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【 今世紀、読むべき本の筆頭にヒロシマの被爆者たちの物語がある 】《前篇》

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所要時間 約 10分

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フランス、レバノン、アメリカ、トルコ…世界で卑劣なテロが繰り返されている今、日本の被爆者の史実が重要な意味を持ち始めている
21世紀のこの世界に今こそ必要とされている、時を超えて訴えかけてくる内容を持っている

 

クレイル・マグガイヤ・ギリース / ガーディアン 2016年1月6日

広島原爆ドーム03
人類史上初めて原子爆弾が投下された結果、何が起きたのか…
1946年雑誌『ニューヨーカー』に掲載された特別報告はきわめて明晰であり、そして冷静そのものです。
それがために21世紀の現在も強い説得力を持ったままです。

1945年夏、広島では静かなヒステリーが蔓延していました。
アメリカ軍は数週間、日本各地で爆撃機と焼夷弾を使った大規模な攻撃を続けていました。
そして戦略的に重要な都市であるにもかかわらず、日本の2つの都市がまだ攻撃を受けていませんでした。
そのうちの1つが広島市でした。
数週間に渡りB-29『空飛ぶ要塞(スーパーフォートレス)』が広島の北東方向の日本国内の重要拠点に次々大挙して飛来し、その場所を廃墟に変えていました。
地方で暮らす日本人はこのアメリカ軍の戦略爆撃機を『Bさん』あるいは『ミスターB』と呼んでいました。
「頻繁に発せられる空襲警報にもかかわらず、広島がまだ『Bさん』の餌食になっていないことに、市民たちは神経質になっていました。」
ニューヨーカー誌上にジョン・ハーシーはこう記し、次のように続けました。
「広島には、アメリカ人は何か特別なものを用意しているに違いないという噂が広がっていました。」

そして、それは本当にやって来ました。

広島09
8月6日午前8時15分、リトルボーイが広島の上に落とされました。
即死、そしてその後の爆死者は100,000人以上に上りました。
「巨大な雲が湧き上がり、辺り一帯たそがれ時のような薄暗さに覆われました。そして尚一層辺りは暗くなっていきました。」
ハーシーはこう書きました。
そしてもうひとつの異なる闇が広島に残ることになりました。

西側の報道機関は原爆がもたらした恐ろしい結果について書きたてましたが、そこには生存者に関する情報が抜け落ちていました。
夏が終わり季節が秋に移ると、ニューヨーカーの編集者であるウィリアム・ショーンは、自分たちの雑誌がその後の広島について報道を行うべきだと決断しました。
ニューヨーカーを創刊したハロルド・ロスは作家でニューヨーカーの執筆者でもあるE・B・ホワイトに次のように書き送りました。
「彼は人々に真実を伝えたいと考えており、私たちこそそれができる人間だと考えているようです。そして多分、私たちでなければ出来ない、そう言っています。」
1946年5月、ニーヨーカーの編集部門は、当時上海にいた従軍記者のジョン・ハーシーを現地に派遣し、見たままを報告するよう求めました。

広島08
その結果出来上がったのが有名な『Hiroshima』 でした。
1946年8月、ニューヨーカーは一冊丸ごとこの30,000語からなる報告書を掲載しました。
後に単行本として改めて出版されました。

長年に渡り私はこの本に目を通すよう、他の作家たちから度々薦められました。
あるいはニュージャーナリズムの規範的成功例として紹介されました。

私は本当に読むつもりで、私のリストの優先順位の上位にこの本を加えました。しかし私の枕元に積み重ねられた本の山の一番上には、常に別の本が置かれていく状態が続きました。
いつの間にか長い年月が経ち、第二次世界大戦(太平洋戦争)が終了して70周年の2015年、私は小振りになった『Hiroshima』を受け取りました。
ペンギンブックスから再度発行されたものです。

そして今、この一年間を通して読んだ本の中から、パリ、ベイルート、サンバーナーディーノ、シリアなどの場所で起きた事件に心を傷め、将来に対する不安を大きくしている世界の人々に、私が躊躇なく推薦したい1冊が、『Hiroshima』です。

広島犠牲者
この本の主題は心を浮き立たせはしません。
しかしその主題はまさに21世紀のこの世界に今こそ必要とされている、時を超えて訴えかけてくる内容を持っているのです。

ジョン・ハーシーは原爆が投下された数時間後から数週間に渡り、それぞれがどこかでつながりを持った広島の6人の市民の物語を綴っていきます。

1人は若い外科医、
1人は牧師、
1人は3人の子供を抱えた洋装店の未亡人、
1人は忙しい開業医、
1人は錫工場の女性従業員、
そしてもう1人はドイツ人の聖職者です。

