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【 自国の『平和主義との戦い』を始めた日本 】

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「正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、永久に戦争を放棄する」憲法第9条は安倍首相の野心にとって最大の邪魔
安全保障関連法案は、日本国憲法を拠り所とした平和主義国家としてのあり方を、根本から変えてしまう重大なもの
安倍首相の国策の大きな変更には国民の支持が一向に見えず、進もうとする方向は決して正しいものだとは言えない

 

ニューヨークタイムズ社説 2015年7月20日

自衛隊02
7月第3週の日本の衆議院における採決の結果は、安倍晋三首相をして彼が最も重要と考える国家安全保障戦略の最終目標に近づくための一歩を進ませることになりました。
採決されたのは、第二次世界大戦(太平洋戦争)以降初めて、日本の軍隊に海外での戦闘活動を認める法律です。

しかしこの『勝利』を手にするために採ったやり方は、安倍首相が本当に戦後日本が築いてい来た平和主義に基づく国づくりを続けるつもりがあるのかどうか、深刻な懸念を引き起こしました。

世界で3番目に大きな経済力を有する国が、第二次世界大戦が終了して70年後に国際問題に、とりわけ中国の台頭が著しいアジア地域の問題により大きく関わろうとすることは当然のことと言えます。
しかし深刻な懸念をひきおこしているものは最終目標ではなく、それを成し遂げるために安倍首相が採っているそのやり方です。

安全保障01
議論の中心にあるのは1947年にアメリカ陸軍の監修の下で制定された日本国憲法です
それは自衛隊という名称の日本の軍隊について、自国の防衛にのみ武力の行使を限定しています。

この定めにより、世界的にも有数の規模を持ち、最新の装備を持つ自衛隊が『集団的自衛権』の行使、すなわち敵の攻撃を受けている同盟国やその軍隊を掩護する目的での武力行使はできません。
自衛隊は他国の軍隊と比較して、厳しい制約を受けていることになります。

安倍首相は日本国憲法を改定し、第二次世界大戦(太平洋戦争)後に設けられた制約の数々を撤廃し、日本は『普通の国』になるべきだと長年主張してきました。

昨年安倍首相はアメリカ合衆国に向けて発射されたミサイルの迎撃(撃墜)、攻撃を受けているアメリカ艦船の援護、そして国連の平和維持活動において積極的な任務を遂行できるようにするための準備を始める意向であることを明らかにしました。
そして南シナ海において中国との間に領有権に関する争いが起きている国々に対し、日本が全面的な支援を行う事を正式に表明しました。

I'm not ABE
こうした安倍首相の野心にとっての最大の障害が、日本国憲法第9条です。
第9条は『正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。』とうたっています。
第9条を改定するという事は、憲法そのものを変えてしまうという事であり、そのためには衆参両院において3分の2以上の賛成を得た後、国民投票を行わなければなりません。
安倍首相は自らの内閣において『憲法の解釈変更』を行い、それを自身が率いる自民党が過半数を制する衆参両議会に追認させるというやり方により、この手続きを回避しました。

衆議院は7月17日、11の法案からなる安全保障関連法案を一括審議の上、可決しました。
参議院もこれに続く予定です。

正式な憲法改正手続きとは異なり、通常法案は多数票を義務づけるだけであり、国民投票という形で国民の意思を問う事もありません。

反安倍01
『解釈変更』というやり方は、安倍首相の独創ではありません。
過去においても日本政府は、やはり解釈変更を行ってきました。
しかし今回提出された法案は、日本国憲法を拠り所とした平和主義国家としてのあり方を根本から変えてしまおうという重大なものであり、しかもそのやり方は異論を許さない強引なものでした。

日本の憲法学者の大半がこの法律に反対し、彼らを中心にノーベル賞受賞者を含む学者、芸術家による反対の嘆願書には、10,000人を超える著名な人々が名を連ねました。
そして何万人もの一般市民が抗議行動を起こしました。
世論調査は、日本の有権者が2対1の割合でこの法律に反対していることを明らかにしています。

安倍首相については、日本も、周辺国も、その国民が等しく疑いを持っています。
自らの支持基盤である右翼の国家権力主義者の主張と軌を一にし、第二次世界大戦中に大日本帝国とその軍隊が行った侵略行為、非人道行為については心から反省することなどなく、もはや振り返ろうともしないのではないか、と。

長く平和主義国家として反映してきた日本を、安倍首相は再び戦争に向かわせるつもりなのではないか、という懸念が広がっています。

民主主義社会において評価されるべき大きな改革の実績を残した政治指導者達には、常にその時々の国民の幅広い支持がついて回っていました。
この度の安倍首相の国策の大きな変更には国民の支持が一向に見えず、したがってその進む方向は決して正しいものだとは言えないはずのものなのです。


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『民主主義国家を守るため』と称する法律が、民主主義のルールを無視したやり方で強引に成立させられようとしている。
その姿勢から見て取れるのは、この政権はすでに民主主義の根幹を破壊する意思を明らかにしているということである。
ニューヨークタイムズならではの、鋭い指摘だと思います。

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ほんとうの「今」を知りたくて、ニューヨークタイムズ、アメリカCNN、NBC、ガーディアン、ドイツ国際放送などのニュースを1日一本選んで翻訳・掲載しています。 趣味はゴルフ、絵を描くこと、クラシック音楽、Jazz、Rock&Pops、司馬遼太郎と山本周五郎と歴史書など。 @idonochawanという名前でツィートしてます。
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