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【 福島第一・巨額の税金をつぎ込んだ賭けの結果は 】《3》

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所要時間 約 8分

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永続的な解決手段が求められているのに、なぜ複雑な分脆弱性が高い方法がとられるのか?
福島第一原発の敷地を埋め尽くす程溜まってしまった汚染水は、どうやって処分するのか?

マーティン・ファクラー / ニューヨークタイムズ 2016年8月27日

汚染水タンク2016
凍土遮水壁が汚染水を逆流させる恐れがあることについて原子力規制委員会は鹿島に対し、原子炉建屋の山側に6カ所の『水門』を設け、原子炉建屋内の汚染水がほとんど無くなるまで開けたままにしておくよう指示しました。

8月東京電力は原子力発電に対し、海側に計画していた凍土遮水壁が99%完成したと報告しました。
残り1%を凍結できなかったことについて、半世紀前原子力発電所を建設した際に地中に残されたがれきや砂を含む数か所を凍結させることが出来ず、その部分で地下水が急流となってしまい凍結が出来ない状況にあると説明しました。
この数か所の凍土壁の『穴』について、東京電力の山岸広報担当官は速乾性のセメントを使って埋める作業を試みたと語りました。
「徐々に温度が下がり始めたことが確認できました。」

02 Spiegel
たとえセメントによって遮水性能が向上したとしても、計画そのものの有効性を疑っている人々はどれだけの期間凍結を維持できるか疑問を持っています。
そしてこうした凍土策は、建設現場などでは通常一時的なものと用いられているだけだと指摘します。
パイプを冷却するために使われる冷媒塩液(ブライン)は腐食性が強く、いずれ配管系統の破壊や漏出事故が発生する可能性があるとも危惧しています。

大きな地震に襲われた場合には再び電源喪失の事態に見舞われる可能性があり、さらには非常に放射線量の高いという悪条件の下で正常な機能を維持し続けることが出来るかどうかは現時点で不明です。

 

http://www.tepco.co.jp/decommision/planaction/landwardwall/index-j.htmlより

http://www.tepco.co.jp/decommision/planaction/landwardwall/index-j.htmlより

「永続的な解決手段が求められているのに、なぜ複雑な分脆弱性が高い方法で壁を作らなければならないのでしょうか?」
民主党政権下で建設大臣を務めた馬淵澄夫氏がこう語りました。
彼は汚染水問題について、スラリーウォール(9.11テロ攻撃の際破壊されずに残った)の建造とトレンチ内には液体コンクリートを充填する一般的工法の採用を求めてきました。

これに対し凍土壁建設の現場で指揮を執る鹿島のエンジニアである阿部勲氏は、パイプが腐食したことが解ればその交換を簡単にできる方法を採用しており、それによって耐久性を高めることが可能だと語りました。
さらに阿部氏は埋め込まれたパイプはノーパンクタイヤと同じ自動修復方式を採用しており、地震によって損傷した場合にはそこに流れ込んだ水を直ちに凍結させることにより、遮水壁の密閉性が保たれることになっていると語りました。
そして電源が喪失する事態に陥っても遮水壁が溶け出すまでには何ヵ月も時間がかかり、技術者が対応策をとるための充分な時間が確保されるはずだと語りました。

調査・原子力規制委員会
安部首相は凍土壁の機能が完全になるのは2021年を予定していると語り、原子炉建屋の損傷と修理のため東京電力にさらに5年間の時間的猶予を与えました。
しかしこの見解に対しては疑問を持つ人々も多く、とてもその時間内での実現は不可能だと考えています。
安部首相自身も凍土遮水壁の建造は、莫大な規模になってしまった汚染水問題を解決するために必要ないくつもの対策の中のひとつの方法に過ぎないことを認めています。

鹿島も凍土遮水壁を建造する前に、昨年太平洋側に従来型工法により福島第一原発の敷地を囲う鋼鉄製の壁を地中に建設しました。
東京電力はこの鋼鉄製の壁の建造により、すでにかなりの量の汚染水の漏出を止めることが出来たと語っています。

しかし複数の科学者は、福島第一原発から漏れ出した汚染水はすでに地層の奥深くまで浸透し、太平洋の沖合で海洋に噴出している可能性があると語っています。
科学者たちはすべての汚染水の漏出を断ち切る唯一の方法は、原子炉建屋すべてを徹底的に修理することだと指摘しました。

110802
そして遮水凍土壁が設計通りの機能を発揮しても、東京電力にはこれまで福島第一原発の敷地内にたまった膨大な量の汚染水をどう処分するのかという問題が残ります。
東京電力はこの汚染水から1種類を別にしてすべての放射性物質を取り除くことが出来るフィルタ・システムを設備しました。
除去できないのは放射性水素、いわゆるトリチウムです。

日本政府も東京電力もこの処分方法について具体的なプランはまだありません。
希釈した上で太平洋に直接投棄するというプランは地元の漁業関係者が反対しており、国際社会からも批判を浴びる危険性があります。

今のところ、地中の凍結が始まったらしいという事を目で実際に確認できるのは、地中まで伸びているパイプの地上部分の表面に氷の粒が出来始めている事だけです。
そして1か所では、4号機の新たな原子炉建屋が姿を現しました。
津波が残した巨大な爪あとが確認できる6階建ての巨大な立方体の建物です。

4号機01
「水は私の足の下の地下3メートルほどの場所を流れています。」
白い防護服とマスク、そしてゴーグルで身を護る東電原子力・立地本部の岡村祐一本部長代理がパイプのそばに立ち、こう語りました。
「目には見えませんが、水は止まることなく流れ込み続けているのです。」

 

〈 完 〉

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【 2016年8月の宇宙写真 】《2》

アメリカNBCニュース 2016年8月31日

space05
8月19日NASAの宇宙飛行士ジェフ・ウイリアムスとケイト・ロビンスは5時間58分間の宇宙空間での作業をこなし、国際宇宙ステーションに新しいドッキング・アダプターを設置することに成功しました。このアダプターは、将来ボーイング社とスペースX社の宇宙船から乗員を乗り組ませるために使用されます。(写真上)

8月19日NASAの宇宙飛行士ジェフ・ウイリアムスがツィートに添付して公開した満月の写真。(写真下・以下同じ)
space06
8月25日ジェフ・ウイリアムスがツィートに添付して公開したユタのグレンキャニオン国立レクリエーション・エリアの写真。
space07
8月13日にイタリアのアルプス山脈にあるバグヌール・アルペン避難小屋の背景の空に広がるペルセウス座流星群の星の軌跡。長時間露出撮影。
space08
http://www.nbcnews.com/slideshow/month-space-august-2016-n640836

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ほんとうの「今」を知りたくて、ニューヨークタイムズ、アメリカCNN、NBC、ガーディアン、ドイツ国際放送などのニュースを1日一本選んで翻訳・掲載しています。 趣味はゴルフ、絵を描くこと、クラシック音楽、Jazz、Rock&Pops、司馬遼太郎と山本周五郎と歴史書など。 @idonochawanという名前でツィートしてます。
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