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レコードの楽しみ – トーレンスに、SMEに、オルトフォンに……

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所要時間 約 6分

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- すみません、ホントのひま話です -

いつだったか、スピーカーのお話をしました。
わたしの世代は音楽の記録媒体がCDになったのは、社会人になってからしばらくのこと。
それまでは何と言ってもレコードとカセットテープ。
オーディオにそろそろ本格的にはまりだしたとき、それまで使っていた10数万円の国産のダイレクトドライブ・プレーヤー(レコード専門再生装置)よりも、音楽がよりなめらかに、繊細に再生できる装置がある、と聞きつけました。
スイスのトーレンスというメーカーのベルトドライブ(モーターにベルトを引っ掛け、それでレコードをのせたターンテーブルをまわす方式)プレーヤーがそれでした。お値段298,000円、でも悲しいことに、これだけではまだレコードが再生できないのです。まずアームを取り付けます、これがイギリスのSMEというメーカーの120,000円のお品物。次にレコードから音を拾うカートリッジ、これがドイツ・オルトフォン製で59,800円。でもこれでも足りないのです。取り付けたオルトフォン・MkⅡはMCカートリッジといって出力が小さく、オーディオアンプとの間にトランスを接続し、音を増幅させなければなりません。これもオルトフォン製で40,000円。
そしてさらに.......

レコードというのはプラスチック製の円盤なので、必ず「反り」があります。そのため微妙な音のゆがみが発生します。もし、レコード盤を真っ平らにできれば、さらに音が良くなる可能性があります。
これを製品化したのが日本のオーディオテクニカでした。レコードをのせるターンテーブルの上にアルミダイキャスト製の円形の台を設置。レコード盤をのせ、電動ポンプを接続し、レコード盤と台の間の空気を抜いて真空にします。これでレコード盤はアルミダイキャスト製の台に圧着され、ほぼ真っ平らになるのです。驚いたことに、この作業による音質の改善には著しいものがありました。
しかし、レコード盤は先ほども書きましたがプラスチック、こすれば静電気が発生しどうしてもホコリが付着し、再生するとノイズが発生します。今度はアメリカの会社が特殊な溶剤でレコードを洗うとごく薄いコーティングがなされ、静電気の発生を防ぐキットを発売しました。これが15,000円程。以来、暇さえあればレコードを洗う作業に没頭することとなりました。
ではここまでかかった費用を計算してみましょう。
298,000+120,000+59,800+40,000+40,000+15,000=572,800円也
実にスイス+イギリス+ドイツ+日本+アメリカというセットです。

ところが、このセットを組上げて半年も経たないうちに、ソニーが世界初のCDプレーヤーを発売したのです。上位機258,000円、普及機158,000円でした。ブラームスのヴァイオリン協奏曲だけで300枚のレコードを持っている年上の友人が上位機を、私は普及機を発売と同時に購入。ただし、当時はCD一枚が4,200円~3,800円。
さすがに57万もかけたアナログ・プレーヤーは、CDプレーヤーと比較しても音の上で遜色はありませんでした。
しかし、手間が違いました。
CDがトレイにのせた次の瞬間には音を出せるのに対し、アナログの方はレコード盤を専用クリーナーでホコリを取ってから、まず台の上に。ポンプをつないでスイッチを入れ、「ドッドッドッ...」といいながら空気が抜けるのを待ちます。次にプレーヤーを回転させ、回転が安定するまで待ってレコード盤にそっと針 - カートリッジを降ろすのです。
そしてA面B面。30分を超える交響曲なら第2楽章を聴き終えた段階で盤面を上下逆にしなければなりません。するとまた、空気抜きからやり直しです。
やがて発売されるCDが増え、価格も2,800円~2,000円程になった頃には、聴くのはCDばかりになっていました。

ある日、3歳の息子が「ぐーるぐるぐる...」と言いながら、レコードプレーヤーのターンテーブルを指でぐるぐる回しているのに気がつきました。
「こ、これはやめようね...いい子だからね...」
と言い聞かせましたが、また次の日も、
「ぐーるぐるぐる」......
そのうち、ターンテーブルの回転が一定でなくなっていることに気がつきました。
And Now... Et Maintenant... そして今は
CDプレーヤーは既に4代目となる一方、アナログ・プレーヤーのカバーの上にはティッシュペーパーやら使い捨てマスクやらの箱が並べられ、もはや接続もされていないのです。

かつてレコードで持っていて大好きだったのに、今となってはどうしても手に入らない曲。
今日はその中から「時の過ぎ行くままに - As Time Goes By」(映画カサブランカ)を Love Unlimited Orchestra でお聴きください。
オリジナルのバラードより、何か胸に迫る切なさみたいなもの、お感じになりませんか?

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ほんとうの「今」を知りたくて、ニューヨークタイムズ、アメリカCNN、NBC、ガーディアン、ドイツ国際放送などのニュースを1日一本選んで翻訳・掲載しています。 趣味はゴルフ、絵を描くこと、クラシック音楽、Jazz、Rock&Pops、司馬遼太郎と山本周五郎と歴史書など。 @idonochawanという名前でツィートしてます。
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