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【 福島第一原発事故の悲劇、住民の帰還は安全なのか?】《前編》NYT

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所要時間 約 11分

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安倍政権の強引な帰還計画は放射線量が正常な値に下がったとはとても言えない状況下、住民を危険にさらす
『福島第一原発の事故は終息した』と宣言、国民の関心をオリンピックに向かわせる。そればかりを望んでいる日本政府
安倍政権による帰還計画は住民の要望を全く無視した、帰還を強制するだけの措置

 

マーティン・ファクラー / ニューヨークタイムズ 2015年8月9日

飯舘村農民
4年が過ぎても、山あいのこの村一帯に広がる農園と段々畑にあるものは、不気味な静けさです。
40キロ先にある福島第一原子力発電所が日本の東北地方一帯に広く放射性物質をまき散らしてからというもの、この地で暮らしていた人々はすっかり姿を消しました。

そして今飯舘村の谷間では、かつてとは異なる人間の営みが、せわしなく騒がしく続けられています。
マスクをした人間たちが重機を操り、放射性物質によって汚染された土地の表面をはがし取り、黒いゴミ袋に詰め込む作業を行っているのです。

2011年に発生した福島第一原子力発電所事故によって、大量にばらまかれた放射性物質を取り除く作業を行っているのです。
1兆円を超える国費が投入され、飯舘村と他の10の市町村から避難を強いられた80,000人の居住者が元の場所に戻って暮らせるようにすることが目的です。

7月、安倍晋三首相が率いる政権は、避難者の3分の2が事故発性から6年目となる2017年3月に帰還する計画を発表、事故収束作業の著しい進展を誇示する方針を掲げました。
一部の住民はこれを受け入れることを表明しましたが、多くの元住民たちはこれを拒否しました。
飯舘村の元住民をはじめとする数万に登る避難者たちは、訴訟の原告団に加わったり、政府提案を拒否するための住民グループを結成しました。
住民たちは、かつての居住地の放射線量が正常な値に下がったとはとても言えない状況下で、住民に帰還を強制するものだと批判しています。

人々が全て避難した農場

人々が全て避難した農場

住民たちは日本政府や関係機関、東京電力などが事故発性当初から放出された放射物質の量や環境中の放射線量について、繰り返し実際と比べて過小な値を公表し、人々を危険な目に遭わせてきたと指摘しました。
そして日本政府は強力な政治力を持つ原子力産業のために再稼働政策を推進、あるいは2020年の東京オリンピックの成功など一部の利害ばかりを優先しているとして、批判を強めています。

「政府機関がこの場所が安全だと主張するのであれば、彼ら自身がこの場所に来て生活して見せれば良いのです。」
旧飯舘村の住民のほぼ半数に及ぶ3,000人以上の元住民を組織し、政府の機関計画に反対している元酪農家、長谷川健一氏がこう語りました。
「日本政府は『福島第一原発の事故は終息した』と宣言し、国民の関心をオリンピックに向かわせたい、そればかりを望んでいるのです。」

こうした福島第一原発事故の被害者の市民運動は、被災者の深刻な苦境と、史上最悪の原発事故に向かい合っているはずの日本政府の認識との著しい違いを、いやがうえにも際立たせることになりました。


日本政府が汚染された市町村全体の除染という莫大な費用を要する上に、多大な労力と時間を要する解決方法を選択したことについて、当の被災者との間にはどのような意見交換もなされなかったとして、住民たちは政府の計画を拒否しています。

事実、元住民に対する意識調査の結果は、その多くが帰還を望んでいないことを明らかにしました。

住民団が訴訟を起こすということが比較的少ないこの国において10,000人を超える被災者が、元いた場所で生活を再建するのか、あるいはどこか他の土地で新たな生活を始めるのか、その判断は住民に委ねるべきだとして補償を求めて約20件の訴訟を起こしています。
未だに仮設住宅などで、福島第一原発の事故を起こした東京電力が支払う大人一人について毎月約100,000円の補償金に頼って生活している数万人に登る被災者にとって、緊急性の高い問題になっています。

2011年3月11日東日本沿岸を巨大な地震と津波が襲い、福島第一原発で原子炉の安全を保つ上で重要な設備である冷却装置が機能を停止し、その結果3基の原子炉がメルトダウンを起こし、大量の放射性物質が噴き上げられました。
福島県の農村や沿岸の市町村の汚染被害は著しく、以来この地区の住民たちは自宅を捨てることを強いられ、不自由極まりない避難民としての生活に耐え続けなければなりませんでした。

