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【 ニッポン株式会社、崖っぷちからの脱出 】

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所要時間 約 13分

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「円安株高は、日本経済再生のための切り札では無い」

ラミー・イノセンチオ(香港特派員)アメリカCNNニュース 5月12日

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香港(CNN)-日本は、あたかも経済の回復が始まったかのような春を謳歌しています。
為替市場では円が4年ぶりに100円を超えて下がり、日経平均株価(日経225)は5年ぶりに14,500円台を回復しました。

それだけではありません。
これまでの数年間、赤字続きだった日本の輸出企業が久々に黒字を計上することになりそうです。
今週ソニーが、5年ぶりに年間を通した最終損益において、経常利益を確保したことを明らかにしました。

投資家や輸出業者は手元に現金がうなる日々の再来が近いことを感じ、手ぐすねを引いて待っている状態ですが、その実先々に潜む問題が見え隠れしています。
アナリストたちは、日本株式会社の一部はまだまだ崖っぷちにいる、そう指摘しているのです。

▼ ボールを取り損ねた?ニッポンの技術系企業

「円安は日本の製造企業にある程度の恩恵をもたらしてはいますが、だからと言ってそれらの企業が国際市場で5年前、あるいは10年前の地位を取り戻すという事ではありません。」
格付け会社フィッチ社の専務理事で、アジア太平洋TMTレイティング部門の責任者であるスティーヴ・デュロス氏がこう語りました。

「基本的に、シャープ、ソニーとパナソニックが現在投機的格付けになっている理由は、国際市場において技術力においてすでに指導的地位を失っていることにあります。いずれの企業もノートブック型パソコンや携帯電話の市場でのシェア獲得に失敗してしまいました。これからの有望市場で、ボールを受け損なってしまったのです。市場は上記の3社が決定打となるような商品の開発・発売したことを認めてはいないのです。」

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問題は今年3月に決算月を迎えたソニーの単年度の決算報告書の中身です。
当社は4億3,500万ドル(約435億円)の黒字を計上しましたが、この利益は19億ドル(約1,900億円)以上の資産売却によるものです(差引本業は1,400億円以上赤字だったことを意味する)。

「資産の売却益が無ければ、ソニーは巨額の赤字を計上しなければならなかったはずです。」
フィッチ社の企業格付け部門のケルヴィン・ホー部長がこう語りました。
「このため利益を計上してはいるものの、株主に配当を出すこともできませんし、負債の返済を早めることもできません。その上、戦略的に重要な分野で集中的に投資を行うことは、したくても出来ないでしょう。」

こうした状況からソニーは、比較的事業規模の小さい、カメラやセンサーなどの製造部門と音楽や映像制作などを含めた映像事業に特化していく必要性があるかもしれません。

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このところ続いた新作映画のヒットがソニーの業績回復に貢献しています。
ジェームズ・ボンド・シリーズの新作『スカイフォール』は、世界中の映画館で10億ドル以上を売り上げ、トビー・マグワイアが出演するスパイダーマン三部作と『アメイジング・スパイダーマン』とともに、2012年のソニーの業績回復に貢献しました。

問題はしかし、こうした分野での成功がさらに続いたとして、ソニーが世界市場での優位性を奪還し、企業グループ全体の業績回復を実現できるかという点にあります。

「簡単に言ってしまえば、これからも状況を注視しなければならない、というのがその答えです。あまり多くは無い収益性の高い商品の成功によって、ソニーが回復軌道に乗っていけるかどうか、現段階で判断するのは早すぎます。」
前出のデュロス氏がこう語りました。

「昨年のある時期、ソニーはテレビの製造事業から撤退しなければならないかどうか、真剣な議論が行われました。私自身はソニーが利益を上げられるかどうか、確信がありません。しかし最近のソニーの発表では、テレビの製造事業を継続することにしたようです。売り上げを伸ばし、利益を上げる見通しがついたという事なのでしょう。実際、それが出来れば喜ばしいことだと思います。」

ソニーのテレビ製造部門がここ数年赤字続きだったことに加え、同社が満を持して開発・発売したスマートフォン、エクスペリアZもまた成功しませんでした。

「誰に聞いても、それは素晴らしいスマートフォンです。そして市場の中で一二を争うほど壊れにくい製品でもあります。しかしエクスペリアZを実際に使っている人を、私は2人しか知りません。」
デュロス氏がそうつけ加えました。

日本の製造企業の中で、フィッチ社が格付けを行っているのはソニー、パナソニック、シャープ、この3社だけです。
そして3社ともに明るい判断材料が無いため、投機的格付けにされてしまっているのです。

▼日本の自動車メーカー『戦線復帰?』

日本の技術系企業の復活については未だまだ予断が許されない一方で、円安による日本の自動車ローカーの業績回復への期待は大きなもののようです。
世界最大の自動車会社、トヨタ自動車の最新の決算は、期首の予想の実に3倍の97億ドル(約9,700億円)の経常利益が上がったことを報告しました。

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「日本の自動車メーカーは、信頼と勢いを回復しました。 自動車産業において、勢いこそはすべてです。」『アメリカの自動車産業』『中国の道』の著者で、ダン・アンド・カンパニー社長のマイケル・ダン氏がこう語りました。
「これは一時的現象ではありません。日本の自動車メーカーは戦線に復帰したのです。」

しかしながら日本の各自動車メーカーは、その成長のためにアジアの政治情勢、世界競争、そして技術革新力という、いずれも円安によっては解決できない問題と直面しなければならない、ダン氏がそうつけ加えました。

