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【 安倍首相の圧勝、その先にある国民の冷たい視線 】

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選挙期間中は鳴りを潜め、選挙後になると表に現れる安倍首相の国家主義政策
今回の与党勝利の原因は、徹頭徹尾敗者である野党側にあった

マーティン・ファクラー / ニューヨークタイムズ 12月14日

安部選挙02
12月14日に投票が行われた日本の衆議院議員選挙は戦後最低の投票率を記録した結果、自民党及び連立与党の公明党が圧勝し、安倍首相がさらに数年間、政権を担当することになりました。

政治評論家は、手に入れた首相としての新たな任期を安倍氏がいったい何に使うつもりであるか、その点が問題であると語っています。

11月に解散総選挙を行う旨発表した際、安倍首相は政権が進めている経済復興方針『アベノミクス』に対する信任投票だと語りました。
しかしその経済政策は2年前の首相就任直後の状況と比べると、最近は明らかに勢いを失いつつありました。
選挙期間中、安倍首相は政権の継続が決まった後、具体的にアベノミクスに再び勢いを取り戻させるため、新たにどのような対策を取るのか明言はしませんでした。
これまでアベノミクスは市場に資金を充分に供給するための日本銀行による大規模金融緩和政策の実施以外、持続的な経済成長を実現するとの約束を実現するための具体的な施策については、これと言って目立つことは何も行なっては来ませんでした。

経済学者は安倍首相に対し、保護貿易主義により守られてきた日本の市場と産業の解放を実現するための構造改革を継続するように求めてきました。
各種の規制を撤廃することにより若い世代の自立を容易にし、貿易を増加させ、対外投資と海外資本の活発化も視野に入れるべきだと主張しています。

反安倍01
しかしこの構造改革を進めるためには、今回選挙で安倍氏や自民党を支持した農協や電力業界などの既得権グループの改革に踏み込む必要があります。

そして同時に政治評論家は、選挙期間中には口にしなかった経済以外の問題に、国家主義者である安倍首相が個人的に念願としている政治体制の転換に乗り出す可能性があると見ています。

与党自民党は今後4年間国政選挙を行う法的義務はなく、この間に安倍首相は集団的自衛権の拡大や第二次世界大戦中の日本の歴史をこれまでと違った肯定的な内容に変えることなど、国民に不人気な政策を法制化していくものと見られています。

「選挙期間中はこれらの問題について、安倍首相は何ら明確な言質を与えませんでしたが、今や彼は選挙の圧倒的勝利者になりました。」
学習院大学政治学科の専門の野中直人教授がこう語りました。
「アベノミクスに関する議論はさておき、安倍首相の本当のゴールは自身の政治的地位を守る事であったと思われます。」
もしそうであったのなら、安倍首相は成功したことになります。

最終的な集計は、安倍首相率いる自由民主党が影響力の点ではより大きい衆議院の475議席中291を手に入れました。
改善前の295議席からわずかに減らしましたが、議会で圧倒的な力を発揮する大多数を制している事実に変わりは有りません。

圧勝の事実が明らかになると、安倍首相は自民党本部の中に設置された候補者一覧表のボードの前に現れ、テレビカメラに向かって微笑みながら当選者の名前に赤いバラをつけていきました。
安倍首相は選挙戦の勝利は、アメリカ、中国に次いで世界第3位の規模を持つ日本経済の立て直しのため、アベノミクスを継続して欲しいという国民からの要請を表すものだと語りました。

集団的自衛権04
しかし国民の中にはアベノミクスが株価を押し上げて企業や投資家には恩恵をもたらしたものの、一般的日本人、すなわち勤労者世帯の収入を増やしてはいないという不満が国民の間に根強いことには気がついているようでした。

「アベノミクスはまだ未完成です。」
テレビの中継カメラに向かい、安倍首相はこう語りました。
「私たちは2、3年前まで続いていた暗い経済停滞期を終わらせましたが、多数の人々がまだまだその事を実感できないでいます。こうした人々にも恩恵が行き渡るように、私たちは着実に政策を実行しなければなりません。」

前出の野中教授のような政治問題の専門家は、今回の選挙戦の勝利が一方的なものであったにもかかわらず、有権者が安倍首相やその与党に熱心な支持を与えたわけではないと語ります。
むしろ今回の与党の勝利は、敗者である野党側にあったとする見方が有力です。
2年前の民主党政権の崩壊以来、日本の野党勢力は名状しがたい混乱の中にいます。

街頭でのインタビューで日本の有権者は、今回の選挙では野党側から魅力的な選択肢は提供されることが無く、自民党に投票する以外選択肢が無かったと語りました。
東京都の郊外の調布市では、アベノミクスの恩恵など何も感じることはできないが、2年前に政権運営に失敗して国民の支持を失った民主党の政策に比べれば、まだしも自民党の方がましだという意見が聴かれました。
公務員で今回の選挙では自民党に投票したという38歳の柴田雅史氏は次のように語りました。
「アベノミクスに私にとってほとんどどうでもよい問題ですが、投票するに値する野党は全く見当たりませんでした。」
「民主党に比べれば、自民党の方がまだしもましです。」

GRD03
事実多くの日本人が、今回の選挙には全く関心を示してはいないようでした。
有権者の約52パーセントだけが投票を行った14日日曜日の選挙は、戦後最低の投票率を記録しました。

専門家は投票率の低さは組織票に頼る自民党に幸いし、選挙において恐るべき威力を発揮する地方の集票マシンが大いに成果を挙げたと指摘しました。
最大野党である民主党は前回の62議席は上回りましたが、獲得議席は73にとどまり、結局自民党に迫ることはできませんでした。

野党側の数少ない勝利者は小規模な日本共産党でした。
共産党は議席数をほぼ3倍の21議席に増やし、議案を提出する権利を手にしました。
アナリストは現政権に対する不満票が共産党に集まったと見られると語っています。


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この稿を翻訳していてふと気がついたのですが、安倍氏には『国会議員は国民の公僕である』という意識が徹底的に無いことが、米英を始めとする海外メディアの文章を読んでいると不思議とよく解ります。
『上から目線』です。
アメリカのオバマ大統領と比べても、イギリスのディビッド・キャメロン首相と比べても、安部首相の『上から目線』は明らかだと感じます。
英文での表現がそうだというのではなく、オバマ大統領、キャメロン首相が政策の提案後、
「ついては国民による議論を待つ」
という態度であるのに対し、安倍首相のそれは無言で次のように言っているからだと思います。
「選挙で勝った以上は、好きなようにさせてもらって良いはずだ。」

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ほんとうの「今」を知りたくて、ニューヨークタイムズ、アメリカCNN、NBC、ガーディアン、ドイツ国際放送などのニュースを1日一本選んで翻訳・掲載しています。 趣味はゴルフ、絵を描くこと、クラシック音楽、Jazz、Rock&Pops、司馬遼太郎と山本周五郎と歴史書など。 @idonochawanという名前でツィートしてます。
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