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【 ホワイトカラー・ブルース : 一度は燃え尽きたサラリーマンが再び立ち上がるとき 】

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長寿化が進む日本社会、変わりつつある終身雇用制度による身分保障

仕事の中身ではなく、長時間やみくもに働くことによって身分を保証されてきた日本の会社員

 

エコノミスト 2016年12月20日

 

東京にある社会人材学舎は、ほかとは少し異なる種類のビジネス訓練施設です。

所属しているのは3分の2が男性ですが、そのほとんどは日本の大手企業の終身雇用制度による身分保障を自ら捨てて再出発しようと考えている人々です。

終身雇用の慣習から抜け出す第一歩は、張り巡らせてきたバリアを壊すことから始まります。

例えば、持参した弁当を中身が解らないようにして知らない人と分け合う事もあります。

かつてサラリーマンだった塾生は少し神経質な笑みを浮かべながらも、一年を通し他人というものがコミュニケーションを築くべき相手であることを実地に学ぶことになります。

 

この社会人材学舎の理事で専任講師を務める小澤松彦氏は、この方法は第二のキャリアを築く準備段階で、会社員あるいはビジネス・パートナーとしてではなく個人として人や社会と交流するためのものだと説明してくれました。

小澤氏は真の意味での人間としての自立を目指す、これらのコースを専門に担当しています。

 

形式的序論を大きく重んじる日本という国にありながら、ここの塾生たちは名刺の交換すらしたことはありません。

氏名、肩書、その他の個人情報を塾の中で明かすことは禁止されています。

塾生たちは自分に別の名前をつけています。

これは塾を一歩出た外の社会に存在する、かつての会社社会の地位や価値観を復活させないようにするためです。

「私たちはゼロから出発し、塾生の人々が自分を再発見するためのお手伝いをしているのです。」

小澤氏がこう語りました。

 

長い間日本のサラリーマンは、身に着けたスキルではなく、会社への忠誠心とどれだけ身を粉にして働くかということの方に重点を置く報酬制度に基づく職業エスカレーターとも言うべきものに乗ってきました

サラリーマンというのは戦後1945年以降にできた定義ですが、その中身はしばしば数世紀も前の日本の伝統に縛られてきたものだ、こう語るのはかつて安倍首相の経済顧問を務めた八代尚宏氏です。

 

戦後間もなく到来した日本の高度成長期、企業は終身雇用制度を確立させ、それによって必要な人材の確保を行いました。

この制度の下ではより多くの報酬を得るために必要なことのすべては、企業内に留まったまま年齢を重ねていくことだったのです。

 

お返しにサラリーマンたちは、雇い主である企業の過酷な要求にも応えなければなりませんでした。

場合によっては自宅から何百キロも離れた子会社への異動を2、3日前に通告されても拒否することができませんでした。

父親たちは単身赴任を余儀なくされ、多くの子どもたちが父親のいない家庭で育つことになりました。

 

サラリーマンたちは、家族ではなく仕事を心の支えとして生きていかなければなりませんでした。

早稲田大学で労働問題を専門に研究する小倉一哉准教授によれば、日本の会社員はドイツ、フランスのビジネスマンと比較すると、平均で1年間に400時間以上長く仕事をしていることになります。

 

しかし日本ではまだ多くのサラリーマンが頑なに塹壕の中で身構えています。

何とか日本経済を成長軌道に載せようとしている安倍首相は、このサラリーマンの中でも底辺近くに位置し、低賃金で働く契約社員やパートタイム労働者により多くの権利を与えることを約束しました。

政策として同一労働同一賃金を実現するための法改正などがありましたが、結局はこうした根本的構造改革は見送られることになってしまいました。

 

それでも多くの日本企業が定年延長の傾向が続く中、かつてのようにすべての労働者を完全に引退するまで雇用し続ける体力を失いつつあり、終身雇用制度は実質的に崩壊しつつあります。

家電メーカーなど不振が続く業界では早期退職者の募集などを繰り返し行っていますが、対象となる人々の年齢いかんでは再就職のための訓練もむ難しくなる可能性もあります。

 

社会人材学舎の理事で専任講師を務める小澤松彦氏は日本人の平均寿命が70歳前後であった時代には終身雇用制度も成り立っていたと語りましたが、現在では多くの企業が早期退職に応じる正社員に対し、高額な補償を行うようになっています。

 

多くのサラリーマンが早期退職を選択するようになりました。

社会人材学舎の塾生のひとりである伊藤弘幸さんは45歳で23年間乗り続けてきたサラリーマン・エスカレーターから降り、外の世界へと一歩踏み出しました。

辞めた理由は仕事が退屈だったからだと語りました。

「リスクを採る必要もなく、思い切って挑戦することもありませんでした。」

 

伊藤さんは現在東京の社会人材学舎に通っていますが、日本国内には同様の機関が増えつつあります。

伊藤さんは教師として第二の人生を歩いて行きたいと考えています。

かつてのサラリーマンたちは、それまでの思考法を捨て去るために週2回5カ月間社会人材学舎に通うことになります。

数十年もの間単調な過重労働を続けてきた後、やっと彼らの目が輝くようになるに違いありません。

 

http://www.economist.com/news/business/21712164-increased-longevity-means-lifetime-employment-isnt-lasting-distance-japan-new?zid=306&ah=1b164dbd43b0cb27ba0d4c3b12a5e227

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【 2016年報道写真50選 】《1》

 

アメリカNBCニュース 2016年12月21日

 

2016年7月9日ルイジアナ州バトンルージュ警察署の本部近くで、警察官による黒人青年射殺事件に抗議する女性。この後写真の女性は逮捕・拘留された。

ミネソタ州で発生した警察官による黒人男性射殺事件を始め、2016年には警察官による有色人種射殺事件などが相次ぎ、全米に『Black Lives Matter(黒人の生命も大切なはずだ!)』運動が広がることになりました。(写真上)

 

9月5日のスペインのベニタチェル村、プールの中から山林火災を見つめる2人の男の子。

この山林火災では20機以上の消防用航空機が出動し、消防士は気温が摂氏40度の中、消火活動にあたりました。(写真下・以下同じ)

8月14日リオデジャネイロ・オリンピック100メートル短距離走の準決勝で後方を確認するジャマイカ代表のウサイン・ボルト。

ボルトは3大会で100m、200m短距離走両方の金メダルを獲得すると偉業を成し遂げた3人目の選手になりました。

8月5日リオデジャネイロのマングエイラ・スラム街で、オリンピックの開会式の打ち上げ花火を見物する住民。

10月9日フィリピン、マニラ市内、葬儀のため運び込まれた父親の遺体を前に泣き崩れる6歳の女の子。25歳の父親は隣人とともに殺害されているのが発見されました。

フィリピンではドゥアルテ大統領の就任以降麻薬取引の嫌疑をかけられた人間が、警察が関わった分だけで約2,000人が殺害されたと見られています。

 

9月11日シリア北西部の都市アレッポでアサド政権側の空爆が行なわれる中、赤ちゃんを抱いて避難を急ぐ男性。

http://www.nbcnews.com/slideshow/year-pictures-2016-n697021

 

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