世界最大の自動車市場を持つ中国との間で、東シナ海における領土紛争を引き起こしてしまった日本は、中国市場における日本車のシェアを大きく損なってしまいました。

「日本車メーカーは今年中国国内で300万台の販売を記録しましたが、尖閣問題が無ければその販売台数はもっと大きなものであったはずです。中国との外交紛争が解決すれば、5年以内に500万台の販売実績を作る事など簡単なことだと思います。」

「中国ではカーディーラーのショールームへの訪問者数が、良い指標になります。昨年、日中間の関係が最も緊張した10月、そして11月には、私が知っている日本車ディーラーのショールームへの来客数はそれ以前の半分にまで落ち込みました。現在はゆっくりではありますが、回復傾向にあります。」

一方、韓国、そしてアメリカ・デトロイトの自動車メーカー・ビッグ・スリー― ゼネラル・モーターズ、フォードとクライスラー各社の追い上げも急なものになっています。
ダン氏は円安の下での競争に打つ勝ち、計画的な拡大基調を維持していくためには、海外の生産拠点をよりコストの安い場所へと移転させることもひとつの方法だと語りました。

しかしここに問題が一つあります。
「かつてトヨタ自動車が生産拠点を積極的に海外に展開し始めたとき、同時に様々なトラブルが発生し始めました。日本の向上における品質の高さと仕上がりの確かさを海外の生産拠点でも再現することは、非常に難しいことでした。日本の自動車メーカーは品質の高さで世界一を保つために、最大限の努力を行っていました。」

良く知られている2009年から2010年のトヨタ最大の危機は、世の消費者の注目を集め、他の自動車メーカーの猛追を許す結果となりました。」

「韓国の現代自動車の追い上げが続いていることは、良く知られているところです。アメリカのメーカーも、品質、技術革新、そしてデザインの面で進歩を続けています。」
ダン氏がこう指摘しました。

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「一例を挙げれば、フォード・フォーカスの成功は素晴らしいものでした。それまで10年間、最大の販売数量を誇っていたトヨタ・カローラを抜いて、ついに販売台数ナンバーワンを達成したのです。」
しかし一連のリコール騒ぎが一段落し、トヨタへの信頼も徐々に回復しているとダン氏が語りました。

2012年12月、予期せぬ加速により経済的損失を被ったと主張するトヨタ車のオーナーによる集団訴訟を解決するため、トヨタは11億ドル(1,100億円)の支払いに同意しました。
その同じ月、2012年のレクサスの中の1モデルのリコールに絡み、トヨタは米国全米高速道路交通安全委員会に1,740万ドル(17億4,000万円)という記録的賠償金額を支払うことに同意しました。

世界最大の自動車メーカー・トヨタの今後の方向性に関し、同社の社長兼CEOの革新を促進しようとするリーダーシップ・スタイルについて、ダン氏は高く評価しています

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「私は、豊田彰夫氏がとても快活な技術者や社員たちの会議の席上、『いつまでも同じ場所に留まらないようにしよう。』あるいは『私たちがこれまでとは違う何ができるのか、目を見開いて行こう。』とよく口にすると聞いています。
日本人の中で、新たな目覚めが始まっている兆しではないでしょうか。」

http://edition.cnn.com/2013/05/11/business/japan-yen-impact/index.html?iref=allsearch

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この原稿を翻訳していて気がついたのが、やはり日本のマスコミの「情報操作」でした。
日本の大手報道各社のニュースでは、トヨタの大幅な業績の上方修正は「円安=アベノミクス」の恩恵、そういう報道の仕方でした。
しかしこの記事を読めば、その好業績がたゆまぬ技術革新、そして徹底した品質管理実現への努力などによるものであったことが解ります。

考えてみれば、今期2012年4月〜2013年3月の決算期のうち、円安になったのは第4四半期だけ。
しかもトヨタのように世界中に生産拠点がある場合、それほど円安にそれほどの恩恵があるとは思えません。
ただ、3月末日の決算当日、連結決算を行う際にドルやユーロの換算価値が高くなった分、円に換算された利益が膨らむことはあるでしょう。
しかしそれでも、日本のマスコミの「ほとんどは安倍政権の功績」であるかのような報道には「操作の意図」を感じます。

ところで、「経済!経済!」と騒ぐ割には、自ら自分の足元に落とし穴を掘るのが日本の「保守」政治。
否、結局のところ世界が見えていないナショナリストたちが、「敵のいない」国内で吠えた挙句、世界から反感を買って追いつめられていっているだけの話です。
韓国人には韓国人であるが故の利害があり、中国人には中国人であるが故の利害があり、アメリカ人にもまた、アメリカ人であるが故の利害がある。
それは日本人には日本人であるが故の利害があるのと、何ら変わるところはありません。
だからこそ互いに議論し、駆け引きをする必要があり、それが外交というもののはずです。

金をばらまいたり、ひたすら軍備を増強することを外交というのかどうか、日本の『保守』政治家は、『真正の保守政治家』であるディズレーリあたりに教えを乞うと良いと思います。
もっともディズレーリは故人ですが…

それを韓国人だから、中国人だからと言って罵倒していたのでは、ひたすら敵を作り続けるだけで益することなど何もありません。

つまるところ、ライバルは自分自身という事ではないでしょうか。
少なくともトヨタ自動車はそう考えているようです。

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ほんとうの「今」を知りたくて、ニューヨークタイムズ、アメリカCNN、NBC、ガーディアン、ドイツ国際放送などのニュースを1日一本選んで翻訳・掲載しています。 趣味はゴルフ、絵を描くこと、クラシック音楽、Jazz、Rock&Pops、司馬遼太郎と山本周五郎と歴史書など。 @idonochawanという名前でツィートしてます。
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