6人の主人公たちひとりひとりに焦点を当てて切り替えていく話法には、きちんと整理された統一感があります。
しかしこの本の中にはそれ以上のものがあります。
ここに記されているがれきの中から始まるそれぞれの人生の年代記には、一切誇張はありません。
そしてこの稿を書いている2015年が終わろうとしている今、『Hiroshima』に書かれた史実がこれほどに必要とされている時代は無かったのではないか、そう感じるのです。

〈 後篇に続く 〉

http://www.theguardian.com/books/2016/jan/05/hiroshima-by-john-hersey-survivors-stories-carry-weight-of-history
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何度か書いたことがありますが、自分が高校時代に受けた歴史教育において、広島や長崎に対する原爆投下の史実が、まず触れられることすら少なく、そして詳細に扱われていないことに大きな問題を感じます。
白鳳文化や天平文化の仏像の様式の違いは丹念に教え込まれましたが、広島や長崎の『日本人』の1945年の無惨酷烈な体験について教えられたという記憶はまるでありません。
戦争を続けた先に、どれ程大きく深刻な悲劇が待っているか、なぜ日本の歴史教育は教えようとしないのか?
ゲーム世代の若者の中には、戦争とは『フルオプション』のジェット戦闘機や戦車に乗って、敵を『シューティング』するものだと考えている人もいるのかもしれません。
広島、長崎の体験を伝えることが、21世紀のこの世界に今こそ必要とされている。
その言葉が重く響きます。

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【 元イーグルスのグレン・フライ、67歳で死亡 】

アメリカNBCニュース 1月19日

Frey01
デトロイト出身のフライはフレイは若い野心的なロック・ミュージシャンとしてカリフォルニアへ移住、その地で一団のソングライターと親しくなりました。その中にはジャクソン・ブラウン、そして後にイーグルスを共に立ち上げることになるドン・ヘンリーがいました。
そして1970年代から1980年代初頭にかけてのイーグルスの長い成功の道のりを歩いた彼は最大のヒット作となった「テイク・イット・イージー」、「我が愛の至上」、「デスペラード」そして「ホテル・カリフォルニア」などの曲を世に送り出しました。

1982年にイーグルスが解散しソロ活動に移ると、フライは1980年代に人気を博した警察を舞台にしたシリーズ「マイアミ・ヴァイス」の初期作品にも出演、「スマグラーズ(密輸業者)のブルース」をヒットさせました。
1984年のコメディ映画「ビバリーヒルズ・コップ」では劇中で使われたフライの作品「ヒート・イズ・オン」がヒットしました。

イーグルスのフェイスブックはフライの死因は、慢性関節リウマチ、急性潰瘍性大腸炎、肺炎の合併症だと発表しました。
「言葉で私たちの悲しみ、どれ程彼を愛し尊敬していたかを表現することは不可能です。彼は私たちに、家族に、そして世界中の数百万人の音楽愛好者に、非常に多くのものを与えてくれました。」

別の声明においてドン・ヘンリー(イーグルスのドラマー、ホテル・カリフォルニアなどの作品を共作)は次のように述べています。
「彼は私の兄弟であり、そして家族でした。そして多くの家族がそうであるように、私たちの間にも相剋があったこともあります。しかし私たちが45年前につないだ絆は、イーグルスとして活動した14年間の記憶は、決して消えることはありません。」
「私たちは音楽業界に自分たちの居場所を作るという同じ夢を抱いて、ロサンゼルスへやって来た2人の若い巡礼でした。私たちは忍耐、音楽に対する限りない愛情を共有し、他の偉大なミュージシャンやマネージャーのアーヴィング・アゾッフとともに、夢見た以上に長い間大きなものを築き上げることができました。」
「そのすべてを始めたのがフライでした。言ってみれば彼は明確なビジョンを持った、点火プラグのような人間でした。」
「彼はちょっと変わっていて、頑固で、移り気で、気前がよくて、そしてとびきり優秀であり、しかも行動力もありました。彼は、何よりも妻と子供を愛していました。我々全員はショック、落胆と深い悲しみの中にいます。」

Frey02
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Frey03

http://www.nbcnews.com/news/us-news/glenn-frey-eagles-has-died-band-says-n49918

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ほんとうの「今」を知りたくて、ニューヨークタイムズ、アメリカCNN、NBC、ガーディアン、ドイツ国際放送などのニュースを1日一本選んで翻訳・掲載しています。 趣味はゴルフ、絵を描くこと、クラシック音楽、Jazz、Rock&Pops、司馬遼太郎と山本周五郎と歴史書など。 @idonochawanという名前でツィートしてます。
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