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【 福島第一原発の事故収束作業に、直接介入せざるを得なくなった日本政府 】《後篇》

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所要時間 約 8分

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事故収束・廃炉作業の現場すら、原子力ムラの支配に任せた日本
先行きどうなるか考えず、愚劣な対策に金と時間を浪費し続けた東京電力
汚染水の海洋投棄、その準備を始めた日本政府

ニューヨークタイムズ 8月7日

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福島第一原発における汚染水の問題は、事故直後から明らかになりました。
山側から流れ込んでくる一日当たり数百トンの地下水が、汚染のひどい原子炉建屋の基礎付近に流れ込み、汚染されて海に流れ込んでいる事実が明らかになり、東京電力はポンプでその水をくみ上げなければならなくなりました。

地下水が流れ込む量を減らすため、井戸を掘って流量を減らすなどの対策を採ることは可能でしたが、東京電力の対応は後手に回り続けました。

さらに5月には、破壊された原子炉付近の複雑に入り組んだ配管から放射性物質が漏れ出し、地下水を汚染し、発電所の時地内に放射線量が突出している場所を作り出している事実が明らかとなりました。
このため、東京電力は化学物質を注入して、土壌を硬化させ、地中に『壁』を作る作業を開始しました。
この作業は東京電力が汚染水の海洋中の流れこみの可能性を否定した、そのタイミングで開始されたのです。

しかし、壁は汚染水のダムを作りだしました。
やがて収容限度を超えてしまった汚染水は、壁を乗り越えて溢れだしたのです。

8月7日水曜日、経済産業省は海洋中に流れ込んでいる汚染水の量は、一日あたり300トンに達するものとみられると発表しました。

汚染水流出
海洋中に流れ込んだ放射性物質の中には発癌性の強い放射性ストロンチウムのような物質も含まれており、いずれの量も安全基準を超えています。
しかし専門家は今回流れ込んだ量は、事故発生当時に放出された量と比較すれば、やや少なくなっていると語りました

今回政府が介入を決めたことについて、以下のような指摘を行う専門家もいます。
福島第一原発の敷地内には大量のタンクに膨大な量の汚染水が保管されていますが、最早これ以上を貯蔵することが不可能になりつつあります。
このため、比較的汚染濃度の低い汚染水を海洋投棄する、その対策を一般に受け入れさせるための前段としての処置である、と。

先週記者会見の席で、原子力規制委員会の田中俊一委員長は、こうした処置を行うための布石とも取れる発言を行いました。
最終的には、『汚染水を排出することが必要になる』と語ったのです。

もしこうした措置が現実にとられることになれば、日本国内だけでなく、環太平洋諸国の懸念を呼ぶことになりそうです。

政府が介入することで汚染水問題は解決に向かうかどうか、前出の山口教授をはじめとする専門家はその点は疑問だと語っています。

政府が介入し、より大規模に事故処理が進むことになれば、指導的役割を果たすのは経済産業省になるでしょうが、経済産業省こそは東京電力やその他の原子力産業と不適切な関係を構築し、今回の事故を引き起こした遠因を作った張本人であり、その癒着は1960年代に最初の商業炉が稼働する以前から続いてきたのです。

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そして福島第一原発の事故収束作業現場には、もう一つ見過ごせない側面があります。
これまで現場は、日本のいわゆる『原子力ムラ』に属する原子力関連企業か、あるいは政治的に結び付きの強い大手建設会社によって独占されてきました。

事故発生当初から東京電力と日本政府は、スリーマイル島事故の収束作業の経験を持つ米国企業も含め、放射性物質の処理について実績のある日本やアメリカの企業が、福島第一原発の現場に参加することを拒絶し続けてきましたが、多くの専門家がそうした対応は誤っているとして長い間懸念を抱き続けてきました。

山口教授のような専門家は、福島第一原発の現場の実態を包み隠さず明らかにするためには、必要な外部企業を参加させる以外に方法は無いと語りました。

しかし日本政府が事故収束作業に実際にどの程度かかわるのか、あるいは相変わらず東京電力主体の作業を継続させるつもりなのか、明らかではありません。
安倍首相は閣僚を招集した席上、彼自身一般国民の懸念の的となっていると語った汚染水の問題について、どう東京電力をサポートすべきか、具体的な指示は明らかにしませんでした。

7日、原子力発電政策を推進してきた経済産業省の官僚は地方の報道機関に対し、政府は汚染された原子炉建屋付近の地下を凍らせ、地下水が流れ込まないようにする対策に、国が400億円の財政援助を行うことになるだろうと語りました。
一部の高級官僚はこの事業を行うため、再び少なからぬ国費が東京電力の支援のために費やされることになる可能性に言及しました。

廃炉作業01
「これほど大規模に土壌を凍結させ、水を遮蔽するための壁を築いたという先例は、これまで世界中のどこにもありませんでした。」
日本政府のスポークスマンを務める菅官房長官が会見でこう語りました。

氷壁を作ってこれ以上地下水が汚染されないようにする対策は、技術的には困難であっても最早手段を選んでいる場合では無い、すでにオリンピック・プール160個分の汚染水を貯蔵しているにもかかわらず、毎日数百トンと言うペースで福島第一原発の敷地内に積み上がっていく絶望的な状況下、何とか事態を打開すべく考え出されたものです。

この計画は、汚染がひどい原子炉建屋付近の土壌を凍結させ、この部分に地下水が入り込まないようにし、その上で汚染水の海洋中への漏出を止めようというものです。
そのためには地下30メートル、幅約2.5キロに渡る氷壁を地中に作りだす必要があります。
政府関係者はこれ程大きな規模で土壌を凍結させる試みは史上例が無く、とてものこと東京電力一社で出来る事業ではないと語りました。

しかし大規模に土壌を凍結させておくためには莫大な電気を必要とし、東京電力はもちろんのこと、日本政府であっても、これまで度々停電トラブルを引き起こしてきた福島第一原発で、安定した電源確保が可能なのかどうか懸念を表明しています。

福島第一原発の事故、それはそもそも巨大地震と巨大津波が福島第一原発施設内の電源装置を破壊したことにより、始まったはずです。

〈 完 〉


 + – + – + – + – + – + – + – + – + – + – + – + – +

この記事は大切なことを指摘しています。
すなわち、『日本の電力会社は原発事故を起こしたが、それを収束させることはできなかった』と言う事実です。

福島第一原発の事故発生から2年半、東京電力も、日本の電力業界も、そして日本政府も、まさにその事実を否定するために躍起になってきました。

しかしこれ程の大事故になれば世界の注目を浴びざるを得ず、次々に海外メディアによって数々の『隠ぺい』が白日の下にさらされることになりました。

『いつものあの手』で福島第一原発の事故を乗り切ろうとする考え、それを未だに捨てられずにいるのが日本の原子力ムラであり、それに対する世界の怒りは確実に高まってきたようです。

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