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【 脅かされる日本の漁業資源と沿岸漁業、海洋環境に迫る重大な危機 】《前篇》

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所要時間 約 8分

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汚染水の漏出を一貫して否定してきた東京電力、しかし汚染水漏出は『非常事態』
日本の大切な漁業資源の汚染が続いている - 懸念される長期的影響

ガブリエル・ドミンゲス / ドイチェ・べレ(ドイツ国際放送) 8月14日

福島第一原発遠景
▽「非常事態」
実に2年以上の間、破壊された福島第一原子力発電所から毎日数トン、数十トン、あるいは数百トンの汚染水が、太平洋に流れ込み続けていたことが明らかになりました。

複数の専門家が、福島第一原発の汚染水漏出が漁業資源に与える影響と、どうすれば汚染水の漏出を止めることが出来るのか、その検証を行います。

ロイター通信社のインタビューに対し、日本の原子力規制委員会の当局者の一人が、福島第一原発の汚染水漏出の問題は「非常事態」であると表現しました。

2011年3月11日、東日本を襲った巨大地震と巨大津波が福島第一原発に壊滅的被害を与え、3基の原子炉がメルトダウンして以降、一日当たり300トンの放射能に汚染された水が毎日太平洋に流れ込んでいたことが解りました。
この量は、オリンピックで競技が行われる大きさのプールを一週間でいっぱいにするほどの量です。

この事実が公表されたのは、福島第一原発の所有者である東京電力が、汚染水の海洋流出を防ぐために地中作った防護壁が、地下水の水位の上昇により最早バリアの役割を果たしていないと発表を行った直後でした。

この汚染水の漏出は事故発生以来ずっと疑われてきたことですが、この声明により事実確認が行われたことになります。

東京電力・広瀬
地元の漁師や独立した立場で検証を行ってきた研究者などは早くから汚染水の漏出を疑ってきましたが、
東京電力はこの間一貫して否定し続け、2013年7月というタイミングで、やっとその事実を認めました。

しかもこの問題には、さらに厄介な事実がついていました。
東京電力が汚染水と敷地内の土から採取したサンプルには、発がん性が高いことで知られる放射性物質、セシウム-137、トリチウム(三重水素)、ストロンチウム-90がきわめて高い濃度で含まれていることが明らかにされたのです。

東京電力は現在、汚染水の海洋への流出量を減らすため、福島第一原発の敷地内で汚染された地下水をポンプでくみ上げる作業を開始しました。

▽ 汚染が続く福島県沿岸の漁業資源

魚を食することが伝統的食文化の重要な部分を占める日本では、たくさんの人々が沿岸で獲れる魚の安全性について懸念を深めています。

福島沿岸の海底に沈殿している福島第一原発が放出したセシウム-137などの放射性物質により、沿岸の魚の汚染が続いているという点において、複数の専門家の見解は概ね一致しています。

第一大破壊
アメリカに本部を置くウッズホール海洋科学研究所のケン・ビュツセラー博士によれば、日本政府によって行われている定期な調査により、商業的にも重要な漁業資源である海底に棲息する魚類から検出されるセシウム137の量は、福島県沖で最も高くなっていることが解っています。

また魚類から検出される放射性物質の検査結果は、破壊された福島第一原発沖の漁場を漁獲禁止区域にしたり、隣接する漁場の放射線量が限度量に達していないかどうかの監視にも利用されています。

「現在、福島県沖での漁獲は禁止されています。」
専門家がドイツ国際放送の取材にこう答えました。

▽「人間に対しては差し迫った危険は無い」

一方でビュツセラー博士は、海洋汚染が止まれば、魚の体内からセシウムが失われていく速度は早いという点について、指摘を行いました。
「汚染の影響をほとんど受けていない海域に移動した魚は、体内から福島第一原発が放出したセシウムが徐々に失われて行きます。日本沿岸であっても、汚染されていない海域で獲れた魚を食べても、人体に差し迫った危険はありません。」

この見解はハンブルグに本部を置く、テュンネン魚類生態研究所のギュンター・カニッシュ氏も支持しました。
カニッシュ氏は2013年1月の段階で、福島県沖で獲れた魚のうち、90%のセシウムの測定値が政府が定める食品制限値の1キログラム当たり100ベクレル以下であったと語りました。

漁師01
「さらに2013年5月の段階では、試験的に漁獲された魚の90パーセントは、1キログラム当たり50ベクレル以下の値でした。」
ドイツ国際放送の取材に、カニッシュ氏がこう答えました。

しかし、多くの科学者は、長い目で見れば海洋生物の汚染については懸念が続くことになるだろうと語っています。
前出のビュッセラー博士とプリンストン大学原子力未来研究所のM. V.ラマナ博士は、海洋中に放出された放射性物質には様々な種類のものがあり、一部は広大な太平洋の中で希釈されてゆくものの、ストロンチウム-90のような放射性物質は、海底に沈殿するか、あるいは他の海域より汚染濃度が高くなる場所が出現することになるだろうと語っています。
「ストロンチウム-90は生物の体内ではカルシウムと認識されるため、体外に排出されずに骨の中に吸収されてしまう性質を有しているのです。」
ラマナ博士がこう説明しました。

〈 後篇に続く 〉

http://www.dw.de/fish-stocks-threatened-by-fukushima-leaks/a-17017871
 + – + – + – + – + – + – + – + – + – + – + – + – +

日本には、福島第一原発による汚染に懸念を表明する人を、『感情的』だと攻撃する政治家などがいます。

工学系のひとりの人間が3.11の後、大学で自分が参加した原子力工学の実験内容について説明した後、私に次のように語ったことがあります。
「放射性物質について言えば、現代の科学はその5割まで解明しているかどうか…」

「巨大地震が頻発し、放射性核廃棄物の処理もできない日本では、原子力発電は行ってはいけない」
という私の立場に対し、彼は
「学問としての原子力工学まで否定すべきではない」
という立場です。
ただし、
「東京電力には原子力発電を扱う資格は無い」
という立場だけは一致しています。

現在日本政府が放射性物質について定めるいくつもの『安全基準』も、様々な規制値も、つまりは「現在解っている範囲内」でのことだということなのだと思います。

政府側の立場で原子力発電を推進してきた『科学者』が、原子力発電の危険性について指摘する科学者に対し、
「科学的に説明しろ!」
などと威圧的に話すのを見ていると、この人間は科学たずさわって良い人間が持つべき謙虚さを持っていないのだな、と感じます。

今後は放射性物質に関わる『安全』について口にするなら、「これまで解明されている限りでは」という前置きをつけるべきです。
それが「科学的態度」というものでしょう。

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