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【 遥かな先にしか見えない福島第一原発の事故収束 】《前編》

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所要時間 約 7分

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溶け落ちた核燃料の塊を取り除く作業を、2021年に開始するという構想は非現実的
福島第一原発の状況が正常に近づいているという宣伝工作、目的は反原発感情を殺ぐこと

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ジャスティン・マッカリー / ガーディアン 2016年3月11日

 

2011年の津波の後発生した福島第一原発の3基の原子炉のメルトダウン、そこから溶け落ちた核燃料を取り除くには最低でも40年、場合によってはそれ以上の月日を要する見込みです。

事故発生から2年間続いた名状しがたい混乱は、原子力発電所事故史上に福島第一原子力発電所の名を永久に刻み込むことになりました。
福島第一原発の現場の事故収束・廃炉作業という、最も重い課題と向き合っている一人の男性が当時を振り返り、
「まるで野戦病院のようでした…」と語りました。
男性は事故現場から溶け落ちた核燃料を取り除くという、日本がかつて経験したことの無い難しい作業を進めなければなりません。

「現在、現場の状況はずいぶんと落ちついている、そして私たちがやっと前に進める状況になっている、心からそう感じられるようになりました。」
福島第一原発で事故収束・廃炉作業の指揮を執る東京電力社員の増田尚宏氏がこう語りました。

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2011年3月マグニチュード9.0の巨大地震が引き起こした巨大津波は日本の東北地方太平洋岸で約19,000人の命を奪い、福島第一原発では3基の原子炉をメルトダウンさせました。
それから5年、その場所は今、巨大災害の現場から多種多様な建造物が立ち並ぶ建設現場に様相を一変させました。

増田氏は今、1,200人の東京電力職員に加え、約6,000人の作業員が働く現場で、彼らに温かい食事と休憩場所を提供する施設の中に居て、福島第一原発の施設の内外で放射線量が下がったことを指摘できるようになりました。
さらには放射能で汚染された膨大な量の地下水についても、処理の目算が立ってきたと語りました。

2014年後半、東京電力は福島第一原発の事故発生以降、恐らく最も危険とされる作業に着手しました。
4号機の核燃料プールから数百本に上る使用済み核燃料を取り出す作業を完了させたのです。

しかし破壊された1~3号機の中から溶けた核燃料を除去するという、これまで原子力発電所を運営する機関がかつて経験したことの無い困難な作業については、やっと緒に就いたというのが実態です。

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現在東京電力が把握しているのは、2011年3月11日の事故では原子炉の冷却装置が完全に機能停止し、3基の原子炉がメルトダウンしたという事だけです。
そのすら東京電力は当初、認めようとはしませんでした。

最も懸念されるのが原子炉1号機です。
国際原子炉廃炉研究機関によれば、1号機の溶解した高温の核燃料は圧力容器の底を突き破って原子炉格納容器の底に達し、さらにはそこを通過して原子炉の基礎部分であるコンクリートの中にまでもぐりこんでいると見られています。
2号機と3号機で発生したのは、部分的なメルトダウンであったと考えられています。

ガーディアンの取材に対し、増田氏と東京電力の技術者は、溶け落ちた核燃料がどういう状態でどこにあるか、正確には把握できていないと認めました。
「正直なところ、私たちは未だ取り出さなければならない核燃料がどこにあるのか、正確には把握していません。これからさらに詳細な調査を進める必要があります。」
増田氏は最近行われた記者会見でこう説明しました。
「しかし対象となる核燃料が低温状態で固体化し、核分裂が起きていないことだけは解っています。」

「このような作業はこれまで誰も経験したことがありません。しかし30年~40年という時間をかければ、事態を着実に前に進めることができると考えています。状況が変化する度、この事故収束・廃炉作業完了の目標を変更するのは間違っていると指摘する関係者もいますが、私たちは考え得る限りの方法について検討し、決して安易な結論を出さず、こうした目標を設定したつもりです。」

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原子炉内部の奥深くまでロボットを到達させるための技術開発も必要です。
こうした場所では放射線量がきわめて高く危険であり、こうした場所で正常に動作する装置は未だ開発されていません。
昨年になり特にがれきが散乱する配管や連結部分について検証するよう改造された2台のロボットがきわめて放射線量が高い原子炉内部に入り、炉心近くの様子を確認することができました。
こうした状況にあるにもかかわらず、東京電力は約2兆2,000億円と見積もられる予算をかけ、2021年からこの溶け落ちた核燃料の取り出しに着手し、以後事故収束・廃炉作業を30年から40年で完了させるというロードマップにこだわり続けています。

しかしグリーンピース・ドイツの原子力問題の専門家の幹部であるショーン・バーニー氏は、この事故収束・廃炉作業のスケジュールは、日本が巨大原子力発電所事故から確実に立ち直りつつあるという事を一般市民に信じ込ませるための宣伝工作に過ぎないと語りました。

「溶け落ちた核燃料の塊を取り除く作業を2021年に開始するという構想は現実的なものではありません。現実にそれが可能になるとは到底考えられません。」
バーニー氏はこう語りました。

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「ロードマップは技術的根拠に基づくものではなく、政治的配慮によるものです。」
「これは福島第一原発の危機に対する日本政府と原子力産業界の姿勢を、如実に表すものです。現状は着実に正常な状態に近づいているという印象を広めることにより、一般市民の原子力発電所の再稼働に対する反発を弱めようというのがその狙いです。」
「溶け落ちた核燃料を取り出し、それを安全な状態で保管できるようになるまで、いったいどれ程の時間を要するか、それを解っている人など存在しません。解っているのは何十年、それからさらに何十年、さらに何十年という歳月が必要だという事だけです。」

〈 後篇に続く 〉
http://www.theguardian.com/environment/2016/mar/11/fukushima-daiichi-nuclear-reactors-decommission-cleanup-japan-tsunami-meltdown

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