日本の戦争中の行為を美化すべきではないという正論もあります。
しかし第二次世界大戦 =太平洋戦争中の日本軍の数々の非道を美化する動きについて、これ以上の歪曲を許せば、日本と周辺諸国との緊張はより深刻なものになってしまうでしょう。

日中間の紛争のそもそもの起源とその後の展開について、私はこの10年間調査と研究を続けてきました。
私はこう確信しています、現在の日中間の危機は1937年当時程は深刻ではない、と。

しかし類似点も多々あり、状況が切迫しているのも事実です。
そしてアジア地区には、東シナ海に浮かぶこの小さな島々を巡る大国間の争いを調停できるような他国間機構は存在しません。

アベ 3
1937年の日中戦争は、互いに対照的なイデオロギーを掲げて国家建設に邁進しようとしていた国家同士が、些細な事件をきっかけに勃発し、瞬く間に拡大していきました。
今日の政治家には、そのような誤りを再び引き起こさないようにする責任があります。

今回の日本の麻生外務大臣が行ったような発言は、アジア太平洋地区の平和を築いていくために、どんな役にも立たないのです。

http://www.theguardian.com/commentisfree/2013/aug/02/japanese-finance-minister-taro-aso-nazi-comments?INTCMP=SRCH
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今回の麻生発言は日本人が考える以上に、国際社会に波紋を広げています。
とあえず、英仏独、そしてアメリカの記事を順次ご紹介したいと考えています。

これまでも海外メディアによる批判をご紹介してきましたが、日本の一部の大手メディアは市民社会のために機能していないため、今回の発言が国際社会でどれ程大きな反響、いや反感を呼んでいるか、多くの日本の人々にとってぴんとは来ていないと思います。

また、第二次世界大戦=太平洋戦争中の日本軍について、国内では様々な「新解釈」が生まれ、それが「常識化」されようとしていますが、それを国際社会はどう見ているのか。

そのあたり、この発言に対する国際社会の反応、その真実をお伝えできれば、と思っています。

 

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