半数以上の日本の労働者が、有給休暇の取得をあきらめざるを得ない状況に置かれている
まだ生きている間に、いち早く誰かが対応してくれてさえいれば…
山口まり / AP通信 / ワシントンポスト 10月21日
10月に公開された日本で初めての『過労死白書』は、10,000社の企業に対する調査の結果、20%以上の企業で、一カ月当たり過剰時間外労働の規準とされている80時間を超える時間外労働が行なわれていることが明らかにされました。
さらに白書によれば2015年1年間だけで93件の自殺あるいは自殺未遂が過労死と認められ、労災の補償対象となりましたが、他に心臓発作、脳卒中と他の疾患により96名が過労死と認定されました。
白書は過重労働が原因で精神的疾患を発症し、本人あるいはその家族が保障を求めているケースが1,515件に上っていることも明らかにしました。
毎週49時間以上働く労働者の割合は米国が16.4パーセント、英国が12.5パーセント、ドイツが10.1パーセントであるのに比べ、日本の労働者は5人に1人という割合を超えており、さらに半数以上の労働者は有給休暇の取得をあきらめざるを得ない状況に置かれています。
日本の過労死犠牲者のうち多数を占めたのは、30代の男性と時間外労働に関し法定限度等の定めがない管理職を務める40代男性でした。
今年4月、西日本にある敦賀市で関西電力の40歳の原子力発電エンジニアの管理職が首つり自殺をしました。
監査機関は、彼が1ヵ月につき最高200時間の時間外労働を行っていた記録があることを確認しました。
そして過重労働の問題が大きく浮かび上がってきた中で、外国人労働者のための日本の職業訓練プログラムの下で日本国内で働いている労働者が、極めて弱い立場に置かれている問題もクローズアップされることになりました。
中部日本の岐阜県のダイカスト工場で政府出資の訓練計画の下で働いていた、27歳のフィリピン人男性のジョーイ・トチャンさんが2014年4月に心臓麻痺で死亡しました。
彼の時間外労働は毎月120時間を超えており、3年のプログラムが間もなく終了する数か月前に起きた突然死との因果関係が認定されることになりました。
しかし公的機関による長時間労働の実態の把握は、日本の勤労者の過酷な勤務状況の改善の切り札とはなっていないようです。
電通の勤務現場の過酷な環境は、第二次世界大戦直後、当時の吉田秀雄社長が示した10条からなる行動規範『鬼十則』が編まれて以降、連綿と続いてきました。
10条からなるリストの最上位にあるのは
「仕事は自ら創るべきで、与えられるべきでない。」
そして別の条文にはこうあります。
「取り組んだら放すな、殺されても放すな、目的完遂までは……。」
しかしこうした勤務環境に対し、2003年に一線を画すことになる最高裁判所の判決が下され、1991年に発生した24歳の電通のラジオ広告担当社員の自殺を過労死と認めたのです。
そして3年前にも、病死した30歳の電通社員も過重労働の犠牲者として認定されました。
「ある人が、娘はなぜ死ななければならなかったのか、私に話してくれました。」
まつりさんの母親の幸美さんは、賠償金(金額は公表されていません)の支払いが確定した後の記者会見でこう語りました。
「私が今思うのは、彼女がまだ生きている間に誰かがいち早く対応してくれてさえいれば…という事です。」
https://www.washingtonpost.com/world/asia_pacific/japan-overwork-deaths-among-young-show-lessons-unlearned/2016/10/21/6d33f422-9769-11e6-9cae-2a3574e296a6_story.html
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