放射線量を測定する長谷川さん。現状での住民の帰還に反対している。

放射線量を測定する長谷川さん。現状での住民の帰還に反対している。

1986年に事故を起こし、四半世紀以上事故の収束作業を行ってきたチェルノブイリでは、除染が未だに達成できていないにもかかわらず、福島第一原発の事故では日本政府は発生後1ヶ月のうちに、汚染されてしまった福島の市町村全域を『除染する』計画を作成しました。

安倍政権が6月12日に新たに採用したタイムテーブルでは、次の2年間「集中した除染作業」を行うことで、放射性物質の除去作業のペースを上げることを要求しています。
さらに福島第一原発の周囲のほとんどの地域で住民が帰還『できる』日時を、事故後初めて明確に設定しました。
政府の公式の地図の上では汚染がひどい地域とそうでない地域が緑と黄に色分けされ(汚染の最もひどい赤のエリアの立ち入り禁止は、無期限に続きます)、70パーセントの比較的汚染されていない地域では2017年3月までに住民の帰還を完了させるとしています。

しかし、安倍政権の計画に向けられたものは住民などによる疑い、そして抵抗でした。

Fukushima children
日本の原子力発電の推進の立場をとる読売新聞の調査では、避難区域になった11の市町村長のうち数名は国の政策を受け入れる以外に選択肢はないと答える一方で、11人中8人が安倍政権の方針に抵抗を感じると回答しました。

浪江町の馬場保町長は、住民が安全に帰還できる日をもっと先に設定した別の提案を行い、帰還したくない住民に対する財政援助の継続を約束しました。

安倍政権の新たな提案に対する反発が大きい原因の一つは、避難者に対する補償金の支払いを打ち切ることにより、帰還せざるを得ない状況を作り出そうとしている点にあります。
新しい計画では住民に帰還を促すため、毎月支払われている補償金を2018年3月で打ち切るとしています。
多くの、特に50歳以上の人々は避難先で新な生計手段を得ることができなかったため、毎月の補償金の支払いの停止はすなわち帰還することを強要することだと語っています。

廃棄物
「住民の要望を全く無視し、帰還を強制するだけの措置です。」
さらなる補償の支払いを求めて、福島県の避難民4,000人以上が行っている訴訟のうちの一件を手がけている馬奈木厳太郎(まなぎいずたろう)弁護士が語りました。

〈 後篇に続く 〉

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【 50年前の暴動の記憶 : ロサンゼルス・ワッツ 】《2》

アメリカNBCニュース 8月11日
(写真をクリックして、大きな画像をご覧ください)

watts068月14日にロサンゼルス市のワッツ地区で発生した暴動により炎上・崩壊する靴店の消火活動をする消防士。
暴動による初の死亡者は警官隊と暴徒の衝突に巻き込まれた黒人男性でした。
死亡した34人のうち、ほとんどは黒人でした。
32名の検視の結果は、26件が『正当殺人(ロスアンゼルス市警と州兵による)』とされました。
5件は殺人、そして1人は事故でした。(写真上)

暴動によって燃え落ちたロスアンゼルスの商業施設。
無数の問題がロスアンゼルスのコミュニティにありました。
1965年に75,000だった人口は1965年には650,000になっていました。
失業が高く、学校は荒れていました。
そして黒人たちや貧困層の人々は警察を人種差別主義者、そして強圧的な支配者とみなしていました。(写真下・以下同じ)
watts 78月17日に暴動の被害を確認する市内で理髪店を営む黒人男性。
暴動では白人が所有する事業所が略奪と放火の標的になりましたが、男性の経営する理髪店も巻き添えになりました。
watts 8暴徒に暴力をやめるよう説得するため、ロスアンゼルスを訪問したマーティン・ルーサー・キング・ジュニア。
8月19日ロサンゼルスでの記者会見の席上、隣に座る知事エドモンド・ブラウンにワッツ地域を訪問して人々と話し合う機会を設ける機会を作ることに協力を依頼したことを明らかにしました。
watts 98月18日。暴動によって破壊された街の片付けをするブルドーザー。
暴動の後に設立された委員会が調査結果を公表し、より良い学校教育、職業訓練、低所得者のための住宅整備、公共輸送機関の整備、公共医療の充実、さらには警察とコミュニティのより良い関係の構築が必要だとの指摘がなされました。。
現代でも警察に対する抗議が激しくなるとき、ワッツの暴動が引き合いに出されることがあります。
ファーガソン(ミズーリ州)やボルチモアで昨年発性した、警官による黒人殺害事件殺害に端を発した大規模抗議行動においても50年前の事件が引き合いに出され、根源的な問題に目を向けるべきだとの指摘が繰り返されています。
watts 10
http://www.nbcnews.com/news/us-news/watts-riots-remembered-half-century-later-n407841

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