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【 4,900万人が棄権、大義が見えなかった総選挙、支持されてはいない勝利 】《前篇》

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所要時間 約 6分

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国民のためではなく自分のため、安倍首相は諸人が考えるよりはるかに狡猾で、冷酷な政治手腕を発揮した
4,900万人の有権者が参加しなかったという事実、『信任を新たにした』とはとても言えない

エコノミスト 12月15日

阿部選挙
2006-07年、安倍晋三氏の初の首相の任期は、屈辱にまみれたものでした。
以来安倍首相に対しては、その政権担当能力に対し常に疑念がつきまとうことになりました。
しかし2012年に政権の奪還に成功してからは、政治的に有能かつ強力な連立与党に支えられ、かつ稀に見る幸運にも支えられてここまで来ました。

しかし11月に衆議院を解散し、解散総選挙を行うという『賭け』は首相自身が書いた筋書きです。

それは必要十分な成果をあげることになりました。

今や安倍首相には、戦後有数の長期政権の首相になる可能性すら生まれています。
今回安倍首相率いる自民党が獲得した議席数は291で、地滑り的勝利を手にした2年前の選挙の294議席とほぼ同数です。
そして連立与党の公明党は4議席増えて35議席。
2党合わせて326という議席数は衆議院475議席の317議席を上回る圧倒的多数です。
最早連立与党は参議院の賛否に関係なく、衆議院単独で法律を成立させることが可能になりました。

衆議院議席数
日本においてはここしばらく短命政権が続き、目まぐるしく首相が変わる状態が続き、その結果有権者の政治への期待も関心は下がり続けました。
政治への関心の低さはそのまま投票率の低さとなって現れ、現状維持という結果につながりました。

選挙前安倍政権の支持率が下がり続けていたにもかかわらず、日本最大の野党である民主党は前進らしい前進をすることはできませんでした。
10月、安倍内閣の閣僚の金銭問題に絡むスキャンダルが相次ぎ、民主党に巻き返しのチャンスが訪れたかのように見えました。
これに対する安倍首相の反撃は、民主党を準備不足のまま解散総選挙に直面させるというものでした。
民主党は2012年末の選挙の記録的大敗により議席数を57にまで減らし、その後他党の離反者を加え選挙前の議席数は62でしたが、今回73議席を獲得しました。
しかし次回2018年の総選挙で与野党逆転を果たすための目安である100議席には遠く及ばないものでした。
ちなみに今回の選挙では、いわゆる『1票の格差』是正のため、前回選挙の480議席から5議席だけが削減されました。
そして地方の110の小選挙区では自民党の鉄壁の選挙組織を前に、候補者の擁立すら果たせなかったのです。

憲法第9条01
自民党も海江田万里民主党党首を、ようやくにして落選させることに成功しました。
この落選はある意味象徴的な出来事です。
1949年以降、野党第一党の党首が議席を失ったためしはないのです。

しかし海江田党首の落選は、逆に民主党にとって幸いするかもしれません。
東日本大震災 – 福島第一原子力発電所の事故発生当時首相を務めていた菅直人氏は、比例代表得票により何とか議席を確保しました。
菅氏は首相退任後、原発停止、再生可能エネルギー普及の分野で活躍を続けてきましたが、今回の選挙ではこの問題は有権者の関心を集めることがありませんでした。

野党の無秩序な分裂状態に乗じる際、安倍首相は諸人が考えるよりはるかに狡猾で、冷酷な政治手腕を発揮しました。
そして今、戦後の日本政治の自民党による一党支配は、一層強まろうとしているかに見えます。

日本のメディアの中には、今回の選挙で自民党が単独で3分の2を獲得すると予想しましたが、そのことは現実にはなりませんでした。
自民党は今後の議会運営においても、連立与党の公明党に配慮していくことが必要です。
これまで安倍政権の強権的政治に対し、一定の歯止めをかけてきたのが公明党でした。

秘密保護法05
安倍首相は政権の基盤を強化し、首相の任期を延長するために今回の選挙を行いました。
しかし実は選挙結果は、今後の政権運営の在り方に影響を与えるとはほとんど考えられません。

安倍首相自身は今回の選挙によってその経済政策アベノミクスに対する信認が再確認されたと主張していますが、4,900万人もの有権者が棄権したという事実はそうした主張を根底から疑わせます。

2012年の総選挙では59.3%という投票率の低さが問題視されましたが、今回の投票率はそれをさらに下回る約52.7%というは、戦後の歴史で最低のものだったのです。

〈 後篇に続く 〉

http://www.economist.com/news/21636467-shinzo-abe-wins-easily-weak-mandate-voters-romping-home?zid=306&ah=1b164dbd43b0cb27ba0d4c3b12a5e227
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安倍首相が常用するフレーズで、非常に気になるものがあります。
「その問題は、与党とよく協議した上で…」
と言うものです。
「国会で充分に議論を重ねた上で…」
とは決して言いません。

野党の議員も国民の負託を受けて国会に来ている以上、議論することが必要なはずです。
しかし安倍首相の場合
「彼らの意見など聞く必要がない」
間接的にそう言っているように聞こえます。
アメリカのバラク・オバマ大統領も、イギリス保守党のデヴィッド・キャメロン首相も、こうした態度は決してとらないはずです。

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